いろはに諺 ちの巻アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/28〜06/01
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●本文
サブタイトル:実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
タイトル通りの教育番組である。いや、そのはずだ。何と言おうと。
プロデューサーの指示で、スタッフが運び込む小道具、衣装はイベントパーティーでも行われるのではないかと間違えるほど、面白グッズばかりが集められ、スタジオに置かれていった。
そう、この番組の意図は楽しみながら諺を学ぼうというもの。
和風なセットなども用意され準備は万端。あとは出演者と司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
■出演者募集
いろはに諺の出演者を募集します。
楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。
■演出
その1 諺とは関係なく「ち」(濁点可)の文字を頭に使い面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となって、体を張り文字を作って頂きます。
その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントなど、お願いします。
ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうのも良いですし、創作ことわざ披露や、体を使いスタントでコントもオッケー。
とにかく皆様でワイワイ楽しんで番組を作ってください。(これが大事)
コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。
最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第!
用意された諺は、全て使わなくても大丈夫です。
■お題
ち
「竹馬の友」
意味:幼い頃、竹馬で遊んだ幼友達の事
「塵も積もれば山となる」
意味:僅かな物でも少しずつ貯めていけば、必ず大きな物になる事
「沈黙は金」
意味:上く話すより、黙っている方が説得力があるという事
●リプレイ本文
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六時ぴったりにチャンネルを合わせれば現れるタイトル。元気な子供の声で読み上げられると画面は切り替わり出演者が映し出された。
「ち、ち〜すやっ! 始まりましたいろはに諺。昔から知恵は万代の宝っと言うて、学ぶ事は大切やねん。今日も元気に勉強や! 司会はお馴染みユラお姉さんやで」
「駐車場の支払いを家計簿に付け、ちょっちん(キッチン)の掃除をしたら竹輪で調理って、がぅ、家事シリーズなのだ!?」
「はぁ? なんでそうなるんや、かなり無理があるやろがっ」
すぱこぉん!
番組の回数が増すにつれ、衰えるどころかその技に光るモノを感じさせる豊浦 あやね(fa3371)の突っ込みハリセン。今日も愛情たっぷりに苺(fa3120)の頭部に炸裂。始まりから景気良い音が響く。
「がぅ? だって今回のお題は『ち』。やっぱり家事ネタ向きだと思うのだ! ほら、ここにも書いてあるしマイクもこの通りなのだ!」
苺は『しかいしんこ〜! 竹輪のち』と書かれた右腕の腕章と竹輪を無理矢理に被せた愛用マイクを豊浦に見せる。
「‥‥相変わらず無茶しおるなぁ。なんや毎回、腕章の語呂が変わっとる気がするし」
「えっへん! そうなのだ。この番組の特徴とも言うべき、朝礼暮改。規則や命令が毎回変わり、行き当たりばったりな所を習ってるのだー」
「変なトコばかり真似せんでヨシっ!」
またもハリセンが一閃。その拍子に竹輪付きマイクが苺の手からぽろりと落ちるも、さっと拾い上げ、
「三秒ルール! いったん処分なのだ!」
ふーっと息を吹きかけ、もぐもぐ頬張りだす。豊浦の顔に苦笑いが浮かんだのは言うまでもない。
「そだ、言い忘れてたのだー。上月さん、ディレクターから指令なのだ!」
「あ、ありがとうございます。えっと、別室でお題に使われる諺の起源を調べ発表するべし‥‥ですか? 解りました。なお、この文面は丸めて捨て、残った竹輪は苺さんの腹で自動消滅させるべし」
苺から指令書入り竹輪を受け取った上月 一夜(fa0048)は読みあげると残りの竹輪を彼女に返した。またも美味しそうに頬張る苺。
「って、なんで竹輪にしこむんやっと! さーて、とりあえずいろはに諺始まりぃやって、なんや? 真田さん」
そんな苺に豊浦の鋭い突っ込みが炸裂。もう一度、気を取り直して進行開始をするも、元気よく前に出てくる真田・勇(fa1986)によって阻まれる。
「皆さん、聞いてください! 今回は真面目にやらせて貰うっす。もうあんな事やこぉんな事は‥‥詳しくは絶賛発売中のいろはに諺のDVDを見てね!」
爽やかな笑顔でDVD販売をアピール。だがそんなもの存在するハズなく『注意:出てません』っと大きくテロップで表示されてた。が、真田は気にせず話を進める。
「っという事で、生まれ変わった真田。新キャラで登場、名付けて諺博士っす! テーマソングも作詞作曲、某著名芸人さんに考えてもらったんっす。スタート!」
猪突猛進で進めていく彼に、豊浦は泳がせてからハリセンを見舞う方向を取ろうと黙って聞いている。
「ラララぁ♪ ことことわざわざ、諺博士〜〜、裏技博士じゃありませぇん、博士号などないくせにぃぃ田舎は東海、中卒で金髪童顔おチビぃ〜〜。ちょっとお間抜けはご愛敬、これで諺博士たぁ笑わせるっすぅ〜〜ワオ――!」
ラスト、両手を上げ無意味なポーズを決める。出演者全員、奇っ怪な歌と踊りに言葉を失なっていた。
「え? 引いてるっ! あぁ〜〜はめられたっす! ってか、大学には諺学科ってないっすよね。博士号なきゃ博士は名乗れないんじゃないっすか! 竹馬の友にモノを頼むと、こんな事になるっすから、みんなも気をつけようっす!」
「相変わらずやないか‥‥。あんさんの場合、竹馬や違ごうて類は友を呼ぶやろっ!」
すぱこぉぉん!
豊浦のきつい突っ込みに真田、しょんぼり気味で一言。
「まあ、気を取り直して‥‥。今回は『ち』沈黙は金っす。これから黙秘権で進行するっす。‥‥‥‥」
「おー、静かになっていいのだー。おいらも着眼大局! 物事に対し広い眼を持って対応するため竹輪を食べながら傍観なのだー」
「あんさんはちゃんと司会をしなはれっ! と言うことで、いろはに始まりや〜」
新しい竹輪を手に苺はボケをかますも、突っ込みがまたも入る。きっと一番多くどつかれているのは彼女だろう。後ろに立つ出演者達は実感していた。
今回も波乱の幕開けのいろは。開始だ。
●
「ち‥‥沈黙は金、雄弁は銀という言葉が使われた頃は、銀の方が貴重だったらしいですヨ。ちょっとした豆知識ネ。ではお題の文字作り開始ィ」
マリアーノ・ファリアス(fa2539)はお題に沿った知識を披露したの後、文字作りセットによじ登り、両手を広げ腰を曲げ文字を完成させた。
「チキンの『ち』」
だがどうもおかしい。見れば曲げる腰は右ではなく左。これは『さ』である。ファリアスの見事な勘違いに豊浦が小声で注意をするも、時すでに遅し。すでにセットから降りていた。
「う〜ん、日本語は学んだけど難しいネ」
彼は笑いながら陽気に自分の額をひとつ叩くと気を取り直し、お題を開始。
「これチキンね。フライドチキンは父の日に食べるお祝いのモノ。お飾りもあるネ」
「どうみても砂金やがな! そっちの手に持つのは笹や! っと父の日は六月。三月三日が笹の日言うのはナシやで」
すぱこんっ
取り出した皿の上に乗っているのはフライドチキンではなく黄金に輝く砂金の山。フライド砂金と言ったところか? 片方の手には見事飾り付けられた笹を振っている。
どうやら文字自体を勘違いしているようだ。言わずと豊浦のハリセンが一撃。それでもめげずにネタを重ねていくファリアス。
砂丘のパネルを取りだし地球と間違えれば、またもハリセン。最後に某宇宙飛行士の名台詞を使い、青いフィルターを砂丘のパネルの上に重ねた。
「ただの青い砂丘やんかっ!」
豊浦のハリセンチョップが見事に決まりダウン。だが練習生といえど格闘家が一撃で沈むには弱すぎる。思い起こせば繰り返し受けていたジャブハリセンのダメージが功を奏したようだ。塵も積もれば山となるだ。身を持って表現したファリアスは素晴らしい芸人(格闘家)魂といえよう。
「ち‥‥千葉の‥‥ぐほっ」
「それは鯖やんか! ええ加減にしなさいっ」
カーン、カーン
「この試合、ツーダウンTKOでファリアス選手の負けなのだ。血の雨が降らなくて良かったのだー」
懲りずに鯖を手にフラフラ立ち上がるも駄目押しハリセンで轟沈。苺がゴングを響かせ、愛用のマイクに付いた竹輪を囓りながら締めた。
●
スタジオ隅の小部屋で、黙々と辞書と格闘続ける上月。真面目な性格の彼らしく、偽コーナーとはまだ気付いていない。
「上月さん、調べ上げられましたかーなのだ?」
「え? まだですよ。もう少し時間が欲しいですね」
苺、上月と話をしながらも梯子を使って彼の上に。
「うぷぷっ! まだ気付いていないのだ。今からドッキリで諺を実演して貰うのだ」
ぽーんっと一個のスポンジを投げる。台所で見かけるスポンジだ。それは上月の頭に当たった。不思議そうに見上げた上月。
「な、何だ?」
「落としたスポンジは一つだけならこの通り大した事ないのだ。でも大量に落ちれば驚異! イイ感じになるのだ! れっつごー」
がこんっ!
「え? うわっ、ちょ‥‥」
苺が嬉しげに説明すると、用意されたレバーを引いた。とたんに上月の頭上から大量のスポンジがドドーッと落ち、色とりどりのスポンジ海原へ沈んだ。
「お題にちなんで直方体スポンジなのだ。なんでかとゆーと、タワシの部分を削って万が一の怪我に備えての事なのだ。で、十個入り百円のお台所スポンジ。単価は十円。全部あわせて‥‥、ちょ、ちょっきり一万円なのだ。家計に優しいのだー」
お題も引っ掛けられ微妙な気遣いが垣間見えるスポンジを説明する苺。価格の計算は笑って誤魔化す。そんなスポンジを掻き分け顔を出した上月はヨレヨレだ。
「ち、塵も積もれば山となる? ほんの些細な物も大量に重なったらとんでもないって意味の諺だね‥‥。実感しました」
「やりすぎちゃったかも? まぁ色々な進歩に犠牲が付きモノなのだ。これが大量の竹輪だったら溺れる前に食べ尽くす! なのだ」
「ネリモノ臭ぁなるわっ、さぁ片付けやで! 本業発揮やHIKAGEさーん!」
「はーい、お題を先に‥‥山本君は僕の千葉の友達です」
「なんやそりゃ? 竹馬の友に掛けてはるようやけど解りにくいし、頭が『ち』やないやんっ」
豊浦の鋭い突っ込み。怯んだHIKAGE(fa1340)は、
「ち、竹輪は美味いわんっ、食べたいわn‥‥」
すぱこんっ
これまた古い某忍者漫画のペットの真似をするが、言い終わらないうちに豊浦にどつかれた。無言での攻撃だけに威圧が凄まじく、恐ろしい。ビビったHIKAGEは真面目に取り組もうとピシッときおつけ。
「塵を積んで山にしてみよう!」
っと、流れるテロップを読み上げ、ADによって救出された上月のセットの清掃開始。
「おいらも手伝うのだー。ってあれー? 上手くできないのだ」
「はいはい、苺さんはあっちで竹輪を食べてようねー、行くよー!」
「がうがうっ 美味しそうなのだ!」
「ワンコかいなっ!」
あちこち掃きだしスポンジゴミを一生懸命、集め山を作ろうとする横で両手にちりとりを持った苺が手伝いと称して邪魔をする。
HIKAGEは大きな竹輪を取りだし、苺の前にブラブラさせるとぽーんと放った。つられてダッシュする苺。横で見ていた豊浦は眉根を揉んだ。
「ふうっ、もう少しだね」
彼の頭の中ではこんもり小山くらいの塵山と想定しているらしい。もう少しだ。足りない塵はカメラに背を向け、カッターナイフでスポンジを削り増やし努力をする。着実に前進をしている。が、この番組、そうは上手くできない仕掛け。
豊浦が大型扇風機を持ち出し、集められる塵にロックオン。機会を慎重に待つ。
それは割りに早く訪れた。ようやく出来た塵の山を前に嬉しそうに手を叩き喜ぶHIKAGE。にんまり小悪魔笑顔で豊浦は、扇風機の強ボタンを押した。
「スイッチオン!」
ぶぉぉぉん
「さぁ〜もう出来上がりだ‥‥って、ぎゃーっ! 俺の山がぁぁ」
『塵も積もれば山となるけど集めるのはすごく大変』
一気に突風が吹き荒れ、集められた塵はすぐに飛散してしまった。ふいになった小山の残骸を見て茫然自失のHIKAGEの哀愁漂う背中にテロップが流れお題を締めた。
●
出演者のハジケまくる空気に押され気味の若手芸人、ベクサー・マカンダル(fa0824)が、小さく口癖の「負けない」と呟き、ひとつ気合いを入れると、戸惑う表情の相方の海風 礼二郎(fa2396)の手を引き画面に現れた。
「ねぇ、『ち』って言えばさ、チェスだよね。六十四升の盤上に十六個の駒を動かすんだよ」
「え? 君がェスをやっているなんて始めて聞いたよ。知っていたんだね」
マカンダルがチェスの知識を一通り海風に披露。彼も感心して聞いている。
「最後にアレだよ。プロデューサーのOKが貰えれば勝ちっていう‥‥」
「何のゲームだよ、それ?」
「そんなルールじゃないの? ま、いいっかー」
「良くないと思うけど‥‥」
どうも的が外れだしたマカンダルに海風は弱気ながらも突っ込みを入れるが彼女にサラリとかわされ、早々に文字作りセットに上り出す。追うように海風もセットに登り、文字を完成。
「ちー」
降りてくるとお題に沿った掛け合い開始。
「沈黙は金ってあるよね。確かにあまりペチャクチャお喋りするより要点だけをきちんと伝えた方が、説得力があるという諺だね」
「そうかな? 寡黙になるだけじゃ自分の意見は通じないだろうと思うよ。色々と具体的例などを話したり解りやすくしてこそ説得力が生じるのではないか?」
「いや、そういうことじゃなく、そういう諺なんだから‥‥」
「なら、こういう事か?」
型通りの諺説明をする海風にマカンダルは思いっきり反論。それに動揺する海風へマカンダルは沈黙は金を実行なのか、無言でズイズイっと接近し圧を掛けていく。
海風は耐えきれず、半べそで怯えながら身体を縮こめた。
「あぅ‥‥恐い恐い、ピンクのタイツで迫らまらないで〜〜頭突きされそう! はい〜、言う通りです。ごめんなさい」
「‥‥ふんっ! よ〜し、解れば良いのよ。良い子のみんなは、将来NO! といえる大人になろうね」
納得したのかマカンダルは海風を尻目にカメラに向かって爽やかな笑顔とポーズを作り、画面の向こうに呼びかけた。
●
「いやぁ、今回も楽しく諺の勉強ができたねんなって、なんやそのお腹っ」
「うぷっ‥‥そうなのだ。竹輪の食べ過ぎでお腹いっぱいなのだ」
仕込んでいた竹輪を食べ尽くした苺のお腹は脹れている。豊浦は呆れながらもカメラが回っている手前、気持ちを切り替え締めに掛かる。
「ほな、よい子のみん‥‥」
「チョット待ったぁ、沈黙をしていたら出番が少なかったっす! チョヤバな勘違いをやっちまったっす」
先ほどまで愛らしい少年達に邪な考えを巡らせ、目尻や鼻の下をでろ〜〜んと伸ばしていた真田が、ようやく重大な事に気付く。あわわっと右往左往するも後の祭り。番組が使える時間はすでに無く、豊浦率いる他の出演者に華麗なスルーを決められてしまった。
「まったねー」