ビートヒート☆アワーアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/25〜07/29

●本文

 あの音楽番組から早、数日。梅雨の季節となり、窓の外は灰色の重い雲に覆われた雨模様が続いていた。気が滅入るディレクターの心に前回のGSを見事再現したあの燃える思いが燻っている。
「また、企画したいなぁ‥‥」
 ぼんやりと琥珀色の珈琲が入った容器を片手に窓の外を眺めていた彼に転機は訪れた。ノックもそこそこに戸が開けられ、一人のADスタッフが慌ただしく入ってくる。
「ディレクター、企画が通り屋外の会場が押さえられました! 今度は前回同様にもっと派手にGSライヴをしちゃいましょう!!」
「ほ、本当か?! よしっ、さっそく演奏をしてくれるミュージシャンを探すぞ!」
 ADスタッフの言葉に俄然やる気を出したディレクター。またあの時、あの時代のトキメキが胸を躍らすと信じ、瞳を輝かせた。


〜〜ビートヒート☆アワーの出演者募集〜〜
 またディレクターの企画が採用され、今回はライヴとあいなりました。
 しかしGSとは今の若者には少しばかり馴染みの薄い言葉。
 音楽的な特徴は、洋楽の要素を取り入れながらも独自の音を見つけ展開した日本発のポップス。
 今の時代からすればノスタルジックな曲が多いのですが、名前も知らない人でもちょっと聞けばなんとなく懐かしさを覚える歌やルックス、揃いの衣装が印象にあると思います。
 どうぞ皆様で楽しいライヴに仕上げてください。
 グループサウンズと言っていますが、歌手さまお一人での参加も大丈夫です。
 また司会者、演出家、衣装担当、大道具を担当の方も同時に募集しておりますので、奮ってご参加下さいませ。

 ライヴのテーマ:真夏の燃える恋や海、避暑地を題材にした青春を謳歌した曲を歌ってください。

●今回の参加者

 fa0160 アジ・テネブラ(17歳・♀・竜)
 fa0244 愛瀬りな(21歳・♀・猫)
 fa0847 富士川・千春(18歳・♀・蝙蝠)
 fa0877 ベス(16歳・♀・鷹)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa2847 柊ラキア(25歳・♂・鴉)
 fa2899 文月 舵(26歳・♀・狸)

●リプレイ本文


 長々と続いた梅雨の雨。野外ライヴまでには晴れて欲しいと願ったディレクターの思いが通じたのか、雨だけは止んだ。しかし空模様はあまりよくない。重く薄暗い雲が空を覆っている。
 しかしステージ裏手に設けられた控え室は、空模様を吹き飛ばすように華やかだ。
 挨拶をしようと顔を出すディレクターにいち早く気付いた柊ラキア(fa2847)が駆け寄る。
「前回も楽しくて、今回も楽しそうな大予感! またGSできるの待ってました、ディレクターさんありがとーう!」
「いや、柊君。そう言ってくれて嬉しいよ、こちらこそありがとう。宜しく頼むね」
 柊の言葉にディレクターは彼の手を取り、満面の笑みで感謝の意を込める。そこへ元気いっぱいの悠奈(fa2726)と優雅な京都弁の文月 舵(fa2899)が近付く。
「また宜しくお願いします。リバティブルーを再結成できるとは思ってませんでした。舵さんとラキ兄ちゃんも一緒で嬉しいな! あ、ベスちゃん、久し振り」
「また参加できて嬉しおすえ。ライブやとお客さんに身体で聞いて貰えますし、反応も直に感じられますから楽しみやわぁ」
 悠奈はぺこりと頭を下げて傍にいた柊に突進すると、彼を連れ奥にいるベス(fa0877)の所へ。
 またベスも友人のアジ・テネブラ(fa0160)や月見里 神楽(fa2122)、富士川・千春(fa0847)と共演できる事で嬉しげだ。賑やかな彼女達にディレクターはまたも笑みが零れる。一緒に文月も優美な微笑みを浮かべた。
「私、愛瀬りなです。歌に関しては素人レベルな不束者ですが、精一杯頑張りますので宜しくお願いいたします。お友達も沢山いるので安心して参加できますし、とても嬉しいです」
「やぁ、愛瀬さん。御高名はかねがね承っておりました。参加してくださりありがとう。GSって聞き慣れないものですが、大丈夫ですか?」
 挨拶も一段落してきたところを見極めた愛瀬りな(fa0244)がディレクターに敬意と親愛の意を示すように一礼。かなり著名な彼女だが礼儀を欠かさず、いつでも丁寧な口調の彼女にディレクターも敬意を込めて返す。
「はい。私はGSは世代ではないですが、今聞いても格好良く素敵な曲多いですよね。女性のバンドが少なかった、というのは意外ですが‥‥ライブ満喫させて頂きます」
「そうですか、では期待しておりますよ。お、アジさん準備は整いましたか? リラックスしていこう」
「うん。私もこうやってメンバーを組んでって初めてだけど精一杯頑張るよ。それに知り合いも一杯いるし、楽しくなりそうだね」
 ライヴ前の期待と不安、初めての取り組みにやや落ち着かないアジ。
 それもそのハズ、そろそろお客達が会場入りを終え、開演を待ち望んでいる。その高揚感がここまで届いていた。
 月見里は緊張を抑えるように深呼吸を繰り返し、富士川も楽器のチェックに余念がない。
「皆さん、外はまだどんよりした空模様だけど、それを吹き飛ばすほどのパンチの効いた夏のGSをお願いしますね!」
「それを言うなら、ビートがヒートするくらい凄いGSをだよ。このライヴのタイトルじゃん。ディレクター、貴方も楽しんでね」
「勿論!」
 開演を知らせに来たスタッフにディレクターが出演者の皆に声を掛ける。全員、立ち上がると観客の待つステージへと元気よく走っていった。

●Ciel・bleu
「こんにちはーっ雨が止んで良かったですね。蒸し暑い中、集まってくれてありがとーございまーす! 今は梅雨だけど、その次に来るのはなんでしょう? ‥‥正解、夏です! 真夏を呼び込むビートヒート☆ アワー‥‥始まります!」
 司会進行も勤めるベスは向日葵の造花を付けたマイクを手に元気よく観客に手を振る。
「最初に登場するのは雲と太陽を抱く空。それは鮮やかな青、それとも水色かな? 『Ciel・bleu』です。では海と空のコントラストを感じて下さい『蒼』!」

『蒼』 月見里 神楽
「 貝殻に聴いた あの日の思い出
  かすかに残る 潮騒が響く
  白いリボンを結んだ帽子 風に揺れる白いワンピース
  照れくさそうに「似合うよ」と言った 」

 演奏が始まる。白いワンピースに揃いのリボンの付いた麦わら帽子、緑豊かな葉の間から顔を出す向日葵のように首に巻いた緑色のスカーフに向日葵のコサージュを付けた月見里のアコースティックギターの音色がゆったりと響き、そこに歌唱力抜群の富士川の歌が乗る。彼女の傍で水色のワンピースに白いストール姿のアジが声を合わせコーラス。髪に挿した姫向日葵が銀色の髪に良く映える。三人の織りなす音が綺麗に混じり、最後の余韻も見事決まった。
「素敵な夏の海でしたね。続けていっちゃいましょう! 懐かしい想い出『ノスタルジック ユー』みんなで賑やかに『サマーホリデー』」
 舞台の袖で演奏を聴いていたベスは続け様に二曲を紹介。愛瀬が楽屋で練習したコンガで曲調が段々とアップテンポとなり、どこかエキゾッチクな音色がゆったりとした曲に変わって客席に響く。

『ノスタルジック ユー』 愛瀬りな
「 水鉄砲 片手に無邪気に笑ってた(笑ってた)
  あの時の少年の面影はなくなってちゃんと目を見ることすらできなかったよ(できなかったよ)
  本当は また会えて嬉しいのに(嬉しいのに)
  あの頃みたいに素直になれなくて古いアルバム引っ張り出して今でも好きと呟いた(呟いた) 」

 懐かしい子供時代を思いださせる歌詞をアジをメインに愛瀬の優しい歌声が追う。コーラスと楽器に持ち替えた富士川のエレキギターと月見里のベースが歌声をしっかり支えた。
 最後のフレーズを伸びのある二人の声が締めくくり、主旋律を奏する富士川のギターが急展開させる。月見里は自転車の横に用意されていたアコースティックギターを再度手に取り自転車に寄りかかりながら次曲に移す。真夏の眩しい空を思い起こさせる心地よい軽快な音色に、コンガを叩きリズムを取る愛瀬の濃い青のワンピースと白いヘアバンドの付いた髪が踊る。

『サマーホリデー』 富士川千春
「 真っ青な空の下いつもの公園に集まって
  みんなで自転車のペダルをこいで坂道のぼって 夢中で駆け抜けた
  走りだしたみんなの笑顔

  いつまでも いつまでも 夏の思い出(いつまでも)
  真っ白なスケッチブックを取り出し今ある空を絵に描いておこう
  明日も夏休み 時間なんて気にせずに今日は花火を買って盛り上がろう

  長い長い坂道に車輪が響いて転がっていく
  ヨーイドン! で海まで駆け出して(走り続ける)
  流れる雲を追い越していくよ(追い越していく) 」

 またも元気いっぱいの曲。富士川にボーカルが代わりギターを弾きながら力強く歌い上げていく。ストラップに付いた向日葵の造花が大きく揺れ、カンカン帽も頭の上で飛び跳ねる。最後のコーラスを歌い終えると月見里が、ギターを抱えながらここでMC。
「こんにちは〜。フランス語で青空という意味の『Ciel・bleu』です。メンバーを紹介するね! 忘れえぬ神秘の歌声、ボーカルのアジ・テネブラ。誘うは魅惑の音色たち‥‥ボーカル&ギター 富士川千春。熱い夏も魅せられるコーラスとコンガ、愛瀬りな。元気印の響きギター、ベース‥‥月見里神楽でお送りしてます! 聞いて頂いた三曲、そして最後の四曲目も共に空の印象なのです。一番最初に青空に届くのは誰かな? ね、ベスさん?」
「届くのは、私達かしら? それとも会場のみんな? では最後の曲は恋の歌。青い空を吹き抜ける風のように『クリア』」
 月見里とベスはにこやかに話しそして最後の曲紹介。月見里の目配せでイントロが流れだす。情緒たっぷりに爪弾かれる月見里のアコースティックギターと富士川のエレキの音色が重なりどこか切なげな曲。

『クリア』 アジ・テネブラ
「 白い木漏れ日の道をあなたは白い自転車を走らせる
  その後ろに私がいてた だそれだけ 心満たさせる

  嘘みたいだね(no lie) 蒼い風がぬけていくよう(no repeat)
  夢みたいだね(no eidolon) そうやっていれることを(no regret)

  すこし‥‥もうすこしだけ夢とあなたの境にいられたら 」

 アジは甘く切なげに歌い上げていく。優しくどこまでも穏やかな愛瀬のバックコーラスが更にその歌声を高めていった。

●リバティーブルー
「海と空の青、それを映す心の青。今日の青を歌うのはこの方達です!」
「こんにちはーリバティブルーです! ドラムの文月とアコースティックギターの柊〜。ボーカルは悠奈とベスでお送りします! さぁ、みんなで梅雨空を吹き飛ばす合い言葉を叫んじゃおう! 心はリバティー!」
 ベスのMCから始まりメンバーを紹介する彼女に合わせ、文月は手を振る代わりにちょっとしたドラム演奏。会場いっぱいに弾ける小気味良い音は華麗なものだ。柊もアコースティックギターで独奏開始。よく動く指先で変則的な音を紡ぎ出す。得意の早弾きを披露。悠奈は名を呼ばれると会場に大きくタンバリンを振り上げ、投げキッス。最後に自己紹介をしたベスは愛らしい微笑みでマラカスを振った。
「では曲名はピッタリ「Midsummer vacation〜青い夏の日〜」あなたの青色を探しに行きましょう」
 このライヴのために再結成をされたリバティーブルーを紹介する月見里。
 ざーざーっと波音が会場に響き、その間からスティックのカウント。文月の勢いよく叩かれるドラム音と共に、柊のギターが陽気な浜辺を思わすメロディを奏でる。青いシャツに白のダメージジーンズ。海を思わすその衣装でクルクルとよく回り跳んだり跳ねたり、忙しい。それでも首から下がる愛用のゴーグルに付けた造花の向日葵は針金で固定され落ちる事はない。

『Midsummer vacation』 悠奈&柊ラキア
「 陽気に白い砂のビーチで踊ろうよ
  君はまるで眩しい太陽
  焦がれて見つめる僕は君の心が欲しくて
  熱にうかれたフリして愛を囁くのさ

  lalala‥‥Let’s go to the sea togrther.
  lalala‥‥Midsummer vacation 」

 ぶわっと吹き出るシャボン玉の中でベスは元気よくマラカスでリズムをとり、悠奈は腕を振り上げゴーゴーダンス。青いメンズライクな半袖シャツに白のカプリパンツ、白いネクタイを蝶結びが愛らしいアクセント。麦わらのカンカン帽に付けた向日葵の造花が彼女の動きに合わせ一緒に踊り、何とも楽しげだ。柊も声を合わせる。英語の歌詞に入ると三人、綺麗なユニゾンを聴かせた。
 そこにまたも派手に金銀の紙吹雪がハラハラと降りてくと、そこでトトンっと文月がリズムが変調させた。ゆっくりとライトが落ち、徐々にスモークがステージを覆う。

「 静かに蒼い海に太陽が落ちていく
  君は黄昏時の海の妖精 
  儚く微笑む君が今にも消えてしまいそうで
  転んだフリして、そっと手を伸ばすのさ

  lalala‥‥Let’s go to the sea togrther.
  lalala‥‥Midsummer twilight 」

 ダンスを止めしっとりと歌う悠奈。自分のパートを終えるとベスに次を促す。

「 火照った体 冷める間もなく外に出ようよ
  僕の誘いに少し不機嫌な君は
  南国の月が見下ろす中 不意に笑って頬にキスをした

  lalala‥‥Let’s go to the sea togrther.
  lalala‥‥Midsummer moonlight 」

 スポットライトを浴び、雰囲気たっぷりに歌うベス。綺麗に声が伸びる。
 スローな調子からまた徐々にテンポを上げていく文月をライトが捕らえた。青のノースリーブシャツに白のキュロットパンツ。アップした髪に向日葵のコサージュを飾りが浮かび上がる。

「 機嫌直して裸足になって 波の囁き穏やかと
  笑ってはしゃぐ君とただ 手と手繋いで泳いでく
  月の灯りの中 どこまでも

  lalala‥‥Let’s go to the sea togrther
  lalala‥‥Midsummer fantasy
  lalala‥‥lalala‥‥lalala‥‥
  The dream of the night sea of summer 」 

 最後は柊。低中高音域まで出る芯のある声が良く通り観客を魅了する。英語はまたも華やかに三人の声が合わさり、そしてぴたりと止まった。
 また波音が会場に響き、色取り取り沢山の風船がリバティーブルーの足下から晴天となった空へ舞い上がった。


「梅雨も晴れて見事な晴天‥‥夏本番だね! ラストはこの曲、もし知ってる曲なら一緒に歌ってください〜〜」
 大きな声で柊が客席に呼びかける。最後に彼らが合同で演奏するのはディレクターから事前に聞いていた曲だ。
 
「 君にあげよう 僕のこの愛を
  海よりも深いこの心 燃える太陽のようなこの気持ち
  好きで好きで堪らない だからお願い君のハートに触れさせて 」

 当時を再現したサイケな音。月見里の低いベースを主に富士川、柊のギターが競い合い、愛瀬のコンボがリズムを取る。
 ベスと悠奈、アジの歌声が響き、促された観客と共に声が一つになった。
 ドラムを叩きながらステージの袖で聞いているディレクターを見た文月は、彼が楽しげに歌う姿を嬉しく思った。