とにかく捕まえろ! 7アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 07/16〜07/18

●本文

 さてここは毎回、色々なモノが飛び出しては追いかけるという番組によって一躍有名になったフロア。そう‥‥名物ディレクターもといプロディサーT氏とお守り役スタッフA君が生息する会議室のある階。
 だがここ数ヶ月ばかりアニマルや昆虫、魚に人形型幽霊‥‥んでもってT氏自身やらA君が放たれることなく、平穏な毎日が送られていた。
 T氏は肩たたきにあったのだろうかって?? いやいや、そういうことはない。
 以前ほどの気力に欠けるが元気でいる。フロアをひっちゃかめっちゃかにしてさんざん始末書を書かされ、少しは懲りたようで最近はめっきり大人しくなっていた。
 それはA君にとってまさに最良の日々。あの試練の日々を神様・仏様はちゃんと見て下さり、彼に至極の時を与えてくれたのだ。
 これで滞りなく仕事が出来る。ということで企画書を作る為、真顔でノートPCに向かっていると、かちゃかちゃと陶器が触れ合う音を立てながら湯気たつ入れ立て珈琲が脇に置かれた。
「お帰りなさいましぃ〜、A君様。珈琲をお持ちしましたぁ。お砂糖とミルクを入れしましょうか?」
「うん。砂糖は一つ。ミルクはたっぷり‥‥って、なにお馬鹿をやってんですか、プロデューサー‥‥」
 美少女アニメの声を真似たダミ声が降ってくる。つい行きつけの店の如く返答してしまうA君だったが、違和感を感じ顔を上げた。
 その目に飛び込んできたのはパステルイエローの可愛いフリフリメイド服を着用し、砂糖壷とミルクピッチャーを手に立つ未確認生命体(UMA)となったT氏。突っ込みドコロ満載なネタにA君は怒りとも嘆きともつかない感情とゲテモノを見たくないとでもいうように手で顔を覆い俯く。
 そんなA君にT氏は何を勘違いしたのか嬉し泣きをしていると思ったらしい。彼は羞じらいながら語り出す。
「頑張っているA君に、メイドさんからのエールなのだ。眠気覚ましの珈琲だったら七味やハバネロも投入可能なのでぇす! きゃぴ☆」
 T氏にしては珍しく気を遣ったというか、素っ気ない備え付けのプラスチック容器でなく陶器のカップ(無論ソーサー付き)に注いだ点はポイントは高い。が、いかんせん湯気の向こうの今風の化粧を施した顔はあまりの不気味でせっかくのポイントを大暴落させていた。
 だったら女性スタッフにさせて持ってきてくれよっ! っと、A君は心で舌打ちしつつ、
「今時流行らないブリッコを‥‥うぷぷっ気色悪い」
 顔を覆いながらも突っ込む。無論、ここではないのは承知の上。
「いやだなぁA君よ。ブリのコはハマチだよ。因みにオタマジャクシはカエルのお子様ねw」
 あっさり返すT氏。その受け答え故意なのか天然なのか判断が難しい。っが、そこでA君の悪い予感が働いた。
「き、貴様ぁ、もしやまた何か悪さをっ?! カエルといえば今日の撮り『おもしろ両生類王国』用に納入されたという話がきちゃいない。何をしでかしたっ全部言え、すっかり言え、きっちり言えっ!」
 久し振りにA君の絶叫が会議室に木霊し、縮み上がる他のスタッフ達。だが相も変わらずT氏には柳に風のよう。悪びれることなく言い放つ。
「いや、君が忙しそうだったから俺が確認をしておいただけだ。だがどうにも小さな容器に入れられてのが可哀想になり放しちゃった。んでついでだから、生活環境に近づける為、別発注のザリガニも一緒に放した。快適そうに廊下で遊んでるよ」
「だおあ‥‥それはザリガニではなくロブスターぁぁ! しかも『料理の重鎮』で使う予定のだ。貴様は何をしでかして頂いちゃってるんだっっ!」
 A君は混乱のあまり変な日本語となり、怒りの為小刻みに震え今にもT氏を襲いかかろうとせんばかり。
 そこで他のスタッフから声が掛かった。
「お取り込み中に悪いけど、本気で不味そうですよコレ‥‥」
 廊下を覗けば、大小、その色・形がユニークなカエル達がピョピョーンッと跳ね回り、傍を這うロブスター達は互いのテリトリーを巡っていざこざ勃発という、とんでもない光景。
「‥‥解った。いつものように捕獲作戦だ。例にも漏れず追い込みスタッフと出演者、それを撮影してくれるカメラマンの手配。道具も手分けして集めよう」
 A君は的確に指示を飛ばす。
 ――数分後、数箱の段ボールを前にした彼は笑いたいのか泣きたいのか、解らない表情で立っていた。
「お前ら、いつもの事だが、なぜちゃんとした道具を集めて来ない? 出演者の苦労を解ってあげようよ」
 そこにあったのは鍋掴みや、タモや洗面器に盥など。あとは出演者達が持ち込んだモノで賄う気らしい。しかしもう番組で使うため時間がない。これでやるしかないのだ!

■出演者募集
 またしても急遽、企画となった『とにかく捕まえろっ! 7』。カエル・ロブスター捕獲大作戦を決行します。跳ね回り動き回る彼らが平気な勇者(猛者)方を大募集します。ただし子供も視聴していることがありますので、色々とやりすぎないようにお願いしますね。
 我こそは! と思われる腕自慢のあーた!! ご参加をお待ちしております。
 申し忘れておりましたが、彼らに同行してくださるカメラマンさん数名を含む撮影クルーも同時に募集しております。
 どうぞ奮ってご参加ください。

■注意事項:フロアは閉めて逃げられないようにしています。高級食材もあるので注意して扱ってください。
 捕獲物情報:アマガエルやらウシガエルが合わせて数十匹。はたまた珍しい外国産カエルなども混ざってます。もちろん撮りの行われる番組通り色々な種類の両生類も入ってる模様。
 そしてロブスター。素手で捕まえるのは危険が伴います。ご注意下さい。なお彼らは料理番組『料理の重鎮』で使う為、足一本でも欠けたら大変です。
 あまり無理に動いて踏まないようにお願いします。またフロアを汚したりしたら罰金が待ってるかも知れません。

 ‥‥と早急に作られた企画書が配られた。
「企画書は責任を持って俺が、お偉いさんの所に提出しOKを貰ってくるよ」
 一読したT氏はA君の企画書を手に会議室を出て行った。お偉いさん方に合う前に一つ注意事項を加える。
 企画は見事通り、浮き足立つT氏。A君が気付いた時は後の祭り。
 昔流行ったモジャモジャ頭がトレードマークのデカのごとく第二の絶叫。
「な、なんぢゃこりゃぁぁ?!」
 加えられていたのは『意気消沈なA君を慰める為、参加者全員メイド服を着ること』だ。なお却下の場合も書かれている。『しない場合、罰として速やかにカエルの着ぐるみを着用の上、夜の危険なお医者さんごっこに参加すること』だそうだ。
 そこに落書きが一つ。それは術用メスを手に腹黒い顔をしたA君の似顔絵。
 こんなT氏の事だ、何をするか解らない。

 ■内緒の注意事項
 沢山の人間が出入りするTV局での撮影のため、獣人は禁止。半獣人になられる場合、ばれないようにしてください。

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)
 fa2910 イルゼ・クヴァンツ(24歳・♀・狼)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa3982 姫野蜜柑(18歳・♀・猫)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)
 fa5003 角倉・雪恋(22歳・♀・豹)
 fa5440 瑞雲 カスミ(22歳・♀・狼)

●リプレイ本文


 お馴染み彼の会議室。毎回、A君が発する一触即発モードは部屋の隅に設えた更衣室から聞こえる出演者達の華やいだ声と室内に漂う何ともいえないフローラルな香りで相殺されていた。
 男子たる者、そんなものなのだ。っと、勝手に豪語するT氏。彼の隣で深々相づちを打つのは百鬼 レイ(fa4361)。スタイリストの中松百合子(fa2361)によってサーモンピンクのプリフリミニスカメイド衣装を着用し可愛く(?)変身を遂げた。
 因みに今回10名の出演者の中で唯一の男子である。
「メイドアヤカにゃんニャ〜☆ ヒカルちゃんに着せて貰ったニャ〜。似合うかニャ?」
「うふふふ、メイド服を着て蛙とロブスター捕獲作戦ですか‥‥。面白そうですねぇ、あたしもお手伝いいたします☆」
 更衣室から出てきたアヤカ(fa0075)は、ふんわりミニスカの衣装だ。共に参加した友人のヒカル・マーブル(fa1660)も、やや丈の長めな衣装に着替え、三つ編みに結った金糸の髪に同色のリボンを付けている。
 アヤカはA君を客に見立てお披露目会。目のやり場に困る彼に、助け船を出すようにティタネス(fa3251)が踝までのロングスカートを摘み照れながら登場。
「ど、どうかな‥‥T氏よりはマシかな?」
「うん、馬子にも衣装! 俺よか似合ってるよ」
「なんちゅー失礼な事を言うてんねんっ! というか今回の企画にメイドはいっこも関係あらへんやんっ」
 すぱこーん。
 全くもって褒めていないT氏。すかさず突っ込みアイドル豊浦 あやね(fa3371)が愛用のハリセンを思いっきり見舞う。
 まさに某教育番組で培った腕前。昔取った杵柄である。勿論、彼女もメイド服だが中松の用意したA君行きつけの店のモノではなく、番組で着用したものであった。
「お、俺をぶったなぁ〜‥‥社長にもぶたれたことないのにぃ!」
 一応偉いT氏に対しての不適切? な行為に張りつめた状態になると思いきや、A君はこっそり親指を立てポーズ。
 意味不明な文句をたれるT氏に、シンプルなメイド衣装のイルゼ・クヴァンツ(fa2910)は、相変わらずの彼にクーラーが不要な程の冷めた視線を投げる。
 最近、大人しかった事について改心したのだろうと思っていたらしいが、甘かった模様。やはりなんとかは死んでも‥‥だ。
「そういえばメイド服なんて初めてだわー、若い子向けの衣装っぽくてちょっと恥ずかしいかなぁ、でも思えば、あたしが十代の頃はメイド服なんて文化は‥‥げぶんげぶん‥‥」
 スルーと冷たい視線に凹んだT氏が不穏な気配を漂わせるも、あっさり切り替えたのは中松にメイクを施して貰った角倉・雪恋(fa5003)。
 容姿はかなり若いのだが、言葉の端々に滲む歳が見え隠れ。彼女も咳払いで誤魔化す。
「そうねぇ、私もメイド服を着る事になるなんてね‥‥まさかだったわ」
 角倉の隣で話す瑞雲 カスミ(fa5440)もミニスカの裾が気になる様子。
「萌えるべきか、ネタになるべきか、それが問題なんだ‥‥ということでとぅ!」
 彼の舞台名台詞を決める姫野蜜柑(fa3982)は、フリプリなメイド姿で苦悩の表情を浮かべていた。どうやら蛙の着ぐるみネタもオイシかった模様。
 と言うことで、おもむろに顔だけ出せる蛙の被り物と、手足を似せたグローブ&スリッパを装着し、蛙型メイドへ変身を遂げた。
「みんなの着付け終わったわね。私はカメラクルーの方に回るわ。ところでT氏、裏方もメイド服着るの? 言われればそうするけど、実年齢34が着るにはある意味犯罪じゃないかしら?」
 中松はメイク道具を片付けながらT氏に質問。
「当然! ゆりちゃんなら似合うってw なんでしたら着替え手伝おうk‥‥」
 ドグッ。
 どさくさに紛れとんでもない事を言うT氏に豊浦とA君の必殺な一撃。
「えぇ、俺以外の参加者全員が着るのが条件ですので、お願いしますね。中松さん」
 A君は中松の背中を押し着替えを促す。彼女も押されながらも彼に問う。
「ねぇA君はミニスカフリル派だったのね。趣味は人それぞれだから、とやかく言わないけど。私の聞いた話では派手なメイドのお店ではメニューに当たり外れが多いって話があるんだけど、どうなの?」
 綺麗なお姉さんの質問にしどろもどろの彼はある意味、見物であった。


 さて番組開始とばかりに会議室の扉が開かれた。彼女達+男子1の目に飛び込んできたのは亜熱帯パラダイス、沼地と海へようこそ☆ な風景。よもやここがTV局のフロアだと忘れさせる程、凄まじい画である。
「おぉ帰りぃぃなさいませぇぇ御蛙さまぁぁ! 自分‥‥じゃなくてあたくし、可憐な花々の中に咲く一輪のラフレシア‥‥いやいやメイド男子の百鬼がおもてなしいたしますわぁぁ」
 画に負けず、凄まじい声で蛙達にご挨拶を申し上げた百鬼は、タモを如意棒の如くぶん回し捕獲開始。
 ミニスカが捲れ、見えてしまうあられのないモノで放送事故となろうがノープロブレム。構うことなく動き回る。
 これは蛙、ロブスター達&観ている男子諸君には天誅殺な画。しかし彼は男子でもフリプリが似合っちゃうんだゾ☆ の心情を貫き、猪突猛進。誰も止めることは出来ない。皆、メイドならぬ冥土へ送られる気分になろうが‥‥だ。
 百鬼は大小様々な蛙、扁平なコモリガエルやら真っ赤なトノサマガエル、可愛いヒメアマガエル達をタモに入れては、瑞雲の隣にある籠へ移していく。
 無論、彼ばかりに任せるわけではない。
「正直、足回りがキツくて不利だ‥‥。ロブスターは食材として扱うにしても、こんなに沢山の蛙は何に使うんだか‥‥。サプライズネタか?」
 瑞雲はぼやきつつも、こそっと足を蛙達の間に入れながら軍手を嵌めた手で掴み籠へ移す。勿論、跳ねて逃げられないよう段ボールの蓋と重石をすることを忘れていない。
 同様に角倉も、塵取りと箒で蛙を押さえては入れていった。
「う〜ん蛙ばかりだね。けど外国産の蛙はホント綺麗なの多いな。あ、これ牛蛙みたいだけど後頭の毒袋があるケイン・トードだ。鰐や蛇でも数分でっていうくらい強力だから、気を付けて! 蛙って意外と毒がある種もいるんだよね。主に皮膚に含まれる毒だから食べたりしない限り大丈夫なんだけどさ。ところでサンショウウオとかも両生類だけど珍しいのいるかな?」
 ティタネスは様々な種類を見、期待に目を輝かせ見回す。生物図鑑にある蛙を見つけ細心の注意を払いながら掌に載せるとカメラ前へだす。
「何で毒蛙まで居るんだよーーっそんな危なっかしいモン、何で取り寄せたりしたんだーー!?」
「それは番組で使う予定だったんだから、居てもアリなのだ! ナハハハ‥‥うぎゃぁっ!」
 瑞雲は驚き抗議をするも会議室のドア向こうでこっそり見ているT氏によってアッサリと返される。
 しかしそんな彼も顔にイカの切り身に食らい付いたロブスターが乗っかった。
「あ、ゴメン」
 やったのはティタネス。彼女は手にした蛙を籠の中に入れ、先に廊下のあちこちで抗争を巻き起こすロブスター捕獲を試み、ルアーを持ち出したのだ。
 作戦は成功、抗争そっちのけでイカに食い付くロブスター。くぃと引き上げたところに運良く彼が居たのだ。ティタネスは誤魔化し笑いを浮かべながらロブスターをタモに入れバケツへ。
 中松はティタネスの好プレーをハンディカムでバッチリ捕らえていた。彼女は微笑み、次の画を探しに振り返ると、ティタネスのように釣り糸を垂らすアヤカを発見。
 なぜか彼女は会議用テーブルの上に乗っている。同じようにポットを傍に置き横座りするヒカル。さながらご主人はクルージングに出掛けメイドさんは待ちながらも釣りを楽しんでいるっといった画だ。あまりの暢気さにズッコケそうになる中松。
 しかしここで転けては蛙を潰しかねないっと堪え、撮影開始。
 二人はニッコリと微笑み、
「なかなか釣れないニャ〜‥‥蛙以外のモノが釣れそうで、ドキドキだけどニャ。そだロブスターの方に近づけてみるニャ☆ おぉ振り上げたニャ!? あの鋏は怖いニャね〜」
「ロブスターは昔、平気で素手で捕まえていましたの‥‥。けれど鋏は危ないですわね、気を付けて。ところでアヤカちゃん、疲れてません? お茶にしましょうか」
「うん、あ、見てニャ〜鞠みたいな物体が釣れたのニャー」
 暢気な会話が繰り広げられる中、釣られた毒々しい模様のベルツノガエル。ヒカリは恐れることなく軍手を嵌めた手で掴み水槽へ移した。その間、餌を下げ蛙の群れに放つアヤカ。
 ちゃんと捕まえているが些か不安に駆られるA君は眉根を揉んでいる。無論、中松はそれもハンディカムに収める。
 さて賑やかな一方で赤褐色や薄い黄色、灰色に綺麗な青紫色のロブスター達に挑むイルゼと豊浦、そして姫野。
 傷つけ厳禁という事もありイルゼは、掴んだり釣り上げたりで万が一足が取れてしまう事を避け、威嚇する係を勤める。ガサゴソ逃げ回るヤツらに向かって大きく足音を立て威嚇するイルゼ。そのオーラに押されながらもロブスターは懸命にハンマーと称される鋏を振り上げ応戦。しかし体の大きさで敵うわけ無いと解ったのか後ずさり、そのまま豊浦と姫野が盥や彼女達が提供した服に包み捕獲し水槽に入れていく。
 なんとも地道と思える作業だが、グループ戦のため効率は良い。
「ロブスター君‥‥キミの行く末を知る身として心は痛むけど、これも運命‥‥諦めよう」
 しみじみと蛙手の鍋掴みで取り、傷つけないよう容器へ運ぶ姫野。その言葉にイルゼも鼻の奥がツンッとするが数時間後には美味しい湯気立つモノになってると思うと少々考えが変わりそう。
「う〜ん、これやと安全なのはええですけど、服が濡れて着替えられへんようなりますわ‥‥。無事解決してもメイド服で暫く過ごさなあかんっぽいです」
 姫野と違う意味でしみじみする豊浦。
「ロブスターは終わりましたが蛙が‥‥他に迷惑をかけたくないので頑張りましょう」
 ようやく大概のロブスター達を捕獲し終えた彼女達は、イルゼの言葉に残る蛙捕獲に挑む。
 彼女は上手く蛙を踏まないようかわし、段ボールの方へ追い込む。
 傍にいたティタネスは、様々な種類の蛙達を観察しながら箱の中へ入れていく。
「ふっ‥‥いつぞやの黒い悪魔に比べれば、ザリガニ類や蛙なんかはるかにマシ! ‥‥遅い、そこだっ!」
 姫野は、その昔のトラウマを頭に過ぎらせつつ、飛び跳ねた蛙に向かってタモを横に薙ぐ! ゲロロっと鳴く蛙は無念とでも言うように網の中から段ボールへ移された。
「これは凄いぞ、姫野さんっ! 自分も負けてはいられないっ」
「そーだ! 唯一の男子、百鬼くん頑張れー♪ お姉さんは遠くから応援してるゾ」
 彼女のパフォーマンスに俄然やる気を出した百鬼。それを応援する角倉。
 百鬼は声援に応えるようにゴム手袋の上から蛙を捕まえると、お茶を飲んでいたアヤカのスカートへ放る。
「おぉっと、カエルがアヤカさんのスカートの中にィィ?!」
「すなぁぁぁっ!」
 ぶばしぃぃんっ!
 すぐさま豊浦のハリセンアタックが炸裂。凄まじい破壊力を見せるそれに百鬼はその場にぶっ倒れる。
 アヤカの方はスカートを使い器用に蛙を包み段ボールにin。因みに腰の辺りまでの丸見え状態である。慌てたヒカルがT氏のカメラを妨げるが、
「大丈夫なのニャー! 見せてもいいパンティーを穿いてるニャ☆」
 艶めかしい一言。
 一方ブッ倒された方の百鬼はヨロヨロっと起きあがり、中松のカメラに向かって、
「じ、自分は全国約五千万人の健全なオトコのコ達の希望を背負ってるんだ‥‥例えT氏と徒党を組むことになっても、反撃により生命の危機に瀕しても構わない‥‥! それは何故って? 今回の自分の仕事の裏テーマが『とにかく視聴者のはぁとを捕まえろ!』だからなので‥‥す」
 ばたり。
 素晴らしい青年の主張。一部視聴者(主に男子)の光を一身に背負いT氏とあいまみれる事を恐れない彼こそ強者といえよう。
 なぜかしきりに拍手を送るT氏。釣られて姫野にアヤカ、ヒカルと角倉、んで瑞雲も手を叩く。
 イルゼは、やはり北極まっしぐらな視線を浴びせながら最後の蛙と捕まえ、ティタネスと共に部屋へ運び込んだ。


 全ての蛙とロブスターを捕まえ撮影を終えた会議室。部屋の隅ではなかなか愉快な音が響いている。
「ありがとう、助かりました」
 深々と頭を下げるA君。ようやっと終わった事で疲れが出たのか礼もそこそこに机に突っ伏する。と、姫野が珈琲を運んできた。
「珈琲をお持ちしました。砂糖は一つ、ミルクはたっぷりで、ご主人様‥‥なーんて、あはは」
 照れながらも砂糖とミルクを入れかき回す。
 A君は感動で瞳を潤ませる。そこにイルゼが彼の頭を掻き抱きナデナデ。どうも慰めるのも主旨だと考えたようだ。更なる幸福でA君は天にも昇るよう。今までの苦労が報われた瞬間である。
「ねぇロブスターとか見てたらお腹空いたな。帰りみんなで何か食べてく?」
「ええですけど、メイドのままで?」
 お腹を押さえるティタネスに服が濡れて着られない事を伝える豊浦。アヤカとヒカリはこのままでも大丈夫っと頷いてる。
「そうねぇ、このまま本場のメイド喫茶に行くのもいいけれど、エビチリ食べに中華料理なんてどうかしら? もっちろんT氏の奢りでね」
 にっこりT氏に微笑む中松。賛成と手を上げる角倉に瑞雲、そして百鬼。んでもって元気に撥ねる姫野。
「ゆりちゃんのお強請りなら仕方ないなぁ。‥‥って、あ、蜜柑ちゃん足に蛙っ!」
「わーっ登ってくるなー!」
 取り残しの雨蛙が足を這っていた。一同、笑い声が上がったところでめでたしだ。