Evans a maidcafeアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 6.7万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 10/14〜10/17

●本文

 ここは波止場の一画に建つライヴハウス兼バーの『EVANS』。
 薄暗い店内は紫煙と酒の匂い、密やかに聞こえる怪しげな会話。そしてオールディズの曲が足を踏み入れた者にまとわりつく。
 陰と陽。独特な雰囲気を持つ店だ。
 興味本位に足を踏み入れただけの者はここで踵を返し、戸を閉めるのはザラ。そんな些か変わった空気の流れるバーに入ってきたここ最近常連客の一人となりだしている音楽プロデューサー・木原朱音。
「よう、譲。今日も客が居ないなぁ」
「来た早々にジャブですかい? 木原さん。表に『準備中』の札があったでしょうが。あれから毎日、客がひっきりなしでさぁ。忙しくって参っちまってます」
 木原はカウンター席に腰を下ろしながら、いつものようにブラックな冗談口。譲は表情を変えず軽く受け流しながら、グラスを差しだす。
「ほぅ、そりゃぁ良かった。そう、客入りといえば、先日、ある番組を制作してくれという依頼で、上司に連れられ『メイド喫茶』に行ったんだが、凄い賑わいだったよ。近年はああいった店が人気なんだな」
「おやおや、おっさんは今頃ブームお気づきなんですかい、嫌ですなぁ。かなり前から流行っているらしいですぜ」
 ここで譲の反撃。唇の片端を嫌味に上げた。もっとも彼もこの話は娘から聞いたこと。俄知識だ。
「どうせ、暁ちゃんから聞いた話だろう。なら話は早い。もう聞いているのなら、店を貸してくれないか? 実は癒されまショウっというメイドに扮した女性達の可愛い音楽ライヴ&おもてなしという、企画案があるんだ。ただ、普通にメイドっていうのも芸がないだろう? ここで撮影の場にすれば、どこか古く懐かしいアメリカンをイメージにさせたモノになる。それに店内に広さ席数など、どれを取っても申し分ないんだよ」
 素っ頓狂な言い出しに譲は失笑を浮かべ煙草の灰を灰皿に落とすと、ゆっくりと話し出す。
「そんな話、暁から聞いてませんぜ。にしたったて木原さんの頼みであってもそりゃ無理だ。流石にあんなチャラい事はできねぇ。解ったら他を当たって下さい」
 鋭い眼光を向ける譲。どうも彼の気に触ってしまったらしい。っが、突然、扉が勢いよく開き甲高い女性の怒鳴り声が響いた。二人の会話に上がった譲の娘・次女の暁だ。
「パーパ!! 先輩に向かってなんて事言うのっ失礼すぎだわ」
 ツカツカっと肩を怒らせ譲に歩み寄る。姉のるな同様に母親譲りの美貌とスタイルを持つ彼女は、学生ながら若い娘をターゲットにしたファッション雑誌の専属モデルを勤めている。ただ性格は、おっとりとした母に似ず活発。そこは父親似のよう。
 譲に詰め寄ると、木原のおじ様に謝りなさいっと息巻く。恐いモノ知らずとはこのことだ。
「煩い。お前は黙っていろ。これはパパと先輩の話だ。‥‥って、お前学校か仕事はどうしたんだ」
「おじ様にあんな言い方するんだったら黙っちゃいられないわよっ。学校は休暇中、お仕事も次の仕事までオフよ。って、まともに答えちゃったじゃない。調子崩さないで! えっとぉ本題は‥‥。そう、パパはいぃぃっっつも耳にタコができるくらい言うじゃない。先輩を敬い後輩は可愛がり、友人には慕われるよう行動しなさいって! なのに大先輩のおじ様に刃向かうなんて! おじ様が持ってきたこの話は、私のモデル以外の初仕事なの。せっかくパパみたいに小煩い上司を説得して、この店で流行のメイドと音楽を融合させたバラエティをって言ってくれてるのにっ」
 捲し立てる暁に唖然とする譲。我が娘ながら迫力満点だ、と苦笑いを浮かべる。木原は暁の剣幕に力無く笑いつつ、
「暁ちゃんの言う通りなんだ、譲。貸してくれないか?」
 二人の聞きながら譲は苛立つような素振りでくわえた煙草に火を付けようとする。っが、軽石がカチッカチッっと小さな火花を散らすだけで空回り。
 ゆったりと落ち着いた風で話す木原はスィッと手を伸ばし、手にしたライターで譲の煙草に火を付けてやった。
「‥‥解りましたよ。俺は三日間だけ店を休みますのでその間、暁と先輩に貸しします。内装など変えるのは構いませんが、酷く変化させるのは勘弁。それと撮影が終わったら、動かしたモノをきちんと元の位置へ戻すのが条件だ。解ったな暁。3日分のレンタル料はお前のお小遣いから、別料金としてきっちり貰うから覚悟しておけ」
 一息煙を吐くと奥へ引っ込んだ。
 過去、スカで恐れられていた譲であったが、やっぱり娘に甘いのはどこの父親も一緒のようだ。

■ EVANSでメイド喫茶を開いてみませんか?
 横須賀にある譲の店、『EVANS』が一時、音楽を奏でるメイド喫茶となる事が決まりました。
 皆様と共に中島譲の次女・中島暁もメンバーに加わります。もっともおもてなし方面のメイドとしてですが。
 ということでメイド姿となって、可愛い音楽を奏で、お疲れのご様子の主人様達を癒してみませんか? また、彼らをおもてなししてくださる方も募集致しまております。
 勿論、演奏ののち、おもてなしに参加もOK。
 同時におくつろぎくださる、お客様エキストラも募集致します。
 彼女達の心からの奉仕にゆったり癒されてみては如何でしょう?
 あくまでも今回はTV用であり、あまり無理難題を彼女達に申しつけるのはご遠慮ください。

 曲数は2〜3曲程がベストだと思います。歌詞はオリジナル厳守。あまり長すぎますと全て反映する事が困難となります。ご了承ください。
 ドリンク・軽食等は譲が密かに用意した模様。お好きなモノをご注文ください。(あくまでも軽食でお願いします)
 甘味系はメイドになられた方、お手製でお願い致しますね。
 そして譲は3日間、営業中はけっして店には顔を出しませんのでご了承ください。

●今回の参加者

 fa0075 アヤカ(17歳・♀・猫)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa1660 ヒカル・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa3341 マリエッテ・ジーノ(13歳・♀・小鳥)
 fa3635 甲斐・大地(19歳・♀・一角獣)
 fa5307 朱里 臣(18歳・♀・狼)
 fa5440 瑞雲 カスミ(22歳・♀・狼)
 fa5475 日向葵(21歳・♀・蝙蝠)
 fa5483 春野幸香(21歳・♀・狸)
 fa5553 神薙・小虎(14歳・♀・竜)

●リプレイ本文

●EVANSをメイド喫茶にする準備
 波止場に佇む古いレンガ造りの壁にあるネオンサインが示す店の名前は『EVANS』。客の入りを拒むような金属製の扉は、とっつきにくい印象を与えるが、しかし今日は些か勝手が違うよう。店内から漏れてくる声は、とても華やかで愛らしいものばかりだ。
 殊更、花を添えるのは可愛い語尾で話すアヤカ(fa0075)である。
 彼女はヒカル・マーブル(fa1660)に着付けて貰った真っ白なエプロンが付いた紺のロングワンピース型メイド服姿で、フロアに飛び出し、くるりと一回転。スカートを翻した。
「ニャは☆ メイドアヤカにゃんニャ〜☆」
 彼女に続いて現れた、中島譲の娘で現在モデルの暁も嬉しげに一回り。顔を見合わせ、嬉しげに声を立てて笑い合う。
 そんなはしゃぐ彼女達に笑むのは、アメリカン風のバーというテイストを残しつつ、EVANSの持つ薄暗く妖しげな雰囲気を一掃する為、白いカーテンやテーブルクロスを掛けていく姫乃 唯(fa1463)とそれを手伝う神薙・小虎(fa5553)、甲斐・大地(fa3635)達と、ステージで曲のリハーサルに勤しむ日向葵(fa5475)、春野幸香(fa5483)に朱里 臣(fa5307)だ。
 皆、手を止めて軽い拍手と歓声で迎えた。
 賑わう声に釣られ打合せ中のスタッフ達と木原も視線を送る。
 多数の視線に、にゃはは〜♪ と照れるアヤカ。暁に至っては本気で照れ。エプロンを掛けたスカートを必要以上に撫でたりと、動きがぎこちない。
「恥ずかしがらないで大丈夫だよ。うん、めちゃ可愛い可愛い! あ、暁さんってあの譲さんの娘さんなんだよね‥‥。ふぅん。こんなに可愛いんじゃ、お父さんはメロメロでしょう?」
「えと、宜しくお願い致します、朱里さん‥‥皆さん。いえ、そんな事無いですよ。可愛い娘だったら三日間のお店の使用料を本気で請求なんてしてこないと思うんだ。ほんと、酷いと思わない?」
 ベースを抱えた朱里に挨拶する暁。勿論、ここにいる皆‥‥先輩達にもしっかりとだ。
 暁の挨拶と頬膨らませた一言に、ソバカスメイク&伊達眼鏡の変装をしたアヤカが、また声を上げ笑う。
 因みにメイクもヒカルが担当。伊達眼鏡だけでは心許ないっと木原に言われての事だ。やはりアヤカの知名度を考えれば、必要かもしれない。アヤカも承諾してくれた。
 ヒカルは菓子作りや料理の合間を縫ってアヤカにメイクを施し、彼女と解り辛くかつ可愛く仕上げた。それは彼女と共に厨房で調理を担当のマリエッテ・ジーノ(fa3341)と瑞雲 カスミ(fa5440)があってこその事。即席であるがとても良いチームワークだ。
 そんな三人が、料理をする合間に制作したお手製のメニューを手に現れた。数冊のそれは、どれもリボンで縁取られた女の子らしい丸い文字が丁寧に書かきこまれている。
 彼女達はさっそく木原に手渡しチェックをお願いした。
 気になる品目は軽食のスパゲッティーにオムライス、サンドウィッチに続いて、季節感を配慮し、マリエッテの意見から取り上げられた近々あるハロウィンに因んだ南瓜のポタージュやパイ包みシチューなど。そしてデザートページはヒカルと姫乃が共同で考えた薩摩芋や栗を使用したモンブランやクッキー、カップケーキにスィートポテト、そしてパフェと‥‥どれもメイド喫茶に似合うものばかりだ。
 木原は丁寧に目を通した後、頷きOKサイン。
「うん、美味しそうなものばかりだね。甘いのを食べるのを恥ずかしがる男子でも、気軽にいけそうだ。さて、そろそろお店の方も準備が整った‥‥かな? あぁ‥‥ねぇ見ておくれ、あんなに人集りが出来てるよ。さ! 急いで開店しよう。こっちは僕がやるから皆さんは奥で着替えをして、最終準備を整えてくれ」
「「「「「は〜い」」」」」
 彼の指示に乙女達はヒカルに着付けて貰うべく、イソイソと控え室へ。だが姫乃はまだ店内の最終リフォームに勤しんでいる。テーブルクロスを掛け終えた所に小さな花を飾り、そしてヤニ臭さを消す為、消臭剤を吹きかける。
 やはり少女の居る場所に相応しくする為に余念がない。
 数分動き回った後、彼女はようやく納得がいったのか可愛くなった店内を一望し、うん♪ っと頷き、急ぎ着替えに走った。

●EVANSへお帰りなさいませ、ご主人様☆
 からから〜ん。
「「「「「おかえりなさいませ。ご主人様!」」」」」
 朱里が無愛想な扉にこっそり取り付けたドアチャイムが軽快に鳴る。っと、メイド長を買って出たヒカルからメイドの極意を教わった乙女達が、すこぶる付きの笑顔を浮かべ、あのお決まり挨拶で来店した客とカメラを出迎える。
 オープンを今かと待ちわびていた男性客達は、彼女達の丁寧で愛らしい対応に嬉しそうだ。
「ご主人様、こちらへどうぞ」
 朱里はお客とカメラを席へ促すため、一歩前進。そんな彼女の全身をレンズが追う。襟や袖に付いたレースのリボンがポイントとなる紺地の膝丈ワンピに白のフリル付きエプロンをモニターに転送していく。機能性も兼ね備えつつしっかりキュートなデザインのメイド服を着た朱里に木原はよし、OKっと次ぎに画面を切り替えるよう指示。
 その合図に朱里は衣装と同色のリボンで結んだポニテールを揺らし、お客となるカメラマンを席へ案内した。
 続く神薙は、朱里と同じ紺を基調としたメイド衣装。だがスカートの丈はかなり短くバニエで膨らませそれを翻すと、次ぎに並んだ客を席へ誘導していく。
 ニーソックスを穿くスラリと伸びた足が何とも魅力的で、彼女に案内される男性客は心臓がドギドキのよう。
 日向と春野は慣れないメイド服に戸惑いながら、照れて俯きがち。早くご案内して差し上げてっとヒカルの促しに春野は腹を括ったように眼鏡を掛けた顔を上げ、
「お帰りなさい、ご、ご主人様。ではおくつろげるよう、こちらへ」
 っと。なんとか戸惑いながらも席へ案内をする。途中段差に躓いて、お客さんに体を支えて貰ったのはご愛敬だ。
 クールな雰囲気の日向は、春野のようにその言葉が唇から出てこない。どうにも抵抗があるようだ。またそれもメイドとしての味があるようで、無言のままでも薄く笑んで並んだお客を案内した。些か冷たいようにも感じるが、それでも嬉しそうなに後を付いていく男性。
 次々と客を捌き席に着かせていく彼女達に継いで、オーダーを取りに早歩きをし、アヤカが作る料理を手際よくテキパキと運ぶ紺色のスタンダードなロングスカートのメイド衣装を着る姫乃と、茶系のカントリー風メイドとなる甲斐。
 忙しい中でも冷静に動きミスをしないよう勤める。
「お待たせ致しました。栗と薩摩芋パフェと、こちらはモンブランです」
 姫乃は翼の付いたハート型クッキーが添えられたボリューム満点のパフェとケーキを注文した男性客の前に置く。そしておもむろに床に膝を付き、体の位置を下げると、
「最後の仕上げをせて頂きますね♪ 何が宜しいですか? ‥‥萌え‥‥ですか? はい」
 そう言ってケーキの皿の隅にチョコのデコペンを使い、兎や熊、そしてハートマークになどをデコレーション。最後は要望に応え可愛い丸文字で『萌え』っと書く。
 勿論、甲斐も近くの席のコーヒーと添えた南瓜クッキーを運ぶと、可愛らしい声で、
「だいちが、お飲物を美味しくする為、呪文を唱えます。ちちんぷいのぷい☆」
 ポケットから取り出した玩具のスティックを振り翳しポーズ。ちょっと恥ずかしいがこれも仕事。何度やっても慣れないそれに頬を染めつつ、ごゆっくりっと頭を下げ場を後に次の料理を手に新しいテーブルへ。
 時折自分達の方にカメラが向くのが解ると、ポーズ&笑みを忘れずばっちりキメる。メイドでありながらもしっかりとタレントの性をアピールなのだ。
「オムライスあがるニャ〜☆」
 調理場ではオーダーの品々を手際よく次々と消化していくアヤカ。どうやら意外にも料理が得意なよう。些か驚きであるがこの場では有り難い。
 そんな彼女も苦手な盛りつけを朱里に任せ、次の料理へ。
 朱里は皿に出来たてのオムレツを乗せるとオーダーした客の似顔絵を卵の上にケッチャップで描き、客に運ぶ。
 待っていた彼は自分の似顔絵に感動していると、朱里は最後の調理と言ってオムライスに両手を翳し、
「おいしくなぁれ♪」
 っと可愛くおまじない。やはりこの辺はメイド喫茶には必須な仕事のようだ。
 訪れる客の整理と案内を担当しつつ、皆の動きを見ていた瑞雲。
 この音楽を奏でるメイド喫茶という企画を木原から聞かされた当初、斬新なアイデアに戸惑った彼女だったが、これから先に起こるだろうファンとの交流会の為、ここでコミュ二ヶーションの方法を覚えコツを掴むのは良い経験になると思い、承諾したのである。
 瑞雲自身も客として他店で店員達の働きを見てきたが、逆におもてなしをする立場となったのは初めて。三度目となるメイド衣装に身を包みつつ接客に戸惑いながらも、ここのオーナーの娘である暁に接客を教わり一つ一つ丁寧にこなしていく。
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
 会計を済ませ満足した客を見送るマリエッテ。レースがたっぷりあしらわれた白×黒のゴス系メイド衣装を着る彼女は、この店の雰囲気に合ってないかもと思っていたが、入ってみて大丈夫だと実感したよう。長年店に立っていた譲が醸し出すどことなく退廃的な空気にマッチしていたから。
 深々と出て行く客に頭を下げた彼女から、ちょっとした悲鳴。
 彼女の背後にいた男性が不意に触ってきたのだ。どうも勘違いしている輩のよう。マリエッテは大変失礼な行為に驚き硬直。それを接客の合間で見た姫乃が、ぷうっと頬を膨らませ歩み寄ると、
「ご主人様、体に触れる・触れさせる様な事はメイド達に許されておりません。ご遠慮願いますっ」
 二人の間に立ちはだかる。なんとも勇気のある姫乃。きっぱりと言い切られた男性客は謝罪を述べると、足早に店を後にした。
 そこでやんややんやの喝采。強くて可愛いメイドというのは、今一番グーなようだ。

●EVANSのメイドが送る最高のステージ
 元気よく接客していた朱里と日向、春野は木原に促され、裏へ回りそれぞれ担当する楽器の最終的な微調整をおこなっている。
「幸香、作詞ご苦労様。臣も今回はありがとう。それにしてもメイド服を着て舞台に立つなんて‥‥。今でも信じられないけれど、こうなったら毒を喰らわば皿まで。思い切って弾けないとね」
 エレキギターを手に恥ずかしそうに薄く笑む日向。ベースのストラップを肩に掛ける朱里が、
「ほんと、ライブで色々なモノを着る事はあるけどメイドさんは初めての経験! 大丈夫、恥ずかしくないよ〜、うん、皆めちゃ可愛い可愛い!」
 ご機嫌に日向と春野を見やる。っとそこで木原からおいで、の合図。
 誰からというでもなく彼女達は、右手を前に差しだすと、ふぁいとーの掛け声を小さくおこない、ステージへ上がっていった。
「今から、私達『Twilwght with 臣』の歌をここにお集まり頂いたご主人様にプレゼントしまーす。カッコ可愛いステージで癒しと元気の御奉仕♪ 聞いてくださいね『Let’s Partytime』!」
 スタンドマイクに向かいMCをする朱里。黙していれば可憐なメイドだが、バンドとなればそうはいかないらしい。
 曲のタイトルを元気よく紹介すると、とたんに響く、アップテンポで弾むリズムを作り出す朱里のベースに日向が紡ぎ出すギターが楽しいメロディを奏でる。
 そこには元気ばかりではなく、春野の叩くキーボードの高音で可愛らしさキラキラした音色が乗っていく。

『Let’s Partytime』
 さあ パーティーを始めよう とびっきりいかした自由な宴を
 誰も彼も重い「服」は脱ぎ捨てて 生まれたままの裸の心で思い切り楽しもう
 ここには何も縛るモノはないから 思い切り騒いで心を解き放とう
 宴はまだ始まったばかりだから

 まだまだパーティーは終わらない とびっきりの あたしたちだけの宴は
 まだまだ羽目を外して 自分を解き放とう 明日なんてまだまだ先だから
 今この時を楽しもう 見えない明日より 確かな今この時を
 its my partytime

 まるで一緒にと誘いかけるような優しい元気の良さで歌う日向に、即興でLaLaLaっとコーラスを入れる朱里。春野は体を揺すりリズムを取りつつパフォーマンス。
 賑やかでキュートな曲調に居ても立ってもいられずステージにヒョイっと飛び乗り、乱入したアヤカと瑞雲。
 朱里と頬を寄せ合いコーラスをするアヤカ。最近、歌から離れていたがボイストレーニングだけは怠っていなかったので、伸びやかで可愛い声が日向の歌にエールを送るように合わさる。
 キーボードを演奏する春野と楽しげに顔を見合わせ、サックスを吹く瑞雲はメロディラインに色取り取りな音色を乗せて更に曲を盛り上げていく。
 元気で可愛い彼女達が織りなす歌に誰もが手拍子。フロアでマリエッテはこっそりとコーラスに混じると、それに気付いた甲斐と暁が彼女の背中を後押し、ステージへ送り出す。
 ヒカルと神薙に姫乃は、ライブの間もしっかりとご主人さまにご奉仕のため、コーヒーや軽食を作っては次々運んでいく。
 終始、メイドと言わずお客さんの笑顔が絶えず、いつまででも続きそうな音楽を奏でるメイド喫茶・EVANS。
 木原はこの成功を喜びつつ、譲の娘のるながパパに頼まれたと運んできた少女達への差し入れサンドウィッチを奥へ運び込んだ。

 それは全てを終えてお腹を空かせた彼女達を喜ばせ、朱里が密かに感謝し食べたのは、これより数時間後の事であった。