とにかく捕まえろ! 8アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/06〜08/08

●本文

 さてはてここは毎度お馴染み、様々なモノがフロアへ逃げ出し、暴走しては出演してくれる皆が追いかけ捕まえ一段落という番組が制作されるフロア。
 つい先日も両生類&水生甲殻類が我が物顔で廊下を占拠し、何故かスタッフの一人の趣向に沿ってそれらを出演者達はメイド衣装で捕まえるという番組が成立したばかりの場所だ。
 またも上司にどやされつつも視聴率を確保した為クビ免除で始末書のみの恩赦を受けたプロデューサーT氏。スタッフA君の苦悩はまだまだ続くようで。
 盛大な溜め息が廊下に響く。
「‥‥今回は何をしでかしちゃってくれてんですか? これはいったいなんでしょう?」
 鼻歌混じりで作業を終え、ひと息付いているT氏に問うA君。
 彼の顔には見れば解るじゃんという表情が浮かぶ。
 確かに、見れば解る。それでも問うA君。
「えぇ、見れば解りますよ。‥‥だから? 敢えてこれは何かと訊ねているんです。そしてこの場に飾る因果関係も問うてるんですが、解るよう説明して下さい」
「んもぅ、目くじらたててシワが増えるよ。これは七夕飾りさ。8月の七夕って仙台では有名だよね。ものすごーく綺麗なんだってさ! これを飾ったのは祭の雰囲気が欲しくてね」
 あっけらかんと言うT氏。彼の声音に悪気というのは微塵も感じられない。まったくもって意味不明な奇行に苛立つA君。
 そんなA君の活火山噴火モードを察知した、手伝いのスタッフ達がコソコソ逃げ出す。
「だってぇ、先日一緒に観に行こうって誘ったら、君は無碍に断ったじゃん‥‥ハートブレイクだったんだよ‥‥俺。だから少しでもここで気分を味わいたかったんだ‥‥」
 オヨヨっと涙を流しハンカチで拭う素振りのT氏。下手な演技で同情を誘うが、実際は泣いてなんかいなかった。
 んなことで泣くタマではない。
 A君はぎりりっと歯ぎしり。
「だからってここ廊下で七夕をして良いわけがないでしょーがっ! 経費の無駄使いもいい加減にして下さいっ」
「というと思って、出演者を募ったんだ。これ! じゃーん♪」
 怒鳴るA君を耳を塞ぎ受け流すT氏は、数枚の企画書を取り出した。中にはこうある――

■出演者募集
『とにかく捕まえろっ! 8』。今回は廊下で七夕を楽しんで貰います。
 だがしかぁしそれだけでは面白くないっ! ということで、出演して下さる方々に織り姫or彦星に扮して頂き織り姫を追いかけて捕まえて下さい。ノリとしては‥‥
「ふふふ、私が欲しければ捕まえてごらんなさぁい☆」 (ここで天の川の小さな星の水をぱしゃり)
「あはは、やったなぁ、こいつぅ‥‥v」
 ってな感じです。
 会話文通り恋人同士でもそうでなくても大丈夫です。捕まえた後はどうぞご自由に。ただし子供も視聴していることがありますので、色々とやりすぎないようにお願いします。
 また捕獲の場合、一対一より団体戦の方が捕まえやすいかと思います。
 我こそは! と思われる腕自慢のあーた!! ご参加をお待ちしております。
 申し忘れておりましたが、彼らに同行してくださるカメラマンさん数名を含む撮影クルーも同時に募集しております。
 どうぞ奮ってご参加ください。

■注意事項
 ワンフロアを貸し切りっており、廊下の両サイドには豪奢な七夕飾りが設置してあります。しかし制作者はT氏。どんなトラップが仕組まれているか解りません。
 追う側、追いかける側も気を付けてください。
 勿論、いつものように捕獲道具は段ボールの中にあります。また、逃げる側の織り姫さん達もお使い下さい。

 ――と急拵えの企画書を読んだA君。もう返す言葉も溜息も出ないようだ。
「‥‥さー俺は、これをお偉いさんの所に提出し、OKを貰ってこよー」
 A君の手から企画書を取ったT氏はルンルン気分で姿を消した。
 残されたA君は通るわけないっと心から思った。
 が、残念!! 数十分後、戻ってきたT氏は満面の笑み。企画は見事、通ったようだ。A君は落胆をし部屋の隅でイジケた。
 T氏はそんな彼に近寄り、肩を一つ叩くと、
「大丈夫だよー。もちろん君には彦星の牛君になって貰う予定だからw ハイ衣装」
 彼は慰めている気らしいが、A君はもう、何も言葉や態度に出来ない‥‥。それでも渾身の力を絞って小さく呟いた。
「‥‥お願いだから、普通にAD業をやらせて‥‥」
 っと。気の毒な彼にどこからともなく、ち〜んっと一つ鐘が鳴った。

 ■内緒の注意事項
 沢山の人間が出入りするTV局での撮影のため、獣人は禁止。半獣人になられる場合、ばれないようにしてください。

●今回の参加者

 fa0378 九条・運(17歳・♂・竜)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa2539 マリアーノ・ファリアス(11歳・♂・猿)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa5387 神保原・輝璃(25歳・♂・狼)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)

●リプレイ本文


 さてはて毎度のお馴染み会議室。いつものように一触即発ニトログリセリン男と化しているA君であるが、今回、出演する8名の本格的な強者達は引く事はない。無いどころか笑い、更に怒りを買いそうになっている。
「オー牛ですウ! 似合うネA君」
「えぇ、そうです牛ですよ。Cattleでございますぅ。因みに局のどっかにいる白黒雌牛さんではないので、乳はありませんがなにか問題でも?」
 彦星衣装に着替えたマリアーノ・ファリアス(fa2539)が、茶色い牛さん着ぐるみのままPCに向かうA君に笑顔で話し掛ける。と、ふて腐れたA君は振り返りざま、捨て身のギャグ。無論、真夏だというなのに寒々しいのこの上ない。
「牛役も立派なADの仕事だ‥‥頑張れよA君‥‥それだけT氏に信頼されているという事だぞ‥‥」
「信頼なんていりません ‥‥俺が欲しいのは自由! カモぉーンフリーダムぅ」
 そんな彼の肩を叩き慰めるカメラマンの鶸・檜皮(fa2614)。しかし微妙に追い打ちを含んでいるかのよう。尤もそれはA君の被害妄想と捕らえるのが正しい。
 更にドツボに填ったA君は今にも段ボールからウクレレを取り出し歌い出しそうだ。
 あまりの落胆(アホ)振りに鶸と共に年長者の一人であるタケシ本郷(fa1790)は、とても生温あたたかな視線で見守っている。
「織姫彦星は夏、っつーか文月の風物詩ってよく聞くけどよ。今はもう時期的に過ぎ去ってるんじゃあござんせん?」
「この企画はT氏の企画書にも記してあるんですが、東北の一部ではこの時期に七夕が行われるんです。とても綺麗で華やか‥‥優美なお祭りですよ」
 合間を縫って神保原・輝璃(fa5387)がさり気ないが割りに強い突っ込み。一応A君の件に関して配慮しているが、どうにも黙ってはいられなかったらしい。そんな彼にA君は企画書を手に説明。
 そう通常に行われる七夕と些か勝手が違う。これは杜の都で大規模に行われる夏を彩る華やかで有名なイベントをイメージしたモノだ。
 A君の解説を聞く織姫ファッションの因幡 眠兎(fa4300)とメル(fa5775)。銘々織姫衣装に身を包み着飾った二人はへぇ〜っと頷いている。
 因みにすこぶる可愛くして貰いご機嫌良さげなメルはれっきとしたおのこ。だが敢えて織姫トラップ要員を志願したのだ。彼は色々な意味で強者である。
 ドォォン!!
 ここでもう一人の織姫‥‥無論、れっきとした女性の夏姫・シュトラウス(fa0761)が、更衣室から猛ダッシュで飛び出すなり、ドアを蹴破り勢いよく廊下へ。
 どうも綺麗に着飾った姿を見られるのも、またその姿で暴れまくるのも恥ずかしかった模様。極度なはにかみ屋さんである。っが、そんな女心は可愛いけれど、垣間見えた顔はどうにも‥‥である。
「ふふふ‥‥時に200X年 牛飼いは後継者不足に悩まされ過疎化の危機に晒されていた。しかぁし彦星は充実していた! って事で彦星のコスプレして織姫役を追い駆けるっ! それは後継者を育む為に! さぁゴーだ。あ、ミントにメル、俺が20を数えているうちに逃げろよ! いーち‥‥にぃ‥‥さん‥‥」
 時は来たとばかりにデスクの上からむんっとポーズとナレーションをキメるサテンのキラキラ彦星姿の九条・運(fa0378)。
 何を思ったのか九条はおもむろにしゃがみ込み顔を覆い数を数え始めた。見た目はクールガイ。だけど意外にお茶目さんである。
 それはさておきデスクの上からむんっとポーズとナレーションをキメる、九条のカウントに慌てて逃げだすメルと因幡。
 てなわけで始まった今回のとにかくは織姫VS牽牛の熱い鬼ごっこ対決開始だ。
 数を数え終えた九条はダッシュ。俊足をいかした神保原も追う。その姿を鶸は肩に乗せたハンディカムカメラで捕らえつつポツリ。
「‥‥って、なんだか逃げる織姫に追う彦星‥‥恋人同士の微笑ましい追いかけっこというよりは、鼻息荒い彦星達が一方的に織姫を追い掛けているようにしか見えないのは俺の気のせいか?」
「‥‥それじゃぁ男のホンノウそのままって感じじゃないですか‥‥ロマンスを持ちましょうよ、ロマンスを‥‥」
 隣の牛姿A君はまったくフォローになっていないコメント。実のところ彼も同じ気持ち。だがこれはロマンスなんだと無理に思いこむ事にしたようだ。


 部屋を飛び出した彦星ず。彼らの行く手にあるのは廊下の両脇にズラリと並んだ笹。その枝に吊される吹き流しやら短冊が思いっきり遮っている。
 それは逃げる織姫達も同様。しかも邪魔をするのはそれだけではない。ヒラヒラしたサテンの衣装もである。
 なかなか先に進めずにいる因幡を狙う神保原。懸命に足を動かすも長い帯や上着が邪魔をする。
「この格好って足回りや走って回る時に支障をきたしてたまらん!」
 文句ぶーたれ。
「あははーお姉さん、待ってエーv」
 そこにマリアーノが衣装には構わず目を輝かせ追う。やはりお姉さんスキスキパワーに勝るモノ無しだ。
 しかしここで脅かして逃げられたら元も甲もない。
「待て待て! ここは作戦を立てないか? このままでは番組中に織姫達を捕まえる事は難しそうだ。一つ皆で協力して追い込み作戦にしてみないか?」
「そうだな。なら自分は勢子に徹するとしよう。この年ではヤングのスピードについていけそうにないからな。とにかく牧羊犬のように織姫を一カ所に集めるぞ」
 ふむっと納得のタケシに了解っと頷く神保原とマリアーノ。
 すぐさま二手に分かれ、笹を踏み越えていった。相談する彼らを撮していた鶸とA君も彼らに同行。追い込みを掛けるタケシに付いていく。
「なぁ、A君よ。ここなんだか‥‥」
「なんですか? 鶸さn‥‥うがぁぁ?!」
 態とらしく笹の一部を指さす鶸。牛姿のA君は?マークを浮かべそのまま突っ込むと、短冊ならぬヌメっとした蒟蒻が顔に当たり悲鳴を上げる。
 フッと笑う鶸。どうもトラップ避けにA君を使用する予定のようだ。
「A君、撮影を円滑に行うためにも必要なことだ‥‥」
 キッと睨むA君にアッサリと言い放つ。T氏並の非道だとその姿をチラリ垣間見ていたタケシは思った。そこにヒラヒラのピンク色をした衣装が笹の間から見える。
「お、いたな! 待てぇ」
 追い込みのタケシが資料に隠れ一休憩をしていた夏姫と因幡を見つけ、すぐさまダッシュ。
「待てといわれて待つ人はいませ〜〜ん」
 彼女達は大慌てで逃げ出す。メルはお尻ペンペンっと彼を挑発しつつ、因幡が作った笹やトラップを蹴散らした後を走り逃げる。
 しかしタケシが上手く追い込みを掛け通路は一本道。彼女の目の前にはにんまりと笑むカモーンな九条にマリアーノが待ち構えている。
 逃げ場を失い辺りを見回す彼女達。しかし折り紙で出来た輪っか帯の中に九条が仕掛けた足吊り用のロープやらワックス撒きの罠が行く手を遮る。
 ズバッと足を掬われた因幡。逆さ吊りになってしまい飛んでもない状態に。運良くスパッツを穿いていた為難を逃れたが、
「な、なんて事をぉぉ」
 スカートを必死に押さえ逃れようと体を揺する。そこにタケシがにじり寄ると、彼女はハッと思いつき傍の笹に吊された巾着を引きちぎりグルングルンぶん回すとタケシに向かって投げつける。
「いやぁん! これでも食らえー」
「うぉ?! 危ない」
 間一髪避ける彼に一瞬隙が生まれた。その間にT氏の作ったトラップ笹を倒すメル。それは折り紙や笹の葉にべっとりとボンドを付けられたもの。足止めを食らったタケシが悔しげに彼らを睨み、衣装に付かないようにゆっくりと慎重に避けて通る。
 その間にメルは因幡を逃がし先に進む。追っ手を振り払う事が出来たが目の前には九条。困惑する2人に夏姫が立ちはだかり、衣装の振り袖を思いっきりブン回す。この攻撃、普通であれば大して恐くないが、いかんせん彼女は現役レスラー。しかも覆面を被っているもんだから強い。
「おーほほほほほ!! 私を捕まえようなんて! もう1年お待ちなさい! 彦星達っ」
 意味不明の高飛車笑いと強気な言いようで袖を振るう彼女。当に走る凶器と化した織姫。覆面を付けているのでコワイものなしだ。
 突飛な攻撃にたじろぐ九条。もろともせずにその横から突っ込むマリアーノは赤毛を揺らす猛ダッシュではなく、やや早足程度に押さえ表情は無害さアピールのエンジェルスマイルっと慎重な姿勢。いつの間にか横に並んだ鶸のカメラにも、とっておきの笑顔を振り撒いたりしている。
 しかし大きく人懐っこい目だけが変貌しまるで獲物を狙うハンターのよう。
「つーかまえーター!!」
 瞬発力にモノをいわせ思いっきり飛びつきタックル! キャッという可愛い悲鳴と共にどぅっと倒れ込む二人。
 マリアーノは満面の笑顔でじゃれつくも、夏姫の豊満な胸の触りがなく平べったくゴツゴツしている事に?マークを浮かべ動きが止まる。
 鶸とA君がありゃまな表情。それもそのハズ、彼が捕まえたのは夏姫が避けその前に飛び出したトラップのメルだ。二人の戯れをバッチリ撮す。A君は一部の女の子にウケる画だとほくそ笑む。
 ここで男だと気付いたマリアーノは思いっきりフリーズ。表情もこの世の終わりとばかりなものが乗っちゃっている。メルにしたら失礼だが、仕方のない話。
「ふふふ、このわたくしが欲しかったのでしょう?」
 マリアーノの顔を気にせず、妖艶な笑みを浮かべるメル。その手には水鉄砲が握られ自分を押し倒したマリアーノに発射!
 ビュっと水(天然天の川の美味しい水 ほんのり乳酸菌/メル談)を掛けられ、マリアーノはようやく正気に返り何事も無かったようにメルを放す。
「OH! NOぉぉ〜、男に興味ないネ〜〜っ」
 猛ダッシュで来た道を下がる。
「ぬははっは〜! 甘いわっ彦星達。私を捕まえるなぞ出来るモノかぁ」
 いつの間にか引っこ抜いた笹飾りをぶん回しながらタカピーな笑いを繰り返す夏姫。虎でいて女王様な態度にギリリっと奥歯を噛みつつ、メルを縄で縛る九条。
 因幡もそっと夏姫の傍らに立つ。ようやくボンド域から辿り着いたタケシと立ち直ったマリアーノが九条に習い隣に立つ。
 なんだか番組初であろうシリアスな様子にごくりと生唾を飲むA君。鶸も手に汗握る織姫VS彦星のバトルシーンを逃さないよう真剣な眼差し。
 そこへメルはなんとか体をヒョコヒョコと動かしながら、
「お待ちになって、彦星様ぁぁっ。わたくしを置いて行ってしまうなんてあんまりですわ〜ん!」
 尺取り虫の如く床を這い追いつこうと試みるのが微笑ましい。しかし誰も彼を構う事など出来ない。悲しきスルーな状態となった。
「さぁ観念するんだな織姫!」
 シリアスは続き、彼らの頭上から声が響くと一緒に折り紙で作られた投網がブワサッと掛かった! やったのは神保原。
 突飛な攻撃に対処できず網の中で藻掻く夏姫と因幡。ついでにマリアーノやタケシ、九条と味方の彦星たちもだ。
 すいっと華麗にジャンプを決める神保原は夏姫に向かって行くが、彼女とて容赦はない。着物姿である事を物ともせずに足を振り上げ彼の腹にヒットさせようとする! しかし神保原は寸前で咄嗟に手を出し直撃を免れた。
 やはり格闘技や軽業は彼の方がやや上手だったようだ。ちぃっと舌打ちをする夏姫。だが瞬発力を生かし、掴まれた足をグンッと大きく振るとそのまま神保原を床に落とし寝技へ。絞め技を決めるとレフリー役を買って出たタケシがカウント。そこにマリアーノがおねさーんっと叫びなが乱入し押さえる因幡諸とも夏姫にアタック! 大混戦する最中、九条はカメラを回す鶸と共に様子を見守りつつ、息切れし始めた頃を見極めると、タケシの背中をジャンプ台(まさに踏み台)にし夏姫と因幡の細腰をひっ掴んだ。
「捕まえたぜ!! 織姫ゲットだ」
 にんまり笑む九条。両手に花を持ち嬉しそうだ。
 今回、最後まで息を吐かせない映像が続き、ようやくはぁっと息を吐いたA君。鶸はちょっと拙い画にならないかと心配したようだが、ここは九条。マリアーノのスキスキ攻撃と違い穏便に事は済んだ。
「そういえば、企画したとうのT氏はどこ?」
 不意に聞く縄でグルグル巻きのメル。そこに織姫姿の彼がひょっこり角から現れ、
「うふふ‥‥そっちばかり追い掛けて捕まえたって、私ぢゃないからどうしょうもないでしょー? さぁ捕まえてごらぁん」
 頬を赤く染めた彼がクネクネと身を不気味に揺らし挑発する。誰もが、溜め息を吐き、
「「「「「「「どんだけ〜〜〜? ありえないってーーー」」」」」」」
 っと叫んだ。


 さてようやく撮影終了を迎えた番組。やっぱり牛姿のままのA君が逃げるT氏をメルと共にハリセン殺法を用いて倒し、連行してきた。
「日本のタナバタって本当に面白いお祭りだねぇ♪」
 クスクスと笑うメル。微妙に上手く行かず部屋の隅で泣き濡れていじけるマリアーノは牛のA君と戯れ慰めて貰っている。
「今回の撮影は結構ハードだったな‥‥この番組はいつもこんなに走り回るものなのか‥‥にしてもよく頑張ったなA君‥‥お疲れ‥‥」
 鶸は自販機で買ったよく冷えた缶コーヒーを渡し、労いの言葉と肩を軽く叩いた。
 そこに捕獲されなんだかボロボロのT氏がコホンっと咳払いをし、
「本日は有難うございました。楽しい番組になったっと思う。ということで、皆に俺から特別に5万円ずつ報奨金を渡したい。受け取ってくれ!」
 気前の良さだけがウリのこの男。おぉーっと手を叩く九条に神保原とタケシ、女性の因幡。マスクを取り、更衣室でこっそり聞き耳を立てていた夏姫は恥ずかしがりながら顔を出し小さく笑んだ。