Backyard Hardcore南北アメリカ

種類 ショート
担当 えりあす
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 04/20〜04/24

●本文

 バックヤード・レスリング‥‥。
 元は熱狂的なプロレス・ファンが裏庭で勝手に始めた『プロレスごっこ』である。
 しかし、たかが『プロレスごっこ』といっても、今やその規模は大きい。
 プライベート団体は数知れず、大きな団体になればケーブルTVの視聴率も高く、ビデオの売り上げも大きいのだ。
 これだけ大きくなれば、社会問題に発展するのは当然の事である。
 何故なら、子供達がマットの無い地面に大技を繰り出し、危険な凶器で相手を殴り‥‥
 そして、プライベート団体が増えてくれば、他の団体よりも目立ち、他の団体よりも凄いというのを見せ付ける為に、内容がエスカレートしていく。
 これをPTAが放っておく訳が無く、非難された。
 だが、こうした素人達の『プロレスごっこ』の中には、『プロ』には無い独特の面白さがあり、人気は衰える事は無かったのだ。

「オレ達こそがNo.1ハードコアだ!」

 今、ここに新たなプライベート団体が生まれた。
 より目立つ為に、より派手に、より過激に、そして、プロレスを愛する自身の心を満足させる為に‥‥
 彼らは戦うのだ。

●『Backyard Hardcore』出演者募集
 バックヤード・レスリングに生きる青少年達を描くドラマです。
 多少、危険な行為が必要になる事がありますが、全て寸止めや映像処理を施しますので怪我の心配は全くありません。
 マネージャーも必要ですので、女性も歓迎します。
 尚、職業がプロレスラー・格闘家、それらに類ずる者、過去にプロとして試合に出場した経験のある者は出演出来ません(但し、技の指導等、裏方として参加は可能)。

●今回の参加者

 fa0231 霧村鑑(34歳・♂・猫)
 fa1458 谷和原充(47歳・♂・パンダ)
 fa2431 高白百合(17歳・♀・鷹)
 fa2446 カイン・フォルネウス(25歳・♂・蝙蝠)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa3098 天道・獅子雄(18歳・♂・獅子)

●リプレイ本文

●撮影現場
「俺は‥‥俺にしか出来ない仕事をやるだけだ‥‥」
 カメラマンである鶸・檜皮(fa2614)は、役者達の迫真の演技を撮り続けた。
 現在のシーンは霧村鑑(fa0231)が放つボディースラムを受けて、カイン・フォルネウス(fa2446)が苦しんでいる場面。
 その一つ一つの挙動をカメラに収めていく。
『技』については怪我の危険もある為、当然『演技』である。
 だが、見る者に『演技』と思われないように、撮影位置を調整したりして、檜皮はより迫力のある映像を撮る事を心掛けた。
 役者達もプロレスについては素人だが、演じるのも素人である。
 全体的にまったりとした感じはあるが、それもバックヤード・レスリングの味だ。
 その味を活かし、役者の技量とカメラマンの努力が『演技』をプロ顔負けの『技』へと昇華させた。

●Backyard Hardcore

<注意>
 このドラマはフィクションであり、登場する人物・団体等は架空の存在です。
 また、この番組には暴力的表現が含まれますのでご注意下さい。
 危険ですので、この番組で見た行為は絶対にマネをしないでください。

<キャスト>
 カイン(ベビーフェイス):カイン・フォルネウス(fa2446)
 ミラー・オブ・ミスト(ヒール):霧村鑑(fa0231)
 ユリ(マネージャー):高白百合(fa2431)
 ヤワラ(高校教師):谷和原充(fa1458)
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 撮影:鶸・檜皮(fa2614)


●裏庭で戦うレスラー達
 バックヤード・レスリング。
 元は熱狂的なプロレス・ファンが裏庭で勝手に始めた『プロレスごっこ』である。
 人気プロレスラーへの憧れ、そして、プロレスを愛する心が、彼らをバックヤード・レスリングに駆り立てるのだ。
 団体設立は難しいものでは無い。
 資金もそんなにいらない。
 広い裏庭があれば問題は解決だ。
 後は自分達の存在を知らしめる事。
 インターネットが普及している今、団体のサイトを作り、試合の様子をサーバーにアップすれば、世界中の人間がその試合を見る事ができる。
 人気度はサイトのアクセス数で一目瞭然。
 他の団体より目立つ為に、この団体は『より面白い』試合をしようと努力していた。
 本日がその試合を収録する日。
 ユリの家の裏庭に次々と関係者が集まってくる‥‥

●準備
「ちゃんと受け身の練習しないと、大怪我したらどうするのですか‥‥」
 ユリが新人のカインにトレーニングをするように説得する。
「これでも、中学の時はボクシング部だったから打たれ強いんだぜ!」
「ボクシングとレスリングは全然違うんですよぉ‥‥」
 だが、気の弱いユリは興奮気味のカインを説得する事は出来なかった。
 このプライベート団体はイスやテーブル、果ては有刺鉄線バットや蛍光灯等、凶悪極まりないアイテムを使う『ハードコア・マッチ』を展開する団体では無い。
 注目を浴びるには『ハードコア・マッチ』が一番なのだが、そうでなければどうやって目立つのか。
 それは、完成度の高さである。
 どれだけ、ストーリーにこだわり、プロの技に近づき、素晴らしい試合展開をして見る者を魅了するか。
 彼らはそこにこだわっていた。
 しかし、新人のカインは目立つ事ばかり考え、重要な部分を蔑ろにしていた。
 リングやマットの無い地面で大技を受けたらどうなるか‥‥。
 仕掛ける方もギリギリで止め、受ける側もしっかりと受け身を取らなければ危険だし、完成度を高めるにはそこをしっかりと練習しなければならないのだ。

●試合開始
 仲間も集まり、撮影準備も整った。
 準備はOK。
 彼らの試合を見ようと酔狂な連中も集まってきた。
 徐々にテンションも上がってくる。
『さぁ、まずはカイン選手の入場だぁー!』
「俺に勝てるヤツは誰でもかかって来い!」
 カインが登場すると同時に白い煙が吹き上がる。
 これは、ユリのパパの車にあった発炎筒だ。
 お金のない彼らは、アイディアで演出を工夫する。
 カインは自前の派手なマントを身に付け、試合会場の中に進む。
 そして、マントを勢い良く脱ぎ捨てると、周囲から歓声が沸き上がる。
『そして! 次はあの女装レスラー、ミラー・オブ・ミスト選手の入場っ! みんな、見た目に騙されるなよっ!』
 続いてミラー・オブ・ミストが自分の自転車に乗って乱入。
 見た目は少女だが、中身は正真正銘の男である。
 自転車を隅に置くと、マイクを奪い取り、カインへ近づいていく。
「最強のクロス・ドレッサー、ミラー・オブ・ミストとは俺の事だ! 2つの性をクロスオーバーするこの俺に勝てるかな!?」
 クロス・ドレッサーとは、異性の服装をする事で精神的安堵を得る事が出来る異性装者を指し、トランス・ヴェスタイトとも呼ばれる。
 トランス・ヴェスタイトは外部に付けられた名称という事で、異性装者達が作り出したのがクロス・ドレッサーという呼び名だ。
 ミラー・オブ・ミストは気弱な性格で、その少女のような顔がコンプレックスだったが、バックヤード・レスリングに打ち込む事で自信を付けた。
 コンプレックスだったその顔も、女装する事でレスラーとしてのアイデンティティーを確立し、彼はこの周辺の団体では有名になった。
「異性装をしているという事で我々は冷たい視線を受け続けてきた。しかし、誰にでもそのような願望は心の中に少なからずある筈なのだ。我々は願望を心の中に閉じ込めてしまったつまらない人間共の批判を振り払い、異性装をしようと思っても勇気の無い者達の為に手本を示さなければならない。そして、我々クロス・ドレッサーが世間へ認知される為に戦い、いずれは知事選へ出馬し‥‥」
 アメリカン・プロレスらしく、ミラー・オブ・ミストのマイク・パフォーマンスは10分以上にも及んだ。
「そして、州知事になったら、週1回異性装をする日を制定する!」
「ちょっと、待てぃ!」
 そこへ、カインが割り込む。
「そんな事はこの俺が許さねぇ! 勝負だ!」
 どうやら、カインがミラー・オブ・ミストの暴走を止めるというストーリ−のようだ。
「そんなふざけた法律なっていらないわよ! さっさとやっちゃいなさい!」
 カインのマネージャー役はユリが担当。
 彼女は熱烈なプロレス・ファンであり、試合が始まるといつもの気弱な性格が反転し、興奮状態となる。
 しかし、ユリはプロレス・マネージャーというものを勘違いしているらしく、何故かセーラー服を着て、やかんを手にしている。
 どうやら、ジャパンではこれが正しいマネージャーの姿らしい。
 激しく場違いなのだが、この姿が一部のコアなファンの目に止まり、ネットで大きな話題になるのは後日談である。
『さぁ、試合開始だ!』
 ゴングは無いので、適当な金属を鳴らす(丁度やかんがあるので、それを使う)。
 まずは、カインがいきなりミラー・オブ・ミスト目掛けてドロップ・キック。
 まともに受けたミラー・オブ・ミストは自転車の所まで跳ね飛ばされる。
 その後、カインの一方的な展開が続いたが、隙を見てミラー・オブ・ミストが自転車から傘を取り出す。
 そして、その傘をカインへ叩き付ける!
「ぐぉ!」
 カインは悲鳴を上げる。
 そして、身悶えるカインを掴まえ、ボディースラム!
 うまく、受け身が取れなかったカインはそのままダウンしてしまう。
 その不甲斐無い様子にオーディエンスはカインに向かって大ブーイング。
「まだまだだな」
 ミラー・オブ・ミストは自転車に乗ると、倒れているカイン目掛けて全速力で突っ込む。
『出たぁ! 必殺技のバンザイ・アタックだぁ!』
 だが、突然、ミラー・オブ・ミストの顔の前にやかんが現れた。
「げふぉ!」
 それはユリが手にしていたやかんだった。
 顔面を強打したミラー・オブ・ミストはダウン。
「ちょっと! 何やってるのよ! ふぬけたファイトをするくらいなら半殺し全殺し上等です!」
 倒れているカインの顔にビシビシと平手打ち。
 そして、やかんに入っている液体をカインの口に含ませると‥‥
「ごふぉ!」
 何故かカインは息を吹き返した。
 後のインタビューでユリにやかんの中身を聞いたところ『魔法の水です』という答えだったが、中身は何か不明だ。
「ちくしょう‥‥やったな‥‥」
 顔を押さえながらミラー・オブ・ミストが立ち上がる。
 カインもフラフラと立ち上がり、ファイト続行かと思われたが‥‥
「ちょっと待て。凶器を振り回すのはスポーツでもショーでも何でも無い」
 突如、高校教師のヤワラが乱入してきた。
 ヤワラは二人を止めようとしていたが、オーディエンスはこれも演出と思い込んで煽り立てる。
「君達も何故止めないんだ。こんな危ない事をして‥‥」
 煽るオーディエンスにブツブツと小言を言いながら二人を見るヤワラ。
「ちゃんとしたルールに乗っ取ったスポーツで、州大会を目指そうじゃないか」
 ヤワラは二人を説得しようとするが、彼らはやめなかった。
 そして、より良い試合をして観客を楽しませようとする姿を見て、次第にヤワラの心境に変化が現れる。
 怪我をするのは問題だが、彼らを影ながら応援していこうとヤワラは思った。
 二人の肩を抱き、そっと『頑張れ』と囁く。
 高校教師とのやりとりも撮影され、この映像は今までのバックヤード・レスリングには無い『青春もの』として、ウェブ上で大きな反響を呼ぶ事になった。