かぼちゃかぼちゃアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 江口梨奈
芸能 3Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 10.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/25〜10/31

●本文

 ここはとある商店街。
 の、商工会議所。
 月に1度ある、商店主達の会議が今日も開かれていた。
「10月のイベントっていうと、やっぱりハロウィンかあ?」
 商店街活性化のために、なんだかんだと口実を作ってはセールに繋げよう、と言うのがこの商会のいつものことだ。しかしこのハロウィン、商店主達はいまいち乗り気には慣れない。
「そもそもカボチャって夏の野菜なのに、なんで10月、おおかた11月に?」
「オレンジのカボチャってのが毒々しいよなあ。カボチャって、緑と黄色だろう」
「『トリック・オア・なんとか』って言って、菓子をねだるのが、さもしい感じがしてなあ」
 ハロウィンが日本に紹介され、関連グッズが出回りだしたのはごく最近のこと。一般の意識に浸透したのも、ここ数年のことである。ジャック・オ・ランタンといった可愛らしいキャラクターがあることや、「カボチャをどうにかする」という分かりやすい関わり方があるこのイベントは、若い世代にはすんなり受け入れられるものであったが、なにしろこの商店街、店主達の大半は中年男性、オレンジ色のカボチャ祭りは、彼らにとっていまだ馴染めない、遠い西洋の風習なのであった。
 ハロウィンで今月は展開する、というのは決定事項なのでこのままセール計画は進めるが、いつもほどの気合いが感じられない。
「馴染めないのは、親しみを持てないからですよ!」
 と、唐突に立ち上がって、楽器店の店長が発言した。
「提案します。テーマソングを作りましょう。ハロウィンの期間中、ずっと流す、カボチャソングを!」
 ハロウィンの歌を作る。
 そしてそれを、朝から晩まで、商店街に来た客が自然に鼻歌として歌えるようになるまで。
「鮮魚にも、キノコにも、焼肉にもそれぞれの覚えやすい歌が付いて、四六時中流すことでことで注目を集めました。カボチャにも同じことをしてやるんですよ!」
 なるほど、商店街オリジナルのハロウィンソングとなれば、更に世間の注目を浴びるかもしれない。そんな欲もつい出てしまう。
「しかし、ハロウィンは月末だぞ、そんなに早く作れるのか?」
「曲は私がなんとかします。歌詞は、歌のプロたちに伝手がありますので、頼んでみます。彼らなら、レコーディングから宣伝活動まで、全部任せられますよ」
「ははあ、本格的だな。楽しみになってきた!」
「いい歌を期待しているぞ!!」
 商店街はにわかに盛り上がってきた。

●今回の参加者

 fa1406 麻倉 千尋(15歳・♀・狸)
 fa1628 谷渡 初音(31歳・♀・小鳥)
 fa2837 明石 丹(26歳・♂・狼)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa3569 観月紫苑(31歳・♀・熊)
 fa3861 蓮 圭都(22歳・♀・猫)
 fa4657 天道ミラー(24歳・♂・犬)
 fa4658 ミッシェル(25歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

 商店街のアーケードの至る所に、オレンジ色のカボチャがぶら下がっている。プラスチック製だったり、紙製だったり、本物のカボチャだったり。
 その下では昔ながらの商店が軒を連ね、便乗・便乗・また便乗の、ハロウィンセールを開催中だ。
「♪スープにコロッケ、煮物にグラタン
 ドーナツ クッキー パンケーキ
 目にも鮮やかな 黄金色は
 ぱんぷきんぐの お宝なのさ♪」
 何度も同じ歌を繰り返すカセットデッキの隣で惣菜屋のおばちゃんは、カボチャコロッケとカボチャサラダを店頭に積み上げている。
「♪よい子悪い子? 皆可愛い子
 カボチャの灯りでドアをトントン
 ほら『トリック・オア・トリート!』 素敵な言葉♪」
「♪お菓子をくれなきゃイタズラするよ
 キャンディーにクッキー、ガムとケーキとドーナッツ♪」
「♪いたずらっこ 嬉しそうな笑顔がうつる
 甘いお菓子はいかが? Halloween Cookie!♪」
 おもちゃ屋の前では無料のお面が配られて、店主自ら「お化けとしての正しい脅かし方」なんてレクチャーをしていた。「いいか、こう言えばお菓子が貰えるからな」などと言いながら。

 ハロウィン本番の数日前より、商店街じゅうに楽しい音楽が鳴り響いていた。
「なんとか完成して、よかったね」
 楽器店の協力でレコーディングまで無事に終了、何本ものカセットテープや何枚ものCDが作られ、店という店に配られた。
「学校へ渡すぶんはこれでいいのかな?」
 明石 丹(fa2837)が残ったカセットを指して言う。商店街だけに留まらず、近くの小学校をいくつか回って、『お昼の校内放送』で使って貰うよう、頼みにいくつもりなのだ。
「校内放送使うなら、一緒にこのアナウンスもしてもらうよう、頼んでくれないか?」
 と、天道ミラー(fa4657)は丹に紙片を渡した。そこにはこう書かれてあった。『商店街でハロウィンミニライブ随時開催中』と。
「もちろん、出来たばっかりのハロウィンソングも歌うし、他の曲もどんどんうたうよ!」
 張り切っている麻倉 千尋(fa1406)。早速着込んでいるステージ衣装は、カボチャを連想させるオレンジ色のバルーンスカートだ。
 誰が言い出したというわけではないが、この新しいカボチャソングの普及に、作詞を請け負った自分たちが乗り出している、それでふと観月紫苑(fa3569)は不安になった。
「結果的に私らが出しゃばってるみたいやけど、構わんかったんやろか?」
「そりゃ、もちろんですよ」
 商会長は言った。ただでさえ期間が短い、多くのお客さんの耳に入れて貰うのに、人手が多くて困ることは全くない。
「ほな、この歌に振り付けを付けて、ダンスにしてしまうんも?」
「ああ、思いついたことはどんどんやってくれ!」
 何を遠慮することがあったのだろうか。ミニライブ、料理パフォーマンス、仮装行列、思いついたことは全て実行して貰いたい。なにせ今月のセールは、中年男性が大半の商店主たちがいまいち乗り切れず、くすぶっていたのだから、若いパワーとアイデアが起爆剤になると思えば、諸手を挙げて『出しゃばり』は歓迎されていたのだ。

♪クッキーひとつ モンスターふたり
 キャンディーみっつ モンスターよにん
 お菓子が足りない ナイナイナイト
 ハーロウィーンナイト♪
 愉快な詞の歌を歌う蝙蝠男が、お菓子の入った籠を抱えて商店街を練り歩いている。お化けの格好をしたミッシェル(fa4658)である。
 菓子には新しいカボチャソングの歌詞カードが添えられていた。丹のアイデアである。子ども達がそれをめざとく見つけて、本物みたいな蝙蝠男に怯えながらも、カード付き菓子を受け取っていた。
「さあ、お菓子を受け取ったお友だちは、中央広場へ言って下さいね。ライブをしていますよ。そこにある歌を一緒に歌って、踊って下さいね」
 わぁっと歓声があがり、子ども達は競うように広場へ駆けていった。
 思いがけないお祭りが、そこにあった。

「はーい、ここでクイズです。ここにある大きなカボチャ、これはいったい何kgあるでしょう?」
「カボチャの早食い競争、開催中です! 飛び入り参加、大歓迎!」
「手作りパンプキンパイはこちらで配ってま〜す。順番にお並び下さい〜」
 簡易テントが広げられ、それぞれはゲームコーナーとなり、試食コーナーとなり、好奇心旺盛な客達の足を止めていた。
 蓮 圭都(fa3861)はカボチャの重さ当て。老若男女、誰もが何も気負うことなく簡単に参加出来るゲームを仕切っている。
「さて、何Kgでしょう? 1番・1kg、2番・100kg、3番・1000kg」
「そんなの、1番だよー」
「大正解〜! 正解したお友だちには、お菓子のプレゼントよ」
 こういうクイズは、簡単に正解した方がいいのだ。文月 舵(fa2899)ともども用意した、たっぷりあったはずのパンプキンパイがどんどん減っていく。
「どうぞご試食ください。そして、このパンプキンパイの作り方はこちら。奥様方、どうぞご覧になりません?」
 お菓子を配っている隣のテントでは、谷渡 初音(fa1628)がその菓子の作り方をレクチャーしていた。ハロウィンが終わったあとでも、子供にねだられた母親が作ってやれるように。
 ♪かぼちゃ かぼちゃ ペポかぼちゃ
 お菓子にもなる おかずにもなる
 ランタンにすると ちょっと臭い
 皮も種も全部食べられる♪
「ああ、賑わってますねー」
 そこへ、地元ケーブルテレビのカメラが現れた。『ハロウィンで賑わう商店街』とかいう、夕方のニュース映像を撮りにきたらしい。
「聞きましたよ、商店街で歌も作ったんですってね。魚の歌みたいに、流行るといいですね」
 スタッフ達は早速耳に残ったのか、フンフンと鼻歌を歌いながら、テントとライブステージに交互にカメラを向けていた。
 おそらく、ローカルニュースの一つとして30秒と映らないようなものだろうが、それでも話題になっていることが商店主達は嬉しかった。
「誰がテレビ局に教えたんだろうな?」
「さあ」
 忙しそうに菓子を配る舵は、そっけない返事をした。

「せーの、こんにちはーー!!」
 そしてミニライブがいよいよ始まった。
 錆びた鉄骨を組んだだけのものがステージである。マイクも、コードのその先はポータブル式のスピーカーに繋がっている。
 まるで学校の全校集会みたいな音響装置であるが、弘法筆を選ばず、特大コンサートホールに立っているのと同じ風にミラーは挨拶をした。
「今日は、ハロウィンライブにきてくれて、ありがとー!」
 続けて千尋もマイクを握り、そして挨拶代わりに思いっきり舞台上からカボチャクッキーをばらまいた。
「ハロウィンって、もうみんな知ってるわよね? 日本でいうならお盆に似ている、外国の行事なのよ」
 圭都は簡単に、説明をする。死者を畏れて儀式に繋げるのは洋の東西問わず同じこと。
「だから、こうやってお化けも遊びに来ています、紹介しますね」
 初音がそう言ってステージの上に上げたのは、シーツお化けの紫苑と蝙蝠男のミッシェル。
「すでにお聞きになった方もいてはるでしょうが、今年のハロウィン、商店街でオリジナルソングを作らせてもらいました」
 舵が言うと、所々で「知ってるー」と声が上がった。学校の校内放送でも流して貰えたのだろうか。
「配ったお菓子と一緒に、こんなカードが付いていたのに気付いたかな? ここに歌詞が書いてるよ。持っている人は見てみてね」
 丹特製の歌詞カードは、無事に大半の客達に行き渡っているようだ。
「それでは、頑張って歌います。曲名は『カボチャのジャック』」

♪野菜の王様 パンプキン
 栄養満点 パンプキン
 意外と長持ち パンプキン

 お菓子にもなる おかずにもなる
 皮も種も 食べられる
 スープにコロッケ 煮物にグラタン
 ドーナツ クッキー パンケーキ
 とろとろ熱々 ポタージュスープ
 カリカリほかほか まん丸コロッケ
 目にも鮮やかな 黄金色
 黄色い美味しい ご飯の横で
 パンプキンが にやりと笑う

♪黄色い王冠 頭にのせて
 さぁさ王様 お出ましだ
 カボチャのジャック お出ましだ。

 トリック・オア・トリート トリック・オア・トリート!
 お菓子か それともイタズラか
 キャンディー クッキー ケーキにドーナツ
 両手いっぱいにお菓子を抱え
 ジャックは夜を駆けていく
 暗闇で光る目、暗闇で笑う口
 ジャック・オ・ランタン カボチャのお化け
 奴の正体 ママが作った今夜のおかず 
 三角の目が ニコニコ笑う

♪とがった帽子の 魔女になろう
 シーツ被って 幽霊にドロン
 カボチャのジャック 先頭にして

 お菓子を食べよう イタズラもしよう
 顔に落書き くすぐりっこ
 何でもいいさ みんなで楽しめ!
 カボチャのジャックはいたずらっこ
 早くおかえり あたたかい我が家へ
 ほっこりカボチャのスープ 丸いスプーン月の中
 おかえりなさい いたずらっこ
 今夜は楽しい ハロウィン
 今夜のごちそう パンプキン

♪野菜の王様 パンプキン
 栄養満点 パンプキン
 意外と長持ち パンプキン

 甘いお菓子はいかが? Halloween Cookie!
 甘いお菓子はいかが? Halloween Cookie!

 おかえりなさい カボチャのジャック
 今夜は楽しい ハロウィン
 今夜のごちそう パンプキン