ビバ☆ ツインズ アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/31〜06/04
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●本文
入学式から二ヶ月、ようやく高校生活に慣れてきた新入生達。初夏の日差しは若い心を浮き足立たせ、学業に専念させないかのよう。
そんな活気立つ錦城総合高校に通う双子の兄弟、喧嘩が滅法強く色々と問題児の兄のキム・ヒョドンと、優しく穏やかで優秀な弟、キム・ヒョヌ。
性格がまったく違う二人だが、割りと仲が良い。もっともヒョヌが折れることで保たれているが。
そんな二人は同じ高校に通いながらも、学科も校舎も別。
ヒョドンが学ぶ工学科は男子ばかりでむさ苦しい上、一部はワルの巣窟。一方、ヒョヌは男女共学で勉強熱心な学生が集う特別進学科。
女生徒と出会う事の全くないに等しい工学科のヒョドンだが、一人の少女に恋をした。それは弟と同じクラスのパク・ジヨン。
ヒョヌの参考書を返しに家に来たのを目撃したのだ。
さっそくヒョヌを脅し、弟と入れ替わって教室に忍び込み色々とアタックなどを試みる。
あの手この手でジヨンに近付こうとするけど? さてこの恋、成就するのでしょうか?
〜高校設定〜
工学科と進学科は中庭を挟み二つに分かれています。共に使えるのはグランドのみ。食堂や施設は時間を分けて使ってます。特に食堂は学食のおばちゃんが恐ろしいため、工学科のワルどもも一目置くほど。
女生徒はもちろん進学科の学生達は、不良の巣窟がある男子のみの工学科に決して足を踏み入れません。もっとも教師にも止められていますが。
制服があります。男子は青いブレザーに黄色と茶色の斜め縞ネクタイ、シャツは学校指定の薄い青色か白。ズボンはブレザーと同色か灰色のスラックスの二本。朝起きてその日の気分でコーディネートできる制服です。
女性生とも、もちろん同様にブレザーに黄色のリボンタイ。二色のプリーツスカートが二枚。長さは膝丈。白か紺のソックス。(プリントや刺繍入りは禁止)
〜登場人物〜
キム・ヒョドン 双子の兄。喧嘩が滅法強く、どうしょうもないくらいの不良。だけど優しいところもある?
キム・ヒョヌ 双子の弟。心優しく優秀な弟。出来の悪い兄に代わり親の期待を一身に受ける。
パク・ジヨン ヒョドンが恋した女の子。優しく気だての良い娘。親は政治家。
イ ・ジュノ ヒョドンの友人というか子分。
ペグ・ドングン ヒョヌの友人。
カン・スビン ジヨンと一番仲の良い賑やかな女生徒。
双子に恋する女生徒やライバル、他校の番長や双子の両親など、自分はこの役をやりたいと考えられた役者さん、また脚色をして下さる脚本家さんや裏方さんも同時に募集しております。
みなさんで活気のあるドラマを作ってみませんか?
●リプレイ本文
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「さて作るかのう。まずは制服からじゃ、双子の兄が着ている方はくたびれて使い込んだ風に加工じゃ。一方弟の方はパリッとして、いつもおろし立てな感じだぞい! さあ皆の衆、お仕事の時間じゃ、ロックンロール!」
様々な撮影機材が並ぶスタジオ。そこで張り切る裏方の如鳳(fa2722)は衣装担当や他のスタッフ達にテキパキと指示を与えて回る。
だが今回、用意された衣装やセットはあまりに貧弱。困った顔の如鳳は腕を組み、ひと悩み。
「どうも資金があまり出そうもないのぅ。エキストラ分の衣装は既存の物を使うとして、セットはワシが手がける3DCGでいくかのぅ‥‥」
低予算でも対応出来る秘策を捻り出す。
そんな如鳳から、少し離れた休憩所では出演者達が緊張した面持ちで各自、台本を確認したり台詞合わせに勤しんでいた。
「初めてのドラマ出演。緊張するなぁ‥‥演技は自信ないけど、目指せ爽やかな弟! ってな感じ?」
「カナも韓流ドラマは初めてだから緊張してるの。‥‥えと、カナが演じるユリは間違って告白しちゃうんだね。ん‥‥カナの思っている雰囲気で大丈夫かしら?」
黒いウイッグの中に銀髪を収め、人懐っこい笑顔で戯けるのは双子の弟キム・ヒョヌ役の涼原 水樹(fa0606)。その隣に座るソン・ユリ役の桐沢カナ(fa1077)は、撮影を前の浮き足立つような緊張を抑え、役の最終確認をしている。
「皆の衆、そろそろ準備はよいかな? ホレホレ、ちゃんと衣装を着ておくれよ。では宜しく頼むぞ! 撮影開始じゃい」
威勢の良い如鳳の声が響いた。カメラマンや出演者に促し、撮影が開始された。
●
錦城総合高校が新学期を迎えて二ヶ月。寒い季節は終わり、心弾む時期がそこまで来ていた。それはキム・ヒョドン(志羽・明流(fa3237))にもだ。最近、その傾向が強くなっている。何故なら彼は恋をしていた。
喧嘩ばかりの彼の前に現れた少女。ヒョヌの参考書を返しに来たパク・ジヨン(蒼流 凪(fa3623))。愛らしさに混じる悲しげで苛立っている表情に恋をした。
ヒョヌと同じクラスだと知り、早速ヒョヌを食堂へ呼び出した。工学科が出入りするこの時間、オドオド入ってくる弟を見つけ人気のない場所へ引っ張り込んだ。
「な、何? 兄さん、僕が入れる時間はもう過ぎてるんだけど‥‥」
「頼みがある。入れ替えさせてくれ。兄ちゃんの言う事が聞けないなんて言わないよな、え? 逆らうと殴るぞ」
「な、なにも脅さなくても‥‥。困ったなぁ、理由は?」
「聞くなっ! や、野暮用だ。ま、お前も勉強の虫が落ちれば、解るっていうもんだぜ」
並べば良く似た双子。だが決定的に違う。真面目に制服を身につける弟。一方、だらしなくよれた制服姿の兄。対照的な二人が着替えただけで誤魔化せるとは思えないが、ヒョドンはなんとか言い訳でヒョヌを丸め込もうとする。懇願する兄に溜め息ひとつ付いて、
「解ったよ‥‥でも半日だけからね。そうだ。ここで僕になる練習をしてよ」
「な、なに? あぁ‥‥こ、こうか? 僕はヒョヌです。勉強が好きです」
「解った。もういいよ‥‥着替えよう」
ヒョドンは真似てみるがぎこちない。仕方ないとヒョヌは諦めるように笑い制服を脱ぎ着替えだした。
●
ヒョヌを探してペグ・ドングン(小峯吉淑(fa3822))が、食堂を見回している。ちょうど双子は現れた。
「探したぜ、ヒョヌ。ヒョドンと一緒だったのか‥‥。二人が校内で会うなんて珍しいな」
「う、うるせ‥‥じゃない。うん、そ、そうでしょ。兄さんに相談をしてたんだ」
ヒョヌと代わったヒョドンはいつもの調子で話そうとするが、ヒョヌに肘で突かれ言葉使いを変える。そんなやり取りを訝しげにみるドングン。幼馴染みでヒョヌといつも一緒にいる彼を騙すのは一苦労だ。ヒョドンの姿をしたヒョヌに一案が浮び彼を呼んだ。
「ドングン、お前に話がある。ちょっとこっちに来い」
「う、うん。手短にしてくれよ。ヒョヌと予習しなきゃいけないんだ」
ヒョドンから数歩離れた場所でヒョヌはドングンに小声で話し出す。その話し方は荒っぽいヒョドンではなく聞き慣れたヒョヌのもの。ドングンは驚く。
「‥‥お前、まさかヒョヌか? うわマジかよ、どうなっても知らないぞ?」
「それは良いんだ別に。あのさ、あの兄さんが誰かに何かを伝えたいみたいなんだ。僕に頼むのは余程だと思う。だから入れ替わったんだけど。‥‥いつも乱暴者扱いされてるけど兄さん、本当は不器用なだけなんだ。だからドングンにフォローをお願いしたいんだ。いいよね?」
「お前、振り回されっぱなしだなぁ。もう少し反抗してもいいんじゃないか?」
ヒョヌはドングンの言葉にいいんだと、小さく笑った。
●
「頑張るのよユリ。どこにいっちゃたのかしら? ヒョヌさん」
「う、うん‥‥、ねぇスビン、一緒にいてね、お願いだから」
昼休みも終盤、ユリは頬を染めヒョヌを探していた。一緒に探すのは仲良しのカン・スビン(田中由香子(fa3819))。今日この時間にユリはヒョヌに心に秘めていた想いを告白しようというのだ。
「いた、ヒョヌさん!」
「あ、あのぅ‥‥ヒョヌさん、机に入っていた手紙、読んで頂けましたか?」
「しまった! ユリさん、あのですね‥‥」
「初めまして。あのぅ、お兄さんのヒョドンさんですね」
「あの有名なヒョドンさん? 用があるのは貴方の弟ヒョヌさんなのよ」
「おぃ、ヒョドン! 俺達はお邪魔みたいだ、行っこう」
兄の呼び出しで手紙の事を忘れていたヒョヌ。ヒョドンの姿でユリに近付くが彼女は驚き後退るとスビンが割って入る。ドングンが助け船にヒョヌの腕を引き連れ出した。
残されたヒョヌ――ヒョドンを前にユリは言葉が紡げずモジモジし始める。スビンが軽く肘を当て促すとユリは意を決したように、
「あのヒョ、ヒョヌさん! 私、あなたの事を見ていました。好きです。‥‥付き合ってください!」
「え? 俺‥‥じゃない。僕とですか? う〜んその‥‥」
突然の告白。された方のヒョドンは自分宛でないことを知りながらも嬉しくも戸惑い答えに詰まっていると、何を勘違いしたのかユリの顔から紅潮が冷め、青ざめていく。
「ごめんなさい。と、突然こんな事を‥‥」
「ち、ちょっと待ったっ いやユリさん、違うんだ‥‥」
「あのぅヒョドンさん、さっきから何なんですか?」
ユリの声がかすれていくのを見ていられなくなったヒョヌが口出す。が、すぐにポニーテールに邪魔をされた。強気なスビンは腰に手を当てずいっと詰め寄ってくる。
ヒョヌも詰まった。「違うんだ」と言いたいが、この姿では何も言えない。隣でドングンは慌てふためいている。どうすれば良いんだ。まごつくそこに予鈴が鳴り響いた。
「行こうユリ。ヒョヌさん、放課後までに答えをください」
感極まって泣き顔になったユリの肩をスビンは抱き寄せ連れて行く。見送るヒョドンはヘタる、一方のヒョヌは切なげな表情で彼女らを見送った。
「おい、ヒョドン、大丈夫か? 俺、お前について行ってやりたいが、どうする?」
「大丈夫。兄さんを任せる。僕は少し頭を冷やしてくる」
ヒョヌは工学科ではなく門へヨロヨロと歩き出した。
●
進学科の教室。ヒョドンにとっては未知なる世界の一歩だった。
「午後は自習だ。いいか、大人しく英語の教科書を眺めていなよ」
「解った。これだね」
「馬鹿、それは国語だ。こっちだよ」
自習のせいか教室にいる生徒は疎らだ。大半は図書室に行き勉強に勤しんでいるのだろう。ヒョヌとドングンは机を並べ、自習を開始した。
すでにドングンにバレていると知らないヒョドンは懸命に演じ、取り出した教科書を眺める。が、チンプンカンプン。投げ出しい衝動を抑えながら勉強に没頭する。隣で気が気でないドングンが逐一観察する。
そんな中、パク・ジヨンがヒョヌのひとつ隣の自分の席に着いた。ヒョドンは教科書越しに彼女を盗み見る。やっぱり可愛いよな、と目尻が下がり出すとドングンに注意された。それでもうっとり見つめるが、視界を遮る少女が数名、ジヨンの席前に立つ。イ・チェミン(白鷺アリス(fa1512))だ。ぐっと腕を組み、威圧的に話しかける。
「ねえジヨン、妙にヒョヌさんと親しいのね。この前、参考書を返しに行ってたみたいだし。ま、真面目な彼には興味無いけど」
含みがある言い方だ。ヒョドンの目が険しくなる。チェミンは男子生徒にかなり人気がある。そんな彼女がファンと称して自分にくっついているのを思い出した。ジヨンが家に来たことでなにか釘を差す意味もあるのだろうと考えた。
「そ、そんな言い方ないんじゃない? 酷いわ‥‥」
「ユリ、貴女と話してないの。ねぇ私が話している意味、流石に貴女でも解るわよね? ジヨンは貴女の気持ちを知りながらヒョヌさんに近付いてるのよ。もしかしたらヒョヌさんだって、知っててあんな態度取ってるのかもしれないわ。ユリ、男の子を見る目が無いわよ」
どうやらチェミンは昼休み場面を見ていたらしい。ユリの頬が強ばる。
「酷い‥‥」
「もぅ! どうして、そうユリやジヨンに冷たく当たるの? いい加減しなさいよ!」
止めに入るスビン。その顔に明るい表情は乗っていない。本気で怒っているのだ。ユリの瞳に涙が溜まる。
「‥‥ねぇ、貴女に私の何が分かるの?」
ジヨンが呟く。チェミンを見る瞳は怒りの色が露わになっている。何かに耐えていた彼女の心は歯止めが出来ず、怒りや不満が押し寄せだす。
「おい、いい加減にしろよっ。みっともない、嫉妬ならヨソでt‥‥」
ばしーんっ
「あはは、ヒョヌ、たまには格好つけてみたいお年頃なんだな」
「痛ぇ‥‥あ‥‥」
「こいつ、昼飯にコチュを入れ過ぎた飯を食べて、やけに熱血なんだよ。ほ、ほら図書室行くぞ」
チェミンの言葉に我慢しきれなくなったヒョドンは入れ替わったことも忘れ怒鳴った。誰もが驚く。一番驚いたのはドングンかもしれない。咄嗟にその後頭部を分厚い辞書で殴り、引きつる笑顔で弁解しすぐさまヒョドンを教室の外へと連れ出した。
「な、何あれ、変なの? 一瞬、ヒョドンかと思ったわ」
●
そんな事が起きているのを知らないヒョヌは、学校を抜け出し昼休みの憂さを晴らすようにゲームセンターで遊び、他校の生徒に絡まれ全力疾走で逃げたりしていた。その行動はヒョドンのメンツを丸崩しにするものばかりだ。だが本気でヒョドンの生活を満喫していた。
「兄さんって色々、楽しんでいるんだな、僕も少しは羽を伸ばしたいなぁ」
ようやく気分も落ち着いた頃、辺りも薄暗くなっていた。そろそろ戻ろうとヒョヌは歩き出すと、とたんに腕を掴まれる。見ればそこにチェミンがいた。
「丁度良かった! ヒョドン、遊びに行きましょうよ。良いでしょ?」
「チェミンさ‥‥いや、チェミン。俺は行くところがある。またな」
素っ気なくチェミンの腕は払うヒョヌ。同じクラスながらも実はあまり面識がない。だがここにいるのはヒョドンと思っているチェミンは愛らしく唇を突き出し抗議する。
「今日は何かおかしいわね。付き合い悪し‥‥。そういえばヒョヌさんも変だったわ。ジヨンに貴方の家に行ったことを詰ったら凄く怒ってたし。どうしちゃったの?」
「な、なんだって? まったく仕方ないなぁ‥‥」
そう言うが早いかヒョヌはチェミンを置いて学校へ急いだ。
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「ヒョヌの奴、どこ行ったんだ‥‥。早くしてよ、ドングン」
「もうちょっとで終わるから、待ってよ」
意外な展開などの碌々でジヨンに近づけず話も出来なかったヒョドン。だが、ひとつ気付いた。このままヒョヌで近付いても意味が無い事を。己に呆れながらも、入れ替わってジヨンに告白を決めようと考えたがヒョヌが来ない。
ユリとスビンが昼の解答を聞くため校門前でヒョヌを待ち構えている。そしてヒョドンの目的、ジヨンも居るのだ。チャンスなのかそうでないのかもう解らない。
「早くしないと帰っちゃうよ」
木陰に隠れながら様子を窺うヒョドン傍でドングンがヒョヌのノートを写している。これも実は彼の作戦。ヒョドンをこのまま行かせたら混乱は免れない。ヒョヌと会うまで引き留めているのだ。
「も〜待てないっ! 俺は行くぜっ」
制服のネクタイを乱暴に引っ張り、普段の格好に近づけたヒョドンが飛び出した。
「ジ、ジヨンさん、俺はお前が好きだ! 猛烈に恋してるっ‥‥うがが」
「ヒョ‥‥ヌさん?」
「え、なに?」
ヒョドンの叫びは彼ら以外いない校庭に響いた。慌てたドングンは手に持っていたノートでヒョドンの顔を覆った。混乱する少女達。当たり前だ。ヒョヌが大声で叫んでる言葉は、ユリの告白を無視するモノ。途端に涙ぐむユリ。
「お、俺はジヨンさんと仲良くしたい」
「兄さん! もう止めてください」
ドングンを振り払い、なお告白タイムをするヒョドンに息を弾ませたヒョヌが現れた。
「な、なんで? ヒョドンさんが二人? もしかして」
「そうなんです。ごめんなさいジヨンさん、兄さんが大切な用事があると言うから入れ替わったんです。ユリさん、今度は僕の方から‥‥告白させてください」
「‥‥うふふ、そうだったの。ふぅん、おかしな人達。仲が良いのね。‥‥ヒョドンさん、面白かったわ」
ジヨンはいつもの作り笑いとは違う素直な笑顔で双子を見た。ユリは不良姿のヒョヌに驚くも、真面目な顔に照れ笑いを浮かべ自分に素敵な言葉を掛けてくれた彼に頷く。
「そうね、私も重い冬服から夏服に着替えなくちゃ」
ジヨンは小さく息をつき何かを払うように呟く。ドングンは双子に拍手を送った。