legend of DIANA 1アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 8.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/03〜07/07

●本文

 ここは波止場の一画に建つライヴハウス兼バーの『EVANS』。
 薄暗い店内は紫煙と酒の匂い、密やかに聞こえる怪しげな会話。そしてオールディズの曲が足を踏み入れた者にまとわりつく。
 陰と陽。独特な雰囲気を持つ店だ。
 興味本位に足を踏み入れただけの者はここで踵を返し、戸を閉めるのはザラ。だが勇気を持って奥へ歩みを進めていくと、落ち着いた色合いの木目カウンター席に座る一人の異国人・英国人カメラマンであるギルバード・エバンスと逢える。
 もう一つ勇気を出し、彼の隣のバーチェアに腰を掛ければギルバードはチラリとこっちをみて手にしたタンブラーの氷をカラリと鳴らし、それが始まりとでもいうようにポツリ、ポツリと話を始める。
「ほぅ‥‥僕が聞き体験した昔話を貴方も聞きたいのですか‥‥? ふふふ‥‥物好きな。いや‥‥こっちの事です。ではお話しをしよう‥‥。あれは今から二十年ほど前の事だ‥‥」
 ギルバードの前に立つ派手なシャツを纏い、ポマードでリーゼントをきっちりと固めたスマートな男はそんな話に反応することなく無言のままグラスを磨いている。
「この街‥‥横須賀の道を風のように駆け抜けていった若者達がいたんだ。その名は‥‥」
 だからといってギルバードは咎める様子はなく、何かを思い出すように視線を遠くにやった。
 その時、画面はゆっくりとズームアウトし切り替わる。
 映し出されたのは飴色の画面に海沿いの国道に並ぶ4台のバイク。
 浜辺の方へ目を向ければ乗り手であろう、五人の人影があった。
 彼らは楽しげに砂を蹴り波と戯れてる。それは屈託のない若者の姿。
 揃いのジャンバーの背に描かれているのは抜き身の日本刀を抱く茨と赤と黒の薔薇とゴシック体で書かれたチーム名『DAIANA 蛇威亞奈』。
 見る者を威圧するスイングトップ。そんなロゴも彼らにとっては居心地の良い仲間である目印でもあった。
 また紫煙の浮かぶバーへ画は戻り、琥珀色の液体が入るタンブラーを口元に運ぶギルバードが映し出される。
「‥‥しかし仲の良い姿を見せる彼らだって、すぐにそうなった訳ではない。互いに傷つけあい何かを見いだした結果だ。まずは彼らがバイクに跨がれる年齢に達していない、ハイスクールへ入学したての頃‥‥僕が彼らから聞いた話をしよう」
 そういうと、またグラスの縁に口を付け液体を飲み干す。
 そこでまた飴色の画面へ。
 しかし映ったのは、バイクと共に浜辺にいた彼らではない。
 先程よりも少し幼い表情をした五人がずらりと映しだされる。だが一人の少女を除いた変形学生服を着込んだ二人の日本人と、革ジャンなど厳つい服を纏う少年二人の四人は獰猛な野獣のような表情でお互いを威嚇し合っていた。
 そこに懐かしそうな声で話すギルバードのナレーションが被る。
「彼らは悪の限りを尽くし、横須賀ではその名を馳せた者。当時の言葉で表すならツッパリという‥‥。けっして良い意味で使われる事のない言葉を背負い、有り余る力と苛立ちをどこにぶつけていいか解らず、ただひたすら捌け口を求め藻掻いていたのさ。そんな彼らが出会い打ち解けたのは一人の少女が、あるチームを継いだ事から始まった‥‥」
 声に合わせ、まるで馬が嘶くようなバイクの排気音が響き、飴色だった画面がフルカラーへと変わり、流れ出すテーマ曲。

『only day』
 どこで生まれたか それで何が分かるの 貫きたいのは単純なこと
  たった一つの心だけがこの両手に 溢れる程の勇気をくれる

  正直でいるのに良いことばかりじゃなくて 小さな真実は転がるたび、すぐ嘘に変わった
  守りたくて傷つけた日を忘れずに 零れていった涙を拭う

  出会いとサヨナラを繰り返し繰り返し 強くなり脆くなり今も傷だらけ
  貫きたいのは単純なこと 私が私であるように‥‥

 ギルバードの話による、深夜の海岸沿いを湧かせた走り屋チーム・DIANAの伝説が幕開けである。


■ドラマ『legend of DIANA』に出演して下さる方を募集します。

 英国人カメラマン・ギルバード・エバンスが20年前の日本で体験した出来事が、ドラマとなりました。出演して下さる方を募集致します。

 リーダー 外見年齢17歳〜23歳
 日系二世or三世 蛇威亞奈の紅一点。必ず女性である事。また日系という事でハーフかクォーターが望ましい。
 制服姿は大人しめの優等生。だが名を背負ったライダースとサングラスを着用し、バイクに跨ると変貌。
 凶悪な暴走族 蛇威亞奈を引っ張る凄腕、気っ風のいい女性へと変わる。走り・喧嘩共に負け知らずのレディ。己の信念を貫くその姿に男子生徒のみならず女生徒達からも憧れられている。

 副リーダー 外見年齢17歳〜25歳
 日本男性 
 一見、穏やかな雰囲気を持っているが、見た目だけ。内に秘めたる熱い魂を持っている。リーダーのフォローや情報に長け、機転、根回しも上手い。彼女の無くてはならない右腕的存在。趣味は釣りと昼寝。中島 譲の弟。
 学生服:長ラン&ドカン 

 親衛隊長 外見年齢19歳〜30歳
 英国系二世男性
 大柄で怪腕の持ち主。豪快な性格であるが、反面ナイーブな所もある。色々と悩み多き青年。ややオッサンくさい。

 特攻隊長 外見年齢17歳〜25歳
 外国人or二世。かなり熱くなりやすく喧嘩っ早いのが玉に瑕。だがチームの盛り上げ役としても一役買っている。仲間、家族想いで意外に優しい一面も? それはリーダーと出会ってから性格が徐々に変わっていったらしい。

 旗持ち 外見年齢 17歳〜25歳
 日本人男性。大きい族旗を風に靡かせ、淡々と役を果たす。普段は無口で控えめ。だが、ここぞという時に出てくる。狂乱舞の喧嘩屋と呼ばれる程、実は喧嘩が強い。副リーダーのケツに乗る。
 短ラン&ドカン 特攻服:黒

 敵対するチーム。

 若い時分のギルバード・エバンスや中島譲など


■注意事項
 必須となっているのはDIANAのメンバー5名。ですが、もしかしたらそれよりも多いかもしれません。その人数は不明。ですので他の役をなさる方が出ても大丈夫です。
 しかし女性はリーダーのみ。他の女性メンバーは一切存在しませんのでご注意下さい。
 配役の決定は皆様の話し合いで、くれぐれも喧嘩のないようお願いします。

●今回の参加者

 fa0047 真神・薫夜(21歳・♀・狼)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa1126 MIDOH(21歳・♀・小鳥)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa5600 伏屋 雄基(19歳・♂・犬)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)
 fa5812 克稀(18歳・♂・猫)

●リプレイ本文


 波止場にある異国人相手のバー『EVANS』。
 薄暗い店内は紫煙と酒の匂いが店に充ちている。
 今は時間が早い所為か客の声は聞こえない。代わりに中島要(伏屋 雄基(fa5600))と兄・譲の押し問答が響く。
「な、なンでだよ! ユズ兄ぃ、今まで楽しくやってきたじゃん。‥‥兄貴も汚ぇ大人の仲間入りをしてぇのかよ。赤ん坊が産まれたって走りゃぁいいじゃねぇか」
「‥‥いつまでも聞き分けのねぇ事を言ってんじゃねぇ、要。兄ちゃん‥‥いや、リーダーの言う事が聞けねぇのか」
 要が兄に楯突く事なんて今まで無かった。彼は譲を尊敬し慕っていたのだ。そしてなにより近い将来、兄の率いるDIANAを受け継ぐと固く信じていた。それがたった今、裏切られたのだ。
「高校入学したてのお前には、まだリーダーとしての素質はねぇ。というより‥‥お前自身がその器を持ち合わせてねぇんだ。闇夜を疾走し止まる事をしらねぇDIANAは横須賀中の悪党を統一した族だ。何をしでかすか解らねぇ連中を束ね、付け狙うくせぇ蝿共を追っ払うのは無理だ」
「ンなのやってみなきゃじゃねーか! 俺にはユズ兄ぃや金ちゃん‥‥他にも仲間がいるんだ。なんだって出来‥‥」
 ドスッ!
 要の言葉を最後まで聞かず、譲はその腹に蹴りを見舞う。突然の一撃に要は床に転がされた。頭に血が上り突っ込もうとするも、黙していた幼馴染みの定岡金三(MIDOH(fa1126))に取り押さえられた。金三は要を押さえつつ譲の動きを角度のついたサングラス越しに窺う。だが至って譲は平然と、
「‥‥もしまだDIANAを継続してぇなら、俺が決めた奴にしろ。でなけりゃ解散だ」
 ピッと写真を投げた。そこには譲が選んだ輩が映っている。しかし要はどうにも納得が出来ない。
「だからなんでだよ?! 解らンねーよ。なぁ金ちゃん。ねぇ、桜田さんだってそうだろ?」
 要は金三と同じく黙っていた譲の補佐役・桜田に問う。が、巨体の男は首を一振り、
「かな坊‥‥終いなんだよ。ジョーが決めた事に誰も逆らえねぇ。それがDIANAの掟だ」
 大きな手で要の頭を撫でる。っが、要は手を振り払い飛び出した。金三が後を追う。
 リーゼントを揺らし金三が扉を抜ける前、譲が呼び止めた。
「‥‥金三。要は熱くなると見境がねぇ。だからチビの頃‥‥俺を真似してポケバイで‥‥あぁその話はナシだったな。だがアイツはお前しか頼れる奴がいねぇ。頼む」
 弟を案じる表情の譲に、頷くと扉をくぐった。
 船留めに座り、海を眺める要に近寄る金三。気配に気付いていたのか、ぽつりと呟く。
「なぁ二人になってもさ、守ろーな金ちゃん。オレ達が唯一の居場所を‥‥」


 インターナショナルスクールに通う日系二世のリサ・ナガセ(ブリッツ・アスカ(fa2321))は、昼の休憩時、誰と言葉を交わすことなく廊下に設けられた窓に凭れ外を眺めていた。
 どんなに空が青く晴れても彼女の顔には憂いの表情が浮び、印象深い緑の瞳は曇っている。
 ほんの少し先の教室や脇を通る少女達が発する屈託のない声に仲間に入れてもらう事をしたかったが、気が進まない。
 溜め息をつき、制服のポケットから紙切れを取り出した。そこに書かれているのはバーの名前と電話番号。
 ジッと見つめ思い出す。
 それは行きつけのバイクショップで働く譲に渡されたものだ。ただの店員だと思っていた彼は巷を騒がすDIANAのリーダーだった。
 突然の勧誘に驚き曖昧に答えていたが、彼から滲んだ心地の良い雰囲気はしっかりと胸に焼き付いていた。
「‥‥連絡してみようか‥‥」
 呟いた時、リサの後ろを歩く女生徒達が立ち止まった。
 日本人形を思わす可憐な容姿の有栖川桜子(真神・薫夜(fa0047))と黒崎綾菜(因幡 眠兎(fa4300))だ。
「どうしたの? 桜子さん。突然止まって?」
「ふふふ‥‥いえね、そこの彼女から‥‥わたくしと同じ押し込められた‥‥野生の匂いを感じましたの。それだけですわ」
 鈴が転がるような美しい笑い声を発する桜子。
 旧家生まれの彼女は生粋のお嬢さんだ。日々習い事を嗜む生活を送るだが、その心中は押さえきれない潜む闇があるよう。
 それが今、リサの持つ荒くれに反応して殺伐としたものを無意識に感じ取ったようだ。
 桜子の意を悟り、綾菜は愛嬌のある顔に凄んだ笑みを乗せる。
「ここでそのような顔を‥‥いけませんわ綾菜、後になさい。それよりもあの情報は本当なのですか? 落ちたものね‥‥ジョーとDIANA‥‥」
 桜子は綾菜の情報の確認をしつつ、リサの後ろを過ぎていった。


 海沿いの繁華街。人で溢れ熱気に満ちているが、ケビン・メルオット(メル(fa5775))が歩くところ筋ができ人が避けて通っていく。
「‥‥どいつもこいつも俺を避けやがる‥‥。ダディやマムと変わらねぇぜ‥‥」
 低く唸るように呟いた言葉はあらゆる人を憎しんでいるよう。二親でさえもだ。たださえ募った苛立ちを吐くように、野蛮な視線をあたりに回す。
「ちぃ、ダディ‥‥今日もいねぇ。どこにいっちまったんだ。一発かまさねぇと気が収まらねぇよ」
 どうやら上手く行かない事を全て子供の所為にし、挙げ句に愛人を作り出て行った父親の行方を捜しているようだ。
 もう一度辺りを見回すと腕時計を見た。まだ小さい針が9を指す手前である。はぁっと息を吐き舌打ち。
 家に帰るには早いのだ。
 そう帰る家があるがそこに温もりはない。マムの愛情は全て弟達に注がれているのだ。ケビンに入り込む余地などない。
 更に苛立った表情で足を進めると、目の前に揃いのライダースを着た二人の少年がいた。いい獲物だとばかりにニヤリと笑むと、
「おい、てめぇら。なにガンくれてんだよ。俺に文句でもあんのかぁ?」
「‥‥なんだこいつ。おい手前ぇこそ、調子こいてんじゃねーぞ」
 付けられた因縁にキレたのは金三。デニムの尻ポケットから獲物ナックルを取り出した。
「獲物がなきゃ喧嘩できねぇとはチンケだぜ。あぁチビだから仕方ねぇか!」
「言わせておけば‥‥。喧嘩なんざ勝ちゃいいんだよ。手前こそDIANAに挑むとはな。見せしめに伸してやっからこいっ」
 口髭を揺るがし叫ぶ金三は、反動を付けて拳を振り翳す。咄嗟に屈み避けたケビン。だが足を振り上げられ避けきれず転がる。
「金ちゃん、何やってんだよ、馬鹿相手にしてる暇があったらメンバーを捜そうぜ」
「ガキぃ、俺たちゃ忙しいんだ。お家に帰って寝てろ」
 やはりDIANAで喧嘩慣れしている金三の方が一枚上手だ。しかしそれで収まるケビンではない。すぐさま起きあがりタックルを決め地面に押し倒す。
「そんな女は知らねぇし、それくらいで勝った気になるなんじゃね!」
 両者鈍い音を立てて殴り合いが始まる。
 そこにドルルっとバイクの排気音が響いた。顔を上げれば赤いライダースに身を包んだ少女。桜子と綾菜であった。
「ご機嫌よう。DIANAさん。丁度良いところにいらっしゃたのね。貴方達二人のクビを頂いていきましょうか。そうすれば二大勢力が一つになるわ。そうわたくし達、MINERVAのモノにね! 皆様、覚悟はよろしくて?」
 そういうが早いかバイクを飛び降り綾菜と共に要に襲いかかる。
「な、なんなんだ?! これは‥‥まいいかっ。俺は暴れられれば最高だぜ!」
 ケビンは容赦なく金三を殴りに掛かる。金三はリーゼントを乱し応戦する。
「ユズ兄ぃから聞てるぜ。お前はレディースの方だな。俺たちゃ喧嘩は男しかやらねぇんだ。出直して総長を呼んできやがれっ」
「どの口が言うの? ナメないでよね」
 綾菜は可愛い顔に似合わず豪腕を繰り出し要を襲う。辺りには鈍い音が響き渡り、再度争いが幕を開けた。


 そんな繁華街のワンブロック先。
「す、すみません‥‥」
 ドゲシっ!
 ここでも鈍い音が響く。
「ふん、その程度の腕で‥‥馬鹿が」
 一撃蹴りを見舞った勢いで玲・スコット(克稀(fa5812))の左耳につく銀のピアスが揺れる。彼は冷ややかな目で気を失った相手を一瞥し、場を後にした。
 人一倍大柄でハーフの所為か周りの目を引き浮いた存在となっている彼は苛立っていた。
「‥‥面白くねぇ‥‥何が楽しいかつまんねぇか解らねぇ‥‥」
 感情をむき出しに唇を噛む玲。そこに騒ぎの声が入る。
「あっちで喧嘩だ! DIANAが暴れてるぞ」
「ほぅ‥‥面白そうだな」
 玲は駆け足で向かう。もの凄い人集りを掻き分け入っていくと凄まじい光景があった。
 男三人に女が二人、男の二人は揃いのライダースで女達もそうだ。入り交じり取っ組み合う彼らは何がなんだか解らない。
「幾ら多勢に無勢でも‥‥って大の男が女と喧嘩か? おっとそこのチビは『大』の男じゃなかったな」
「んだと、聞こえてんぞ! こっちへきやがれウド野郎」
 ズカズカと歩いてきた金三は玲の首を掴み乱戦へ引きずり込む。もう一人新たに加わり更に激しさが増す。
 すでに収拾がついていない乱闘。体力の続く限り行われるのだと思った矢先に、
「いい加減にしな!」
 少女の声ではあるが低くドスのきいた音が響く。っと同時に突風のような風に紛れ拳が炸裂した。当たったのは綾菜。堪えきれず倒れ伏す。
 一同、手が止まりそっちを見ると怒りのオーラを纏い荒々しい形相のリサが向かってくる。強い彼女を見てケビンは飛び出した。が、振り上げられた足をまともに食らいノックアウト。
「何やってやがるっ! 譲さんが心配してたぞ、いい加減ガキくせぇ真似はやめやがれ」
 要に一撃。キッと睨み付けるように桜子を見やると、
「あんた、うちに喧嘩を売ろうってのかい? 生憎とDIANAは喧嘩チームじゃねぇ。走り屋だ。勝負がしてぇなら湾岸に出てこいや。殴りのほうでもきっちり覚悟を決めてこい。ちんけな真似はするんじゃね」
「ふふふ、やっぱり貴女が次ぐのですね。こちらに来て欲しかったわ。悲しいけど‥‥これも逃れられない運命かもしれませんわね‥‥」
 先程まで殴り合いをしていたというのに涼しげに鉄扇を広げ話す桜子。リサは返そうとした時、
「いきなり登場の良いとこ取りとはナシだぜ!」
 肩を叩き、振り返り様、玲は拳を繰り出そうとする。だがリサに先読みされ、その手首を取り見事な投げ技を決められた。一瞬何が起こったのか解らないでいると、掴まれたままの手首に関節を決められ動けない。
「不意打ちするなら殺気を消しな」
 リサのあまりの強さに驚く。そこにけたたましいサイレン音が響いた。
「や、やべぇ、マッポだ。逃げろ!」
「待ちなさい、あなた達! その梟のマークは‥‥MINERVA。それとDIANAね」
 叫び知らせる金三。それを掻き消すかのように鋭い笛音を響かせ警棒を手に走ってくる須加署の婦警、御手洗 真央(槇島色(fa0868))。密告のような通報で現場に来たのだ。
 彼女が場につく前に、
「ご機嫌ようDIANAさん。逃げ切ってくださいね、でないとつまらないわ」
 桜子は綾菜を素早く起こしバイクで逃走する。残されたのは男4人とリサ。
 人集りで逃げ場がない。掻き分けようにも思いっきりぶん回した手足が重く意志のままに動かない。
「馬鹿共、早くこっちへ来い!」
 いつの間に来たのだろう、譲がドアを開け叫ぶ。最後の力を振り絞りケビン、玲、要が人を掻き分け乗り込むと発進させる。
「まだ残ってるわね! あなた達、名前と学校名をいいなさい」
 残されたリサと金三に近寄りながら職質をする御手洗。ここで彼らを検挙すれば日々自分を叱る上司や同僚の鼻を明かせる。
「‥‥仕方ないね。あたしのリアに乗りな!」
 リサは金三の服を引き、御手洗の脇をすり抜けるとエンジンを掛け急発進。疾風のような動きに唖然とする婦警を残し、喧嘩現場を後にした。
 御手洗はきっちりと少女の顔を見た。まるで脳裏に焼き付けるように。そして彼女は数年後、脅威の存在へと変わる。


 バー『EVANS』で怪我の治療をする一同。
「面倒を掛けた‥‥すまないなリサ」
 惨状に呆れ返る譲。要は黙って桜田に手当をして貰っている。
「俺は認めねぇぞ、幾ら譲さんの命令でもがあいつだなんて! なんで女の下につかなきゃなんねぇんだ。それも俺よりデカイ、デカ女」
 写真の輩が彼女だと気付いた金三は、腹ただしげに口にくわえた煙草に火を点けようとするが、玲がひったくり、
「そのリサに助けられた癖に‥‥ほざけよ」
「なんだ手前ぇ、リサにへいこらしやがって。デカい図体はフカシだろが?」
 睨み合う二人。もっとも身長差のため金三は背伸びをしているが。
「いい加減にしようぜ、金ちゃん。ユズ兄ぃはリサを選んだ。それでいいじゃねぇか‥‥」
 トボトボと奥へ引っ込む要。よほどショックだったようだ。
「‥‥さっきから何を話してるか話からないけどさ。あたしはチームを引っ張る気なんてないんだ」
 そういって店を後にするリサ。後を追うように玲、ケビンも出て行った。
 ただただ見つめる譲と金三、そして桜田の三人。


 後日。
 リサの学校で困った事が起きていた。なぜなら変形学生服を着た玲が連日校門の前に立っていたからだ。
「‥‥あんた、いい加減にしてくれないか。迷惑だから来るな」
「そんなこと言うな。俺、決めたんだ。あんたの強さに魅せられて舎弟になるって。あのDIANAとかいうチームも一緒にやらねぇか」
 本音をぶつける玲。彼にしては珍しい行動だ。
「断る」
 あっさりと切るリサ。そこでもう一つ声が掛かった。
「なぁそれに俺も混ぜてくれないか? てめぇらと一緒にいれば、思う存分暴れられそうだ」
 ケビンがどっからか現れた。ヤレヤレと溜め息をついたリサだった。