鈴音的声音道士 9アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや易
報酬 0.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/16〜07/20

●本文

 ――それは昔‥‥神も人も、そして妖怪もがひとつの地で共存をしていた時代の話。
 ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
 人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出している。
 画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように左から右へ流れては消えていく。
 ――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、異形の妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた――。
 画面は切り替わり、映し出されたのは、またも質素な一室。あいかわらず掃除が行き届いた場所だ。その部屋にいる五匹の種類の異なる獣が銘々の場で話している。
「のぅ、いい加減、神と交信をしなければ不味いのではないか?」
「うぬ、うぬ。そうだが、一体どうやってするのじゃ?」
 座布団の上で眠っていた白い猫がむくりと起きだし、伸びをしながらの一言に水槽の中の黒い亀が応える。相手が猫だというのに恐れる素振りなどまったくない。
「ワシ等がこのような姿になってしまい神気も薄れておるのに、神との交信はそりゃぁ難しい。万一出来たとしても神の住まう崑崙山の道も妖怪達に阻まれ、こちらの様子が筒抜けだわい」
「あぁ、そうかも知れない。本当に困ったな事になってるのぅ」   
「困った困ったとばかり言ってはいられないぞ。一刻も早く元の姿に戻り神に状況を伝えなければ。これ以上、羅豊の主に好き勝手させられん」
 止まり木から美しい声を発する赤い金糸雀が困り果てたように羽根をばたつかせると、驢馬が嘆くような口調で嘶いた。叱咤するように鏡の上を這いながら何かを見つめる青い蛇。
 人語を話す不可解な動物達、普通ではありえない行動をとる彼らこそ、四神と麒麟である。
 未だ微弱な姿でいる彼ら。どうも妖怪を束ねる者により力を奪われ、神々と交信できずにいるようだ。
「崑崙山へ辿り着き、この状況を言える者を送らねばなるまい。ん? 計蒙がまだ神に交信する力を持っているようだ。あやつにお願いしよう」
「なれば、道士達に計蒙を探しだして貰うか?」
「それがよい。そうしよう‥‥あ? いかん、あやつの住む山に妖怪が行きおった。ちぃぃ先を越されたらしい‥‥蠻蠻だ」
「まぁ、そう青筋を立てるな青龍。余計力を使えばナメクジになるのも速まる」
 鏡を覗きこみながら低く唸る蛇に水槽の亀が嫌味の一言。その言葉にじろりと睨み返すだけの蛇――青龍であった。



〜出演者を募集〜
 中国ドラマ「鈴音的声音道士」で、四神と麒麟の法力の宿る鈴に選ばれた道士になりきって妖怪を封じてください。
 また妖怪側の役、カメラマンや妖怪を動かす技術スタッフ等の裏方さんも同時に募集しております。
 

〜道士の法力選択〜
 ・青い鈴 
 青龍
 春と東の守護神 
 能力:水 守備型
 武器 龍笛&方位計  龍笛で睡眠誘発や能力を激減させることができ、また方位計により妖怪や仲間の居場所を知る事が出来る。
 玄武の結界と組むことで守備能力が倍増。

 ・赤い鈴
 朱雀
 夏と南の守護神
 能力:炎 攻撃型
 武器 桃の法剣&法術 桃の法剣は妖怪を討ち取る際に使われる。白虎の詠唱で力が倍増する。

 ・白い鈴
 白虎
 秋と西の守護神
 能力:森または道 攻撃型
 武器 召還&詠唱 様々な式神を呼ぶ事ができ、詠唱で攻撃が出来る。

 ・黒い鈴
 玄武 
 冬と北の守護神
 能力:山 守備型
 武器 天鏡&棒術 天鏡で結界を作り、棒術によって敵を薙ぐ。

 ・黄色い鈴
 麒麟 
 ? 中央の守護神。生命ある獣の支配者。
 能力:?
 武器 ?

 なお詠唱、技の名前や攻撃の方法は鈴を手にした方が決める事が出来ます。麒麟の場合のみ設定、能力、武器など一から決める事が出来ます。
 ただ、詠唱が長すぎたり、技の設定が複雑ですと割愛させていただきますのでご了承ください。
 鈴は玄武、麒麟に限り二つに分けることが出来ます。しかし力は半分となってしまいます。また能力に適した技以外の力は、使えないことがあります。
 この五つ鈴は必ず埋めて下さい。
 

妖怪情報:
 蠻蠻(ばんばん)赤い鳥の姿をした二つの頭を持つ妖怪。現れると戦の前兆や洪水を起こすと言われてる。口達者で相手を陥れようとする。
 計蒙(けいもう)神の使いとされる妖怪。竜の頭を持ち身体は人。沼や池で遊ぶのが常でつむじ風と雨を降らす力を持っている。

 崑崙山:神々が住むと言われる山。山の周りに強い結界が巡らされており、神から承諾を受けない限り人は容易に登ることが出来ない。また山の中腹にそよぐ風を浴びると不老不死になれるといわれている。
 羅豊:冥界の呼び名。どうもここに住む大妖怪が何かを企み、四神達の力を奪ったらしい。

●今回の参加者

 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2648 ゼフィリア(13歳・♀・猿)
 fa2986 朝葉 水蓮(22歳・♀・狐)
 fa3262 基町・走華(14歳・♀・ハムスター)
 fa3280 長澤 巳緒(18歳・♀・猫)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa3656 藤宮 誠士郎(37歳・♂・蝙蝠)
 fa3739 レイリン・ホンフゥ(15歳・♀・猿)

●リプレイ本文


 撮影現場の裏手にある休憩所。出演者達が和気藹々と台本の最終確認をしている。
 今回も精巧に作られた蠻蠻の模型を動かすにあたりレイリン・ホンフゥ(fa3739)もこの時ばかりは真剣な表情だ。嘴に繋いだ操作キーを動かし、ボイスチェンジャーで変換された声を当て、本番前の練習に余念がない。
「とうとう黒幕っぽいのが出てきたわね。みんな、気を引き締めて行きましょうね! 暑いけど夏バテ注意よ。はい、レモンの蜂蜜漬け。これを食べて撮影に臨みましょうね」
 そう言って、邪仙の衣装を纏う桜 美琴(fa3369)は、バッグからタッパーを取りだしみんなに回す。中に入っていたのは自家製レモンの蜂蜜漬け。姉御肌な彼女らしい気遣いだ。
 出演者達と言わずスタッフ達も嬉しそうに、レモンをつまみ口に入れる。蜂蜜の独特の甘みとレモンの酸味が口に広がり、このうだるような暑さを忘れさせ心身共にリフレッシュ。そこにタイミング良く、
「そろそろ収録開始です。皆さん、お願いします」
 収録の準備が整い撮影開始の呼びかけに銘々、緊張を解したり意気込みを見せ始める。
 ――鈴音道士の始まりだ。


 木立の間、ようやく降りてくる日の光に照らされ忌々しげに蠢く陰が三つ。
「そうだ。我がこの山に結界を張り巡らし、ここにいる計蒙は丹で惑わせてある。お前は計蒙を探し現れる道士達から鈴を奪うのだ。そうすれば、あのお方は更に力を増す‥‥。実行できたあかつきにはお前の評価も上がるだろう。蠻蠻」
「そうなのカ? 鈴を道士から奪えば良いのだナ。容易いことダ。雷后」
「期待しているぞ」
 静かに響くそれは雷后のモノ。そしてもう一つ、高音と低音が入り交じった囀りに近いものは、鴉ほどの大きさの真っ赤な鳥から発されている。鳥の名は蠻蠻、妖怪である。
 雷后に邪心に満ちた目を向けると、役目を果たすため道士達の元へ羽ばたかせた。
「くっくく、鈴のひとつは我が手にある。蠻蠻が幾つ持ってくるか楽しみだ。‥‥計蒙、お前は私とここにいろ、あの方への貢ぎ物だ」
 先ほど山の麓で遭遇した春霞(月見里 神楽(fa2122))に丹を呑ませた計蒙を操り、まんまと騙し鈴を奪い取っていたのだ。
 宮廷育ちのおっとりした彼女はいとも容易く騙されてしまった。今、黄色の鈴はその手中に収まっている。
 黄色い鈴を眺める雷后は邪気の含んだ微笑みで唇を歪めると、おもむろに鈴を口に含み飲み込んだ。小さく喉が鳴り、体から黄色いオーラを発する。瞬間、髪がぶわっと真っ赤に染まる、しかしそれはほんの僅か。すぐに灰色の髪へ戻った。またも嬉しげに微笑む。
「全ては計画通り‥‥この体であれば耐えきれ暫く使えるだろう。我が力になりし鈴よ。お前の仲間を討ち取るために使わせてもらうぞ。ふふふ‥‥あはっはは!」
 雷后の狂気に似た笑いが山に木霊した。 


 計蒙が住む山。集まった道士達が今後の作戦会議を兼ねて話し合いをしている。
「ごめんなさい‥‥。私の不注意で、鈴のひとつを奪われるなんて‥‥。私から鈴を奪ったのは確かに計蒙、神様と交信出来る妖怪のハズなのに。彼も鈴音みたいにお話し出来るのでしょうか?」
「そう、落ち込むでないぞ春霞。お主ばかりの所為ではないのじゃ。鈴達が計蒙を味方だと言うておったのじゃから仕方がない。確かに今もうちの白鈴は味方じゃと言うておる。きっと何かあったのに違いない」
「それはありうるね。ここもあのねぇちゃんが作った結界の匂いがプンプンすらぁ、ほんと懲りねぇ奴だな。‥‥最近、妙な事件ばかり絡むから酒が不味くてしょうがねぇ」
「ん〜今回、探す妖怪に鈴を奪われたのか。計蒙、味方か敵かイマイチよく解らないけど探し物なら任せてよ。なんたって方位計があるから! 大丈夫だって」
「なれば計蒙を探す方と雷后を追う方に分かれ、探索しよう。何かあったら呼んでくれ」
 しょんぼりとして愛用の琵琶を抱きかかえる春霞を優しく包み労る美蓮(朝葉 水蓮(fa2986))。その隣でよれた道士服に大きな酒瓶を担いだ天曹(藤宮 誠士郎(fa3656))が、悪鬼独特の結界が生む違和感を感じぼやく。見た目と裏腹にじつはきちんとした師匠の元で修行を積む男なのだ。
 少女のように愛らしい小風(基町・走華(fa3262))が、小首を傾げようやく納得すれば、淡々とした口調で要点を纏めた飛麗(長澤 巳緒(fa3280))が提案をする。一同、賛成を表し二手に分かれた。
「さぁ、出発やな! っとその前に‥‥あぁ、やっぱりや。鈴が二つに分かれたから結界を張る能力が少し弱ぁなってるわ。天曹さん、力を貸してくれへん?」
「あぁ。防御の結界を張っておくか。少しは雷后の結界を弛める事が出来るかもしれんな」
 やや小振りの黒鈴の付いた天鏡を取りだし、鈴の力を試す美狼(ゼフィリア(fa2648))。小声で唱えた呪文で天鏡から亀甲の形をした結界だ現れるが、その光りは儚く薄い。やはりとばかりに首を振ると、もう一人の黒鈴の道士、天曹は手にした棒を掲げる。その先に付いている彼の黒鈴がちり〜んと鳴り響き、二つの黒鈴が共鳴を起こす。とたんに天鏡が強い光を放ち行く道に細い結界を張った。
「これで多少は大丈夫や。ほな、気を付けて行こうや」
「うぬ、そうじゃな。‥‥ここに、うちの求めるものがあるといいのじゃが‥‥」
 美狼の言葉に頷く六名の道士。その中で美蓮は自分の心の思いをぽつりと呟いた。
 

 急かすようになる赤鈴に誘われ足早に突き進む飛麗。その後を天曹、美狼が追う。雷后の行方を捜す彼らである。僅かに残る結界の気を頼りに動く彼らの前に、真っ赤な鳥が頭上からさえずった。
「君たち道士なのカ〜? ワタシ、悪い妖怪と違う味方ネ。雷后っていうヒトが計蒙の所に向うのを見たから助けに行くトコよー」
「そうか、ならば降りて来て向かった先を教えてくれ」
 バサリ羽音と共に降りてきた妖怪、蠻蠻だ。飛麗の傍まで降りてくるとぐっと近付き鈴の位置を確認する。あとはタイミングを虎視眈々と狙うだけ。鳥の妖怪と相性の悪い事を自負している天曹はその様子を離れた場所から見ていた。
「ここらへんにイルヨ! ってアハハハ。お前達、信用しすぎネー! 鈴は貰ったヨ。代わりににコレあげル」
 鴉ほどの大きさと侮った飛麗は不意を付かれ、腰に下げた桃の法剣の柄に結ってある赤の鈴の紐を嘴で突かれ外されてしまった。蠻蠻は素速く木の枝に留まると翼を羽ばたかせ、幾つもの鋭い羽根を矢のように下の道士達に降り注がせる。
「っく! 逃さぬっ」
「俺は鳥野郎の言う事なんざ、端っから信用してねぇ、降りてきやがれ! 降りてこねぇなら‥‥三十三天黄金搭!」
 飛麗は咄嗟に飛び上がり難を逃れる。天曹は手に持つ棒を振り回し、美狼と自分を庇う。結界を張ろうとするが、力が弱いのを思い出し、懐に手を入れると師匠に黙って持ち出した結界宝貝を取りだし天高く投げ、上空から蠻蠻を結界に閉じ込めた。
 空中で身動きが取れなくなった蠻蠻に、飛麗は天翔けるように身軽に木の枝を登り妖怪の元まで行くと強力な蹴りを見舞う。声なき悲鳴を発しながら蠻蠻は赤鈴と共に地面に落ちた。
「くぅぅ‥‥おのれ道士共メェ」
「あ、待たんかいっ」
 落ちた途端に天曹の術は切れ、蠻蠻は捨て台詞を吐き一目散にその場から逃げ出す。道士達もその後を追った。


「いざとなったら、お姉ちゃん達を守るから、安心してね」
「うぬ、任せたぞ小風」
「よろしくね」
 クルクル針が巡る方位計を手に先頭を歩く小風、その後を美蓮、春霞がついてゆく。
 道無き道を進む中、ようやく方位計の示した場所にたどり着いた。そこには黒い霧の檻に入いった計蒙がぐったりとした様子で居る。
「もう来てしまったのか道士達よ。しかしもう遅い。もうすぐ羅豊の門が開く‥‥さすれば他の鈴も簡単に我が手に落ちよう」
 クツクツと唇の端をつり上げ、目を細めて笑う雷后が檻の後ろから姿を見せた。
 美蓮と小風はすぐに戦闘態勢を整える。
「道士達、戦うのか? 我の腹にはそこにいる娘の鈴がある。果たして取り返せるのかのぅ?」
「飲み込んだっ?! 鈴を飲み込まれて、おなかは大丈夫ですの?」
「それでも返してもらうまでじゃ! 白き鈴音の響きに応えよ雷虎ッ」
「なんかすごいなぁ〜ってカンシンして場合じゃないよね‥‥。美蓮お姉ちゃんの式に力を」
 笑っている雷后はゆっくりと道士達に向かって手を掲げると肌も凍るような悪気が吹き出す。そこから半透明の幽鬼が現れ、彼らに襲いかかる。素速くから左右に分かれ逃れる三人。雷后の言葉に驚きを隠せない春霞。
 美蓮の白鈴から野性的な音が聞こえたかと思うと、牙の腕飾りを媒体にした雷虎が召喚された。雷虎は同時に真っ白い雷を放ち幽鬼をなぎ倒す。彼女の式の力を強めるため小風が龍笛を取りだし、青鈴で調子を取りながら『神獣の奏』を吹く。しかし黄鈴を飲み込んだ雷后の力は凄まじい。二人を相手に互角、いや、互角以上の戦いを見せる。段々と形勢が不利になる道士。
 だが、そんな戦いは続かない。道士達の戦いに夢中の雷后の背後から、木立を縫って乱れた羽音を響かせ蠻蠻が現れた。それを追う残り三人が姿も見せる。
「ぬ? その禍々しい気‥‥貴様、いつぞやの仙女では無いな」
「やっぱりな、いい加減頑張るねぇ」
「おのれ、道士が揃ったか。くっ‥‥! 折角の策が台無しだ。蠻蠻め‥‥。ん、あ? な、なんだこの感覚は‥‥うっ。焼けつくようだ‥‥き、きゃぁぁぁぁああ!!」
 りり〜〜ん
 以前会った事のある仙女と瓜二つの雷后に流石の飛麗も驚きを隠せない。鋭い眼光で彼女を射抜き、法剣を構え攻撃を仕掛ける。冷淡な笑みを貼り付かせた雷后はそれを袖で軽くかわし、蠻蠻に対する怒りで首筋が凍るような凄まじい表情を見せた瞬間、その顔はまた別の感情に支配される。
 集まった道士達の持つ鈴が雷后の腹にある鈴と共鳴しだしたのだ。灰色の髪を振り乱し、嗄れた呻き声をあげる。唇を噛みしめ吐き出すまいとするが、雷后の腹部に黄色い閃光が走ると、まるで瞬間移動をしたように黄鈴は春霞の手の中に落ちた。
「凄い神気‥‥。その力こそ我の求める力ぞ。蠻蠻、なんとしても鈴を手に入れるならコレをやろう。そら! ではまた会おうぞ‥‥」
「逃げるのかっ! 貴様!」
 痛みのダメージが凄まじかった雷后は、蠻蠻に丹を与え退却を試みる。それを許さない飛麗は大きく飛び追いすがったが、あと一歩のところで紫色の霧に姿を掻き消され、飛麗の剣は虚しく空を斬った。
「おぉぉ〜?! ち、力が漲ル! さぁ鈴をヨコセ、俺は力がホシイ」
 丹により、ムクムクと巨大化した蠻蠻。その姿は人の背丈ほどある大きな鳥だ。バサリと翼をはためかせ空を斬ると、また羽根が矢のように降り注ぐ。しかもその力は巨大化の所為か何倍もの力を持っている。
「あ、危ない! 天曹さんっ」
「おう、いくぜ、結界之縛・花籠」
 美狼が天鏡を掲げると天曹が詠唱と同時に棒を振り地面を叩く。二人でひとつの黒鈴が共鳴し、ばっと大きな結界が張り巡らされた。その中の道士達に羽根の矢の難を逃す。
「避けたナ! 次こそハ貴様の倒シ鈴ヲ‥‥」
「お喋りはお終いだよ、怪鳥さん!」
 悔しげに嘴を鳴らす蠻蠻に青鈴が鳴り、小風の龍笛、『口封の奏』で、黙らせ『奇声の奏』が連続で奏でられる。動きを封じられた蠻蠻に、間髪を入れず美蓮と飛麗が飛び出す。
「森羅万象の詔持ちて、赤鈴の法剣に白き鈴音を!」
「もうここまでだ。争乱を産むは許しがたし‥‥封!」
「うぎゃあぁぁ」
 美蓮の法剣強化の護符により法剣が目もくらむ白光見せた。飛麗は大地を蹴り、蠻蠻に向かって法剣を打ち下ろす。劈く悲鳴を上げ怪鳥はその場に崩れた。


 ぐったりと倒れる計蒙に春霞が優しげな琵琶と黄鈴の音を聞かせている。それは神曲『清』そして『命導』だ。雷后が使った丹の汚れを浄化し、治癒効力で回復を待つ。
 小風も計蒙の体の治りを早めようと龍笛で琵琶の音に合わせ補助をする。
 美狼が彼の回復を彼女が作った饅頭を手に今かと待っている。どうも崑崙山に存在する幻の食材の事を聞きたいようだ。同じように美蓮も静かに彼の落ち着きを待ち、神の住む山へ連れて行って貰おうと思っていた。
 飛麗は、そんな彼らにひとつ頭を下げるとその場を後にまた修行の旅を急ぐ。天曹も酒を飲み一休みを済ますと歩き出した。

 彼らからこっそり抜け出した鈴達は、また新たな妖怪に立ち向かうべく道士達を捜しに空へ飛び立った――