請求! 鈴音的声音道士アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/08〜04/12
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●本文
――そぅ、それは昔‥‥神も人もそして妖怪もが、ひとつの地で共存をしていた時代の話。
ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出していた。
画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように右から左へ流れては消えていく。
――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた。
妖怪の悪行に天で気を揉む神々は、四神と麒麟に命じて小さな鈴に法力を入れ込ませ、妖怪を封印するべく勇敢な人にその鈴を託す。
り〜ん、りり〜ん、りん、り〜りん。
小さな鈴が五つ、喧騒に包まれる街の上空を人を捜し淡い光を放ちながら彷徨う。
さて今宵、どんな妖怪とあい対しますか?
〜出演者を募集〜
中国ドラマ「請求! 鈴音的声音道士」は、四神と麒麟の法力が宿る鈴に選ばれた人になりきり、妖怪封印の道士を演じてください。
またその他の出演者、カメラマンや妖怪を動かす技術スタッフも同時に募集しております。
〜道士の法力選択〜
・青い鈴
青龍
春と東の守護神 水 守備型
武器 龍笛&方位計 龍笛で睡眠誘発や能力を激減させることができ、また方位計により妖怪や仲間の居場所を知る事が出来る。
玄武の結界と組むことで守備能力が倍増。
・赤い鈴
朱雀
夏と南の守護神 炎 攻撃型
武器 桃の法剣&法術 桃の法剣は妖怪を討ち取る際に使われる。白虎の詠唱で力が倍増する。
・白い鈴
白虎
秋と西の守護神 森または道 攻撃型
武器 召還&詠唱 様々な式神を呼ぶ事ができ、詠唱で攻撃が出来る。
・黒い鈴
玄武
冬と北の守護神 山 守備型
武器 天鏡&棒術 天鏡で結界を作り、棒術によって敵を薙ぐ。
・黄色い鈴
麒麟
? 中央の守護神 生命ある獣の支配者
武器 ?
なお、詠唱・技の名前や攻撃の方法は、鈴を手にした方が決める事が出来ます。
麒麟の場合のみ設定、武器など一から決める事が出来ます。
詠唱が長すぎたり、技の設定が複雑な場合、割愛させていただくこともありますのでご了承ください。
鈴は一人にひとつだけです。お間違えの無いように。
〜妖怪情報〜
妖怪:ホウキョウ (機械によって操作)
人面で虎のように鋭い牙を持ち、羊のような身体の横に大きな目がついている。赤子のような鳴き声を発し人をおびき寄せ食べてしまう妖怪。
性格はいたって凶暴。
〜経験値傾向〜
軽業・芝居
●リプレイ本文
●オープニング
関係者の出入りが激しい会議室で、脚本家の相楽・満月(fa0527)を囲み出演者の七人が打合せをしていた。
相楽の得意分野のミステリーやサスペンスを含ませたなかなかの大作だ。それぞれに渡った脚本に目を通し、役の確認や談笑をしていた。
「私の脚本を無駄にするんじゃないわよ」
徹夜で書いたのだろう。目の据わった笑顔で出演者達に凄む。しかし相楽の姉御肌を理解しているせいか、誰もが笑って受け流した。
「そろそろお時間でーす。皆さん宜しくお願いしまーす」
スタッフが出演者達に声を掛ける。相楽は隅で撮影現場を観ていたが、どうも落ち着かずスタッフの手伝いをしにいった。
さあ、撮影開始だ。
●
街道の外れにある煉瓦造りの宿から、猫のような鳴き声が聞こえる。
「ぎゃー、おぎゃー」
耳を澄して聞けば、それは母の乳を求めて火が付く勢いで泣く赤子の声。ちょうど街道を通った旅装束の男は驚き、赤子を捜しに宿に足を踏み入れた。
「ぅんぎゃー、おんぎゃぁぁ」
人の気配を察した赤子が一層強い力で泣く。男は早く見つけ出そうと隣の部屋に入った。が、その瞬間恐れ震え上がった。
妖怪が居たのだ。
鋭い牙を覗かせた口から赤子の声を響かせ誘っていたのだ。身体の横にある大きな眼で男を見ると襲い掛かってきた。男は驚愕で声も出せないまま意識が閉ざされた。
「阿哥、またホウキョウが人を食べちゃったよぉ。面白いねぇ、もっとやろぅよぉ」
「おやおや、妹妹‥‥。可愛い蘭々や、楽しいのは解るが、程々にするのじゃよ」
男を喰らう妖怪の背で蘭々(蘭々(fa3364))は被っている帽子が落ちそうになるのも気にせず、おかっぱ頭を揺らし笑い転げている。
傍らに立つ妖狐の青隼(御崎伊庵(fa3298))は、青年の容姿に似つかわしくないほど老齢な口調で蘭々を窘める。が、それは叱っているという口調にはほど遠かった。彼も楽しげに唇の端を上気笑っているからだ。
「くすくすくす‥‥」
宿からはまた赤子の声と、笑う二人の声がこだました。
四神と麒麟の法力が備わる鈴に選ばれた道士達は、人々の口に上がる妖怪の噂を聞き、導かれるように問題の宿を訪れた。
昨晩、人が消えたというのにその宿は賑わい繁盛を極めていた。それもそのはず、豪華な部屋と美味い食べ物をたらふく出すにも関わらず、値段がとても安いからだ。
「哥哥、どうも酷い妖怪がいるみたいだわ。さっきから式神と白の鈴が騒いでいるの。早く退治しましょう」
「子香、俺の赤い鈴もだが、どこにいるんだ? 」
夜食の載ったテーブルを挟み、鉄・延定(黒崎・幸次郎(fa2964))と鉄・子香(桜庭・夢路(fa3205))の兄妹は神妙に辺りを見回す。
妖怪退治を生業に旅を続けるこの兄妹には親がいない。両親は禁忌の恋の末、妖怪に襲われ落命したのだ。だが兄の延定はその経緯を妹の子香に未だ話していなかった。半妖である自己へ嫌悪を抱きかねないからであった。それをひた隠し妖怪封じという仕事を使い親の仇を追っていた。
テーブルの二つ向こうに束ねた髪に黄色の鈴を付ける麗鈴(犬神・かぐや(fa0522))と黒い旅装束を纏い腰帯に黒の鈴を吊した飛雪(賈・仁鋒(fa2836))が共に食事をしていた。
「ご飯を残したらダメ」
麗鈴は自分と飛雪の持つ鈴が鳴りやまない異変に気付きながらも、能力の金糸雀声を使い、並ぶ料理を淡々と平らげていった。
皆より一足遅れで風華(基町・走華(fa3262))が、手に方位計を持ち宿に着いた。生き別れた両親を捜して旅をする彼女は偶然に青い鈴を拾い、青龍への好奇心から道士となったのだ。
「やっと見つけたわ。これも青龍様のご加護やな」
ひとりごちる。風華が繁盛する食堂に入ったとたん五つの鈴がさらに強く鳴り、誰ともなく吸い寄せられるように仲間の元へ集まる。紹介はなくとも各々の役割を解っているように、頷いた。
そのとたん彼らの背後の様子が一転した。
賑わいの嬌声ではなく、鋭い悲鳴が上がる。人々は天井の一点を見つめ、恐れ戦く。そこには問題の妖怪――ホウキョウとその背中に乗る蘭々、二人の傍らに立つ青隼が浮いていたからだ。
「へえ? 変な鈴ぅ。ヤなカンジってゆーかぁ、蘭々ちゃんが壊しちゃうんだからぁ! 」
五つ集まった鈴の音で、酷い頭痛に襲われ苛立つ蘭々は背に乗っていた妖怪、ホウキョウを放つ。
「あかん、こないにぎょうさん人がおると邪魔や。耳塞いでや、そやないと寝てまうで」
妖怪に追われ、我先にと逃げまどう人で混乱に陥ったのを見かねて、風華が龍笛を取り出し夢見の奏を吹き始める。か細い音色と青い鈴の音が合わさり、次々に人々は崩れ眠りに陥っていった。
立っているのは風華の指示で耳を塞いでいた道士達だけだ。妖怪は眠る人々に襲うことを忘れ戸惑う。
「もっともっといっぱい人を殺してよぅ。じゃないとつまんなーぃ!」
蘭々が苛立ちを爆発させた。左右の両袖に手を入れると幾枚の呪符を取り出し投げつける。それは鋭い剃刀に姿を変え道士達を襲う。
すぐさま飛雪が背丈より長い棒を操り印を結ぶと床を打つ。黒い鈴の音とともに法陣が現れ剃刀を跳ね返した。
「なぜ、このような事をするの? 罪もない人の命を奪うなんて、いけない事だわ」
「いやいや、ワシらとて情けがないわけじゃないんだがの。ヌシらが勝手に悪いモノと決めつけて居るだけじゃろうて。ホウキョウも人肉がなければ生きてゆけぬ。ヌシらが牛や鳥を食らうのと同じじゃよ。ワシもそうじゃ‥‥ヌシらに勝手に決めつけられ酷い目に遭わされてきたわい」
青隼が嗄れた声で麗鈴の問いに答える。悲しげなその言い方はなにか含んでいるようだ。
「まぁ、とやかく言うても仕方のない事じゃ。ヌシらには解るまいて、もっともその前に面白いモノを見せてやろうぞ」
「おんぎゃぁぁ」
「あははは、阿哥。面白ぉい。ここまでおいでぇ、道士ちゃん」
青隼の命令にホウキョウが、今まで人を食らい続けて溜めこんだ妖力を使い、宿を闇の空間へ引き込んだ。
●
「‥‥どうも掃除が嫌いな妖怪のようだな」
異空間では廃屋となった宿を、子香の式神の鳥が放つ淡い光を頼りに歩く鉄兄妹。
兄の延定は手で蜘蛛の巣を払いながら、先に進む。二人はどうやら他の道士達とは離れた場所に来てしまったようだ。
延定は妹と離れなかったことに安堵を覚えた。彼女なしでは法剣は使えないからだ。それよりも妹に何かあれば、死んだ両親に申し訳が立たない。鈴の導きだろうと理解し、さり気なく赤の鈴に感謝しながら先に進む。
「みぃつけたぁ、ここにいるのはあなた達だけみたぁいだね。ホウキョウ、いけぇー」
かくれんぼの鬼のように蘭々はひょいと現れ、無邪気に喜ぶと妖怪をけしかける。掛け声と共に暗闇から妖怪が咆哮を上げ襲いかかってきた。
延定は咄嗟に身を屈め避ける。頭上をすぎる瞬間、拳を天に向けて繰り出しその腹に見舞った。妖怪はもんどり打ち床に転げる。それでもすぐ起きあがると、身体の側面に付く目で延定を睨み付け、痛みと怒りにまかせ、再び延定めがけて突進した。
「やっちゃぇー、ホウキョウ! 」
「させないわ、式神! 」
白い鈴の音と共に子香が鳥の式神達を召還する。
妖怪は式神の攻撃をものともせずに延定に襲いかかるが、確実にその攻撃の力は弱められていた。延定は寸前まで引きつけ、牙が喉元に食らいつくのを間一髪でかわし、妖怪の太い足を掴んだ。
半妖の力を使い持ち上げると、それを蘭々がいる壁めがけて投げつけた。驚いた蘭々は逃げ切れずそのまま下敷きになってしまう。
「痛いよぅ、んもぅサイアクってカンジぃ」
自力で妖怪の下から出てきた蘭々は、すぐさま転移術符を使いホウキョウを連れ逃げ出した。慌て過ぎたせいか背中に付く小さな鳥の存在に気付いていない。
「しまった、逃げられた」
「哥哥、大丈夫。式神をつけたわ、急いで後を追いましょう」
しっかり者の子香が微笑んだ。
●
他の三人は方位計を頼りに出口を探し歩き回っていた。だが動く壁に阻まれて、未だ出口が見つからない。
「なんか妙なトコに連れてこられたわ、ここにおらん二人は大丈夫やろか? 」
「大丈夫。みんな無事よ」
「俺もそう思う」
二人を心配する風華に麗鈴は優しく声を掛け手を握る。心地よい黄色い鈴の音に、大丈夫だという安心感が皆の心を満たす。
「そやな、大丈夫やろ。ご加護がついとるんやし」
納得したように風華が頷く。
「それより、壁の邪魔が無くなってきてん。もしかしたら、そろそろ出口やろか? いつでも戦えるように準備しとき」
「ああ。そうだな」
「くっくっく‥‥ワシを倒さん限り、出られぬよ」
しゃがれた声が響き、皆に緊張が走る。すっと黒い影が悪戯に遮った。あらゆる方面の壁を横切り道士達を翻弄する。緊張の中、
「次は、東の方から出現するで! 」
方位計で敵の位置を確認した風華が告げた瞬間、凄まじい火花が散る。瞬間的に飛雪が青隼の重い青龍刀を受け止めた。
「おやおや、ばれたか。それにしても見事な反射神経じゃのう。なれば、これはどうじゃ? 」
一旦、交えた武器を外し、数歩分後ずさりお互い構え直す。はっと息を継いだ時、またしても激しく鋼がぶつかり合う。
驚き、動けずにいる二人の少女の前で死闘が繰り広げられる。青隼は楽しそうに激しく青龍刀を操り攻めるが、飛雪も棒で巧みにかわして攻撃に転じていく。鳴り響く金属音は次第に激しさを増し、少しずつだが飛雪は追い詰められる。
「?! 」
「もらったぁ」
一歩下がった時、動く壁に後ろを遮られ飛雪は逃げ場を失った。青隼は嬉々と舌なめずりをし、青龍刀の先を飛雪の喉元めがけ突き出す。
「止まれ! 」
間一髪、麗鈴の髪を留める黄色の鈴が激しく鳴り、麗鈴の金糸雀声の力により、青隼は縫いつけられたように動けなくなった。飛雪は素早くそこから離れる。すぐさま青隼は麗鈴の術を解き、逃げた飛雪を追いかけるが、そこへ傷だらけの蘭々とホウキョウが現れた。
「阿哥、痛いよぉ」
「蘭々、可愛い妹妹よ。誰に傷つけられたのじゃ? 許さぬ、許さぬぞ! 」
激昂を露わにした青隼はくるりととんぼ返り、元の妖狐へと変貌する。そこへ蘭々の後を追ってきた延定と子香は、仲間達を見つけ駆け寄った。
「貴様ら生かしては帰さぬぞ! 覚悟をしおれ」
蘭々を傷つけられ、怒りに駆られた青隼は、九つの尾を使い次々と狐火を放つ。傷ついた妖怪も最後の力を振り絞り怒りの形相で襲いかかる。
飛雪が棒で印を結ぶと、鈴が静かに鳴り響き結界が張り巡らされる。それを取り巻くように風華の龍笛から流れた鎮守の奏と鈴の音色で風が起き道士達の防御力が上がる。
ホウキョウは無言で結界の中に立つ飛雪を先ほど戦った延定よりも弱いとみたのか、弾みを付けて襲いかかった。次の瞬間、飛雪がカっと眼を開くと結界は聖なる光を放ち、たちどころに妖怪の身体を弾いた。先ほどの傷の深手もあり立ち上がる事ができない。
「あなたは多くの人を手に掛けてしまいました。罪を償わなくてはいけません」
ホウキョウの前に麗鈴と風華が立ち、互いの鈴の音と共に龍笛から流れる浄化の奏に合わせ金糸雀声の歌を乗せて封印を掛ける。
何度も襲いかかろうと試みるが、最期は眠りにつくようにその身体を天に帰した。
「阿哥、阿哥! ホウキョウがやられちゃったよぅ」
混乱し叫ぶ蘭々の声も聞こえないほど、青隼は戦いに集中していた。
放つ狐火を延定は軽々と避け、柄に付けた赤の鈴が鳴り響く桃の法剣を翳した。子香が召還した式神の力を得た法剣を青隼に向かって振り下ろす。が、間一髪、青隼は姿を消し宙に浮いた。
すかさず延定は壁を蹴って空を駆け上がり、もう一度、青隼めがけて刀を薙いだ。下から響く風華の沈静の奏で動きが鈍くなった青隼は避けきれず、胸元を切り裂かれた。
床に身体を叩きつけられ呻いている。蘭々は泣きながら隠し持った呪符を延定めがけて投げつけ、小さな爆発を起こさせる。目くらましだ。
「阿哥、阿哥! もうもう、道士ちゃん達の馬鹿ぁっ! 」
青隼をなんとか助け起こすと、延定の攻撃が掛かる前に転移呪符で、その場から消えた。
●エピローグ
半壊した宿が朝の陽光に包まれる。風華の龍笛によって眠らされていた人々はまだ起き出す気配はない。
「泊まり客には、この騒ぎが夢やったと思わせなあかんな」
無理だと誰もが破壊された宿を見て思ったが、口にはしなかった。
そんな宿の空き地に麗鈴が小さな墓を造っていた。
「次に生まれた時は幸せになれるよ」
黄色い鈴が鳴り、祈りを聞き遂げていた。
「ほな、うちは両親探しの旅を続けなあかん。縁があったらまたどこかで会えるさかい、しばしの別れや」
「俺たちも行くか? 子香」
「はい、哥哥。ではみなさん。また」
そう言って風華、延定と子香が宿を後にする。飛雪も一礼をするとそこから離れた。
彼らからそっと抜け出した鈴達はまた新たな妖怪に立ち向かうべく道士を捜し、青い空をクルクルと飛び回った――