Silent Club南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
えりあす
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
なし
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/15〜01/17
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●本文
「忙しいから、後はお願いね」
仕事を早々に切り上げて、プロデューサーのジェニファーは会社を後にする。
彼女が向かった先は『Valliate(ヴァリエート)』という名のクラブ。
ここで、ジェニファーの主催するパーティーが行われるのだ。
このパーティーは開催前から大きな注目を集めている。
今回開催されるのは『Break−Style』というR&B専門のパーティー。これだけなら他のパーティーと何も変わらないのだが、このパーティーは入場者全員にワイヤレス・ヘッドホンが貸し出され、ヘッドホン越しにDJプレイを聴いて踊るというスタイルで行われるという。
ヘッドホンならどれだけ音量を上げてもOK。つまり、騒音問題が一切無い。この斬新なスタイルのパーティーは、クラバーから業界関係者まで幅広く注目されている。
さぁ、この新しいスタイルのパーティーに足を踏み入れてみないか‥‥?
<注意点等>
●21:00からの営業ですので、18歳未満の方は入場できません。
●料金は2000円です(1ドリンク付き)。
●併設されているバーには各種カクテル、ビール、ミネラルウォーター、ソフトドリンク(全て1ドリンク500円)があります。
●いかなる理由でも獣化禁止。
●もちろん、ヘッドホンの持ち帰り禁止。
●リプレイ本文
●Break−Style(R&B)
<日時>
○月×日
・OPEN:21:00
・START:21:15〜
<場所>
・Club『Valliate』
<料金>
・Door:2、000(1D)
●バー
「郁さんは普段、こういう場所に遊びに来たりするのかな?」
バーのカウンターで会話する観月紗綾(fa1108)と蓮城 郁(fa0910)。
「いいえ‥‥私のいる世界とはまた別の所ですから‥‥新しい世界を知る事ができ、とても楽しい時間です。勿論、紗綾さんと一緒に過ごせる事の方が大切ですよ」
郁はバーテンダーに何やら注文をすると、紗綾に一杯のカクテルを渡す。
「‥‥お勧めのカクテル?」
「えぇ、私からのプレゼントです」
「何て言うカクテル? 名前わからないと憶えられないじゃないか」
「まぁ、そう言わずにどうぞ」
疑問に思いつつも、琥珀色の綺麗な色に誘われてそのカクテルを口に含む紗綾。
「口当たりはいいけど‥‥で、名前は?」
「ナイトキャップとしては最高のお酒です」
郁の口から出たカクテルの名前は‥‥
──BETWEEN THE SHEETS(ベッドに入って)
「‥‥‥‥」
一瞬、我が耳を疑った紗綾は、無言で拳を握り‥‥
「冗談ですって、裏拳はやめて下さい!」
紗綾の裏拳が郁に炸裂。
「の、飲まなきゃ良かった‥‥まぁ、一緒に踊ってくれたら許す♪」
「すみません。では、ご一緒させていただきますよ。このような音楽はあまり慣れないと思っていましたが、DJの盛り上げ方が上手で引き込まれてしまいます」
郁は紗綾へ手を差し伸べる。二人はヘッドホンを装着し、クラウドの中へと混ざっていった。
「嗚呼ッ‥‥いいねぇ。あんな感じで女性をお誘い出来たら、何てカッコイイんだろう!」
紗綾と郁を見守っていた竜之介(fa1136)が呟く。
「素敵なお二方でしたわね」
一緒に談話していた久遠(fa1683)も二人に視線を送る。
「久遠さんは女形をされているそうで‥‥いやぁ、素晴らしい! そうそう、是非久遠さんにお似合いのオリジナル・カクテルを」
パチン☆ と指を鳴らし、バーテンダーに注文する竜之介。
「嬉しいわ」
カクテル・グラスを受け取り、乾杯する二人。
「久遠さんはクラブとかはよく来たりするのかな?」
「いえ、今回は仕事のオフで海外に遊びに来たの」
「へぇ‥‥仕事している久遠さんも見てみたいかな」
久遠は黒のスーツに眼鏡、髪はアップにしており、これだけ見れば女形をやっている時の想像は難しい。
カウンターの隅で一人カクテルを飲んでいる女性がいた。
水野 ゆうこ(fa1534)だ。
赤いカクテルドレスが印象的で、その風貌からナンパやダンスの誘いが絶えなかった。
彼女を誘うしつこい男の頭に持っていたカクテルを浴びせると、竜之介と久遠のいる席へ移動する。
「よかったら、一緒にお話できないかしら?」
「おぉ! ゆうこさん! いつもお世話に‥‥ゴホゴホ‥‥いえ、是非どうぞ!」
酒のせいか‥‥顔が赤い竜之介であった。
会話はそれぞれの職業等についての話題が盛り上がった。久遠もゆうこも普段、なかなか話す機会の無い職業である。ゆうこの職業については‥‥こういう場所なので深く話す事は無かったけども。
ジーン(fa1137)はバーの隅で、ヘッドホンを装着してDJのプレイするナンバーに耳を傾けていた。
自分の好きなナンバーがプレイされると、無意識に口ずさむ。
「好きな曲で踊ったら楽しいんだろうけど‥‥踊れるかどうかわからんし」
そう思いつつも、リズムを刻んでしまう。
ジーンはリズムに合わせながらどこかへと向かった。
●VIPルーム
「久しぶりだな‥‥以前は世話になった」
ジーンが向かった先はVIPルームだった。部屋のは一人、真剣な眼差しでフロアを眺める女性がいる。このパーティーの主催者、ジェニファーだった。
「お久しぶり」
無表情で挨拶を交わすジェニファー。静寂の中で二人はフロアを眺める。
「不思議な空間だな‥‥」
ジーンが沈黙を破った。
ここはクラブだ。普通なら大音量で音楽が流れる。しかし、このクラブには音楽が存在しない。音楽が無い筈なのに、ダンスフロアでは音楽のリズムに合わせて踊っているように見える。いや、本当に踊っているのだ‥‥音楽をヘッドホンで聴きながら。
そう、ここは参加者にワイヤレス・ヘッドホンが貸し出され、ヘッドホンでDJプレイを聴いて踊るというスタイルのパーティーなのだ。
「面白いでしょ? ここは、静寂と音が共存する空間なのよ」
彼女はダンスフロアをそう表現した。
「成る程‥‥」
ジーンがソファーに座ると同時にVIPルームの扉が開いた。入ってきたのはグリード(fa0757)。
彼らはまだまだ知名度が低いとは言え、芸能界で活動する以上、ここに居てもおかしくない人物達である。
「主催者の‥‥ジェニファーとか言ったか?」
「そうよ」
グリードはカクテルをジェニファーに渡し、話のきっかけを作ろうとする。
何て話しづらい女だ‥‥グリードは思った。
表情は変えず、受け取ったカクテルを一口飲んでテーブルに置くと、彼女の視線はフロアに向けられる。
無視されるのもプライドが許さないので、グリードはヘッドホンのスイッチを入れ、漏れてくるリズムに体を揺らしながらジェニファーに話しかけた。
「このようなパーティーを主催するんだから、R&Bのダンスというものは知っているのだろう? 折角だから教えてくれ」
「ダンスなんかに興味は無いわ」
「じゃぁ、何でこんなパーティーをやっているんだ!?」
「既存に無いエンターテイメントの想像と演出をする為」
即答するジェニファー。コイツとは馬が合わないと感じたグリードは部屋を出た。
入れ替わりでラルス(fa2627)が入室する。
「初めまして、ジェニファーさん。僕は俳優のラルスと言います。まだ駆け出しですが」
「初めまして」
「『Words』のドラマにも一度、参加してみたいと思っていたところです。あれは随分と斬新な脚本ですね」
「余計な修飾が無いから、それを役者は想像力で補おうとする。そこに、斬新なストーリーが生まれ、物語に奥深さを与えると考えているわ」
「成る程‥‥それは、手ごたえのありそうな仕事ですね」
挨拶を交わし、この機会に自分を売り込むラルス。
「やる気のある俳優は歓迎するわ」
そう言うと、ジェニファーはラルスとジーンにフロアを見るようにと指で合図する。
「フロアで踊っている人を見て。彼らを見ていると、本当に楽しそうで、私まで勝手に体が動きそうになる」
「そうですね。一緒に踊りたくなってしまいます」
ラルスもステップを踏みながら頷く。
「でも、彼らはここへ踊りに来ている一般人。素人。技術が無い人でも、心を動かす『何か』は持っているのよ。映像でも同じ。有名で演技力があっても、この『何か』が無い役者なんて不要。無名でも演技力が無くても、人の心を揺さぶる『何か』を持つ人間を私は評価する」
ジェニファーの言葉にジーンは思い当たる節があった。以前の仕事の時‥‥芝居があまり得意でない自分は、事前に演技指導を受け、練習を繰り返した。その様子を見ていた彼女の表情に浮かんだ微笑‥‥
「そうか‥‥何となく、その『何か』がわかった気がする」
「その『何か』、あなた達は将来有名になったとしても忘れないでね」
ジェニファーは普段見せる事の無い笑顔で言った。