Words南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
えりあす
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
6.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/12〜12/20
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●本文
ジェニファーは不思議なプロデューサーだ。
今、彼女が手がけるドラマの制作依頼が来ているのだが‥‥
手元にある紙には番組タイトルと‥‥後は謎の文字の羅列。
彼女はこの紙を脚本だと言っていたのだが、わたしには一体これの何処が脚本なのか、全く理解できない。
わたしが問うと、彼女は‥‥
『それくらい考えなさい。極限まで文字を削る事で、逆にストーリーに奥深さが出るの。文字から文字へ繋がるそこに物語が生まれる。飾り立てられた文章では、奥深いストーリーは表現出来ない』
と、言う。
考えろ、と言われてもわからない。
どのようなストーリーなのか、誰が何を演じるのか、大事な部分が全く脚本には無いのだ。
しかし、依頼が来ている以上、番組は制作しなければならないのだ。
そこで、君達の力を借りて何とかこの謎の脚本を読み解いて、番組を作りたい。
協力をお願いする。
●番組名『Words』
扉、テーブル、コップ、女性、窓、鳥、木、空、ノック音、足跡、男性、バッグ、挨拶、コーヒー、砂糖、TV、花束、抱擁、接吻、スーツ、ハンカチ、口紅、ネクタイ、怒声、猫、少女、ボール、ケーキ、プレゼント、ぬいぐるみ、ソファー、家族、料理、ワイン、少年、月、自転車、雨、学校、先生、タオル、ペンダント、音楽、友達、物音、二階、ロープ、キス
●リプレイ本文
●Words 〜HAPPY TREE〜
広場に飾られたクリスマスツリー。華やかに飾られた装飾と幻想的に輝くイルミネーションが人々を立ち止まらせる。広場の傍にはマンションが建っていた。このマンションの一室で起こる一つの奇跡‥‥
●第一話
<出演>
・キャサリン:桐沢カナ(fa1077)
・クリフォード・ゲージ:キース・イレヴン(fa2455)
「1年前の約束なんて、やっぱり覚えてないわよね‥‥」
深く溜息を吐くと、キャサリンは誰も来ない扉に視線を向ける。
テーブルには二人分のクリスマス用ディナーが用意されていた。最後にコップを準備すると、キャサリンは窓を覗く。ベランダには二羽の小鳥が仲良く寄り添い、木の葉が空に舞う。
今日はクリスマス。
キャサリンは1年前、彼氏と会う約束をしていた。しかし、遠距離恋愛である二人は、お互いが忙しいという事もあって連絡がうまく取れていなかった。本当に彼が来てくれるのか‥‥時間が経つにつれて、雪のように不安だけが彼女の心に積もっていく。
――トントン
扉を叩くノック音。そして、足音。
もしかしたら‥‥期待と不安が交錯する。
「お久しぶりです、キャス」
懐かしい声が聞こえる。
大きなバッグを手にした男性。彼はクリフォード。キャサリンの恋人だ。
「久しぶりね、クリフ」
軽く挨拶を交わすとクリフォードを迎え入れるキャサリン。だが、久しぶりに会ったというのに彼の態度は何となく漠然としていた。
一先ず、クリフォードを部屋に案内し、コーヒーを勧める。キャサリンは自分のコーヒーに砂糖を入れると、クリフォードにも砂糖を入れるか問う。
「あ、あぁ‥‥えぇと‥‥何でしたっけ?」
「もう‥‥」
不自然な挙動に苛立ちさえ感じる。クリフォードはTVを付け、ニュースを見始める。その時でさえ、持ってきたバッグをちらちらと見る等、挙動不審な態度が目に付く。
「1年ぶりに会えたのに‥‥こんなのってないわ」
クリフォードの態度に機嫌が悪くなっていた彼女は我慢できず、強い口調で言う。
「ごめんなさい‥‥ちょっと考え事で頭がいっぱいで‥‥」
クリフォードはそう言うと、思い切ってバッグから何かを取り出した‥‥それは、ブーケのようなデザインの可愛い花束だった。
「二人で一緒に、幸せになりたいのです。キャス、結婚していただけますか?」
「‥‥本当に私でいいの?」
突然のクリフォードのプロポーズに、キャサリンは驚きながらも明るい笑顔を浮かべた‥‥赤い瞳に感涙を滲ませて‥‥心に積もった雪は暖かい抱擁によって溶け始める‥‥そして、二人は熱く、優しく接吻を交わす‥‥。
●第二話
「どうなさいました?」
スーツ姿の男性が、広場のベンチに座って泣いている女性に声を掛けた。
「‥‥最近、彼とうまくいっていないんです‥‥遠距離恋愛だから、すれ違いが多くて‥‥」
「そうですか‥‥」
男性はハンカチを彼女に差し出す。
「ありがとうございます‥‥」
女性は涙を拭うとハンカチを男性に返す‥‥ハンカチに偶然、口紅が付いてしまったのだが、彼は気づかなかった‥‥
<出演>
・トム:田中雪舟(fa1257)
・サリー:ベクサー・マカンダル(fa0824)
トムは半年前に愛する妻を亡くした。父子家庭であるが、仕事が忙しく何日も家に帰っていない。
「ただいま」
トムは着替えを取りに数日ぶりに家に戻った。
「おかえり」
娘のサリーはいつものようにスーツと着替えを受け取り、すぐにそれを洗濯機へ運ぶ。
「なにこれ?」
着替えの中から一枚のハンカチが出てきたのだが‥‥そこには口紅が付いていた。父の再婚の話は聞いていないし、そんな女性がいるなんて知らない‥‥
「ちょっと! これ、何よ!」
サリーは怒りながらハンカチを持ってトムに詰め寄る。そんな、娘の言葉を無視し、仕事の準備を続けるトム。
「どういう事かって聞いているんでしょ!」
トムのネクタイを掴み問い詰めるサリー。
「いい加減にしなさい!」
トムの怒声に驚き、部屋にいた飼い猫が逃げていった。サリーも言いようのない憤りと心に広がる寂寞感を覚え、飼い猫を追って家を飛び出した。
サリーは猫を探しに広場へとやってきた。自分の知らない所で少しずつ父と距離が遠ざかっている気がして‥‥溜息を吐きながらサリーはベンチに腰掛けた。
少女の元へボールが転がってくる。ボールを取ると『すみませーん』と声が聞こえた。振り向くと、少年が手を振っている。サリーはボールを返すと、少年は礼を述べて両親の元へ帰っていく。少年の親は手にケーキを持っていた。
今日はクリスマス。
サリーは急に父の事が恋しくなった。
理由も聞かず、あんな事で怒ってしまって‥‥父とますます距離が遠くなるような気がして‥‥。
「今日はクリスマスか‥‥去年は君が入院をしていて、それどころではなかったな」
妻の写真を手に呟くトム。部屋を見渡すと、クリスマスという雰囲気は全く無い。最後にツリーを飾ったのは何時だっただろう‥‥思いついたように地下室へ向かうトム。そこからクリスマス装飾を引っ張り出してくると、急いで庭のバースデーツリーに飾り付けをする。
「時間が無いな‥‥」
トムは時計を見ると、街へ向かった。
夕方。家に戻ったサリーの目に飛び込んできたのは小さなクリスマスツリー。
扉を開けると、プレゼント用の可愛いリボンが付いた大きなクマのぬいぐるみがソファーに座っている。驚きながら部屋に入ると、突然クラッカーが鳴った。
「メリークリスマス。二人っきりだが、家族で過ごすクリスマスもいいものだな」
「パパ!」
サリーはトムに抱きついた。テーブルには父の作った料理。ジュースとワインで乾杯し、二人だけど楽しく、温かいクリスマスを過ごす。
●第三話
「大きな荷物だなぁ」
少年は広場でスーツ姿の男性が大きな荷物を持ち、急いで帰る姿を見て呟く。
「もう、クリスマスだもんな‥‥」
広場に飾られたツリーを見上げる少年。冬の夜空は透き通って、星や月が美しく輝いている‥‥
<出演>
・エドガー・ロセット:縁(fa0613)
・エリー:佐々峰菜月(fa2370)
「夜に外出るのは寒いや。風邪引きそう」
少年は月夜の晩、自転車で外へ遊びに出かけていた。
「前もそんな事あったっけ‥‥」
エドガーはふと、風邪を引きそうになった雨の日の出来事を思い出す。
大雨の日。学校で先生の『風邪引くなよ』という忠告を無視して、駆け足で帰るエドガー。ずぶ濡れになりながら近くの店で雨宿りしている彼にタオルを差し出したのはクラスメイトのサリーだった。
「エディくん、びしょ濡れだね。これで拭いてよ」
「良いのか? ありがと、助かったよ!」
無邪気に喜んで顔を拭くエドガーを見て、何となく恥ずかしい気持ちになったエリーはそのまま立ち去ってしまう。
次の日、エドガーは律儀に洗ったタオルと、お礼にペンダントをエリーに渡す。
「センスとか全然ないけど‥‥良かったら貰ってくれよ」
「センスがないとか‥‥そんな事言ってたけど、とても嬉しかったよ?」
エリーは二階の自室で音楽を聞きながら、エドガーと一緒に撮った写真を見ていた。その時も恥ずかしくて『ありがとう』と言ってすぐに立ち去ってしまったけど‥‥エリーはペンダントを握り締めた。
「うわ‥‥綺麗だな」
広場に来たエドガーはツリーの前で自転車を止めた。綺麗な飾りと幻想的なイルミネーションに、暫し時を忘れて見入ってしまう。
「‥‥あいつ、こーいうの好きだったよな」
ふと、クラスメイトの顔が浮かび、我に返るエドガー。そうだ、あいつにも見せてやろう‥‥そう考えると、エドガーは自転車を走らせる。
このまま、友達だけの関係で終わってしまうのかな‥‥写真を見ながらエリーはぼんやり考えていた。その時、窓の方から物音が聞こえる。
「ここ二階なのに‥‥何だろう?」
窓の外を覗くと写真ではない、現実の彼がそこにいた。
「エリー、出て来いよ。今からツリー見に行こうぜ」
「え!?」
驚くエリーだが、彼の誘いに同意し、ツリーを見に行くことにした。
今日はクリスマス。
シーツをロープ代わりにして下へ降りるエリー。
「わ、馬鹿! 危ないだろ!」
「きゃ!」
でも、途中で落ちてしまい、エドガーに受け止められる。
「全く‥‥怪我とかないか?」
「うん‥‥」
抱きかかえられるエリーは頬が朱色に染まっていくのを感じた。
エリーを後ろに乗せ、エドガーは広場へ急ぐ。広場の中央には大きなクリスマスツリー。
うっとり見入っているエリーだったが、ふと、隣の彼を見て呟く。
「綺麗だね、ツリー。それに、さっきは受け止めてくれて‥‥ありがとう」
エリーは精一杯気持ちを込めて、エドガーの頬にキスをする。
その頃、キャサリンとクリフォードはベランダから広場のツリーを眺めながら、そっとキスを交わす。
トムとサリーは、庭のツリーを見ながら、お互いの頬にキスをした。
空から雪は降り始める。
お互いの愛を確かめ合い、それぞれのクリスマスは過ぎてゆく‥‥
END
そして、to be‥‥
<脚本・演出>
・敷島オルトロス(fa0780)
・SAKUYA(fa1571)
●終幕
「成る程ね‥‥オムニバス形式で、それぞれのクリスマスでの出来事を表現するとは考えたわね」
「クリスマスに起こる3つの物語という感じで纏めたら面白いと思ってな」
出来上がったドラマをオルトロス、SAKUYAと共にチェックするジェニファーは、いつも通り無表情のままであった。
「この脚本‥‥私がまだ駆け出しの頃に手がけたクリスマスを題材にしたドラマなの。それを削ってあれにしたんだけどね」
「どんな感じのドラマだったの?」
「恥ずかしいから内緒」
SAKUYAがジャニファーに尋ねるが、彼女はやはり無表情でそう答えるだけだった。
「クリスマスって言葉を使わなくても、雰囲気でわかるのかしらねぇ」
「時季も時季だしな。その方が視聴率も取れるだろ」
そうね、と答えるジェニファーの口元に少し笑みが浮かんだのをSAKUYAは見逃さなかった。