萌え系!あにまるズアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
べるがー
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/05〜12/09
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●本文
わんっ。わんわんわん、わんっ。
にゃあ〜ん。ふにゃにゃにゃにゃにゃにゃんっ。にゃご。
「かっ‥‥可愛いっ」
某月某日。TOMIテレビの若手女性ディレクターが、ペットショップの前で鼻を押さえてガラスケースにへばりついている。
「この純粋な瞳! 見てよ、何て可愛いの!? ああっ‥‥頭の先から尻尾の先まで毛並み柔らかそう‥‥‥‥撫でくりたいわ」
ぐふっ。ぐふふふふ。
人通りの多い道沿いの店だというのに、彼女の奇怪な笑いが人避けになっている。店員は迷惑そうな顔で立っていた。
「ああ〜ん、ヨダレが止まんないわあ‥‥ちまちま動くちっちゃなお手手を触りたい! 座ると鳩胸になる胸下に手を突っ込みたい! おにゃか撫でたいの〜っっ」
つい先ほど上司に『新人アイドルミリィの新番組を頼む』と言われた、若輩ながらやり手なお姉さんなんである‥‥一応は。
「『萌え系!あにまるズ』‥‥っておい和佳子、ちょっと聞いただけじゃ『え? 深夜番組』『萌え系なんだ‥‥ふぅん』なタイトルだぞ。しかもオイ、‥‥ミリィちゃんに三毛猫の格好させるって。より一層マズイだろ」
和佳子、と呼ばれた変態ディレクタ‥‥もとい、期待の若手女性ディレクターが自信満々に番組内容を打ち込んだ書類を提出する。
「だーいじょうぶですって! 世の中は今秒速で流れてく社会に疲れてるんです! 癒しが必要なんです! あのぷにめろきゅーんな動物に萌えたいんです、いや萌えるべきなんです!! アイドル司会者で一層癒し効果抜群! このアイドルだって癒し系で売りたいって言ってるんですよ!? 好印象バッチリです!」
ぷ、ぷにめろきゅーん‥‥?
何語だ、と上司は思う。きっと変態和佳子の萌語なのだろう。
「しかし、これ‥‥このコーナー、動物そっくりの着ぐるみを着たゲストが動物と戯れるって‥‥」
「楽しいでしょう!?」
入社当初ペット愛好家代表動物モエモエ和佳子! とかわけのわからん事を名刺に書いて、早速上司に呼び出された事のある和佳子である。その瞳は絶対受けると信じていた。つまり冗談ではない。彼女はやると言ったらやる気だ。
「しかしお前が企画を練る時間が長引いたせいで、動物好きのゲストなんて呼びかける暇なくなったぞ?」
わかってんのかお前、と言っても聞く耳もたない。
「各プロダクションに現在あたっています。着ぐるみ着て動物達の中でモエモエしてくれる人大募集! なんちて」
「‥‥‥‥‥‥」
そんな呼び込みで来てくれんのか、と上司は思った。
〜 動物好きのアナタに打って付け! なお仕事だよ☆ 〜
この冬開始の新番組、『萌え系!あにまるズ』の初回ゲスト大募集! 司会者は大手プロダクションが売り出したい癒し系アイドル、ミリィちゃん(14才)です。
撮影前にあなたの好きな動物をお聞きします。その動物さんと、思う存分モエモエな時間をお過ごし下さい。
一緒にご飯食べたり遊んだり(遊ばれたり・笑)、ちょっと動物達に実験を仕掛けてみたり(怒られたりして!?笑)優雅で楽しい時間を過ごしてね。
動物達と一緒に何をするかはその動物大好き☆なアナタの意見を取り入れるよ♪ ぜひ参加してネ。
●リプレイ本文
「俺は兎と遊びたいと思ってる」
え? とディレクターの和佳子が目を見開いた。
足元では『わーい、動物動物ー☆』とはしゃぐ麻倉千尋(fa1406)や『動物さんと遊べるの?』と非常に可愛らしく尋ねている美森翡翠(fa1521)、『一緒に遊ぶでぃす☆』とミリィに声を掛ける縞りす(fa0115)がいるのである。正直、男一人浮いている自覚はあった。
「いや、着ぐるみは余ったので良いんだ」
小動物を希望する女の子達に混じらなくてもと思ったのだが。
「まぁ‥‥まぁ、まぁ、まぁ!」
何故か酷く嬉しげに顔を上気させている。
──嫌な予感がするのは気のせいか? 気のせいだな、絶対気のせいだ。
「わかったわ、赤くきゃるんとした目のちょーんと長いお耳が可愛いふわもこの白兎ね!」
──言ってない!
早河恭司(fa0124)、用意される着ぐるみに一抹の不安を感じる。
●ふわもこ毛皮天国
「動物天国のようですね」
のんびり呟いたのは、都路帆乃香(fa1013)。姿見の前でポーズを取っている七瀬瀬名(fa1609)を眺めている。
「うふふっ、着ぐるみの猫♪ こういう可愛いの着たかったんだよね」
非常に満足げ。リアル熊を被っている帆乃香は動物達に恐々遠巻きに見られている。
「そろそろカメラ前お願いしまーす!」
セッティングは終わったらしい。三々五々集まる仲間と共に帆乃香も動こうとし、思わずスタジオの隅っこを振り返った。
「‥‥‥‥‥‥」
無表情の獅子顔でチワワと見詰め合うベアトリーチェ(fa0167)。何をしているのかわからない帆乃香は首を傾げた。
「えとえと、今日はど、動物さんをたくさん呼んでましっ」
若干十四歳という若さで番組司会者を任されたミリィは三毛猫尻尾をぶら下げたまま、早速噛みまくっている。察した楊梅花(fa0109)がさっと背後に回って肩に手を置いた。
「犬猫をメインに、リスや兎も呼んでるんだよね、ミリィちゃん」
安心させる笑いにほっと肩の力を抜くミリィ。同じく癒し系の翡翠が、自前のハム尻尾をふるりと震わせ微笑んだ。
「犬のトレーナーさんも呼んでますの。分からない事は質問出来ますわ」
和佳子は早速ふわもこのハム尻尾に癒されている。
「‥‥大きな兎さんですね‥‥」
帆乃香が感心したように言うのは、もちろんメインカメラ前に佇む百七十センチはあろうかという二足歩行の兎である。足元に三十センチ程度しかない兎がキョトンと見上げているのがまた可笑しい。しかし人間達は別の意味でコメントに困っていた。
「可愛いでぃすね☆」
ずばっと直球でコメントするりす。悪意はない。
「や、可愛いが‥‥中は」
梅花の前で一箇所に集められていた四方八方に逃げている。まさに脱兎。
──ジャイアント兎、サスペンダーにスカートという姿でスタジオにて打ちひしがれる。
「え、ちょっとちょっと、そんなに餌与えて大丈夫!?」
司会者ミリィが慌てる先には、リスの前に木の実を山と積んだりす。
「リスさんには頬袋があるから、大丈夫でいす〜☆」
小さな体にくるんと丸まった尻尾付の着ぐるみを着たりすは、髭をそよがせながら笑っている。リスは冬に備え木の実を貯蔵するため、秋のうちに口いっぱいに木の実を入れて貯蔵庫に運ぶ。が、上限数を知らないので山盛りに持ってみた次第である。
「クルミはおっきいからちょっと難しいでぃすね〜☆」
掌サイズの小動物が懸命に口に物を詰め込む姿はかなり可愛かった。
「ちょっと休憩入れましょうか。瀬名さん、毛だらけになってますよ〜」
スタッフに突っ込まれた瀬名の体には、撮影中ずっと子猫達とじゃれていたため毛がついている。
「早く仲良くなりたかったから、ミルクの香りの石鹸使ったから‥‥うにゃにゃ、凄い毛だらけ」
黒猫でなくて良かったかもしれない。白い毛がたくさん付いていた。
「着ぐるみ暑くない? 翡翠ちゃんの尻尾も重いんじゃ‥‥あら」
「だっ、だだ大丈夫ですのっ」
肌触りのいい尻尾に和佳子の目が光る。自前の尻尾を触られた翡翠がじりじりと後ずさっている。
──狼になってなくて良かった。
とは思うもののスカートと耳のリボンがちょっぴり哀愁漂う恭司。現実から逃げるように兎を愛でていた。本物の兎はやっぱり可愛い。
「休憩終わりでーす、衣装の変更大丈夫ですか?」
スタッフの声に、暑苦しい着ぐるみを脱ぎ捨てた半獣姿の梅花が頷く。一気にスレンダーな猫と化した。尻尾が自由を喜ぶようにパタパタと振られている。
「わ、和佳子さん尻尾握らないで下さいのっ」
完全獣化した翡翠のハム姿、着ぐるみを脱ぎ本物の尻尾と耳を生やしたりすが和佳子に襲われている。やはり着ぐるみでない自前の肌触りは比較にならないからだろう。
「撫でさせてっ、抱きしめさせてっ、連れ帰らせて〜っ!」
「だっ、ダメでぃす〜☆」
小動物系の二人は嫌がる姿も可愛い。
「人間と同じもの与えちゃダメですよ、犬にとっては毒になったりする場合もありますから」
「えっ、そ、そうなんですの?」
手近な犬に餌を与えていた翡翠が、慌てて自分の取ってきた餌を見る。
「犬は雑食といってもいいので比較的何でも食べますが、例えば人間が普通に食べる玉ねぎはダメ。玉ねぎ中毒になります」
「た、玉ねぎ中毒?」
一瞬冗談か、と思ったが犬のプロは本気である。
「犬、狼の集団は横の繋がりではなく縦繋がり、つまりは上下関係ですから、下手に先に餌を与える、先に歩かせるといった甘やかしは飼い主を下に見てペットとして飼い難くなります」
「‥‥そうだな」
兎の着ぐるみを被った狼が頷く。手の中の兎がわしわしと野菜を食べている。
「散歩の時は必ず飼い主のペースに合わせるようにして、自分が主だという事を認識させるんですね」
こんな風に、と黒ラブラドールのリードを持ち、数歩歩いてみせる帆乃香熊。成犬の大きさにハム翡翠が怯えたように梅花の背後に隠れたが、黒ラブはしっかり帆乃香を目で追っている。
「そう。散歩中言う事を聞かないと他人に迷惑をかけてしまいますから、しつけは犬のためとも言えますね」
「う〜、いっぱい覚えなきゃ‥‥」
実家で飼った犬の事を思い、呻く千尋。目の前のマルチーズはわふわふと舌を出して膝に足をついている。どうしたの? と問い掛けているようだ。
「うん、でも‥‥わんちゃんと一緒なら頑張れるかもね」
気付けば笑っている。動物はしゃべる事も出来ないし笑顔もよくわからないが、そのふわもこの小さな手でちょいちょい触れてくる仕草や、喜怒哀楽を表す尻尾耳で十分に意思疎通は可能なのだ。
「何でふわもこの動物って見てたら和むのかなぁ」
自らも癒し系として売り出すミリィが、猫犬の毛皮に埋もれて呟く。自分が怒ってる時。悲しんでる時。心の余裕がない時でも、どうしてこのふわもこな存在に癒されてしまうのだろう。
「老人ホームなんかでも今は動物に触れさせる機会が多いらしいからその効果は間違いないね。っと、そこ、取り合いしちゃダメだよ!」
梅花が自分の尻尾に飛びついてくる子猫達を交わしながら魚の皿を等間隔に置いている。
「動物は、そこにいるだけで癒しなのでぃす☆」
ぺろぺろとちっちゃなピンクの舌で頬を舐められてるりすが、くすくすと笑っている。巨大りす尻尾にみにリスが乗っかっているのが可愛らしい。
「はぅ、ふわふわだぁ、かわいいよーっ☆ ううっ。こんな可愛い子達嫌えないよ〜」
でれ〜んと腹を見せる灰色猫の腹を夢中で撫でる千尋。この無警戒さを前に理性は崩壊するのだ。
「確かに。こいつらに暴力を揮える奴は人間じゃない」
巨大兎にたかっている兎達。スカートを穿いてる奇妙なメス兎にも慣れたらしい。
「ふふっ、くすぐったいよー。うぅん、可愛い♪ こんな子飼えたら良いなぁ」
猫山に埋没する瀬名の声がどこからか聞こえた。
「‥‥持って帰っちゃダメですよ?」
例えば着ぐるみの中とかスカート中とか鞄の中とかに。
帆乃香の目は何となくベアトリーチェの背中を見つめて呟く。
「うー、うー、連れ帰りたあああいっ」
撮影終了後。着ぐるみを脱いだ瀬名がじっと手の中の子猫を見つめている。アメリカンショートヘアー。ビー玉みたいなまん丸い目が見返した。
「ぬ。着ぐるみを脱いでも俺が分かるのか? ダメだ、連れて帰‥‥帰っ‥‥りたい!」
途中から本音になっている恭司。二本足で立ち上がって柵の向こうから見つめてくる兎達の元に駈け戻る。
「りすさんりすさん、お元気で、でぃすよっ☆ あんまりドングリ食べすぎちゃ、お腹壊すでぃす〜☆」
りすと最後のお別れをしているりす。
「ベアトリーチェさん、そのチワワは連れ帰れませんよ?」
撮影開始から最後まで一言も口を利かずチワワと見詰め合っていた獅子姿のベアトリーチェがきゅっと抱きしめる。見詰め合う。固有結界発動。帆乃香の言葉も聞こえない。
「年に一回の狂犬病予防をさせて、鑑札もちゃんと付けた方がいいですよ。それと‥‥」
「ふむふむ、ご飯、おやつ、お散歩コースに格好に、爪や耳のケアに‥‥」
千尋は実家の犬のため、犬着ぐるみのままトレーナーに訊き込みを続けている。物凄く大変な思いもするけれど、自分に委ねられた命は大事だから。
「‥‥帰りたくなくなっちゃうもんだね」
梅花の尻尾にじゃれつくのは、親しくなった子猫達。みぅみぅ懐く声が愛おしい。おかげで獣化が解けない。
「ふわもこハムちゃん、お家連れ帰るうぅっ」
「だ、ダメですのーっ、あたしにはちゃあんとお家があるんですのーっ」
和佳子に抱きしめられた翡翠も帰れるのやら?