とにかく捕まえろ! 2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
06/27〜07/01
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●本文
「ぬぁんだぁってぇ、何をやらかしてんすっかー! このすっとこどっこいディレクター!」
会議室にまたもスタッフAの怒鳴り声がこだました。
しかし怒鳴られるディレクターT氏はいつも通り。のんきに耳掃除の真っ最中。
「ごめんねぇ、だってなんか可愛いったんだもん。んもう、そんなにおトイレ我慢しちゃだめだよー。いつも言ってるでしょ? 行っておいで」
やはり謝りの言葉は空中を漂う羽根のようにもの凄く軽い。まだA君の怒りの震えをトイレと勘違いしっぱなしだ。毎度のことだがA君の震えがさらに大きくなる。ぐんっとこめかみの血管も膨らみ破裂寸前。だがT氏はそんな事、気にも留めない。
「番組どうする? やっぱしもう中止は無理だし」
「俺はあんたをどうにかしたいよ‥‥」
数分後に控える生放送の料理番組と理科の実験番組。そこで使われる予定のウナギが隣の会議室で蠢いているのだ。
A君は盛大に溜め息を付き、逃がした張本人を睨み付けるが、当のT氏はなんのその。
だが番組中止は困るらしく、さも悩んでますと尤もらしく腕を組みウンウン唸った数秒後。いきなり人差し指を天井に向け、
「ぴんぽーん閃いた! 緊急企画! 会議室に蠢くウナギちゃんを捕獲せよってな番組に変更って、どう? どう? 」
「またも人任せかよっ! 相手はデンキウナギも混じってるんっすよ! もしもの事があったらどうするんっすか! クビがサクっサックって飛びますよ!」
スタッフA君の相変わらずの剣幕に押され、部屋の隅で怯えるスタッフ達もそだ、そだと頷きあう。
「そうなんだよねー。それは非常に不味い。俺も我が身はとても可愛い。と言うことでA君、またも任せた。頑張ってくれたまえ」
「ほんっっと無責任にも程がある! 自分でやったんでsy‥‥ん?」
限界とばかりにT氏の襟を掴もうとしたA君の耳に、隣の様子が聞こえてきた。
ぬちゃびちゃっと重ったるい水音と共に、派遣された捕獲スタッフの異様な悲鳴を。壁の向こうのことは想像もしたくない。
「と、とりあえずこのまままでは不味いし、二つの番組に穴を開けかねない。その企画を採用。例に漏れず追い込みスタッフと出演者、それを撮影してくれるカメラマンの手配っす! あと捕獲ついでに調理と実験をできる役者さん、道具などを手分けして集めるんだ」
的確に指示を飛ばすA君。気苦労が多い彼である。
――数分後、数箱の段ボールを前にした彼が、笑いたいのか泣きたいのか解らない表情で立っていた。
「お前ら、自分達が捕獲に加わらないのを良いことに楽しんでるだろう。だれもドジョウ掬いなぞ踊らんぞ?」
そこにあったのはラジカセ、可愛らしい和柄の手拭いが八枚と腰に付ける魚篭、そして大きな笊がある。
しかしもう時間がない。これでやるしかないのだ!
注意事項:ウナギのいる部屋は戸・窓を閉めきって逃げられないようにしています。
相手は食品及び、実験に使います。注意して扱ってください。
ウナギ情報:国産の高級ウナギがおよそ二十匹ほど。四畳半程の部屋の中をのたうち回り暴れてる。
実はその中に理科の教育番組で使う予定のデンキウナギが五匹ほど紛れてしまった。こちらは大切な借りモノ。傷つけたり殺してしまった場合、罰金が待ってるかも知れません。
■出演者募集
またしても急遽、番組変更となりディレクターの閃きで企画となった『とにかく捕まえろっ! 2』は、ウナギ捕獲大作戦を決行します。ヌメヌメや電気には負けないぜ! の勇者(猛者)さん方、またちょっとウッフンな雰囲気なお姉さま方を大募集します。ただし子供も視聴していることがありますので、あまり、色々と(←強調)やりすぎないようにお願いしますね。
我こそは! と思われる腕自慢のあーた!! ご参加をお待ちしております。
申し忘れておりましたが、彼らに同行してくださるカメラマンさん数名を含む撮影クルーも同時に募集しております。
どうぞ奮ってご参加ください。
■内緒の注意事項
沢山の人間が出入りするTV局での撮影のため、獣人は禁止。半獣人になられる場合、ばれないようにしてください。
●リプレイ本文
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今回、ウナギを捕まえるために集まった猛者‥‥もとい英雄達はそれぞれ持ってきた衣装に着替え、ウナギがのたうつ会議室の隣の部屋に集まっていた。
「うぃーっす。突撃御近所晩御飯隊ですとたーい。レポーターとして番組に出演予定ではなく、A君に捕まった体力担当スタッフとたい」
「なんだ‥‥この恐ろしい依頼は。頭を使えばすぐに何とかなりそうだが、何というかそんなやり方よりもバラエティを求められてるな」
「まぁ、頭数は揃ってるからバラエティをしつつも捕獲するに問題は無ぇだろ。シグの他にも肉野郎がいるし。俺の目的は果たせたうえ、撮影も楽しめそうだ。おっとそうだ。衣装はガッチガチに装備固めてウナギ捕ってるトコなんか流したって数字取れねぇだろ? ここは一発、全員競泳用水着メインでどうだ?」
「あらん、野郎ばかりじゃないわよ。うふっ私は新月ルイでっす♪ 本職はデザイナーよん。今日は面白そうなので遊びにきてみたわ。まさかこんなにイイ男達に囲まれることになるとは‥‥。唯一のお色気担当で頑張っちゃうわ! けど、私には競泳用の海パンは色々と不都合なので却下。どうぞ皆様、よろしくねっ」
引き締まった肉体をシャツとスパッツで包んだプロレスラーのSIGMA(fa0728)が、捕獲の相談を始める。しかしどうにも落ち着かない。先程から注がれる熱い眼差しが痛いのだ。それは真向かいにいるDr.ノグチ(fa3080)のもの。そっちを見ないよう顔を反らし平静を装う。そんな彼に熱の籠もった視線を送ってノグチはいったん視線を外すとチロリと見回し、さり気なく衣装の案。もろ好みのSIGMAを始め尚武(fa4035)やヘヴィ・ヴァレン(fa0431)に着せたいのだ。
そんなノグチの発言にモノ申すのは新月ルイ(fa1769)。男ばかりのこの場所で唯一、可憐な彼女はドジョウ掬いの衣装を纏い皆に向かってウインク。意気揚々、やる気満々だ。
「あれぇ? 新月さんは男の人ではないのですか? 今回、マサ君は男ばかりと聞いたのですが?」
「うふふっ! やぁねぇ‥‥女とオカマはメークで変わるものなのよ」
小さな手にブカブカのゴム手袋をはめた正利(fa3181)はちょっと疑問をぶつけた。新月は含んだ笑いで答え、愛らしい鼻をちょこんっと叩く。
「外を警備をしてても、内部がそんなんじゃ意味がねぇ。ま、原因はともかく、早いトコどうにかしねえとスタッフ達のクビが懸かってるみてぇだな。‥‥しかしこうなることを実は予測してたんじゃねえか?」
「クビが掛かっているのでしたら一大事です。早く捕獲方法を練らなければ‥‥。そういえば聞いたことがあります。真に美しい者は異種族間を問わず美しいと。牝馬の鬣も愛らしい小鳥も人間から見ても美しく愛らしい。これをヒントに手段を考えてみましょう」
淡々とした口調で己の意見を述べていくヘヴィは最後の件でスタッフA君を一瞥。
それに対してA君は大慌てで両手を振るう。野放しにすれば何をしでかすか解らないあのデェレクターにほとほと手を焼いているのだ。
ようやく手鏡から顔を上げた下心充(fa3175)は、ヘヴィの言葉にスタッフ達が抱えている緊迫感を覚え、自分の考えをポツリ。そんな彼らから離れたところでマッスル(fa3195)が、おもむろに上半身を回転させ準備運動をしている。表情はワクワク感が一杯だ。
「あのー皆さん、そろそろ撮影を開始します。くれぐれも怪我の無いように感電しないようにお願いしますねー」
A君の挨拶で一同は隣の会議室へと移動、捕獲作戦開始である。
●
「さて本日は予定を変更して『なぜなぜ生体?』と『お料理しまショー』の代わりに『どきっ☆ 野郎だらけのうなぎ掴み大会!』をお送りします。ちょっとしたお色気もポロリもございますのでチャンネルは、そのままじゃけんのぅ! ではいってみよう!」
感電したカメラマンに代わりカメラ担いだA君の前に尚武が突撃レポートで番組紹介。彼の背後の動きを見れば実際にポロリの予感がそこはかとなく漂う。しかしあるとすれば出演する男性のだ。もちろんお色気漂うのも男性のみ。暑苦しいが、誇大広告ではない。
「っと、そんな説明ばかりせんと、美味しいトコロをとらんこったぁ、おいどん何時までたってもメジャーになれなかっ! よっしゃぁ、これで掴みはオッケェェ! ぐはははっ」
ふと今回の目標を思い出した尚武。メジャーを夢見る彼は、すぐに足下にいたウナギを手当たり次第に掴む。が、見事デンキウナギに的中。勢いよく一発目の放電による洗礼を浴びせられ、笑い声に似た奇声を発しながら気合いで水槽に入れるとそのままへたり込む。
「ヌメヌメは掴み難くて欝陶しいだけだから良いとして、だ。ある意味ロシアンルーレット状態だぜ」
ぽつりとヘヴィが呟く。その両手には滑り止め代わりの手拭いが巻かれ、踏まないように細心の注意を払いながら笊を手に地道にウナギを水槽に戻していく。そうしないとなかなかデンキウナギが見つからないのだ。尤も彼は見分け方を知っているが、空気を読めと言われそうなので今の段階では黙っている。
「地道に捕まえるのも良いですが、ここは私の案をば。‥‥美に惹かれるのは生きとし生けるものの運命。ウナギであっても例外ではないハズ。それに古来よりウナギは生足に弱いと聞きます。 あぁなんて罪づくりなんだ! これも美しさのなせる業か? これは神が与えた試練に間違いなし‥‥フッ」
のたうつウナギの中を下心が颯爽と歩き、腰まで大きくスリットが入ったロングスカートをタイミングを見てチラリと開き綺麗な足を露出した。
「ウナギ達はもう私に夢中。うなぎまっしぐら。です! さぁ、捕まえてください!」
「あのぅ、大変言いにくいんだけどぉ、ウナギ全然反応してないわよぉ? ほら。やっぱり笊で捕まえるのが一番早いかもぉ」
「あぁ‥‥美しさが通じないなんて! なんて美的センスのないウナギ達なんだ! トホホ‥‥」
新月にチョチョイと服を引っ張られ下心は気付く。よよっと泣き崩れ、彼から笊を受け取ると控えめに捕まえに行った。
「あ、それデンキウナギだわ。気を付けてね。一応、電気ウナギと普通のウナギの違いを調べてみたの♪ 電気ウナギは後ろにも泳げるらしいのね。って言うことは前にしか進まないのは普通のウナギよんっ‥‥あん☆ いやぁんっ」
人に注意をしている間に新月の疎かになった手から一匹のウナギが逃げ出し、襟元から服の中へ進入。放送事故なのか故意なのか意図は不明だが、新月は慌てて服の中へ手を突っ込みウナギを取り出そうと試みる。しかし逃げるウナギのヌルヌルで上手くいかず身悶え、一枚一枚セクシーに脱ぎ出す。
むほーっと興奮気味のデェレクターT氏は部屋の隅にあるモニターにかぶりつきだ。お色気ムンムンのいいトコロであるが、A君は番組の放映時間を考え、そのすぐ隣で口を大きく開け何やら企図する尚武とマッスルへさり気なく移動させた。
「なに? 鰻がつかめんとしゃい? 口で咥えればよかよ」
「ほぅ、良い尻の形だなぁ」
「ぐほほっ」
「だ、大丈夫ですか? えいっ。やっぱりゴム手袋をすると滑らないですね」
「これは準備運動が必要です。ウナギは非常にヌルヌルして、手で捕まえたところで簡単にはいかないでしょう。このように大きな口を開けて‥‥」
尚武はヌルヌルのウナギを口に捕まえに行くが、するりと現れたノグチに尻を揉まれ驚いた拍子にウナギの頭が喉の奥へ引っ掛かった。藻掻く尚武。傍でコツコツと作業をしていた正利が駆け寄り、顔を押さえウナギを引っ張り出す。
涙目で咽せる尚武にマッスルは床に寝そべるなり、ぐわーっと大口を開けウナギをずずずっと吸い込んでいく。さながらそれは人間ポンプだ。さっきの準備運動の甲斐があり機敏な動きで口の中にウナギを入ては水槽へ吐きだし捕まえていく。
しかしだんだんと目元が変わる。マッスルはウナギが大好物なのだ。口の中に入れていくにつれ正気を保てず、つい飲み込んでしまおうと良からぬ事を考えた途端――痺れた。
「うぎょぎょっ!? な、なんのこれしき!」
驚きはするもそこはそれ。肝っ玉の据わったマッスルは肩こりほぐしの電気マッサージだと思い耐えた、ぺっと水槽にデンキウナギを吐き出した。
「なんだかスゴイことになってるなぁ、俺も頑張って捕まえよう‥‥うわぁぁ」
天敵に対する注意を怠らずウナギを水槽に戻していくSIGMA。天敵とはノグチのことだ。ウナギを服に入れてきたり、どさくさにまぎれて襲い掛かってくるなど、絶対にやりそうだ。と考える彼は、なるべくノグチと離れウナギを捕まえていた。
だが、うかつに立ち上がり一息ついた途端、背後を取られていた。振り返ればパッツンパツンのビキニ型の水着に白衣を纏ったノグチ。
「おや、ん? ここいら辺にもデカイウナギが‥‥」
「やめろぉぉ!」
「おーっと、Dr.ノグチが、SIGMAを襲いにいった! 一部のマニアが好むポロリは見られるのかっ」
「見えたら、このVTRが流せなくなると思うんだけど?」
怪しげな発言と共にノグチはSIGMAのスパッツに手を忍ばせゴソゴソ。入れられたSIGMAはたまったモノではない。ウナギより貞操を重視。我が身が可愛いのは誰でも一緒だ。その腕を取ると関節技を決める。
咽せから解放され、ようやく復帰した尚武の実況に新月がごもっともな突っ込み。
「おい、シグ。アクシデントだよ。アクシデント!」
「んな、アクシデントがあるかよっ」
そんやり取りをヨソに当事者のSIGMAは怒りの表情で腕をねじ伏せ真面目に落としに掛かる。しかしノグチも黙ってやられるわけがない。反対の手に持っていたデンキウナギを彼の腕に巻き付けた。
「うわっ本当にアクシデントにしやがった」
痺れで驚き手を離す。もちろんノグチも共に痺れていた。
●
「そろそろ、締めみたいです。あの、頑張って最後のウナギを捕まえましょう」
「よっしゃぁ、コレで捕まえるとばい」
正利が大きなゴム手袋を叩きながら撮影しているA君に教えられた通り、最後の大仕事の合図をする。
それを皮切りに尚武が床でノロノロ動くウナギにおがくずをふり撒き捕まえやすくした。最初からこうすればいいのでは? と考えるのはナシだ。
笊をちりとりのように床に置きず〜〜っと滑らせウナギを水槽の傍まで追い込んでいくSIGMA。そこを正利が笊を上手く使い金魚すくいの要領で捕まえていく。
ヘヴィも素手でちゃっちゃっと水槽に投げ入れだすと、ノグチも比較的真面目に捕獲。少し臆病な手つきで軍手越しにウナギを掴むのは下心と新月。
おがくずだらけで口に入れることが出来なくなったマッスルは残念そうだ。
ようやく、すべてのウナギが水槽に戻された。
●
番組終了後。
「わいが作ると全てチャンコになってまうばい。それじゃおもろ無いので、料理対決を行なう人達や適当なスタッフに鰻を料理してもらって食すばい」
スタッフ達と楽しげに捕まえたウナギの料理法を話すのは尚武。それを嬉しそうに頷きどんな料理にするか期待を膨らませる下心、正利、新月。彼ら以上に嬉しそうにしているのはマッスルだ。
仕事の終了で本当に一息ついたSIGMAは大きく伸びをしてぽつり一言。
「俺はゆっくりとウナギ丼でも食べに行こうかな」
ぐったりとしている電気ウナギ達にこっそりと手を翳し淡い温かな光を当て治療するノグチをチラリと見、そそっと出て行く。
最後の最後。水浸しになった会議室の掃除を申し出たのはヘヴィ。他のスタッフと共に床拭き。内部から良くしていこうと思いついた彼は警備員らしく、どこまでも仕事に忠実であった。