鈴音的声音道士 8アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 1人
期間 07/02〜07/06

●本文

 ――それは昔‥‥神も人も、そして妖怪もがひとつの地で共存をしていた時代の話。
 ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
 人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出している。
 画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように左から右へ流れては消えていく。
 ――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、異形の妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた――。
 画面は切り替わり、初夏の季節となった太山。昼間の暑さが嘘のように削がれ、涼やかな風に乗った蛍達が夜が訪れようとするのを楽しむかのように、せせらぎの聞こえる川の畔を舞っている。
 長閑と言うべき時。
 しかし長くは続かなかった。
 山から川へ向かって重そうな足音が響きだす。その音を発する主は牛の容姿をしていた。が、どこか禍々しい。それに伴い風が変わった。ねっとりと絡み付く淀んだ空気が辺りに立ち、青々とした若草は気力をなくしたように枯れ、舞っていた蛍達も次々と障気に当てられ枯れた草の上にポトポトと落ちていった。
 牛はその様子に満足なのだろう。さも楽しげに土を踏みならすと、川に足を浸けた。途端に美しい流れは赤い色へ変化をみせはじめる。
 その流れの先に一つの村が見えた。牛は顔の真ん中にある大きな一つ目を含むように不気味に歪め笑っていた。

 その翌朝、事は起こった。
 村の作物はまるで日照りにでも遭ったように枯れてしまっている。
 そればかりではない。村人達は原因不明の嘔吐と熱に浮かされ倒れていった。それも一人、二人ではない。殆どの人々がだ。まるで伝染病が一夜で蔓延したかのように凄まじいもの。平和だった村が消えてしまうのは時間の問題であった――。


〜出演者を募集〜
 中国ドラマ「鈴音的声音道士」では、四神と麒麟の法力の宿る鈴に選ばれた道士になりきって妖怪を封じてください。
 また妖怪側の役、カメラマンや妖怪を動かす技術スタッフ等の裏方さんも同時に募集しております。
 

〜道士の法力選択〜
 ・青い鈴
 青龍
 春と東の守護神 
 能力:水 守備型
 武器 龍笛&方位計  龍笛で睡眠誘発や能力を激減させることができ、また方位計により妖怪や仲間の居場所を知る事が出来る。
 玄武の結界と組むことで守備能力が倍増する。

 ・赤い鈴
 朱雀
 夏と南の守護神
 能力:炎 攻撃型
 武器 桃の法剣&法術 桃の法剣は妖怪を討ち取る際に使われる。白虎の詠唱で力が倍増する。

 ・白い鈴
 白虎
 秋と西の守護神
 能力:森または道 攻撃型
 武器 召還&詠唱 様々な式神を呼ぶ事ができ、詠唱で攻撃が出来る。

 ・黒い鈴
 玄武 
 冬と北の守護神
 能力:山 守備型
 武器 天鏡&棒術 天鏡で結界を作り、棒術によって敵を薙ぐ。

 ・黄色い鈴
 麒麟 
 ? 中央の守護神。生命ある獣の支配者。
 能力:?
 武器 ?

 なお詠唱、技の名前や攻撃の方法は鈴を手にした方が決める事が出来ます。麒麟の場合のみ設定、能力、武器など一から決める事が出来ます。
 ただ、詠唱が長すぎたり、技の設定が複雑ですと割愛させていただきますのでご了承ください。
 鈴は玄武、麒麟に限り二つに分けることが出来ます。しかし力は半分となってしまいます。また能力に適した技以外の力は、使えないことがあります。
 この五つ鈴は必ず埋めて下さい。
 

妖怪情報:
 蜚(ひ) 牛に似た妖怪。顔の中央は大きな一つ目で蛇の尾を持つ。この妖怪が現れると草木が枯れ疫病が蔓延する。
 また疫病を媒体する虫を操り、人に攻撃をすることもある。

●今回の参加者

 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa2986 朝葉 水蓮(22歳・♀・狐)
 fa3262 基町・走華(14歳・♀・ハムスター)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)
 fa3739 レイリン・ホンフゥ(15歳・♀・猿)
 fa3982 姫野蜜柑(18歳・♀・猫)
 fa4002 西村 哲也(25歳・♂・ハムスター)
 fa4030 ゲイル(28歳・♂・鴉)

●リプレイ本文


「中国ドラマかー。っていうとアレだよね! こうヌンチャクを構えて『ほわたぁ!』って‥‥違うの?」
「ん〜近いけど、ヌンチャクってお目見えしたことナイネ。今度誰かするのが良いネ」
 出演者達はそれぞれの衣装に着替え、監督の撮影開始の声が掛かるのを待つ。緊迫した撮影現場の隅に設けられた休憩場。
 そんな張りつめた空気を変えるように村娘の衣装に着替えた姫野蜜柑(fa3982)が元気よく、ヌンチャクを構える真似をして、ムードを和ませる。
 今回の役、『蜚』をCGとして動かすためパソコンが繋がったモニター前を占拠し、スタッフと共に確認作業に追われるレイリン・ホンフゥ(fa3739)も、一段落して顔を上げ一言。
 出演者達の間から笑いが起きると空気は一転、和気藹々とした良いものへ変わった。
 そこへ助監督が駆け寄り大声で、
「皆さん、準備が整いました。撮影開始です。宜しくお願いしまーす!」
 準備万端。出演者達は、現場へと踏み出した。
 まずは、初日しか参加できない桜美琴が演じるところの邪仙の登場するラストシーンから撮影に掛かる。


 朝――。眩しい日差しが降り注ぎ小さな村でも活気付く時刻だというのに、庭と言わず畑にも村人の姿がない。昨晩から原因不明の熱病が蔓延し起きあがれないでいるのだ。
「‥‥父さんも母さんも倒れちゃったの、それも薬師様まで‥‥どうしよう。どうしたらいいでしょうか?」
「そう、弱音を吐かなくてもよい。大丈夫じゃ。安心いたせよ」
「あらま、カワイコちゃんを虐めるなんて。これは放っておけないねぇ」
「ん〜村で疫病が流行っているなんて‥‥。これも邪仙の仕業かな」
 唯一、疫病に掛からなかった村の娘・橘子を村外れの木陰で囲むようにして、白い鈴の声を聞き、駆け付けた美蓮(朝葉 水蓮(fa2986))と鈴に導かれた道士達がそこに集結していた。
 台詞が茶化しのようにも聞こえる幻雲(相麻 了(fa0352))。だが、表情はいつになく真面目で心配げに彼女に声を掛け落ち着かせようと試みている。そこに頬杖を付く、愛らしい少女のような容姿をした小風(基町・走華(fa3262))がこれまた少女を思わす高い声で意見を述べる。
「許せないアル、人々の命をこんな風に弄ぶなんて‥‥麒麟は命ある者の全ての力と生命の象徴。だからウチはその力を借りた分、恩返ししなければいけないアル」
「まあ、ここは冷静にいきましょう。‥‥おやおや可愛らしい方の多いことで。雪梅です、宜しく」
「解った事はこの一連の事件に関係している妖怪の名は蜚。どうもその背後に何か大きな力が存在しているようだ。蜚の現在の動きは、反対の村外れまで来ている。村に入り込もうとしているようだ」
 ひとつに結う太い三つ編みを胸元で揺らし憤慨する星麟(星辰(fa3578))。黄の鈴を手に持つ彼女は幼いながらも医師見習いとして旅をする娘である。その隣に座る雪梅(西村 哲也(fa4002))があっけらかんと優男口調で言い放つ。そんな明るく振る舞う彼だが妖怪に恋人を殺されるという悲劇の過去を持ち、住んでいた町を家を捨て、当てのない旅をしているのだ。そんな長い旅路のおかげで研ぎ澄まされた感覚で土地の汚れを知る事の出来るようになった彼に黒鈴がその能力を買った。また雪梅のあっけらかんとした気性も好いたようでもある。
 そこへ音もなく近付いた飛空(ゲイル(fa4030))が現れた。隠密として妖怪の動向を探っていた彼は、かなり蜚に接近を仕掛け無理をした行動で探索をしたが、その甲斐あって収穫したモノを手短に解りやすく彼らに話し始めた。
 報告を聞いた直後、立ち上がった雪梅が黒い着物を翻し黒鈴をリンッと鳴らしながら錫杖を一振り地面を打つ。
「村を守る結界を――天鏡!」
 その掛け声に合わせ小風の龍笛、『浄化の奏』と青鈴の音が重なり、村一帯に清い風が流れ出し蜚が入れないよう結界を張り巡らせた。
「これで蜚は村に入ることは出来ないはず。さ、みんな迎え撃つ準備だよ」
 龍笛から唇を離し、皆に言い渡した。


 方位計を手に妖怪の居場所を探す小風の後を道士達が着いていく。しかしそこには飛空の姿はない。隠密の彼は戦闘が向かないのだ。
「こっち、もう少し先ってうわぁ!」
「ブンモォォッ!」
 道士達の目の前に一つ目の牛‥‥否、蜚が立ちはだかる。前足を地面に幾度も叩きつけ苛立ちと闘争心を露わにしている。それもそのハズ。一度は村に張られた結界で侵略するのを断念したが、邪仙の言葉を思い出し力欲しさに目の前に憚る道士達を一掃しようと目論んでいるのだ。
「白き鈴音の響きに応えよ白鴉ッ!」
 ぶんっと蛇の頭の付いた尾が力強く振られるとそこから疫病の媒体とされる虫が低い唸り声と共に召還される。
 素速く避ける道士達。そこに振り向きざま鶴の折り紙を懐から取りだし応戦する美蓮。涼やかな白鈴の音と共に召還された白光する鳥が黒い塊の中央を切り裂き力を萎えさせ地面に落としていく。
 小風も龍笛を吹き『鎮守の奏』『武神の奏』で防御力、攻撃力を上げる。
 その様子に怒り狂う蜚が勢いをつけて突進を仕掛ける。止めるべく幻雲が大袈裟な手振りで棘の付いた鞭を振るう。
「遅い遅い! 少しは俺っちを本気にさせてよね」
 避け損なった蜚の顔に当たり更に怒りの度合いが上がり、尾の蛇がまた大量に羽虫、百足とあらゆる気色の悪い虫を放出した。勢いよく道士達に襲いかかる虫達。流石に星麟と橘子は動揺し動けなくなっている。
 彼女らの前にひらりと立つ小風と雪梅。『幻鏡の奏』で分身を作り、そこに間合い良く天鏡を掲げた雪梅の黒鈴と青鈴の音、そして龍笛が重なり、
「人を苦しめる事に悦びを覚えるのですか? あなたに往くことも退くことも許しません。いきますよ小風! 天鏡よ応えて護れ――鏡盾結界!!」
 皆の前にそれぞれ小さな鏡が出現した。蜚も虫も幻惑に騙されそっちに攻撃を仕掛けだす。ようやく立ち直った星麟が手に鈴を取り、
「幻雲、ほら鈴の力を合わせるアル。陰陽合力! 麒麟出来急々如律令!」
「こりゃいい。これも食らいやがれ! 幻朧撃」
 鏡に守られ虫の攻撃を受けない幻雲も鈴を取り出す。とたんに共鳴し響く黄の鈴音達の音に幻覚を見せられ苦しみ蜚が暴れ回る。そんな好機を逃す幻雲ではない。素速く地面を蹴り、鞭を再度振るう。勿論、星麟も三節棍を取りだし、共に戦いだす。
「ブモォッ! オマエラ、ジャマスルナ。オレ、チカラガホシイ」
 しかしやられるばかりの蜚ではない。辿々しい言葉を発し、ぐっと上体を下げたかと思うと勢いよく突進。二人は咄嗟に身を引いて避けようとするが、その前に先ほどの鏡盾結界によって阻まれ凄まじい音が響く。だが、また一歩下がるとなお勢いを増し彼らに鋭い角を突き刺そうと頭を地面スレスレに下げ振りかぶった。が、またも鏡により通用しない。
「うわぁって、大丈夫だ。スゴイ術だな」
「ユルサン、ユルサン!!」
 大きな一つ目でギロリと睨み、またも尾から大量の虫を放出。真っ黒な塊となった虫が襲いかかる。
「うちらは守られているとはいえ、こんなに虫が出たら大変なことになる。虫ならば、鳥に啄ばまれるが自然の摂理じゃ! 我が血脈と白き鈴音に応えよ、光鴉群ッ!」
 流石に大量の虫達が飛び交うのは拙い。しかも病気を媒体することの出来る虫だ。
 美蓮は、幾つもの鶴の折り紙を投げつけ迎え撃つ。とたんに大量の白鴉が召還されバタバタと落ちる虫達。だが、白鴉も群れで来られる虫達に食い付かれ地に落ちては元の紙へ戻っていく。
 そんな様子を隅で見ていた橘子は、自分の村を守るため死闘をする道士達の姿に自分も戦わなければいけないと思い始めていた。
「妖怪は怖いけど、このままじゃ村の皆が危ない。あいたっ これって、もしかして赤い鈴?」
 りんっと音を立てどこからか頭の上に落ちてきた真っ赤な鈴。コロコロと掌で勝手に転がり何か話しかけているようだ。
「朱雀様、僕に朱雀様の羽のように激しく燃える勇気をください!」
 ぎゅっと鈴を握りしめると、鈴が温かな熱を帯び鮮やかな赤い光りを放つ、やがて光りが収まると橘子の手に一振りの大剣が現れた。その柄には赤い鈴がりりんっと鳴った。
「僕、道士になったの? よーし負けるもんか! いくぞ」
 桃剣から炎が激しく燃え上がり、炎と煙が虫をなぎ払うと、蜚へ向かって大きく空を駆けた。
「五つの鈴の音が鳴り合っているアル! みんな頑張って!」
 りーん、りんと五人の道士の鈴が勢いよく鳴り響き龍笛を吹き天鏡を掲げ、結界を破られまいとする小風と雪梅が更に強化を図る。
 凄まじい殺気を放ちながら蜚は三度、猛烈に突進を仕掛けた。結界に弾かれ、その間に幻雲の鞭が空気と一緒に蜚の身体を切り裂く。それは幻影ではなく。本物だ。怒りと狂気に駆られた蜚が首を下げ幻雲目掛けて角を突きだした。その時‥‥
 ばりぃぃぃぃん
「ぶんもぉぉぉぉぉぉ!!」
 四度目の物理攻撃に耐えきれず粉々になった結界が鋭いガラスの雨となり蜚に襲いかかった。怒りの嘶きとも悲鳴とも付かない声が耳を劈く。
 怯む道士達の間から、いったん着地し、またも大きく地面を蹴り飛躍した橘子が剣を構え持ち突撃。
「森羅万象の詔持ちて赤き鈴の法剣に白き鈴音を!」
 美蓮が素速く投げた護符が刃に纏い、赤い炎が白熱の色へと変わった。
「たぁぁ!」
「ーーっ!!」
 蜚は眉間から大きく割られ、よろめきながら死の叫びの代りに不敵な笑みを浮かべながら重々しい音をたて崩れ落ちた。


「ありがとうございました、まだみんな病気が治りきってませんが、星麟さんが治療してくださるのですぐに良くなります」
「美人からのお礼の接吻は、いつでも歓迎だぜ!」
「ほんとよかったね! じゃ、僕は早く雑伎団に戻って稽古しないとっ」
「そうじゃな、ではうちも行くとしようかのぅ。まだ、道が見つからぬ、次は何か手掛かりがあればよいのじゃが」
 懸命に治療に当たる星麟のおかげで村に少しずつ活気が戻りだし橘子の顔に笑顔が見えだした。
 女好きの幻雲が自分の頬をトントンと軽く叩きながら冗談めかしにキスを求めると、呆れた様子で小風と美蓮がその場を後にする。
「枯れ果てた作物はきっと戻るでしょう。届くならば実り多くあらんことを」
 そっと地面に手を当て雪梅が黒鈴が願っているであろう言葉を口にし、また旅へ戻っていた。そう、村の中に飛空の姿はなかった。きっとどこかで新たな探索をしているのだろう。

 彼らからこっそり抜け出した鈴達は、また新たな妖怪に立ち向かうべく道士達を捜しに空へ飛び立った――


 薄暗い部屋。傷を負った邪仙が呟く。
「ちぃぃ、またか‥‥。陰の気も集められずか‥‥蜚め、なんと役立ずだ。あぁなんと忌々しい」
 淀んだ水鏡に映った蜚の戦いを見ていた彼女。しかしやられる寸前で不快を露わに水を弾いて消してしまった。
「鈴を奪うには、もっと策を巡らせねばなるまい‥‥」
 呟き、何かを思案するように目を瞑った。そんな彼女の上に深い闇が落ちていく。