ご当地★HERO神奈川編アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/04〜10/06

●本文

 あの日本全国津々浦々を回りその土地のHEROとなり名物や名所を案内するという番組が予算の都合で急遽打ち切られ早、数ヶ月。
 視聴、出演をしてくださった方々の再開をという優しいコールに復活を遂げる事の出来たご当地HERO。
 前回のスタジオ収録から数週間。あのディレクターは、どこにいるかと思えば波止場。
 しかも恰好付けて、ニヒルな笑みを浮かべくわえ煙草で海を見ている。
「‥‥っふ。海が‥‥ご当地HERO達が俺を呼んでいたぜ。まーたせたなー!」
 振り返り様、意味不明なポーズを決める。スタッフ達は皆、呆れ顔。まぁ、当然だ。
 ちょっぴり切なくなったディレクターに地図を手にした古株スタッフがハイハイ、お仕事しましょうね〜っと、声を掛ける。それは今のシラケモードを忘れさせる為のモノ。優しい心配りだ。
「ディレクター。この神奈川県には道の駅が、二つしかありませんね。HERO達は八名くらい。さてどうしましょう?」
「ん〜、あまり道の駅に拘らず悩まなくても良いんじゃない? この地はかなり名所、名産品が揃っているわけだし、折角だからそっから県の良さを伝えて貰おうよ」
 さっきまでのおふざけとは裏腹に、きちんと仕事モードで話す彼。一応、やることはやるタイプらしい。


■再び登場した若手ディレクター企画『ご当地★HERO神奈川編』に出演して下さる方を募集致します。
 この番組は『地域密着エンター風旅番組』で、挙げられた土地に因むHEROや悪役を募集しております。
 面白そう、この土地は任せろ! っと思った方、またディレクターのクルーとして参加して下さるカメラマンや裏方さんも同時に募集しております。
 皆様の手で楽しく地域を紹介し、視聴してくれる方が行きたくなるような旅番組に仕上げて下さい。
 では若手ディレクターと共にご参加をお待ち申し上げます。

■注意点と決めて頂きたいこと
・『ご当地HERO』とは地域密着型英雄で、主な仕事は地域の観光地アピールや特産物の紹介など、そしてたまに悪者を戦う事と、様々な仕事を請け負っています。
 彼らの名前や容姿、着ているもの、その他に方言や設定、人数など細かな点を皆様でお考えください。
 また同じように悪役もご一緒に宜しくお願いします。
 その場合は、必ずその地方の特産物や地域名をもじったものでお願いします。【例:埼玉HERO★カスカビーレッド、イワッキグリーン。悪役 ソウカ堅ヤッキー等】
 なお、皆様の考えてくださった面白キャラクターを生かしたいので、実在するもキャラの使用は禁止いたします。
・この番組は特撮ではなく、彼らが戦うばかりを要求していません。仲良く名産品や名所を案内して頂いてもけっこうです。
 その場合、近場でしたら行けますが、遠距離はVTR編集となります。
・必ず指定した県のアピールをお願いします。他県を紹介されても反映することが出来ません。ご了承ください。
・最後に喧嘩の無いよう、またTV番組という事をお忘れ無く、担当したご当地の悪い処を挙げ連ねる行為はご遠慮願うと言うことで、皆さんで楽しみながら、お決めください。(これが一番大事)

●今回の参加者

 fa0868 槇島色(17歳・♀・猫)
 fa2544 ダミアン・カルマ(25歳・♂・トカゲ)
 fa3957 マサイアス・アドゥーベ(48歳・♂・牛)
 fa4487 音楽家(13歳・♂・竜)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)
 fa5082 鷹飼・源八朗(19歳・♂・鷹)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)
 fa5775 メル(16歳・♂・竜)

●リプレイ本文


 放送を再開したエンターな旅番組『ご当地☆HERO』。
 リニューアルされたテロップの文字の後から、メル(fa5775)の高笑いが響き渡った。
「はーっはっは! ご当地HEROへようこそ! 貴様ら神奈川県によく来たな。俺様は芦ノ湖を根城にしている海賊のキャプテン・ハコーネだ。まず手始めに箱根の魅力を教えてやろう」
 海賊衣装の彼。皮の三角帽の下にあるドレッドヅラにお宝と称するお土産品フィギュアが結ばれ、腰に巻く赤いサッシュベルトと共に湖から流れる秋風に揺れる。
 観光地に些か不釣り合いに思える姿。だが背後の海賊船のおかげで誰もが納得のよう。
「これが俺様の船、新型海賊船ビクトリー号である。18世紀英国で建造されシンボルとなった戦艦がモデルだ。他にも三隻の海賊船が湖を支配している」
 メルは誇らしげ胸を張る。っと何か聞こえたかのように耳に手を当て聞く素振り。
「なに? 乗りたいだと!? ほう、いい度胸だ。では特別に乗せてやろう。野郎共、出航だ!」
 ヤレヤレ仕方ないっという演技をするも嬉しげに腕を大きく振り上げ、出航を合図。
 船は彼を乗せ、颯爽と湖面を走りだした。
「この船は海賊船であるが、観光する事も可能なのだ。あぁ、そこの箱根神社は水上からしか拝めない代物だ。富士山も一望できるぞ」
 湖からの名所を巡った後、新な港へ入った。
「さて、湖を満喫したら今度は山。‥‥海賊とて偶には山からの景色を楽しみたくなるのだ!」
 船から下りるとメルは言い訳じみた一人芝居。いざ山とロープウェイへ! と指示をだす。
 すぐにご都合ワープで、画面はロープウェイに乗る画へ移行。
「おぉ、空から見る景色も素晴らしい。ここからも富士山が見えるなぁ。もう少し時期が遅ければ紅葉狩りも楽しめたようだ」
 確かに。しかし青々とする葉も良いモノだ。
「さて、大涌谷に着いたぞ。ここの噴煙は箱根の代表的観光スポットだ。名物は地熱を利用し作るゆで卵。通称黒玉子がある。土産にどうだ? 美味いぞ。あーはははは‥‥げほごほ」
 ここで途中下車。カメラは彼と共に荒涼とした大地に白煙が昇り硫黄の臭いが立ち込める大涌谷を映しだす。
 メルはスタッフから渡された名物のゆで卵をパックン。しかし話ながらで黄身に咽せてしまった。スタッフ参加のダミアン・カルマ(fa2544)が、急ぎ水筒を手に登場。
 え? っと思うだろうがノープロブレム。被るバンダナにボーダーTシャツという服装がメルの海賊衣装と合っていたりして違和感がない。尤も彼の場合、私服なのだが。
「‥‥サンキュ。どうだ箱根をもっと知りたくなっただろう? まだ触りでしかないが、次のHEROが待っているようだ」
 咳を押さえメルはおもむろに内ポケットから望遠鏡を取り出し、覗きこむ。
 画面には荘厳な佇まいをみせる境内を掃き清める、凛っと清潔感漂う巫女姿のHERO比女 命となる槇島色(fa0868)の姿。
 彼女はカメラに気付き薄く笑んで手を振る。
「さて、俺様は湖へ帰るとしよう。また遊びに来るが良いぞ、はーっはっは!」
 メルは登場時のような高笑いで締めくくり、槇島へタッチ。
「皆さんようこそ。えっと‥‥この神社の事ですか? ここは霊威あらたかな寒川神社でございます」
 彼女は丁寧にお辞儀をし紹介を開始。
「えぇ、八方除けで皆様お馴染みだと思います。創立年代は不詳ですが、一説には天平神護元年。神亀四年の建立と云われ、千年以上鎮座している神社でございます。七月には浜降祭、九月には流鏑馬神事があり、特に浜降祭は無形民俗資料に指定されています‥‥って、あのぅ、聞いてます? 聞いていないならば‥‥」
 ゆるゆると話す槇島はディレクターが退屈そうにしていたのに気付く。途端に黒いオーラを背中から昇らせ、白い巫女服を染めあげる。手にした竹箒も同色の御祓い棒に。因みにそれらはCGで処理。
 変身を遂げた槇島は、カメラをキッと睨み付ける。その目、とてもコワイ。
「‥‥折角の解説‥‥聞かないのなら、八方除けの疫を憑けて相模湾に沈めてくれるわっ!」
 槇島はドスの効いた声を響かせ、いきなりお祓い棒を振り上げた。そこから数十枚の黒いお札が召喚され飛び交う。
 こっそり彼女の背後からダミアンが大型扇風機を巧みに扱い、お札を煽り舞わせていく。
「人の話はきちんと聞くものです〜!」
「待つのだ! 確かにそれは良くない事。気持ちは解るが‥‥まずこの画を見て落ち着くのだ」
 ディレクターに襲いかかるお札。直前で止めるのは古風な鎌倉武士風の鎧兜鎧姿のブレード鎌倉に扮する鷹飼・源八朗(fa5082)だ。
 彼は穏やかに語りVTR開始の合図。
 画面が切り替わり、鎌倉の名所である大仏が映し出される。それは上空から映したような画。ヘリをチャーターしたのかと思いきや、時間と予算の都合を考えたダミアン制作のフィギュアである。だが、細部まで手の込んだ作りは見事な出来映えだ。
 そして街並み。佇まいのそこに季節の花が添えられ何とも心和むもの。因みにこれは本物。
「鎌倉は古都というイメージが強いですが、明治以降もその閑静な町並みを親しみ文豪と呼ばれる方々が好んで住まれた土地柄でもあります。またその長い歴史から香りの専門店など、千年以上の歴史を誇る香りのお店もあったりするのだ」
 ゆったりと落ち着きある声は画面に流れる風景に良く合う。カメラは何とも渋い雰囲気を醸し出している一軒の店に入り、店内を映す。どこか懐かしさを感じさせるそこは、人の気持ちを温かくさせる。
「このお香に火を灯し、立ち上る一筋の香煙に歴史に思いを馳せ巡ってみては如何でしょうか? これは‥‥老松ステックですね」
 鷹飼のコメントに合わせ、スティック型お香に火が点る。先端から上がる細く長い煙。心を落ち着かすその香りが画面向こうに届かないのが残念なほどの良い匂いである。
「さて、これから十月に主に行われる行事は光明寺のお十夜。全国から集まり信者の方が夜を徹して念仏を唱える行事で、境内には夜店が出て賑やかになります。また東慶寺では杜鵑草、秋桜、秋明菊、冬桜、紫苑など、今の時期に花が見頃を迎える頃。さ、皆さんも名所旧跡巡りに寺社仏閣はどうでしょうか?」
 兜の下、薄く笑む鷹飼。今回はアクションばかりでなく、癒し系のHEROを演じきった。
「‥‥皆様、本当にごめんなさい! つい、地元の祭の事を貶されていると思って‥‥お詫びに寒川団子をどうぞ。お餅の中に胡麻餡や胡桃餡が入っていて、とても美味しいです。ささ、ご遠慮なさらずに」
 気を落ち着かせた比女 命こと槇島。取り乱した恥ずかしさで染まる頬を金糸の髪で隠す。
「お気になさらず。そのお団子を皆で頂きましょう。そうだ、折角ですから拙者の地元に鎌倉から藤沢まで走る江ノ電‥‥その模型を眺めながら、なんてどうでしょう?」
「素敵ですね」
 のんびりとお茶を啜る彼らの前を、模型の江ノ電がジオラマの中を走っていく。そこで一旦CMだ。


 CM明け。画面はさっきまでの優雅な街並みから一転、行き交う人々が賑わう中華街が映し出される。
「ハオ! 私は中華ヒロイン☆横濱娘々ね」
 メリハリバディに煌びやかなチャイナドレスをフィットさせた椎名 硝子(fa4563)が笑む。手に持つ羽付扇子を優雅に扇ぐ姿は男性視聴者の心をガッツリ鷲掴みだ。
「神奈川県といえば横浜、そうしたらすぐに中華街っと思う方が多いんじゃないかしら? ここは外国人居留地から発展した街で安政4年、ペリーが浦賀に来訪した際、徳川幕府が貿易港として定めたのが始まりとされている街なのよ」
 紹介しながらキャットウォークで歩む椎名。見詰める男性達はもうメロメロ。貢ぎ物と称し、肉まんやら焼売やら諸々を手に渡していく。
 彼女はお礼を述べながらモグモグ食べ歩き。でも仕事はきっちりこなすよう。
「開港当時の中華街は南門シルクロード一帯にあったそうよ。その頃の中華料理店は僅か。けれど関東大震災後に今の場所に移って中華街と呼ばれるようになったの。その後も色々な歴史に翻弄されながら街は発展していったわ。ここまで大きくなったのも先人達の努力の賜ってわけ」
 彼女は赤い柱に様々な彫刻の施された豪奢な門の前まで来ると足を止める。
「この善隣門は中華街のシンボルよ。門中央の看板に中華街と書かれた事でその呼び名となったんですって。現在、牌楼と呼ばれる門が10基あり、風水思想に基づいて立てられたもの。たまにはこの門を見ていくっていうのも良いかも知れないわよ」
 それも楽しめそう。
「‥‥あぁ、中華な雑貨や食材から本格的な料理もっと思ったけれど。残念、時間が短くて紹介しきれないわ! 是非ご自分で体験してみてね。さぁ次は日本丸・ハンセン君とお勉強の時間よ」
 椎名は貢ぎ物の最後、大きな肉まんを頬張ると、色っぽく手を振った。
「は〜い! 横濱娘々さんのご紹介通り、次は僕とみなとみらいにある日本丸メモリアルパークから船についてお勉強しましょう。ここには太平洋の白鳥と呼ばれる日本丸を可能な限り現役時代のままで、保存・展示しているんだよ」
 煌びやかな門前の椎名に代わって映るのは、停泊する白い帆船と甲板で白いギターを爪弾く日本丸・ハンセンこと倉瀬 凛(fa5331)である。
 彼は紺地に白いラインの清潔感漂うセーラー服という姿。ポイントに紺色の水兵帽がなんとも可愛らしい。
「この船は1930年に建造された商船学校の練習帆船で、約54年間に渡り、およそ183万kmもの距離を航海したんだよ。換算すると地球を45.4周する距離に相当するんだ。凄いよね」
 倉瀬は波音に合わせ得意のギターを演奏しながら解り易いよう解説。
「決まった日に総帆展帆といって29枚の帆を全て広げるイベントもあるんだけど。今日は違ったみたい。う〜ん残念! 今度是非、見て欲しいな」
 マストを見るが今日はその日でないらしくきっちり畳まれている。倉瀬は場を繋ぐように、
「じゃあ、ここで船内を探検してみようか? ‥‥結構ちゃんとした部屋になっているんだね。あ、ここが船長室だ。うわぁ船内と思えないくらい立派だねぇ。こっちは調理室みたい。ところでみんな気付いた? 実はテーブル等が床に固定されているんだよ。大きく揺れた拍子に動かないよう工夫されてるんだ。あ‥‥ほら見て、時鐘と呼ばれる鐘だよ。まだ時計が普及していない時代に時間を知らせる為に鐘を鳴らしていたんだね。みんな、どうだった? え、まだ足りない? そしたらね、海事専門図書室にどうぞ。そこには船や港の図書が一杯あって、子供向きの絵本から研究者向けの専門書まで置いてあるから、年齢を問わずに楽しめるよ」
 珍しく笑顔を見せる倉瀬。
「では僕の紹介はここでお終い。最後はね、僕の叔父さんの黒船さんに歴史を教えて貰おうか。では‥‥面舵いっぱーい!」
 潮風に向かって叫ぶ倉瀬に代わってど〜んっと威圧感を漲らせるマサイアス・アドゥーベ(fa3957)の登場だ。
 彼が扮する黒船さんは、帆船模型を乗せた海軍帽に金ぴか釦が沢山付いた黒い上着。白いステテコのようなズボンというかなりレトロ調な衣装。だが凛々しく着こなすその姿はイイ感じである。
 マサイアスはおもむろに両腕を広げ、深呼吸をすると一気に放出。
「我が輩は甥っ子・日本丸・ハンセンの紹介に預かった黒船さんであぁる!」
 とんでもない大声量で自己紹介。マイク要らずな彼の声に音声さんのお手伝いもしていたダミアンが、素早く吊るしボアの付いたマイクを引っ込め鼓膜を守る。ナイス連係プレイ。それが上手くいってこそ番組の成功があるのだ。
「では最後の神奈川県を紹介するにあたり、大切な事をお教えしよう。皆も一度は歴史で習った事があろう浦賀といえば黒船、黒船といえばペリー提督であぁる! 日本人を吃驚させた歴史的事件であるペリーの上陸を記念した碑はここだ! しかしペリーが来航したのは浦賀でも久里浜なので、記念碑の所在地はこちらではなく久里浜なのである。そのすぐ横には記念館も建てられているので、立ち寄った際はぜひ合わせて見学していって欲しいものであるな!」
 マサイアスに合わせ前撮りVTRをオン。美しい公園の画。四季折々の花に囲まれた碑とモダンな造りの記念館が映し出された。
「そのペリー来航の際に交渉に当たった浦賀奉行所の与力・中島三郎助の碑があるのが、横須賀市で最も古くからある愛宕山公園だ。黒船は日本に来た船だが、日本から海外を目指し初の太平洋横断を成功させた咸臨丸。この公園には出航記念碑があり、更に与謝野鉄幹・晶子夫妻の歌碑などもある。そして何よりここからだと浦賀港が一望できるのである」
 画面は元のマサイアスの画に戻り、いつの間にか来ている愛宕山公園の散策を楽しんでいる。
「では最後に歴史やその船も良いものだが、やはり船といえば乗るものであろう。この浦賀には浦賀港の東岸と西岸を行き来する渡し船があぁる。江戸時代の御座船を再現したという船は風情もあるので話の種に一度、乗船するのもいいのではなかろうか? っというところで我らHEROは、皆が神奈川県の旅を満喫出来る事を願いお越しくださる事を待っているのであぁる!」
 空気を振動させるかのようなマサイアスの声が響く。と、いつの間にか他のHERO達もそこにいた。しかしあまりの凄さに誰もが数歩分下がった位置から頷いている。
 最後、彼らは椎名が持ってきた中華街の美味し料理を食しながら手を振ってお別れを告げた。
 因みに番組終了後、ダミアンが準備していたガムや林檎のお世話になったのは言うまでもない。