Shine like a star南北アメリカ

種類 ショート
担当 えりあす
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/27〜01/31

●本文

 初めまして‥‥かな?
 私はある制作会社に勤めている番組プロデューサーのキース・デ・ヴィットだ。
 この度、チーフのジェニファーからドラマ制作の指揮を任された。

 今回のドラマは、少年時代に追い求めていた夢が叶わなかった男が仕事で失敗。会社をクビになり、路頭に彷徨っている時に少年時代の夢を思い出して、再び夢に向かって頑張っていくというストーリー。
 構成は少年時代と大人時代の2つに別れ、それぞれ主役を演じる人物が必要となる。
 詳しくは資料に目を通して欲しい。
 それでは、宜しく頼む。

●番組名:Shine like a star
■第1部・少年時代
<配役>
・主人公(少女でも可。外見年齢18歳以下が望ましい)
・家族
・その他

<脚本概要>
 少年の夢は作家になる事。時間があれば小説を書いたり、作品を投稿したりしていた。もっと知識を増やしたいと大学進学を親に相談する。しかし、家は貧しい農家で学費の工面は出来なかった。夢は捨て切れなかったが、家の事もあり諦めざるを得なかった。少年は高校卒業後、地元の小さな会社に勤める事になる。

■第2部・大人時代
<配役>
・主人公(外見年齢18歳以上。当然ながら第1部の主人公と同じ性別)
・会社の上司
・同僚
・その他

<脚本概要>
 会社に勤める主人公だが、上司と仲が悪い。嫌々仕事をする主人公だが、大きなミスをしてしまう。そして、会社をクビになる。無気力な主人公だが、部屋を片付けている時、少年時代に書いた小説を見つける。その時、少年の時に思い描いた夢を思い出す。そして、今からでも遅くない、捨てきれなかった夢を追いかけ、作家になろうと努力していく。

●今回の参加者

 fa1689 白井 木槿(18歳・♀・狸)
 fa1828 鐘下べる(20歳・♀・小鳥)
 fa2215 和山 繁人(19歳・♂・ハムスター)
 fa2313 サラ・メロディ(19歳・♀・一角獣)
 fa2440 ヒロカ(22歳・♀・パンダ)
 fa2443 ステラ・ディスティニー(24歳・♀・パンダ)
 fa2576 ジャン・ブラック(36歳・♂・蝙蝠)
 fa2825 リーベ・レンジ(39歳・♂・ハムスター)

●リプレイ本文

●Shine like a star 第一部
<出演>
・アナスタシア・ブライヒ(主人公):鐘下べる(fa1828)
・トーマス・アレクセイ(義父):ジャン・ブラック(fa2576)
・ユリアス・アレクセイ(義兄):和山 繁人(fa2215)
・ハンナ=ベレント(親友):白井 木槿(fa1689)

●夢と現実の落差
 ある田舎の小さな高校。
 この学校の図書室でアナスタシア・ブライヒはいつもの様に本を読んでいた。
 新刊の購入予算はあまり無いので、蔵書は少なく、古い本ばかりである。
 それでも、アナスタシアは知識を得ようと、いろいろな本に目を通していた。
 彼女の夢は作家になる事。
 その為の努力は惜しまない。
 小説を書き、様々な賞に応募してスキルを磨いていた。
「アナ‥‥やっぱり、今日も来ていた」
 図書室の扉をゆっくり開き、親友のハンナ=ベレントが入ってくる。
 彼女の手には小説の原稿があった。
「この小説、本当に面白かったよ。物語の光景が目に浮かんで来るようで‥‥だから、アナが書く小説は大好きよ」
 原稿はアナスタシアが書いたものだった。
「また何かを書いたら一番に私に読ませてね。凄く凄く楽しみにしてるんだから」
 ハンナは心から楽しみにしているといった表情で言うと、アナスタシアは『うん』と頷く。
「ところで、アナ‥‥進学はどうするの‥‥?」
 原稿をテーブルに置くと、一転して難しい表情でハンナが尋ねる。
「今日‥‥お父さんに相談してみるです‥‥」
「そう‥‥一緒に大学行けたらいいね‥‥」
 アナスタシアは暗い表情で答える。
 二人は後片付けをすると、無言で図書室を出た。

  *

 その日の夜。
 アナスタシアは育ての父であるトーマス・アレクセイに大学進学について相談した。
 将来、作家になる為にどうしても進学して知識を習得したい。
 しかし、返ってきた答えはあまりにも現実的なものだった。
「そんな金があるわけないだろ! 高校に行かせるのもやっとだったのに! 卒業したらすぐに働け!」
 酒を飲んでいたトーマスは厳しくアナスタシアに言いつける。
 トーマスは農業従事者であり、家はそんなに裕福では無い。
 その上、トーマスは妻を亡くしたショックからアルコール依存症になっており、酒代も多かった。
「父さん、また飲んでるね。今飲み過ぎると、明日の分が無くなるから程々にしないと」
 アナスタシアの義兄であるユリアス・アレクセイが、酒を飲み過ぎているトーマスに釘を刺す。
 体に悪い、では通用しない事を知っているし、本当に無くなったら忠告したじゃないか、と言える。
 成績が優秀なユリアスらしい言い方であった。
 トーマスは舌打ちをすると、最後の一杯を飲み干し、自分の部屋に行った。
「僕も大学には行きたいけどね。今は、家の生活を守るだけで精一杯だから」
 ユリアスも本当は大学へ進学する事を夢見ていた。
 しかし、家が裕福では無く、トーマスが酒に溺れる理由もわかるので、自ら進んで農業の手伝いをして家計を支えていた。
「アナが将来、何になりたいかっていうのはわかるよ。でもね、大学に行けないという事と、夢が叶えられないっていうのは別。物事を始めるのに遅いなんて事は無いんだ。必要なのは『気持ち』だよ」
 ユリアスはアナスタシアに優しく言った。

  *

 次の日。
 アナスタシアはやはり図書室にいた。
「アナ‥‥どうだった?」
 ハンナが恐る恐る尋ねると、アナスタシアは寂しそうな表情で首を横に振った。
「そっか‥‥駄目だったんだ‥‥」
 アナスタシアの答えを聞き、ハンナは落胆する。
「私じゃなくて‥‥アナが大学に行けたら良かったのに‥‥。その方が、ずっとずっと‥‥私、嬉しいのに」
 ハンナは既に大学へ進学する事が決まっていた。
 アナスタシアが家庭の事情で夢を諦めざるを得ない事を知ると、ハンナは気まずい気分になった。
 一緒に進学したかったのに、自分だけが大学にいっても‥‥
 苦しんでいる親友を助けたいのに、何も出来ない自分に悲しみと苛立ちを感じるハンナ。
 そして、アナスタシアと顔を合わせるのも辛くなってしまい‥‥
 翌日からハンナは図書室に現れる事は無かった。


●Shine like a star 第二部
<出演>
・アナスタシア・ブライヒ(主人公):ステラ・ディスティニー(fa2443)
・ヒロカ・クドウ(幼馴染):ヒロカ(fa2440)
・メリッサ・スティール(同僚):サラ・メロディ(fa2313)
・レンズ(上司):リーベ・レンジ(fa2825)

●星のように輝いて
 高校卒業後、アナスタシア・ブライヒは地元の小さな会社に就職した。
 兄の言葉‥‥『大学に行けないという事と、夢が叶えられないっていうのは別』‥‥を信じ、作家になる為の努力もしたが‥‥
 あまりにも仕事が忙しく、とても一緒に出来るものではなかった。
 一生懸命仕事はしているが、上司とも仲が悪く、ストレスが溜まる。
 家に帰っても、疲れてすぐに寝てしまう毎日‥‥
 いつしか‥‥作家になるという夢はアナスタシアも心から離れて行った‥‥

 そして、ある日。
 アナスタシアは寝不足と過労から重大なミスを犯してしまう。
 重要書類の紛失。
 中には顧客データ等、個人情報も含まれており、極めて大きな問題となった。
「チミ〜、本当に大変な事をしてくれたね? 社会の常識を知っていたら、謝ってすむ問題じゃない事は理解できるね?」
 上司であるレンズに呼び出されたアナスタシアは、厳しく叱られていた。
「すみません‥‥すみません‥‥」
 謝罪の言葉しか出てこない。
 レンズの陰険な言い方に、同僚のメリッサ・スティールや他の社員からも苦情が出るが‥‥
「そこまで酷い扱いにしなくてもよろしいのでは‥‥」
「チミ〜? チミも一緒に辞表を出すかね? いやぁ、私は優しいね。懲戒じゃなくて、依頼退職の扱いにしてあげたんだから」
 見下したような陰湿さで言うレンズに、メリッサは黙って引き下がるしかなかった。
 次の日。
 アナスタシアは辞表を提出した。

  *

「大変だったわねぇ‥‥まぁ、あんな事態になっちゃ仕方ないけど」
 メリッサはアナスタシアを行き付けのバーに誘った。
 事実上のクビとなり、アナスタシアは深い悲しみと、酷い疲れでぐったりしている。
 そんな状態のアナスタシアをメリッサが慰めた。
「仕事にも相性があるからねぇ‥‥この仕事、向いていなかったんじゃない? まぁ、きっとどこかにあなたに向いてる仕事ってのがあるから、それに辿り着ければいいわねぇ。とりあえず、やりたい事あるんならそれやってみたら?」
「やりたい事‥‥」
 メリッサの言葉に、何か自分が以前に追い求めていたものを感じた。
 今は酒を飲んでいる為、それが何かはわからないけれど‥‥

  *

 会社を辞め、アナスタシアは毎日自分の部屋で無気力に過ごしていた。
 何もやる気が起こらない‥‥
 一体、自分が何をしたいのかわからない‥‥
 以前、何か追い求めているものがあったような気がするけど‥‥
 アナスタシアはベッドに寝転がった。
「アナー! いるのー?」
 久しぶりに聞く幼馴染の声が聞こえた。
 窓から外を覗くと、そこには最近アクション俳優として活動しているヒロカ・クドウが手を振っていた。
 彼女はオフになると、よく家の手伝いをしにきてくれる。
 ヒロカを部屋に招くと、久しぶりの再会に話が弾む。
「え!? 会社辞めたの!?」
 ヒロカはアナスタシアが会社を辞めた事を知って驚く。
 上司と仲が悪かった事、重大なミスをした事‥‥言いたく無い事だけど、幼馴染なら話せる。
「挫折‥‥かぁ」
 ヒロカは何か心当たりがあるかのように呟く。
「あたしも何度も挫折しそうになったけど、アナに笑顔で励ましてもらったから今まで頑張ってこれたんだよ!」
 ヒロカは昔、酔っ払ったアナスタシアの義父の暴走を止めた事があり、それを見て『絶対アクション俳優になれるよ!』と笑顔でアナスタシアに励まされたことがあった。その励ましがあったからこそ、夢を目指して頑張ってこれた。
 そして、その手で夢を掴んだのだ。
「夢が叶った訳だけど、これからも、もっと違う色々な夢が追えて楽しいよっ」
 本当に嬉しそうな表情で語るヒロカ。
「そして、次は‥‥あたしがアナを励ます番だね。夢は‥‥絶対に手に入れる事が出来るから!」
 ヒロカはアナスタシアの手を握り締めた。
 夢‥‥
 そうだ、私は作家になりたかったんだ‥‥
 昔、義兄に聞いた言葉を思い出す‥‥

『物事を始めるのに遅いなんて事は無いんだ。必要なのは『気持ち』だよ』

 そうだ、今からでも遅くは無い。
 アナスタシアは机の引き出しから書きかけの原稿を取り出した。
 これが私の夢‥‥
 無心で執筆に取り掛かるアナスタシア。
 彼女は‥‥その時、人生で一番輝いていた‥‥
 ‥‥‥‥‥‥
 ‥‥‥‥
 ‥‥

 ――ザァァァァ

●編成室
「‥‥」
 編成室で一人、チーフ・プロデューサーのジェニファーが完成したVTRをチェックしながら苦い顔をしていた。
「‥‥主役なんだから、もっと自信を持った演技をしてくれないと」
 彼女は立ち上がると無言で部屋から出て行く。
 ジェニファー的には満足出来る作品にはならなかったようだ。
 しかし、その後。キースやスタッフの議論を経て、ドラマの放映はされる事になった‥‥