演歌新(メイド)時代アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
えりあす
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
01/03〜01/07
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●本文
「時代はメイドだよ」
某メジャーレコード会社傘下の新興演歌レーベル事務所。
ここで専務とプロデューサーが次の楽曲に関する打ち合わせをしていた。
「そうですね。時代はメイドですよ」
普段は意見の食い違うことの多い二人だが、今回はすんなりと企画が纏まったようだ。
「メイド喫茶で働く女の子の気持ちを歌うっていうのはどうでしょう」
「お、いいねぇ。それでキマリ」
企画がこれだけ早く(2時間だったらしい)決まったのは、このレーベル創立以来初めてである。
「で、誰が歌うんだよ?」
「そうですねぇ‥‥あ、適役がいるじゃないですか」
「ん? 誰だ‥‥あぁ、いるな。あいつしかできねぇな」
この楽曲を歌うアーティストも決定。
「では、専務。続きはあそこで‥‥」
「あぁ、あそこだな」
専務とプロデューサーは事務所を出ると街に消えていった。
●るみるみ☆くりぃむ待望の2ndシングル『メイド愁思』発売決定!
レーベルのサイトにフィーチャリング・アーティスト募集の告知が載った。メイド服を着て歌う女性歌手を募集する。発売に向けて路上ライブを行う予定である。
メイド愁思/るみるみ☆くりぃむ feat.哀愁メイド隊 作詞:るみるみ☆くりぃむ、作曲:ND−T
<Aメロ>
『おかえりなさいませ、ご主人様♪』 と、今日も元気にお出迎え
でも、あなたの顔は 疲れていて 元気がなかったよ
<Bメロ>
そんな顔だと わたしまで元気がなくなっちゃうよ(『しゅん』)
でも、あなたが疲れているからこそ わたしが元気な顔して『癒してあげなきゃ!』
<サビ>
『わたしはあなたのメイドさん』
本当はあなただけを お迎えしたいのよ
『わたしはあなたのメイドさん』
いつかはあなたに 気持ちを伝えたいのよ
フィーチャリング・アーティストとして歌う(コーラスする)部分は『』で括られた部分。先行で路上ライブを行う事で話題性と認知度を向上させるのが目的である。
メイン・アーティストの『るみるみ☆くりぃむ』は、メイド服にいつもの怪しい宇宙人の被り物というコスチュームで歌う。これでも、歌唱力には定評があるのだが。
●リプレイ本文
●演歌新(メイド)時代
某メジャーレコード会社傘下の新興演歌レーベル事務所。
ここの会議室で専務とプロデューサー、そして、2人の作曲家が何やら話し合っていた。
「メイド服を着さえすれば、メイドさんになれるとでも?」
「私の知っているメイドと何か違う気がします」
アルフ(fa2107)とエリーセ・アシュレアル(fa0672)が、彼らのメイドに対する考え方についてツッコミを入れていた。今回の企画は専務とプロデューサーによる、ほぼ独断で決定した。これについて、内部・外部問わず、やはり反発が少なからずあるようだ。
「‥‥君達が言うように、本来の意味でのメイドは全く違うものだろう。だが、メイドさんというのは日本における萌え産業に欠かせぬ存在だ。今、日本では萌え産業が大きなマーケットとして形成されつつあり、大きな経済効果を生み出している。演歌業界とて、無視出来ないジャンルに成長しているのだよ。そして、このマーケットを牽引しているのがマニア消費者。彼らの消費規模と影響力は計り知れない。我々はこの市場に作品を投入する事で、演歌市場の拡大を狙っているのだ‥‥まぁ、このような事が出来るのは、我々が新興レーベルだからであるが」
プロデューサーの説明に今一つ納得いかない様子のアルフであったが、萌えがテーマなら仕方が無いと割り切り、アーティスト達のバックアップを担当する。
「路上ライブを行う予定みたいだが、場所は決まっているのか?」
プロデューサーと路上ライブの場所選定をするアルフ。場所はやはり、電気街という事になる。萌え文化は電気街という土壌があってこそ。これ以上の場所はないだろう。
「メイド服につきましては、皆で統一します。でも、カラーはそれぞれ変える方針でいきましょう」
エリーセとアルフ、プロデューサーの協議でメイド服については、フリルの多い可愛い系で統一。アーティストの個性によって色を変えるという事になった。
また、アルフはサクラの手配を事務所に打診した。返事はOK。路上ライブに向けて準備は着々と進行する。
*
「じゃ、断然アタシは赤!! いい?」
用意された衣装から、赤のメイド服を大道寺イザベラ(fa0330)が我先にと手に取る。彼女のイメージカラーは『赤』。当然、今回もそれに合わせた衣装を選択した。
「お似合いではないでしょうか? あたしは緑を選ばさせていただきます。こんな服を着るのは久しぶりですね」
守山千種(fa2472)は緑色のメイド服を選んだ。
「‥‥皆さん‥‥若輩者ですが‥‥よろしくお願いします‥‥」
礼儀正しく、一緒に歌う仲間に挨拶をするギタリストのアマラ・クラフト(fa2492)。彼女は和風ロックバンド結成を夢見ており、歌の勉強の一環として今回演歌の仕事に参加した。アマラは黒のメイド服を選択する。
「いつもワタシが歌っている曲とは随分雰囲気が違いマスガ、頑張りマスヨ。コンナ華やかな衣装を着て歌えるナンテ楽しソウ‥‥デモ、ワタシみたいなオバサンがこんな服で歌うナンテ、チョット恥ずかしいデス」
純粋な演歌歌手であるアドリアーネ・ロッシ(fa2346)は、片言の日本語を呟きながら陽気に衣装を選んでいる。周りのアーティストから見れば、少々年齢が上であるが‥‥オトナの色気で勝負である。アドリアーネは彼女の陽気な性格を表すようなオレンジの衣装を選んだ。
「あ、あの‥‥衣装って、こっちのを着ないとダメなんですか‥‥」
一人だけ、仲間と違うメイド服を着た少女が衣装室の隅で立ち尽くしていた。彼女は畑下 雀(fa0585)。雀の着ている胸元が大きく開いた紺色の長袖メイド服は彼女のお母さんが用意してくれたもの。明らかに他の仲間の衣装と統一感が無く、一人浮いてしまっている。今回、フィーチャリング・アーティストは衣装を統一する事が決定されており、一人だけ違う衣装というのはやはり問題がある。
「‥‥折角、お母さんが用意してくれたのに‥‥」
雀は仕方なく指定のメイド服に着替える。泣きたいのと、胸元が苦しいのを我慢しながら‥‥
「何故、このわたくしがこのような屈辱的な格好を‥‥」
白色のメイド服を着た九重・コノヱ(fa2638)が怒りに震えていた。彼女もプロの歌手として成功を夢見ている。どのような仕事であっても全力を尽くすべきという信念は評価できよう。このような屈辱を味わっても、それを次の仕事の糧にと気持ちを入れ替える。
「では、最後に‥‥私は紫の衣装で」
エリーセは紫のメイド服を着用。氷のような冷静さと燃え上がる情熱の二面性を備えるメイド‥‥という設定のようだ。
衣装合わせが終わり、歌の練習に移る。
今回はフィーチャリング・アーティストと言う事で、指定された箇所を歌う。歌唱力については、今回の仕事で特に問題になるような点は無く、練習はスムーズに進行した。イザベラは歌は厳しいと言う事で、ダンス中心に練習している。
「ダンスってのはさ、こうやるのよ♪」
熱が入り、仲間に振り付けを指導するイザベラ。しかし、他の仲間のダンスレベルが彼女について来れず、振り付けは不本意ながら簡単なものにせざるを得なかった。特に雀は何とか出来る様に頑張ろうとするも、ステップを踏めずに転んでしまったりと散々であった。
「‥‥うぅぅ、難しいです‥‥やっぱり、デボ子には‥‥」
レッスン終了後、雀はプロデューサーに呼び出される。
*
路上ライブ当日。
アルフの手配したサクラと、るみるみ☆くりぃむ公式ブログでの呼びかけもあって、予想以上の人が集まった。
「巷でメイドは人気と聞きましたが‥‥メイド服を着て歌えば人気が出る、では無く、歌うのはあくまで演歌です。集まった皆さんに演歌の心というものを表現できるように頑張ります‥‥」
千種は着慣れないメイド服にやや戸惑いながらも、歌う用意を整える。
「は〜い☆ るみるみ☆くりぃむだよ〜♪ みんな、集まってくれてありがとう! 今回は新曲を歌いま〜す♪」
メインアーティストのるみるみ☆くりぃむが登場すると、観客は一斉に歓声を上げる。いつもの宇宙人の被り物にメイド服‥‥これで演歌を歌うとはとても想像出来ないのだが‥‥
「一緒に歌ってくれるのは『哀愁めいど☆』のみんなだよ〜」
るみるみ☆くりぃむのコールを受けて、一斉に会場へ入っていく。
そんな中‥‥
――バタッ!
「きゃ! 痛いです‥‥」
最後に登場した雀が思い切り転んだ。
てへっ☆ っと、笑って起き上がる雀に、
「大丈夫か〜」
「がんばれ〜」
と声援が湧き上がる。
雀はプロデューサーに『出来ないなら、とことん『ドジっ娘』を演出しろ。それに『萌える』人だっている。自分の不得手ですら『萌え』に変えて客の心を掴め』と言われ、思い切ってライブに臨む事が出来た。
「では、新曲を歌うね〜♪ 曲は『メイド愁思』だよ☆」
るみるみ☆くりぃむが一歩前へ進むと、その後ろにユニット『哀愁めいど☆』が整列し、観客へお辞儀をする。そして、曲のイントロが流れた。
♪おかえりなさいませ、ご主人様♪ と、今日も元気にお出迎え
でも、あなたの顔は 疲れていて 元気がなかったよ
そんな顔だと わたしまで元気がなくなっちゃうよ(しゅん)
でも、あなたが疲れているからこそ わたしが元気な顔して癒してあげなきゃ!
わたしはあなたのメイドさん
本当はあなただけを お迎えしたいのよ
わたしはあなたのメイドさん
いつかはあなたに 気持ちを伝えたいのよ♪
歌は練習どおり‥‥やや緊張で声が震えていた感じもあったが‥‥悪くは無い出来だった。片言の日本語で大丈夫かと思われたアドリアーネも、流暢な日本語でしっかりと歌っていた。
振り付けの方は‥‥ちょっと動きがぎこちない点が目立った。だが、問題になるような事ではない。歌い終わった後、イザベラによる振り付け講座が行われ、こちらは大いに盛り上がった。観客も振り付けを覚え、最後にもう一度『メイド愁思』を合唱。路上ライブは盛況の内に幕を閉じる。
*
「ありがとうございます、ご主人様♪」
路上ライブ終了後、コノヱは新曲『メイド愁思』のチラシと販促品を配っていた。受け取った人に笑顔でお礼を述べる。エリーセも一人一人ににっこりと微笑み、写真撮影にも応じていた。
「るみるみ☆くりぃむさん‥‥あの‥‥歌うコツとか、よければ教えていただけませんか?」
アマラはるみるみ☆くりぃむに歌う際のアドバイスを聞いていた。
「う〜ん、演歌に限って言えば‥‥難しいよね〜。民族固有の音感があるように、日本人には日本人の音感とリズムがあるの。それに、演歌独自の音階や歌唱法。今、そういったものが若い人達から薄れているから‥‥若者と中高年の聞く歌が一致しなくなって、演歌が中高年が聞く音楽って風になってるのかなぁ‥‥あ、ゴメンね。もし、日本の音楽に興味あるなら、その辺を勉強したらいいかも☆」
みるみ☆くりぃむは少し寂しい表情をしながら言った。