female Buccaneers2−6アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 8.4万円
参加人数 10人
サポート 1人
期間 10/25〜10/28

●本文

 一艘の木造船が沖を滑るように進んでいく。その旅立ちを真っ青な空も海も祝福しているようだ。
 風を孕み脹れる真っ白な帆。高々と立てられたマストに真っ赤なジョリー・ロジャー(海賊旗)がはためく。
 そこに映し出されたドラマタイトルを豪奢に飾った文字が流れ消えた。

 絶え間なくあるはずだった青い空に青い海。しかし今は、それが幻だったように思える。
 ジョリー・ルージュ号とプライベーティア号に軍艦を囲むのは、夜のように暗く、重い雲に覆われ所々から稲光を発する空に、強風にかき回され白い潮を立て渦巻く海。
 それらは彼らが何か巨大な力を知ってしまった事に対して怒っているかのよう。
 馴染んだ海のあまりの変わりように驚きを隠せないが、それどころではない。
 巨大な渦に翻弄される船では宝剣と鞘を巡り様々な感情が飛び交う。しかし飛び交うのはそれだけではない。剣の金属音や大砲を発射する低い音、銃声音が響き、その度に人の呻き甲板や海の中に倒れていく。
 正に地獄絵巻。しかし誰もが欲する自由を掛けた戦いは終わらない。
 誰もが宝剣に対する思考を巡らせ、最後の戦いと冒険。それを制するのは一体‥‥? 


 英国発のドラマ『Female Buccaneers2』の出演者を募集しています。
 前回同様、ジョリー・ルージュは基本的に女船長が仕切る船のため女性乗組員の構成。プライベーティアは王室から許可書を得た私掠船という設定で、こちらは男性の構成でお願いします。
 配役は二つの船の船長以外、決まっておりません。ドラマに沿った配役を考えお決めください。
 なお、引き続き出演して頂ける方は前回と同じ役でお願いします。代役案は出来ませんのでご理解ください。
 配役の決定は皆様の話し合い、くれぐれも喧嘩のないようお願いします。

 ジョリー・ルージュの船長
 プライベーティアの船長
 
 一等航海士・操舵手
 帆手
 甲板長
 大工
 砲手
 キャビンボーイ
 調理長など船に関わる仕事
 
 トゥルーガ・トゥーガ  ややへそ曲がりな妖術師。だがその正体は女神。海と海底神殿の支配者で本来の姿は人ではない。
 クイ・ホァン  アジアの海賊。未だ動きは不明。ただ戦闘に関して潔く戦う事も考えているらしい。
 ハーカー卿  英国貴族。娘を手にした彼は、プライベーティアに鞘を奪うよう命じる。

●今回の参加者

 fa1761 AAA(35歳・♂・猿)
 fa1851 紗綾(18歳・♀・兎)
 fa3293 Even(22歳・♂・狐)
 fa3325 マーシャ・イェリーツァ(23歳・♀・兎)
 fa3831 水沢 鷹弘(35歳・♂・獅子)
 fa4123 豊浦 まつり(24歳・♀・猫)
 fa4563 椎名 硝子(26歳・♀・豹)
 fa4611 ブラウネ・スターン(24歳・♀・豹)
 fa4764 日向みちる(26歳・♀・豹)
 fa5407 瑛樹(25歳・♂・豹)

●リプレイ本文


 トゥルーガ‥‥女神ティア・マを失ってもなお、沈んだ神殿を中心に渦が唸りを上げ、二艘の船を引き込もうとしている。
「‥‥まるで神殿が呼んでいるようだな」
 ラス(瑛樹(fa5407))が呟く。確かにそれは海の悲しみのようだ。しかし翻弄される方はたまったものではない。
「なに悠長な事を言っているんだ! 船が引き寄せられているんだぞ。ロープを掴め! 力一杯引けぇ」
 帆を張る作業をしていたクイ・ホァン(水沢 鷹弘(fa3831))が、そう易々と呼ばれては堪らないとばかりに、ラスと助け出したハーカーの部下達に一喝を浴びせる。
 誰もが不安という感情に苛まれながらも波に逆らい船を動かす。勿論、ジル(Even(fa3293))も同じだ。黙々と舵を操り全力で引き寄せる力に逆らう。
「おい、船長。これで全力なのか? もっと速度が上がる筈だろうがっ。波と風を読め」
 ラスに次いでジルにまで喝を飛ばす。流石はアジアの海を仕切る大海賊だけある。言われたジルは気の利いた言葉を紡げず、ただ苦笑いでやり過ごす。
 そんな修羅場の中。いつの間にかクロスツリーの上に立っているホーキンス(AAA(fa1761))。自慢の髭を撫でながら荒れる海、いや空を眺め何かを待っていた。
 そしてこの酷い状況はジョリー・ルージュも同じ。しかも彼女達にはもう一つ任務があった。それは神殿に残った者達の救出。
 サイリーン(豊浦 まつり(fa4123))とマルコ・ロッソ(ブラウネ・スターン(fa4611))が支えるロープに掴まりメアリー・ショウ(マーシャ・イェリーツァ(fa3325))と父であるハーカー卿が甲板に上がった。着くやいなやメアリーはドレスを裂きハーカーの傷を手当てする。
「父‥‥いえ、人を見殺しにするなど、許せないだけ‥‥」
「‥‥確かにね」
 彼女の些か言い訳じみた言葉は気恥ずかしさから来る反発心のようだ。察したサイリーンがハイハイッと相槌を打ち、ハーカーに肩を貸しながら、
「海賊とか貴族なんて関係なく、どんな父親であっても見殺しに出来る娘なんて居ないわよ‥‥。ま、海賊が言っても説得力ないけど。で、相棒が困ってるなら助けない訳にもいかないでしょ?」
 メアリーと共に彼を安全な場所へ運ぶと、次いでリコリス・コーラル(椎名 硝子(fa4563))とクリス(日向みちる(fa4764))の手伝いへ向かう。
 クリスは深い傷で朦朧としながらも、この船に上がる資格などない‥‥と呟き躊躇している。
「いいから、早く乗って!」
 そんな彼女にロゼッタ(紗綾(fa1851))が手を伸ばす。それでも抗う彼女にリコリスが一喝。
「クリス、死にたいのなら俺達への裏切りを償ってからにしろ。ロゼ、応急で良いから手当を頼む」
 鋭い言葉の裏にある優しさに触れ、クリスはようやく縁を乗り越えた。
「沈んだ神殿と結婚する気などない。皆、渦を乗り越えるんだ! サイリーン、メアリー頼むぞ!」
 リコリスは揺れる後甲板を勇ましく歩き指示を飛ばす。持ち場に着いた二人は具に状況を判断し船を操る。
「目の前に軍艦の一部と思える漂流物がある、避けて!」
 手当てを終えたロゼッタも見張り台へ上がり、目を利かせ促す。
「了解! サイリーン、此処でヘマは無しですわよ?」
 メアリーは舵を大きく切りながら軽口を叩く。それはサイリーンに対する絶対的信頼の現れ。聞いた彼女はニヤリと笑いロープを引く。
 二人の絶妙なタイミングで襲いかかる漂流物を避けていく。だが不意に襲いかかる一波を浴び船が大きく傾いた。
 その勢いでロゼッタが見張り台から放り出される。がオウムが機転を利かせ、ネットの一部を素早く彼女の手に渡した。間一髪落下を防ぐ。
「あぅ‥‥危なかったぁ。あ、でもここって眺めが良いわね。なら沈みゆく海の女神に敬意を表し、ルージュの底力を見せてあげましょ♪ ‥‥ねぇあれは何?!」
「あれは幽霊船セント・エルモ‥‥」
 ネットを掴み登ろうとしたロゼッタの目に薄い霧を纏い、揺らめく青白い炎達を帆のように張った海賊船が映る。彼女の声に目を向けたリコリスはその名を呟いた。
 青白い船はその間に空を海の如く滑り彼らの目の前に現れ、私掠船と併走しホーキンスを迎える。
 彼は飛び移ろうと身を屈めるも、一旦ジルに視線を投げ、
「プライベーティア号の船長ジオラルド・ルーファス。これからは貴方の思うままに行くのですよ」
 薄く笑み、ホーケンの時に使用していたヘルムを被り船を飛び移った。それを無言のまま送るジル。
 ホーキンスを迎えた幽霊船の乗組員達は彼を軽く小突き洗礼を浴びせる。どうやらこれほどの男でもここでは下っ端のよう。しかし悪い気はしていないようだ。それが一頻り済むと、幽霊船の船長が現れた。心なしか彼女はトゥルーガに似ている。
「此度は海の女神の暴走で世話を掛けたな。これは海の守り手からの償いだ‥‥」
 船長はそう言うと、柔らかな光をクリスに向かって翳す。すると荒い呼吸を繰り返していたのが嘘のように穏やかにものへ変わった。次いで倒されたはずの剣士が甲板に横たわる。船長は今回の戦いで傷ついた二人を特別に癒し甦らせたのだ。
「さて、これを納めるか‥‥」
 彼女はふむっと呟き、船を渦の中心へ向かわせる。海は彼らの進出を拒否するように激しく巻くも徐々に穏やかさを取り戻していった。


 あの渦が嘘だったように海も空も、いつもの青を取り戻していた。誰もが難を逃れた事を悟り、喜びの雄叫びをあげる。
 だがそんな喜びは束の間。ジルは船をジョリー・ルージュの脇に付け、ラスが銃を構えた。またも緊張感が漲る。
「考えてみれば卿の口を封じれば、僕らは私掠船として問題なく過ごせるのですよね? という事でこちらに渡して頂きましょう」
「け、怪我人‥‥ましてや元上司に銃を向けるだなんて!」
「ホントっ海賊の風上にも置けないね」
「ヒドイ、ヒドイ!」
 咄嗟にレイピアを抜き戦闘態勢のメアリーにロゼッタとノヴァが援護。だが次の瞬間、ジルが笑い飛ばした。
「なんて、冗談ですよ。無闇に貴女達を敵になど回しませんよ。ただ彼とメアリーには一度、英国へのご帰還を願いたい」
 穏やかに話すジルの背後に飛沫の音が響く。振り返る彼とラスが縁から乗り出し海を見る。
「‥‥借りは返したぜ、小わっぱ共、アジアの海賊王と呼ばれる俺を簡単に捕まえられると思ったか?」
 波間から叫ぶホァン。彼は口笛を吹き、アジア特有のジャンクと呼ばれる高速船を呼び寄せた。
「俺は牢に戻って縛り首を待つなど御免でな。さらばだ!」
 ラスがマスケット銃を身構えるも、船はホァンをすぐさま引き上げ動き出す。またジョリー・ルージュの方でもマルコが狙っていた。しかし船が邪魔して確認する事が出来ない。それでも波間を走り去る船を見つけると完膚無きまでに叩きつける為、砲へ走る。が、リコリスに止められた。
「英国の! 今度会った時はこうは行かんぞ。俺の命が欲しけりゃ、次はアジアに来い。存分に相手をしてやる」
「おやおや、どのみち勝負は僕の勝ちと決まってますよ? この次もね」
 最後に叫ぶホァンにジルはにこやかに返り討ち、ラスは望むところと不敵に笑み見送ると二隻の船は去りゆくそれと反対に舳先を向け、航路を取った。


 ハーカーと共にジルに連れて行かれたメアリーの帰りを待つジョリー・ルージュの面々。
「ねぇ‥‥メアリー帰って来るよね?」
「じゃあ、それを賭けてみる?」
 ロゼッタはリュートを奏でながら、寂しげに呟く。隣に座るサイリーンがカードを弄びながら応えた。マルコがスッとそのカードに手を伸ばし、帰ってくる方に‥‥っとまるで占うように柄を見た。描かれていたのはハート。
 ヨシッと呟き、ポケットから取り出した金貨をカードの上に置く。
「‥‥私の家も複雑な事情があってね。ハーカー卿が娘を探してると聞いて、つい自分と父親を重ねてしまったのさ‥‥。父が生きてるうちに出来なかった事を彼女にはして貰いたくて‥‥お節介だったのは解っているがね‥‥。少し休ませてくれ。起きたら騙した償いはさせて貰うから」
 本調子ではないクリスが仕事を請け負った事情を語り、帰ってくる方に、とカードの上に金貨を乗せ二階の部屋へ戻る。
 酒を飲みながら話に耳を傾けていたリコリスも酒代+金貨をカードに向かって投げ、店を後にする。ロゼッタも同じ場所に金貨を置きリュートを奏でだす。
「‥‥これじゃ掛けにならないね」
 サイリーンはカードの金貨を眺め苦笑いを漏らした。

 一方、ジルと共に王室に入ったハーカーとメアリー。そして護衛をするラス。
「もし交渉が決裂したら‥‥行きませんか、アジアへ。‥‥冒険の旅に」
 ホァンの言葉をふと思い出したラスが話す。にこやかにそれも良いですねと暢気にジルが答えたところで、謁見の間へと通された。
 ハーカーが恭しく膝を付き、これまでのあらましを女王に語る。だが事実は少しばかり捻られ、娘を守る為に嘘を交える。メアリーは解っているのか貴族の娘らしい振る舞いを見せていた。ジルとラスが本当に彼女が海賊である事を忘れてしまう程だ。
 納得した女王からの辞退の赦しで部屋を出る二人。
 続くジル達。彼は恭しく膝を付き、
「勿論‥‥僕達も事実を知る者の一人です。ですから自由を保障して頂けるのであれば、今まで通りに融通しても構いません。一層の働きを見せましょう。ですが侵害をお考えならば、女王陛下、貴女の御心に背かねばなりません」
 女王の足元見まくりの強気な彼に歯ぎしりで許可を与えた女王。彼らはこれで晴れて私掠船でありながら自由を勝ち取った。
 再度、礼を尽くし謁見を終わらせた彼ら。部屋を出たところで珍しく沈んだ様子のメアリーが目に入る。
 父ハーカーにより、メアリーと母を捨てた経緯が赤裸々に語られたのだ。しかし彼は二人を長らく探しこうして会う事が出来た。
 その心が解るも彼女は、きっぱりとはね除け父に別れを告げる。
「‥‥そんな事が。ですが同情は致しません。今もわたくしはジョリー・ルージュのメアリー・ショウ以外の何者でもありませんの」
 そのまま振り返らずジルと共に場を後にする。しかし立ち止まると、
「‥‥早く傷を治しなさいな。母様の所へ行く時‥‥誘って差し上げますわ」
 小さく呟いた。

 港に立つリコリスは修繕された船と出立に勤しむ船員達を見ていた。船が直ったというのに皆、覇気がない。理由は解っている。
 そこに一艘の船が滑り込んできた。
 入り口が開いた途端、メアリーが彼女達の元に駆け寄る。途端にロゼッタが嬉しそうにお帰りと手を取り、次いでマルコにクリスが喜びを表す。帆の準備に勤しむサイリーンは素っ気ないようだが、こっそりと親指を立ててた。誰もがここで晴れやかな顔となる。
「遅いじゃないか。船の修理はとっくに終わっているぞ。‥‥これで皆揃ったな! 行くぞ」
 リコリス流の言い方でメアリーを迎えると、すぐさま出発の掛け声。彼女達を乗せた船は早速、出航しようとするが、
「なんともお忙しい方達ですね。ちょっとお話があります。サイリーン、貴女にです。あの渦の中で自分に掛けるのはどうだと僕に言いましたよね? その賭けに乗りましょう。帆を張るの役目の貴女ですが、たまには自分という帆に新しい風を入れ操舵を握ってみるのは如何です?」
 割りにマジで口説く彼に驚き、一瞬ロープを握る手を止めたサイリーン。頬を染めるもすぐに笑い、
「そうね‥‥それも良いと思うけど、今はまだ勝手気ままな潮風に帆を張り舵をメアリーに任せて進んで行くのが今の性に合ってるのよ。私は帆でなく気まぐれで奔放な風のほう。だからこそ面白いんじゃない? 誰かのものにならない自由さが」
 体よく断りを入れる。項垂れるジルを後目にジョリー・ルージュは白い帆に風を孕ませ速度を上げて大海原へと出て行ってしまった。
「ずっと自由に憧れていたんだ。だけど自由と孤独を履き違えていたようだ‥‥。今、ようやく本当の自由を感じられるよ」
 爽やかな潮風を浴びクリスは呟く。メアリーは舵を取りながら聞き入り、ふいに自分達のポカを思い出した。
「ねぇ、海賊として神殿から宝を頂いて来るべきじゃなかったかしら?」
「あぁ‥‥それはもう手に入れたじゃないか。自由な海と言う、とてつもない宝物を!」
「‥‥全く貴女には敵いませんわ。なら、わたくし達はこれからどうしますの?」
 リコリスの言葉にメアリーが納得しつつ更に追求。
「酒場で新たな宝の情報を仕入れた。どうやらプライベーティアの連中も狙っているようだ。先を越されないうちに掠め取れ! 目指すは東の海! さぁ皆、お宝目指して行くよ!」
 見張り台で聞いていたロゼッタは彼女達の仲間である証のルビーの指輪に軽くキスし、
「ルージュ、また一緒にみんなと冒険にいけるね!」
 なんとも嬉しそうに呟いた。
 剣を掲げ鬨を上げるリコリスに、メアリーは大きく舵を切る。合わせて帆に風をまた孕ませるサイリーン。手伝うのはマルコにクリス。船は更に速度を上げ突き進む。
「ふふ‥‥同じお宝を狙っているのは知っているようですね。さぁ、こっちも急ぎましょう! そして必ず手に入れるのです」
 こっそりと追うジルがラスに指示をだし船を急がせる。だが彼女達はもう水平線の向こう。
「諦めませんよ‥‥一番上等なお宝を手にするまではね」
 ジルはちょっと意味深な言葉を呟いた。

「ここに海賊達の冒険は終わりを告げた。だがその世界には新たな危険とロマンスで満ち溢れている。人よ探求する心を失う事なかれ」
 雪城かおるがナレーションを飾り、画面は静かに暗転しドラマの終わりを告げた。