ヨザクラビート☆アワーアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/21〜04/23

●本文

 某TV局の一室。健康の為、薄い珈琲の入ったマグを手に固まっているディレクター。
 小一時間、ノートパソコンの前に座り、音楽ライヴの企画書を練っているようだが、どうにも案が思い浮かばない様子。彼は盛大に溜め息を付き、マグを置くと近くにある携帯用音楽プレイヤーを手にして再生ボタンを押した。
 小さなスピーカーから聞こえてくる曲は、冬に行われたGSライヴのもの。
 歌謡曲に近い歌やスローバラードにノリの良いアップテンポなビートが次々流れ出す。どれもややノスタルジックでありながら新しさを感じさせ、心躍る素敵なものばかり。
 そう、これは、ディレクターお気に入りの『ビートヒート☆アワー』と『スノービート☆アワー』で流れたものだ。彼は曲を聴く度にあの時の楽しさやワクワクが胸に甦るのを感じた。
 あのライヴから早、数ヶ月。季節は巡り夏から冬、そして春へ変わりだしていた。
 ゲレンデを染めた白い雪は、まだ少し冷たい春風と柔らかく温かな日差しに融かされるころ頃。そうしたら次は青々と萌える緑の時期が訪れ、色とりどりの花達も姿を現し春を謳歌する事だろう。
 ふいに案が頭を過ぎった。
「そうだ。お花見会場でGSのライヴをしたらどうかな? 色々な世代の人達が来るわけだし、もっとGSを楽しんで貰えないかなぁ」
「あ、それは良いんじゃないですか? ‥‥でも、もうこの辺や近郊の桜は散ってしまいましたね‥‥」
 聞いていたスタッフが賛成を言う。が、瞬時に表情が曇った。なぜならTV局近辺の桜達は既に薄桃色の花を散らし、今や緑一色、葉桜となっていたからだ。
 スタッフと同じように、俯き憂いの表情を浮かべると小さく溜め息を付くディクター。そこに他のスタッフが、
「ん〜こっちは桜は終わってしまったかも知れませんが、北に行けばまだ咲いているかも知れませんよ。‥‥あぁ‥‥やっぱり。今、丁度東北当たりが見頃のようです」
 カタカタっとキーボードを操作し、開花情報をすぐにチェックしてくれた。
 ディレクターは、その言葉に微笑み、
「ありがとう。今度は桜まつりにGS旋風! ヨザクラビート☆アワーといこう。君達は出演して下さる方を手配してくれるかな? 僕は企画を通してくれる会場を当たるよ」
 嬉しげに頷いたディレクターは手にしていた珈琲のマグを机に置き、代わりに電話帳と受話器を手にした。

〜〜ヨザクラビート☆アワーの出演者募集〜〜
 GS好きのディレクターが、またまたライヴを企画しました。予約できた会場は東北で有名な桜の名所のある城跡です。

 GSとはグループサウンズの略で若者には少しばかり馴染みの薄いかもしれません。音楽的な特徴は洋楽の要素を取り入れながらも、独自方向で展開した日本発のポップス。
 バンド名や曲目を知らない方でも少し聞けば解る曲や歌。そして揃いの衣装が印象にあると思います。
 どうぞ皆様で楽しいお花見ライヴを仕上げてください。
 グループサウンズと言っていますが、歌手さまお一人での参加も大丈夫です。
 また司会者、演出家、衣装担当、大道具を担当の方も同時に募集しておりますので、奮ってご参加下さいませ。

 ライヴのテーマ:夜桜や桜など、春に因んだ淡い恋や旅立ちの曲。青春を謳歌する素敵な歌をお願いします。

●今回の参加者

 fa0379 星野 宇海(26歳・♀・竜)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa2457 マリーカ・フォルケン(22歳・♀・小鳥)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)
 fa2993 冬織(22歳・♀・狼)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)

●リプレイ本文


 白銀に包まれた北国の大地にようやく春風が現れ、緑を息吹かせ桜を満開にする。日本が誇る花とGSのコラボライヴを実現にしたディレクター達が会場にしたのは東北の城跡。ここは毎年多くの客で賑わう桜の名所である。
 ステージの裏に作られた控え室でディレクターと司会を勤める阿野次 のもじ(fa3092)が演出について話し込んでいた。
 そこに散策ついでに花見をしてきたラシア・エルミナール(fa1376)が入る。
「花見をし損ねてたところだったし、この辺の名所見る機会なんてそうないし。まぁ楽しませて貰ったよ。‥‥次はGSだな。はて演った事あったっけかな。一回ぐらいはあった気もするな。ともあれ初参加をさせて頂く。宜しく」
「ラシアさん、それは良かった。今日はお願いしますね」
 頷いたラシアは着替えの為、奥の衣装部屋へ移動。替わりに準備を整えた千音鈴(fa3887)、星野 宇海(fa0379)そして冬織(fa2993)が、ユニット名の相談を賑やかしながらテーブルに着いた。
「夜桜の中でのライヴとは風情があるのう。GSという名の歌の花、咲かせてみせようぞ。そうじゃ、がお太郎は留守番じゃ。ステージが終わったれば一緒に花見じゃから待っておれ。ぬ? ユニット名‥‥か」
「そうねぇ、The Empressなんてどうかしら? タロット占いのナンバーが偶然にも3。女帝の3人‥‥。個人的にこれ意外、似合う名前が思いつかないのよね」
 冬織は持ち歩いているウサギ人形を丁寧に椅子に座らせ仲間と向き合う。星野がテーブルに並べたカードの一枚を翳した。
 それは『女帝』の柄。
「ふむ‥‥それは宇海殿と共に常日頃言われておる故、妙に馴染む気がするわい。良いのではないか」
「‥‥ん、誰かしら? 私の事だと言うのは。ま、ちーちゃんは王女ですわね。ともあれ女3人艶やかに参りましょう♪」
 ポツリと冬織の一言にスタッフが吹き出すと素早く反応した星野。しかし否定は至難そうだ。
「まぁいいじゃない。私は張り切っちゃうもんね! 恋する乙女POWER全開よ!」
 拳を振り上げる千音鈴。だが全壊の間違えにならないよう気を付けよう、そっと心で誓う。
 彼女達の後方では本番に備えマリーカ・フォルケン(fa2457)が、ドレスチェックをしていた。
 そこに元気な声が響き渡る。
「ディレクターさーん、いつも楽しみにしてるんだよー! またGSが出来るなんて、歌うのも聞くのも、ぎゃー楽しみv」
「やぁ、柊君。来てくれて嬉しいよ。‥‥うん、元気そうだ。変わりはない?」
 振り返ったディレクターに柊ラキア(fa2847)がハグ。された彼も嬉しそうに返す。
「変わった事ー‥‥一つあるよー。えへへ、舵と僕、結婚するんだー」
「そうなのかい! おめでとう!」
 へらりと笑い報告する柊。ディレクターも吉報に微笑み再度抱きしめた。彼等の傍で静かに聞いていた文月 舵(fa2899)が、タイミングを合わせそろり入ってくる。
「お久しぶりです。‥‥あら、いややわ。うち、会う度に言うてますね。へぇ‥‥私事で恐縮ですが、柊と共に新しい一歩を踏み出しました。これを期に、より自分達らしい音を奏でていこうと思いますよって、改めて宜しゅうおたの申します」
「おめでとう、文月君。君の結婚を惜しがる輩は多いだろうねぇ。僕もその一人だけど。あっと柊君、冗談だよ。末永くお幸せにね」
 よほど嬉しかったらしく珍しく冗談を口にするディレクターに柊がチロリ。隣で薄く頬を染める文月。
「そういえば今日、東北までライヴに来たって事は宿泊だよね。これって婚前旅行?! ぎゃっ、舵、かーじ! えへへへv」
 柊は文月にぺっとり寄り添い超ご機嫌でテンションを上げる。仲睦まじい彼らを優しく見ている
「本当にゾッコンなんだねぇ。おっとこうしてはいられない、早め準備をお願いできるかい?」
「解った。あー和服は一人で着なれないから大変かも。舵ぃ、帯結んでー結んでー!! おかしい所も直してねー」
 柊は文月の手を取り、もう一つのに更衣室へ歩き出す。
 数十分後、準備を整えた彼らを見るディレクターはスタッフから開演の知らせを聞き、無邪気に笑むと、
「では皆さん、そろそろお時間です。素敵なGSを聞かせてください」
 期待に胸膨らませ、出演者をステージへ導いた。


「さぁ始まりましたヨザクラビートでハートビー! 司会は私、いっちゃんだよ☆ ではゆくーぞ夜桜にんぽーちょう♪ お疲れサマーはまだ早いゾ、スプリング! 鳴かぬなら飛んで羽ばたけホトトギス、ということで今回は春爛漫の夜桜VER豪華なメンバー取り揃え、桜吹雪の乱れうちー。ライブハウス勢の夢のコラボ、Limelightに七音ファンは見逃せないぞ」
 元気よくステージで躍る阿野次。なぜだかピンクのくのいち姿で登場だ。
 彼女は懐からマイクを取り頓知のきいたダジャレ連発。無論、お客達は大きく口を開き笑いを取る。心を掴んだところで、
「さぁトップバッターの紹介‥‥しゃらら〜しゃらら〜しゃらんでりあKISS 浮かぶ光に華と舞う乙女達、紅のちーちゃん、白いは冬織。そして輝く宇海! その色を夜風に靡かせられるか? 女帝、The Empress! 曲は『コノハナサクヤ』その華サクヤいなや!?」
 阿野次がビッと右側を示した場所にやや低めのステージがあり、桜の巨木下でドラムカウントが鳴る。すぐに千音鈴のエレキギターがメロディラインを紡ぎ、次いで星野のキーボードが音を支え、冬織がリズムを刻むように小さくタンバリンを打つ。
 三人が奏でる音が夜風に乗り流れるに合わせ、枝に付いた雪洞の柔らかな灯りで作られた花弁が降るような効果照明。淡い光りに紺のマキシ丈のドレスコートを揃い着る三人の女性が浮んだ。
 ギターの音が微かになりドラムの軽い刻みのみとなる。そこに冬織の巻いた髪の上に乗るティアラが煌めき、それが合図となり歌い出す。

『コノハナサクヤ』 星野 宇海
「 足音並んで通った道も 今日が最後と春風が吹く
  言い出せなかった言葉と想い(ru‥‥)
 『降り積もって視界を染めた』

  明日からは僕の居ない世界を歩く きっと君は気にもしないけど
  一緒に見上げた満開の花(ru‥‥)
 『忘れずいよう 幸せ祈って』

 『Cherry blossoms』(Cherry blossoms)
  コノハナサクヤ いつか満開 薄紅染まる虚空見上げて
 『Cherry blossoms』(Cherry blossoms)
  この手離れて見送る人に どうか忘れず今この時を‥‥
  君の未来の片隅に(la‥‥)
 『僕からの祝福が降りますように』 」

 コートと同色のタイトなミニのワンピが見え隠れし、無造作に首に巻いた若草色のシフォンスカーフ。足下はニーヒールブーツというセクシーな衣装でありながら力強く歌う冬織。サビの英語歌詞部分に入ると千音鈴と星野の呟くようなハモリが入り、再度、千音鈴が追う。
 軽快で弾むようなメロディを作り出す千音鈴のギターと星野のキーボード。彼女達の動きに合わせ揺れるコートが千音鈴のフレアーミニドレスを見せ、首に巻く淡桜色のスカーフがさり気なく揺れた。そんな愛らしい衣装の千音鈴と逆にコートと同色のパンツスーツにブーツを合わせ、淡い藤色のスカーフをふわりと巻き大人っぽい雰囲気を醸し出す星野。統一された衣装の中でも彼女達の個性が光る。
 曲は流れ、冬織が胸前で手を合わせるのを合図に曲が転調し、テンポがゆったりと落ち着き、最後のフレーズに入る直前、一拍おかれ、冬織の声が祈るような呟きへ変わる。タンバリンが揺すられてここで余韻を楽しむ形で曲が終わった。
 そこに間合い良く一陣の風が吹き薄桃色の花弁が宙を舞い、彼女達と観客の間にゆっくり落ちだし、静かに灯りも下がる。が、ドラムの刻みだけは止まらない。再び正面ステージのライトが点り、阿野次がMCを開始。
「素敵な曲をありがとーう! ではお次はこちら、合言葉はぁ‥‥?」
 会場にマイクを向ける。彼らは待機しているバンドの名を大きな声で呼ぶ。
「リバティー!」
「駄目だよー声が小さい!」
 負けないくらい声を張り上げる阿野次。会場も元気に返す。
「ウィース! リバーティー!」
「ハイ、よくできました。素敵なカップル、ラキ君と舵さん。そして、姐さんボーカルでイタリア帰りぃなラシア嬢! 今宵限りのユニットf×ALRだ! GS魂がめっさ篭め奏で歌うは『桜花幻夜〜桜の道』、いってみよう!」
 ノリノリでMCをしながら阿野次はゆっくりとステージの隅に移動。最後の言葉に合わせ、阿野次が引き綱を思いっきり引っ張る!
 背後の大きなカーテンがずるりと落ち、そこから現れた柊。彼は襟を弛めた黒の着物姿。勿論、首にはゴーグルとシルバーアクセは健在だ。
 柊は走りたい衝動を抑え、初披露をする深紅のギター・フレイムストームで夜桜の妖しげで幻想的な雰囲気を弦を爪弾きイントロをだす。
 次に一段高く作られたドラム用セットの上で文月が低音のリズムを静かに刻む。無論、彼女も紅い着物に演奏の関係上レース付きレンギンスを穿いた姿でドラムを叩く。
 その脇をラシアが桜色の着物を着流した姿でステージへ入り、魅惑的な歌声を披露。

『桜花幻夜 〜桜の道〜』 ラシア・エルミナール

「 宵闇に散る花びら 幻の如く
  月夜に溶けていった 香りを残して

  桜花幻夜 今宵こそ貴方の元で
  舞い踊りましょう 一夜の夢

 『仰いだ空 青より広く咲き誇る花
  迷う背を押された気がして 春嵐のなか歩み出す』

  少しずつ動き始める景色を眺めた
  遠くなる夢の足跡 僕らの行く道を
  包む花びらはまだ誰に踏まれることもなく

  桜花繚乱 この月の下 儚く咲き乱れる 夢の残照
  夢幻一夜 二人だけの夢 花吹雪の中 埋もれていく 」

 柔らかな色合いのライトが観客とステージの三人を照らすだけのシンプルな演出。ラシアは歌詞に沿って儚い声で歌い上げていく。
 サビの部分で、静かだったメロディを文月のドラムが曲調が一転させ、軽快な音にする。合わせて柊も早弾きを披露。勿論、低く沈めた声でラシアとハモらせる。だがそれはあくまでも軽くかぶせる感じにしたもの。そこから紡がれる綺麗なハーモニー。
 テンポに合わせ動くラシアの髪が、宙を舞い踊る。
 最後の句に近づくとまた幻想的な響きへ変じ余韻を残して終える。
 頃を見計らい阿野次がステージの脇から出てきた。
「さて次は、大人なムード! ナイトクラブの華マリーカさんで、曲はso long‥‥」
 スッと手を挙げ観客を先程の桜の下ステージへ導く。そこには金髪に合うオーキッドピンクのドレスを纏いキーボードを演奏するマリーカ。明るすぎないライトに閃く白銀の装飾品は控えめだ。
 彼女の視線の先には傍に彼がいるかのように優しげだ。一呼吸音が切れ、彼女は語るように歌い出す。

 『so long‥‥』 マリーカ・フォルケン
「 あの日、あなたと出会ったのは こんな桜の舞い散る公園
 二人が出会ったのは一つの運命
 あなたの真っ直ぐな目に惹かれて あたしはたちまち恋に落ちたっけ
 それからどれだけの日々を過ごしたのかしら?
 辛い事 悲しい事 嬉しい事 一杯一杯あったけど あなたと一緒にいれば なんだって良い思い出に出来たよね
 だから二人は何時までも このままだと信じていたけど

 いつからだろう あなたが遠い目をするようになったのは
 あなたの笑顔は変わらないけれど 不安がこの胸を覆ったわ
 その時やっと気付いたの あなたにはあなたの夢があるって事に
 あたしがその重荷になるかも知れないって
 だから決めたの しばらくお別れしましょうって
 あなたはあなたの夢に生きて 必ずその夢を叶えて
 それがあたしなりの餞よ
 ‥‥so long 愛おしい人

 そしていつか もう一度 出逢い直しましょうね
 この桜舞い散る公園で‥‥ 」

 繊細な女心を歌い上げていくマリーカ。美しい歌声は詩のように切なく観客をじわっとさせた。


「さーみんなラストはいつも通り、ディレクターの思いでの曲! タイトルはサクラ ヒラヒラリーだよ」
 阿野次が大きな声で客席に呼びかける。最後に恒例の合同で演奏するのは事前に聞いていた曲。

「 花の季節は心跳ね踊る気持ちと切なさ募る 楽しさと辛さがヒラヒラリ
  それぞれの旅立ち 薄桃色の霞の向こうに次の季節が見えている
  歩いていこう 舞い散る中へ まっすぐ前を見て
  初めましてからの出発があるから 君と過ごした日々が輝く
  過ごせた時間をありがとう そして改めて‥‥ 」

 文月とマリーカはドラムとベースで音を作りだし、柊と千音鈴のギターが爽やかなメロディを乗せる。星野がキーボードの鍵盤を叩き、ラシアのパワフルなボーカルに合わせ冬織もタンバリンを振り歌う。ステージ上の皆も、聴く観客も楽しそうだ。なかでもディレクターが一等嬉しそうな顔で聞いていた。


 終了後、静かになった城跡。
「私達も花見をしましょうよ。私が作ったんじゃないけど‥‥」
「私も用意しましたの。皆さんどうぞ」
 千音鈴と星野が豪華な弁当と御重をだすと箸を持つ阿野次。
 人形を抱く冬織にマリーカ、ラシアはやや離れた所でそれぞれの花見をしている。
「えへへ‥‥舵、来年も一緒に桜を見ようね。再来年‥‥も‥‥ずっと一緒だよー‥‥」
 疲れたのか文月に寄り添い眠る柊。夢でも一緒のようだ。
「花見は諦めてたけど、GSと‥‥彼と一緒になんて。ええ桜やわ‥‥」
 文月は桜から視線を移し、彼の寝顔を見て眼を細めた。