legend of DIANA  2アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 8.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/11〜07/14

●本文

 ここは波止場の一画に建つライヴハウス兼バーの『EVANS』。
 薄暗い店内は紫煙と酒の匂い、密やかに聞こえる怪しげな会話。そしてオールディズの曲が足を踏み入れた者にまとわりつく。
 陰と陽。独特な雰囲気を持つ店だ。
 興味本位に足を踏み入れただけの者はここで踵を返し、戸を閉めるのはザラ。だが勇気を持って奥へ歩みを進めていくと、落ち着いた色合いの木目カウンター席に座る一人の異国人・英国人カメラマンであるギルバード・エバンスと話が出来る。
「あ、あぁ‥‥話の続きを聞きたいのかい? いいだろう。‥‥ジョー‥‥君も拘わったあの話をさせてもらうよ。本当に彼らの凄さをまのあたりに出来るんだ」
 ギルバードの前に立つ派手なシャツを纏い、ポマードでリーゼントをきっちりと固めたスマートな男は自分の名を呼ばれ、チラリと視線を送るとこくりと頷いた。
「あの後‥‥DIANAは本格的なピンチに陥るのさ‥‥」
 ギルバードはゆっくりとした口調で話し始め、また思い出すように視線を遠くにやった。
 その時、画面はゆっくりとズームアウトし切り替わる。
 映し出された飴色の画面にはこの店‥‥まだ異国人相手のバーだった頃。親から継いだ店を切り盛りする中島譲のトコロに共にDIANAを盛り上げてきたメンバー、巨漢の男が入ってきた。譲は柔らかな笑顔で迎えるが、しかしその手に握られたズタ袋に気付くと顔はやや曇った。
 それが事の起こり。重量のある袋の中から飛び出したのはブツ切りにされた蛇と散った赤い薔薇。
 店に丁度、客がいなかったのは幸い。こんなグロテスクなモノを見せられれば誰でも帰っていくだろう。否、それよりも譲の表情で帰っていくという方が正しいか。
 床に放り出されたモノを見、何も言わない彼ら。譲の顔には先程までその顔に浮かんでいた柔和な笑顔がない。あるのは野獣を思わせる凶暴でかつ冷酷な笑み。どんなワルでも背筋を凍りつくようなモノが浮かんでいた。
 そこで紫煙の浮かぶバーへ画は戻り、ギルバードが映し出される。
「‥‥そうこれは横須賀トップのワル、譲が抜けたチームを喰い潰そうとするチームからの宣戦布告。譲が抜けバラけたチームを潰すのにまたとない機会だから」
 そこでまた飴色の画面へ。
 映ったのは、病院の担架に乗せられ担がれる一人の男。顔の半分以上に包帯を巻かれ誰だか解らない。だが彼が着る上着にはあのスイングトップ。抜き身の日本刀を抱く茨と赤と黒の薔薇とゴシック体で書かれたチーム名『DAIANA 蛇威亞奈』が描かれていた‥‥。
「闇に紛れる、彼らの抗争が始まった‥‥。無論、4代目達もDIANAとして参戦したいところだったが、譲は止めた。なぜならまだDIANAのファミリーとしては幼すぎたからだ。しかしそんな中、譲の身にも大変な事が降り掛かった‥‥そこで意を決した4代目達が動き出した‥‥」
 声に合わせ、まるで馬が嘶くようなバイクの排気音が響き、飴色だった画面がフルカラーへと変わり、流れ出すテーマ曲。

『明日のヒーローへ』
  無敵のヒーローが空からやってくるような期待と
  何も起こりやしないという現実を 両隣に座る僕らの明日
  一歩進む間に この世界はどれだけ変わるのか

  大人の言う事も分かるなんて言って まだ幼い顔で笑う時もある
  それでも分かり合えない日は 言葉も上手く形にならない

  そう、誰もがたてる誓い忘れないで
  誰かの後ろからじゃなく 自分の足で来たんだ
  そう、大勢と同じ道を行く時も
  足跡辿るんじゃなく 自分の足で行くんだ 

 ギルバードの話による、深夜の海岸沿いを湧かせた走り屋チーム・DIANAの伝説が幕開けである。


■ドラマ『legend of DIANA』に出演して下さる方を募集します。

 英国人カメラマン・ギルバード・エバンスが20年前の日本で体験した出来事が、ドラマとなりました。出演して下さる方を募集致します。

 リーダー 外見年齢17歳〜23歳
 日系二世or三世 蛇威亞奈の紅一点。必ず女性である事。
 制服姿は大人しめの優等生。だが名を背負ったライダースとサングラスを着用し、バイクに跨ると変貌。
 凶悪な暴走族 蛇威亞奈を引っ張る凄腕、気っ風のいい女性へと変わる。走り・喧嘩共に負け知らずのレディ。己の信念を貫くその姿に男子生徒のみならず女生徒達からも憧れられている。

 副リーダー 外見年齢17歳〜25歳
 日本男性 
 一見、穏やかな雰囲気を持っているが、見た目だけ。内に秘めたる熱い魂を持っている。リーダーのフォローや情報に長け、機転、根回しも上手い。彼女の無くてはならない右腕的存在。趣味は釣りと昼寝。中島 譲の弟。
 学生服:長ラン&ドカン 

 親衛隊長 外見年齢19歳〜30歳
 英国系二世男性
 大柄で怪腕の持ち主。豪快な性格であるが、反面ナイーブな所もある。色々と悩み多き青年。ややオッサンくさい。

 特攻隊長 外見年齢17歳〜25歳
 外国人or二世。かなり熱くなりやすく喧嘩っ早いのが玉に瑕。だがチームの盛り上げ役としても一役買っている。仲間、家族想いで意外に優しい一面も? それはリーダーと出会ってから性格が徐々に変わっていったらしい。

 旗持ち 外見年齢 17歳〜25歳
 日本人男性。大きい族旗を風に靡かせ、淡々と役を果たす。普段は無口で控えめ。だが、ここぞという時に出てくる。狂乱舞の喧嘩屋と呼ばれる程、実は喧嘩が強い。副リーダーのケツに乗る。
 短ラン&ドカン 特攻服:黒

※できれば引き続き入って下さる方は同じ配役でお願いします。また変わってしまう場合は前回の役を参考にしてください。

その他の役 敵対するチーム。
 若い時分のギルバード・エバンスや中島譲、そしてまだ未公開のメンバーなど。

■注意事項
 必須となっているのはDIANAのメンバー5名。ですが、もしかしたらそれよりも多いかもしれません。その人数は不明。ですので他のDIANAのメンバーとして出てくださっても大丈夫です。
 ですが女性はリーダーのみ。他の女性メンバーは一切存在しませんのでご注意下さい。
 配役の決定は皆様の話し合いで、くれぐれも喧嘩のないようお願いします。
 また適役・適役がいらっしゃらない場合、指示を頂ければNPCが演じますので、ご安心下さい。
 またこのドラマはフィクションではなく、ギルバードが語るほぼノンフィクションをいう設定になってます。ですので役設定・武器等はリアルに懸け離れたモノの使用はあまり好ましくありません。あまりに不自然ですと反映できませんので、ご理解下さい。

●今回の参加者

 fa0047 真神・薫夜(21歳・♀・狼)
 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa1126 MIDOH(21歳・♀・小鳥)
 fa2321 ブリッツ・アスカ(21歳・♀・虎)
 fa5600 伏屋 雄基(19歳・♂・犬)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)
 fa5812 克稀(18歳・♂・猫)
 fa5889 藤堂直哉(21歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文


 ここはバー『EVANS』。カウンターに座るギルバードが語り始める。
「‥‥僕が聞いた4代目結束の話をしよう。チームの終焉がそこまで迫っていた時の事さ‥‥」
 彼の瞳が思い出すように遠くを見つめた。とたんにバーの扉が開き、そこには若い時分の譲達がいた。


 波止場にある異国人相手のバー『EVANS』は、異様な雰囲気が満ちていた。
「‥‥なんだこりゃ」
「見りゃぁ解るだろ。蛇のブツ切り花弁添えだ」
 突飛な声を上げるケビン(メル(fa5775))に突っかかる定岡金三(MIDOH(fa1126)。要(伏屋 雄基(fa5600))は兄、譲に言われる前に掃除用具を取りに行く。
 それぞれ反応がある中、壁に寄りかかり見据えるリサ・ナガセ(ブリッツ・アスカ(fa2321))と玲・スコット(克稀(fa5812))。
「胸くそ悪ぃ事しやがる。ジョーの結婚披露宴やリサの襲名式が近くあるっていう時によぉ」
 ボックスに座るDIANAのひとり・藤堂(藤堂直哉(fa5889))が吐き捨てるように言うと、答えるように電話の呼び鈴が鳴り、出た彼の顔が硬直した。
「‥‥河村と篠原が病院に担ぎ込まれたって。二人とも命に別状はないが大怪我だそうだ。ヒデによりゃぁ相手はMINERVAだったらしい。ジョーどうする?」
 藤堂の話しに誰もが譲の指示を待つ。が、黙ったままだ。
 業を煮やしたケビンが、
「カタキを取りにいかねぇんですか! 己の走る道を貫く為、楯突く者は血を持って抗う。‥‥それがDIANAなんだろ」
「‥‥血の気を引っ込めろ、坊主」
 一枚のレコードを手にした譲の一喝が飛ぶ。金三は黙って彼を見ている。長年可愛がってくれた譲の心情を読んでいた。しかしまだ入りたての三人や蟠りのある要には解らない。
「じゃぁ、どうしろっていうんだよユズ兄ぃ。このまま黙ってるのかよっ」
 噛み付く要に譲は睨み付け、
「坊や共の出る幕じゃねぇって言ってるんだ。大人しくしてろ。‥‥出てくる」
 レコードを掛けると藤堂を連れ店を後にする。戸の閉まる音の後にオールディズの曲が響いた。
「何も出来ない‥‥どうして良いか分からない‥‥。これじゃ今までと同じだ」
「ちぃっ、どいつもこいつもガキ扱いしやがって! 俺は一人でだって戦うぜ!」
 ギリと歯噛みする玲。吹き出す感情を押さえるのに必死だ。逆にケビンは怒りも露わにテーブルを拳を叩きつける。
「おい、待てよお前ら! 俺は仲間として迎えた憶えはねぇ。これは俺達の問題だ。しゃしゃってくんな」
 金三は傍にいたケビンに怒鳴り、壁際に立つ玲、リサに刃のような視線を投げつけた。
「うるせぇ、チビの女顔野郎。手前ぇこそ突っかかってくんな」
 ケビンは腹いせを撒き散らすように金三の胸倉を掴む。が、最大の地雷を踏まれた金三はいきなり頭突きを食らわし、床に倒したケビンに馬乗り。
 しかしケビンも瞬間的にその腹に蹴り飛ばす。テーブルに強か背中を打った金三に向かって、
「前回の蹴りの分は返したぜ。んでこれが頭突きの分だ!」
 足を振り上げるが、玲が羽交い締めにし止めた。金三を押さえたのは要。
「‥‥ケビン、揉めている場合じゃねぇ」
「金ちゃんもだよ。店を壊す気かよっ!」
 喧嘩の直後出て行ってしまったリサを追いケビンと玲が店を出る。リサは愛車のエンジンを掛けながら、
「彼はDIANAを変えようとしている。私達の為に‥‥」
 譲が口に出さなかった言葉を勘付いていたようだ。


 繁華街から離れていない古い倉庫街の一角。
「DIANAとて個々を大勢で襲えば無力。いくら横須賀一の悪党集団といっても所詮はそんなもの。喧嘩に規則も反則もないのくらい解っているのは、あちらも同様です」
 真っ赤な特攻服に身を包んだMINERVA【魅祢屡罵】の幹部でレディースの頭・有栖川 桜子(真神・薫夜(fa0047))が話す。
 目前の強面の男達は彼女を崇めるように声を聞き入っている。
「私達が天下を取るのはもう間近。けれど油断は禁物ですわ。一、二代目直伝の喧嘩をしかけるジョー達は脅威。くれぐれも気を引き締めていきなさい」
 リサと同じ高校に通う一つ上の彼女は名の知れた旧家の娘だ。夜な夜な息苦しい家を飛び出し、族の幹部を勤め疾走する彼女。桜子もまた力の放出する場所を求めているようだった。
 檄する桜子をこっそり外壁の向こうから覗き見るのは新米婦警の御手洗 真央(槇島色(fa0868))。
 彼女は、前回の責任から繁華街や倉庫街を日夜問わずミニパトでパトロールを続けていた。悔しさと根の真面目さによって不眠不休で動いた数日。ここでふいの睡魔に襲われ、近くで仮眠していたのだ。だがその眠りも特有のマフラー音で妨げられ、今に至っていった。
 乗り込む事を考えた御手洗は警棒を握りしめる。が、口を封じられ強い力に引きずられてミニパトの方へ連れて行かれた。
 ようやく邪魔立てをした輩、金三を睨みつけ、その腕を乱暴に振り払った。
「何をするの! あなたもあの連中と一緒に逮捕するわよ」
「おいおい、俺は無謀なあんたを助けてやったんだぜ。一人で乗り込むのは無茶すぎだ」
 御手洗が凄もうと軽くかわす金三。確かに彼の言う通り、少し走り過ぎたと御手洗は考えた。
「解ったわ‥‥」
「ならさ、礼に電話番号教えてよ。あんた、好みなんだよ」
 紙とボールペンを出す金三。怒り心頭となる御手洗だが何かの策に使えると黙って番号を書いた。それは交通課、自分の電話直に繋がるものだ。
「サンキュー。あんま無茶すんなよ」
 受け取ると金三は乗ってきたミニバイに跨り闇に姿を消した。


 カウンターの隅でギルバードは呟く。
「あれから数日。譲は戻ってこなかった。その間にも抗争は水面下で激化していき、一層の悲劇が訪れた」
 要は兄の帰りを待ちながら、開店間際の掃除に勤しむ。
 ジリリーン!
「‥‥もしもし。あ、朋子さん。‥‥ユ、ユズ兄ぃが病院に運ばれたっ?! 親父ぃ俺、母ちゃんに知らせてくる」
 相手は譲の婚約者だった。かなり切迫した様子。要は店を飛び出そうとした時、また電話が鳴り、慌てて出る。聞こえてきた声は朋子とは別のもの。桜子だった。

 その数十分後。市内にある病院の一室にいた。
 意識のない譲は包帯だらけの姿。病室の外で目を赤く腫らす朋子を慰める母。要はやるせない気持ちで一杯だった。
「‥‥ユズ兄ぃ。俺、解らねぇ。ただダチと走るのが楽しいってのは駄目なのか?」
 要はグッと涙を堪え呟くと、家路につく。
 玄関を入り、自室には行かず隣の譲の部屋へ。
 バイク雑誌とレコードだらけの部屋。サイドボードに置かれたDIANAの紋章を模したヘッドの付くネックレスを見つけた。それは総長の印だ。
 要はそれを手に部屋を後にした。


 自宅に帰った金三。母に呼び止められ茶封筒を受け取った。開けてみると中から譲のネックレス。そして紙が一緒に入っていった。
『ユズ兄ぃがMINERVAにやられて怪我した。DIANAの旗はリサ、玲そしてケビンと金ちゃん、お前達で護ってくれ』
 簡単な説明が書かれた要の手紙を読んで金三は低く唸りとばす。
「あンの馬鹿がぁ!」
 母が呼び止める声も聞かず、猛ダッシュで店へ向かった。


 あの古い倉庫街の一角。桜子とMINERVAの猛者達を前に土下座をする要がいた。
「俺達の事は放って置いてくれ! スカNO1はあんた達でかまわねぇから」
「潔の良い方は好きですわ。でもその言葉と何時までも過去の栄光に囚われている事とは違いましてよ? 今正に誰もが認めるDIANAから主導権を奪い取ったのはわたくし達。貴方達の黄金期は過去の産物に成り果てる‥‥。DIANAの要さん。チームの人数はどれくらいいらっしゃるの? それにジョーの入院先はどちらかしら? 丁度いい機会ですから暫く滞在して頂き、聞ける事は全て出して貰いましょう。連れてお行きなさい」
 桜子は冷徹な笑みで指示を出す。奥へ引きずられて行く要。そこから鈍い音とくぐもった声が聞こえてきた。


 場は『EVANS』。悲しげな表情でボックス席に座るギルバードの視線の先には、リサ・玲・ケビンを前に土下座をする金三。
 無論、彼らにはギルバードの姿は見えていない。
「呼び出してすまねぇ。実は昨日の夜、ユズ兄ぃがやられて入院した。んで要の野郎が早まって一人でMINERVAに乗り込んでちまった。DIANAの先輩方を呼び出す術が俺には解らねぇし‥‥それに頼めねぇ。お願いだ! 俺に力を貸してくれ」
 床に頭を擦り付ける金三にリサが、静かに答える。どうやら譲の怪我の状態を聞き心中怒りを沸騰させたよう。
「解った。で、場所はどこだ?」
「は‥‥? 行ってくれるのか?!」
 あっさりと承諾したリサに些か戸惑う金三。
「ピンチなんだろ‥‥いいも悪いもあるか!」
「なんだよ要の奴、俺も誘ってくれりゃいいのによ。しかし独りで乗り込むなんざ見直したぜ! 当然、行くに決まってんだろ。丁度、めちゃくそに暴れてぇと思ってたんだぜ」
「金三。この騒ぎを収められるのは1人しかいねぇだろうが。いつまでもド頭下げてねぇで行くぞ、さっさと案内しろ」
 口々に話すリサにケビンと玲。金三が拍子抜けするほど容易く承諾した。金三は己の拘ったチームについて考えが変わり出す。だが、今はそれを考えている余裕はない。一刻も早く要を助けに行かなければなのだ。
「お、おう! こっちだ」
 素早く立ち上がりドアを抜けた。


 古い倉庫街の一角。壁に隠れ様子を見る玲。
「2〜30ってとこだな。一人あたま5〜7人ってところか‥‥。裏に回れば、もう少し楽かもな」
「面倒くせぇ事は大嫌いなんだ。正面から乗り込むぜ!」
 言うが早いか一斗缶を手に飛び出すケビン。まるでミサイルのようだ。釣られ飛び出す玲とリサ、そして金三。
「来ました! DIANAの若造共です!」
 ドグッ!
 切り込むケビンの一撃を食らいぶっ倒れる男。玲は目の前に立ちはだかる男に長い足を活かし思いっきり蹴りを食らわす。
「固まれっ! 絶対に背中を見せるな、前の相手に集中し確実に仕留めていけ!」
 怒声に近いリサの号令。誰もが従い、ほぼ一列に並び襲い来る敵を薙ぎ倒していく。無論、リサも一切の容赦なく鳩尾や顎、関節等の急所を狙い確実に相手を動けなくする攻撃を仕掛けていった。
「いた、要!」
「き、金ちゃん‥‥」
 酷く顔を腫らす要。駆け寄った金三に小さく反応した。
「統べる者が居ないだけで、散り散りになる‥‥そんなチームに用はありませんわ。これより先、この場はMINERVAがこの地、横須賀を配下に置きます。やっておしまいっ」
 桜子は冷酷な声で弱点を示す。っが、男に一撃、拳を食らわせ伸したリサは、
「どこに目ン玉を付けてやがる。DIANAは堅い結束で結ばれたんだっ! あんた達の好きにはさせない。横須賀を駆けるのはこのあたし達だ!」
 凄みのある啖呵に誰もが喧嘩の手を止めてしまう。
 そこでサイレン音が響き、怒濤のような足音が倉庫を襲った。
「動くな! 監禁及び傷害の現行犯だ。全員大人しくしろ!」
 御手洗がメガホンを手に警棒を構え、他の警察官と共に出口付近を包囲した。次々に捕縛されるMINERVA達。
「ヤベェ、ズラかるぜ」
「要、背中に乗るんだ。ケビン手伝え!」
 玲は素早く要の前に屈む。ケビンが手を貸し背中に乗せると猛ダッシュ。ケビンとリサは玲を援護しながら出口に急ぐ。
 傍では襲い来る男達を倒しながら、煙幕で目くらましをする金三。実は御手洗を呼んだのも彼の仕業。
 その横を過ぎる時御手洗は低い声で、
「今回お前達は被害者ようだから見逃す。が、次はないと思え。さっさと行け!」
 金三とリサと睨み付け言い放つ。彼らはそのまますり抜け出て行ったのを見た御手洗は、
「私も甘いな‥‥次は捕まえる!」
 意を決したようだ。

 帰り道。玲に負ぶさる要は、
「ありがと‥‥な、俺、スカ潮風が好きでさ‥‥あの風に血の匂いをもう混じらせたくないんだ。リサ、あんたにスカの潮風を護って貰いてぇ」
「うるせー重いから動くな、ボケ」
「あぁ、解ったよ」
「俺ぁ小難しい事はよく分からねぇ‥‥。でもあんたらとつるむのも悪くなさそうだ」
 照れ隠しで悪態を付く玲。薄く微笑み答えるリサ。ケビンは頭を掻きながら一言。黙って頷く金三。
 新たなDIANAが誕生した瞬間だった。


 譲の病室。意識を戻した彼を見舞う金三。
「なんとなく譲さんが言った事が判ったぜ‥‥。昔の血生臭せぇDIANAはもうねぇ。譲さんが守ったエリアは俺らの新しいチームが守っていく。‥‥リーダーが女なのがちょっとな。いや、にしてもたいしたタマだよ。リサって奴は。もしかしたら譲さんを超えるかも知れねぇぜ。俺は腹括った。リサをリーダーにDIANAを盛り上げていく」
「そうか、金三。任せたぜ。要やリサ、玲とケビンにも伝えてくれ。俺らが光に抗って血流し築いた道を進むこたぁねぇ‥‥とな」
 譲は清々しい表情で話す。そして、
「にしてもお前、俺の見舞い食ってんじゃねぇ。後でヤキ入れてやる」
「‥‥う、すみません」
 果物を頬張る金三は凄まれて怯んだ。


 昼間、人影のないバー『EVANS』。電話のベルが響き、留守電に切り替わった。
『DIANAさん‥‥。MINERVAの有栖川よ。ねぇ知ってます? 夜は月の綺麗な晩だけと限らないこと。陰った月程、儚く頼りないものはありませんのよ。DIANAさん、今回はこっちが折れたという恰好を取りましたが、いつでも戦争が出来る準備は整ってますのよ。‥‥油断なさらないでね」
 ブツッ! ツーツー‥‥。
 無機質な音が響いた。