演歌新時代アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
えりあす
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/08〜12/14
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●本文
「なかなかインパクトのあるヤツはいねぇな‥‥」
某メジャーレコード会社傘下の新興演歌レーベル事務所。
専務は毎日送られてくるデモテープを聴き、新たな才能の発掘に余念がなかった。
しかし、歌は上手でも、それ以上の個性や心を揺さぶる魂を感じるものは少ない。
「演歌は日本の心だ、魂だ! それを表現出来るヤツが欲しいんだよ」
専務は聴き終えたデモテープを投げ捨てた。
「しゃあねぇ‥‥こいつでも聴いてみるか‥‥」
そして、最後に残ったデモテープを手に取る。デモテープは、不思議なイラストが書かれてあったり、謎のシールが張られたりしており、只ならぬ雰囲気を感じさせるものだった。このようなデモテープは大抵、女子高生等が遊びで送ってくるものである。そんなヤツに演歌が唄えるのか‥‥だが、そのテープを聴いた瞬間、専務は今まで聴いたものとは違う何かを感じた。
「こ、これだ! 俺が求めていたのはこれだ!」
専務は書類を確認すると、すぐにマネージャーを呼び出した。
「おい! こいつを呼べ! こいつは必ず売れるぞ!」
*
数週間後、専務はデモテープの声の持ち主と面談を行った。
「‥‥芸人になった方が売れるんじゃねぇか?」
これが最初の感想であった。
「あたし、演歌をもっと日本の若い人に広げる為、ぱるらむ星からやって来た『るみるみ☆くりぃむ』で〜す♪」
デモテープを送ってきたのは、ヘソ出しルックに短い着物を羽織り、怪しい宇宙人の被り物という、極めてイロモノな女性だった。
「あたし〜! みんなに演歌を好きになってもらう為にがんばるの〜!」
「‥‥まぁ、歌唱力は本物だからいいか」
社内では賛否両論の嵐だったが、結局その声質と個性を買われてCDデビューする事となった。
この新鋭演歌歌手『るみるみ☆くりぃむ』は、デビュー前にも関わらず、この演歌レーベル公式サイトでアーティストページが公開されると同時に話題沸騰。ポータルサイトとのコラボレーション・ブログ企画も決定し、エントリーが投稿されると同時に、物凄い勢いでコメントとトラックバックが送られてくる。デビュー前から大注目である。
*
「何! プロデューサーが逃げただと!」
数日後、専務は1本の電話に激怒した。
どうやら、デビューCDを担当する筈のプロデューサーが逃げたらしい。恐らく『るみるみ☆くりぃむ』の個性についていけなかったのだろう。
「おい! 時間がないぞ! ここで落としたら確実に数字に響く! すぐに外部に発注を出せ!」
専務はマネージャーに指示を出した。そして、公式サイトの募集欄に『プロデューサー募集』の要項が載ったのは、それから暫くしてからの事であった。
●プロデューサー他募集
新人アーティストのデビューCDを制作するに当たり、プロデューサー、作詞・作曲家、コーディネーター、PV撮影のディレクター、広報・Webデザイナー等を幅広く募集しております。
オンライン応募はこちらのフォームからどうぞ→http://○○○.co.jp/rumirumi/contact.cgi
●リプレイ本文
●CD制作
「こんにちは〜! るみるみだよ〜☆」
「あら、こんにちは。わたくしは今回コーディネーターとして参加させて頂く巴星(ハセイ)よ。宜しくね?」
巴星(fa1537)はスタジオに入ってきた『るみるみ☆くりぃむ』を見て少々驚いた。話に聞いていた通り、宇宙人の被り物に短い着物。そして、ヘソ出し。演歌歌手というには奇抜すぎる格好である。会社によって作られたキャラクターではなく、『るみるみ☆くりぃむ』という個性が滲み出たコスチュームであった。
「今からレコーディングだと思うけど、ちょっといいかな?」
巴星は『るみるみ☆くりぃむ』をスタジオの外に連れ出すと、PV撮影用の衣装について意見を聞く。
「一応、こんな感じの衣装を考えているんだけど」
予定している衣装の案を伝えると、『るみるみ☆くりぃむ』は特に問題は無いという答えだった。簡単な打ち合わせを済ませると、巴星は衣装準備の為、スタジオを後にした。
スタジオには既に作詞・美術等担当の茶臼山・権六(fa1714)、作曲担当の麗菜(fa2324)、作曲・バックコーラス担当のアルケミスト(fa0318)が入っていた。
「アルケミストです‥‥アルミで結構。よろしゅうに」
「よろしゅうに♪」
アルケミストは半獣化しており、それを隠す為にリュックサックを背負い、切れ込みを入れてそこから羽根を出して可愛い羽根付きリュックのように見せかけていた。関係者以外存在しないスタジオで、仲間の同意があればそれは問題無いだろう。『るみるみ☆くりぃむ』も『それ、可愛い☆』と言うだけで、不審には思っていないようだ。
「『るみるみ☆くりぃむ』さんは演歌が歌いたいという事なので、本格的な純演歌な曲を作ってみたのですが、いかがでしょう?」
麗菜は作曲したリストの中から、本格的な演歌を『るみるみ☆くりぃむ』に聴かせた。
「純演歌となると必然的にターゲットは中高年となる。しかし、るみるみのキャラクター性を考えると難しいのである。ポップ演歌風にアレンジは出来ないであろうか」
権六が厳しい注文を出す。彼が厳しいのは演歌が好きだからこそ。キャラクターを考慮して、若年層に受け入れられるような曲を目指すが、中高年もターゲットに入れて誰もが聴きやすいポップ調の演歌にする事になった。
「では、このような感じでどうでしょうか?」
キーボードを鳴らす麗菜。
「あまりにも斬新すぎると、一発屋で終わってしまうのである。軽くアップテンポな曲‥‥勿論、ヨナ抜きで」
演歌は西洋音楽でいう七音階のうち、第四音と第七音を外して五音階にする通称『ヨナ抜き』と呼ばれる音階法で作られる事が多い。これは、昔から日本の音楽は五つの音を基本とした音階であり、日本の近代化によって西洋音楽が取り入れられていく過程で、民族固有の音階と西洋の音階を調和させる中で生まれた独自の音階である。つまり、日本人に馴染み易いメロディーなのだ。その辺りの基本はしっかりと抑えてある。
曲がまとまった所でレコーディングに移る。
レコーディングは思ったよりもスムーズであった。事前に権六がしっかりと歌詞を用意していた事もあり、『るみるみ☆くりぃむ』もすぐに歌詞を覚えて歌うことが出来た。バックコーラスのアルケミストは無名の新人であるが、半獣化している事でミスも少なかった。
こうして、『るみるみ☆くりぃむ』のデビュー曲『銀河舟』が完成した。
「とりあえずA面は出来たが、B面はどうするのだ?」
「時間もありますし‥‥今出来た曲はPV撮影に必要ですので、これを送ったらB面も作りましょう」
「そうであるな。では、B面は先程の純演歌風の曲でいくか」
権六はカップリング曲も作詞してきており、麗菜はマスターテープをスタッフに渡すと、次の曲の収録を始めた。
●PV企画会議
December,8,2005
『るみるみ☆のデビューCD作ってるょ♪』
あたしのデビューCDがただいま制作ちぅ〜☆
どんな曲になるのか、すっごく楽しみだよぉ〜!
スタッフの方々が今がんばって作ってるから、みんなもあとちょっと待っててね♪
‥‥本文を読む
Posted by rumirumi |コメント:(125)|トラックバック:(75)|
*
「成る程‥‥ネットでもかなり話題になっているようですね」
某演歌レーベルの会議室。巻長治(fa2021)はノートパソコンで『るみるみ☆くりぃむ』のブログへアクセスし、本日投稿されたエントリーを読んでいた。短時間でこれだけのコメントとトラックバックが集まるとなると、十分話題性はあると思われる。
「メイン層はやはり若い連中だな」
トシハキク(fa0629)は買ってきたホットの缶コーヒーを長治に渡すと、エントリーへ投稿されたコメントをチェックする。コメントには比較的若い男性と思われる読者からのメッセージが多かった。
「この話題性を武器にマスコミへ積極的にアプローチしてみましょう」
「そうとなれば、撮影も早めにしておいた方がいいな」
「先行公開出来る分を編集して持っていけば、それだけでも数字は違ってくると思いますよ。るみはプロモーションに関して何か言っていましたか?」
「るみも『宇宙』をテーマとしたものでOKのようだから、この路線で彼女が星空の下で歌うという方向で撮影に入る予定だ」
「わかりました。重要なシーンは早めに撮りたいので、お願いします」
トシハキクは撮影用の絵コンテを確認すると、カメラを手に撮影へ赴いた。
「では私も一仕事しなくては‥‥」
長治は缶コーヒーを飲み干すと、ノートパソコンに向かいリリースを書き始めた。
*
『報道関係者各位
いつもお世話になります。
表題のとおり、プレスリリースをお送りさせていただきますので、ご査収いただきますよう宜しくお願いします。
■新鋭演歌歌手『るみるみ☆くりぃむ』デビューCD発表■
○○レコード株式会社(以下、○○レコード)は、12月下旬に『るみるみ☆くりぃむ』のデビューCD『銀河舟』を発売を予定しています。『るみるみ☆くりぃむ』はデビュー前にも関わらず、公式ブログ『るみるみのぱるらむ☆ぶろぐ』が公開されるなど大きな話題となっております。○○レコードは、演歌におけるこれまで培われたノウハウを生かして、この話題のアーティストを展開していく所存であります‥‥』
●撮影本番
「流石に冬の夜は冷えるな」
PV撮影用に借りたロケバスから降りたトシハキクは白い息を吐きながら呟いた。彼は毛糸の帽子を被り、しっかりとコートを着込んでいる‥‥つまり、半獣化していた。撮影シーンは星空の下で歌う『るみるみ☆くりぃむ』。夜だからギャラリーもいない。暗いから分かり辛いと半獣化には好都合だ。
「化粧はこれでOKね」
巴星はロケバスの中で『るみるみ☆くりぃむ』のメイクをしていた。軽めの化粧で済ませ、衣装をチェックする。スパンコールやラメを散りばめて星をイメージした黒の着物、白いペンキで落書きされたジーンズにキャミソール。円盤を模った指輪等、小物にも気を配る。
「さっ、これでバッチリね。頑張ってらっしゃい」
「は〜い♪」
『るみるみ☆くりぃむ』を送り出した巴星はポツリと呟いた。
「ふふっ‥‥お腹を出せるなんて若い子はいいわねぇ?」
撮影はPVの中心部分を優先的に撮る事になった。後の部分はCG合成で作成する。
シーンはサビの部分。『るみるみ☆くりぃむ』が理想の彼氏と出会う場面。しかし、男性の役者がいない為、ここも合成となる。後はコーラス部分。アルケミストと麗菜が出演し、『るみるみ☆くりぃむ』と共に歌う場面が撮影された。
「カーット!」
トシハキクの声が冬の夜空に響く。
「まぁ、形になるかな‥‥とりあえず、お疲れさん」
暖かい缶コーヒーを全員に配りながら、労いの言葉を掛けるトシハキク。
撮影はこれで終了した。
●CD発売
December,14,2005
『CD発売だょ♪』
デビューCDが今日発売だよぉ♪
『銀河舟』っていう曲なの☆
みんな、ラジオにリクエストよろしくね!
‥‥本文を読む
Posted by rumirumi |コメント:(187)|トラックバック:(92)|
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「うまくいったようですね」
TV局や雑誌編集部を回っていた長治が会議室に戻ってくると、『るみるみ☆くりぃむ』のブログをチェックする。コメントには『CD買ったぞ!』『なかなかいい曲だった』『もちろん、リクエストしたからね!』と比較的好意的なメッセージが多かった。
「さて、一休みするとしましょうか」
長治はラジオを聴いた‥‥
『‥‥次のリクエストは、今話題の演歌歌手『るみるみ☆くりぃむ』の『銀河舟』です』
♪キラキラ〜 キラキラ〜 あなた探して幾百光年〜
あぁ、銀河舟〜 私と貴方の長い旅〜♪
デビューCDの売れ行きは順調だった。
残念ながら音楽番組への出演は出来なかったが、悪くない結果である。
「実はマスク取ると猫耳でも生えてたり?」
権六は廊下ですれ違った『るみるみ☆くりぃむ』にさり気無く冗談のように尋ねる。
「猫耳? それ、可愛いかも〜」
ふふっ、と笑いながら『るみるみ☆くりぃむ』は立ち去っていくのであった。