いろはに諺 その巻アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
2.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/06〜08/10
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●本文
サブタイトル:実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
タイトル通りの教育番組である。いや、そのはずだ。何と言おうと。
いつもの通りプロデューサーの指示に従いスタッフ達が運び込む小道具、衣装はイベントパーティーでもするのではないかと間違えるほどの面白グッズばかりである。
そう、この番組の意図は楽しみながら諺を学ぼうというもの。
和風なセットなども用意され準備は万端。あとは出演者と司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
さぁ、今回も賑やかに放送開始である。
■出演者募集
いろはに諺の出演者を募集します。
楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。
■演出
その1 諺とは関係なく「そ:濁点可」の文字を頭に使い面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となって、体を張り文字を作って頂きます。
その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントなど、お願いします。
ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうのも良いですし、創作した諺の披露や、体を使ったスタントでコントもオッケー。
とにかく一番大事なことは、皆様がワイワイ楽しんで番組を作ってくださること!
コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。
最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第!
用意された諺は、全て使わなくても大丈夫です。
■お題
そ
「総領の甚六」
意味:最初の子は親から、大切に育てられるため世間知らずが多いという事。
「備えあれば憂いなし」
意味:常日頃から準備をしておけば、突然、何が起こっても心配する事はないという事。
「袖ふりあうも他生の縁」
意味:人との出会いは大切にした方が良いという事。
●リプレイ本文
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毎週、六時にチャンネルを合わせれば映し出されるタイトル。いつものように元気よく子供の声で読み上げられると画面は切り替わり、司会者&出演者が映し出された。
「今回もやってきました、いろはに諺の時間。司会者の郭氏文 令明です。前回、御休みをしてしまいましたが『滄海変じて桑田となる:世の中の変遷の激しいことの例え』でして気を抜くと直に消えてしまいます。ですので『俎上の魚:相手の思うままになるよりしょうがない立場の状態』と、なろうとも仕事に従事しなくてはなりません。あぁ‥‥すみません、大人の事情な話で少々難しかったですね。では解り易いモノをお一つ『備えあれば憂い無し』。知識は荷物になりませんし、諺もいざと言う時に使えるものが多くあります。覚えておきましょうね」
「郭氏文さんはリフレッシュして元気なのだー! おいらもそらげんきーぃ‥‥あれれ‥‥違うのだ?」
前回、休みとなった郭氏文 令明(fa0243)は、相変わらずの口調で挨拶。しかし気分転換をした所為かあれやこれやの話す口は滑らかだ。
そこに苺(fa3120)が絡む。愛用のマイクを手に右腕の腕章『しかいしんこ〜☆ 空元気』はいつも通り健在だ。やや夏バテ気味でお疲れの彼女であるが、ボケはいつものようにキレの良いモノ。流石である。
「それを言うなら、から元気や! ‥‥はいなっ、今週もいろはに諺ぁ‥‥」
毎度お馴染みハリセンを振りかぶる豊浦 あやね(fa3371)。一撃見舞ったところでご挨拶をしようとするが、おもむろに蛍の光が流れ出す。お店の閉店時に聞こえるこの曲調は聞けば誰でもおセンチになり、どこからかずる〜〜ぅっと鼻を啜り上げる音も重なった。
「にゃっ? にゃにゃっ? 始まったばかりやのにお終いかいな?! え、ちゃう‥‥この曲はうちを卒業させるために流している?!
そんな話聞いとらへんで」
「うぅっ、ユラお姉さんが卒業とは寂しくなるのだー」
「あぁ、安心して卒業してくれ、あたしが司会というか司会もどきをする。これでもあたしは長女だし丁度いいよな? という事で世間知らずというか、微妙にズレたキャラを‥‥ん? それだとわざわざ演じるまでもなく、そのまんまで大丈夫か? 『創業は易く守成は難し!』。今まで以上に気合いを入れて盛り上げていこう!」
ディレクターの出すスケッチブックを読み驚き戸惑う豊浦に苺とティタネス(fa3251)が追い打ちを掛ける。あれよあれよと事が進み、苺は半泣きで、ティタネス(fa3251)が温かい笑顔で豊浦の肩を叩き送りだす。意味が分からず戸惑う彼女をスタッフが手を引き画面からドロップアウトさせてしまった。
豊浦卒業という不穏な状態で動き出した番組。ハラハラしている一名のスタッフをヨソに番組開始である。
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「それじゃあ頑張ろう! 相談の窓口、あなたの悩みをそれとなく解決のお時間です」
アシスタント衣装のHIKAGE(fa1340)が、献身的に台車で磨りガラスで囲んだ個室を運んでくる。その中には頭を項垂らす一人の男の姿。その金髪、どうみても真田・勇(fa1986)である。
「相談のそ〜と言う訳で、ティタネスさんに相談したいと思います。僕がよく出演する番組に司会者を勤めるユラお姉さんって方がいるんですが‥‥あぁ、バレたら盛大に突っ込まれるので‥‥万全の体勢でYさんと伏せさせて頂くっす」
ティタネスを指名した真田は声優業を生かし自己で音声を変え、手に握ったハンカチで事態の深刻さを演出しながら語っていく。しかし実名を避けようとイニシャルを持ち出すも、すでにご本人が傍で見ているため、全く意味を成していない。
「そのユラお姉さん‥‥じゃなくてYさんの突っ込みはとてもきつくて、まるでレモン5個分のビタミンCの如く‥‥」
辛いのか酸っぱいのかよく解らない例えを交え涙声で話す真田。ふと、酸味を思い出し涎を啜る音も加わりだした。
「そのYさん‥‥じゃなくてユラお姉さんが、僕を声優じゃない別の何かのような扱いをするっす!」
「それは大変だな。レモン五個分から梅干し十個分な酸っぱさになればいいのになぁ」
「‥‥そんなレモン五個よりもすっぱい演技で誤魔化されるかいなっ! 勝手に話を作らんといてや!」
「え?! あぅっ、ゆ、ユラお姉さん、これは誤解でぇっす、まだトレカコンプしてないっすのにぃー」
「問答無用! というかオタな言葉にも一撃や!」
感極まり、真田はとうとう地声だけで話し出す。これでは彼が声優というのは怪しい上に見事伏せ字を間違え、ぶちのめしを決定づけてしまった。そんな真田の話をウンウンっと頷きながら頓珍漢な答えで返すティタネス。
そんな彼らの背後から怒りの豊浦。彼女のハリセンが一閃した。
「あぅあ‥‥酷いっす。壊れ易いシャボン玉のような僕を‥‥もっと丁寧に扱うべきっす」
「そないな寝言は寝てから言いなはれっ!」
毎度しばかれてもここまで元気な真田のどこが壊れやすいと言えようか。更なる豊浦の突っ込みで床に突っ伏す。
「相手の思うままに料理されるの待ってるだけの俎上の魚のような僕っすね‥‥。突っ込まれ放題さ‥‥」
ぐぐっと頭を持ち上げ、最後に諺とその意味を告げるとパタリと落ちた。
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「そ、そう今回、番組が初めてなので宜しくね!」
「備えあれば憂いなしの『そ』じゃ! 山で遭難しても天災に遭遇しても安心じゃろう」
白いマントに着物、真っ白づくしに何故かサングラスで画面に登場したjoker(fa3890)と、開始直前までネタが思いつかず、「脳味噌煮えてぐつぐつじゃー」と、叫んでいた鬼王丸・征國(fa0750)だが、いざ画面に登場すれば強面にフッとニヒルな笑みを浮かべキメ顔を披露し、すぐに背後の文字作りセットによじ登り出す。久し振りのお題文字だ。
言わずとjoker(fa3890)が上になり腕をグッと伸ばし身体をやや反らし、そこを繋ぐように、鬼王丸が大きな身体で同じような形を作った。
「そ〜!」
文字が完成である。
「では、俺から諺を紹介していこう。『そば杖を食う』だ。ではマロ君、紙芝居を担当してね。よろしく」
付属品の筆から大きめのスケッチブックを手に持ち、笑顔振りまくjokerの言葉にこくりと頷くマロ君。ぺろりと捲ると、そこに筆で描かれた手描きのマロ君と彼に良く似た姿で大きな赤いリボンを頭に付けた妹のマロ子ちゃんが居た。
「あるところにマロ兄君と人生太く短くのマロ妹ちゃん兄妹がいました」
相づちにべべんっと肩から提げた三味線をひと打ち。ぺろりと画用紙が捲られ新しい画。
「マロ子ちゃんは夏の浜辺で自称サーファーのマロ夫君をゲットしましたが、彼は五十年に一度現れるという幻の大波に挑戦し、行方不明となったってしまったのです‥‥! そこへ兄のマロ君。ぶっちゃけ悪いけど、阿呆だなぁ関わらんとこう。と思ったのでしたが強引にマロ子ちゃんに荒縄でふんじばられボートに乗せられてしまいマロ夫君捜索の旅へと海へ放り出されてしまったのです!」
べべんっべん!!
「何で自分がと思いながらも可愛い妹の為、性格も流されやすいタイプのマロ君は七つの海を越え、各地で伝説を作りながらマロ夫君を十年に渡り探しましたが、結局見つからずマロ子ちゃんに申し訳ないと思いながらもやっとこさ帰った故郷で、隣町に流れ着きすぐに発見されたマロ夫君と結婚し子供作って離婚して再婚までしてましたとさ。めでたしめでたし」
べべべべべ〜〜ん♪
「ま〜、紙芝居の中のマロ君のように自分に咎無いのに被害を受け、巻き込まれる事ってあるよね。これを『そば杖を食う』って言うんだよ。災難だったねぇ‥‥では最後に創作都々逸いってみよう! 騒動避けて 生きてはみても そば杖食って 木阿弥に♪」
べべんっ!
これまた上手く纏め、jokerは笑顔で画面の向こうへ手を振ると、のしのしと大きな岩を思わすリュックを背負った鬼王丸が現れた。
「そがぁな災難、遭難でもやっぱし必要になるなぁこのリュック、ようけ食べ物を備蓄した中を見るのじゃ、ほりゃ!」
リュックをひっくり返すとガラガラどっしゃーんっと、凄まじい音を立てソープ、ソケット、ソンブレロ、ソリ‥‥はたまたソプラノリコーダーに添え木などまったく食べ物と関係ない物が転がっていった。
「うぉぉ?! な、なんぢゃろぉこりゃぁぁ〜?」
「あはは、ごめんなのだー。これから行う闇鍋パーティーの材料にさせて貰ったのだー。ほら」
一昔前の刑事ドラマに出てきた殉職刑事のように立て膝を付き叫ぶ鬼王丸に、リュックをこのようにした張本人の苺がにぱーっと微笑み指を差す。
その先には、カセットコンロで炊き出しをしているHIKAGEの姿。火に掛けられた鍋がクツクツと小刻みに中の物が煮えるいい音を立てている。そこに近寄り木蓋を開けた鬼王丸は具だくさんの鍋を覗きこむ。どうも持ってきた食料材と量とが合わない。
「確かにワシの持ってきた物も入っておるが、少なくないじゃろか?」
「そこもすまん。苺さんとあたしでつまみ食いをちょっとしちまったんだ」
「ああ〜、備えあれば憂いなしが‥‥」
「あはははっ、そうは問屋が下ろさな‥‥かった。そう易々と望みに応じられないと言うこの言葉が今の鬼王丸さんには当て嵌まりますね」
鬼王丸の問いに苺のボケを重ねるようにティタネスがボケの一言。またも凹む彼に郭氏文は慰めどころか傷に塩を塗り込むようなカウンター突っ込みを食らわせた。
●
出演者達は皿と割り箸を手にぐつぐつ煮えた鍋を囲んでいた。
「お鍋が出来たのだー。では入っている物を紹介するのだ! 令明さんから即席麺、jokerさんはソラマメでHIKAGEさんの持ってきたのはソテー、鬼王丸さんからは遭難袋の食料で〜、あとは勇さんのソーセージにおいらの素麺、そして味付けはティタネスさん持参のソイソースとユラお姉さんのソルトなのだー」
指折り全員が持ってきた食料を紹介する苺。中身を聞き一同の顔が曇る。そこにHIKAGEが手を上げ発言。
「そんな事もあろうかと胃薬を用意してきました! あと胃に優しいハーブティーも煎れてあるよ、備えあれば憂いなしだね!」
「そうなのだー、備えあれば嬉しいなーなのだ!」
今回は珍しく気配りも根回しも良く、チャキチャキ動いているHIKAGE。頼り甲斐のある男を全面に出すも爽やかさアピールも忘れず白い歯を見せ微笑む。
そんな彼に賛同するのは苺だけ。他の皆はあっさりと流し鍋に箸を付けていく。
「そういえば真田さんの語尾口調は『す』が沢山なのだ! すが好きなら酢をめいっぱいかけて、どーぞなのだー。あ、あれ、今回は『す』の巻だったっけ?!」
「うはっ、こ、この口調の『す』は酢好きと違うっす〜」
「お題は『す』じゃなくて『そ』だな。それにしても酸っぱい繋がりだなこりゃ、ま、頑張って食べるんだな」
にぱっと笑い、真田の皿に大量の酢を流す。真田は慌てて止めるも皿の中に残っていた素麺が酢漬けとなってしまった。ティタネスの微妙な突っ込みが入る。しかしこれでは甘い。フルフルと震えて突っ込みを耐える豊浦。そんな彼女を煽るかのようにHIKAGEの一言が出た。
「そんなの無理に食べるのはよくない! じゃーん取り出したるはエチケット袋 ゲロリーナ(商品名)。真田さん、どうぞ遠慮なく使ってね! ‥‥けどこの名前、凄いよねゲロリーナって。直球だよね〜。この名前だと雨の所為で窓が開けられないバスの中とか思い出しちゃうね‥‥え? ゆ、ユラお姉さん、その目が怖いっ、や、やめてぇ」
「うぷぷっ。こらぁーひかげん! いい加減にしなさいっ」
ずばしぃぃんっ!
これでは草履履き際で仕損じる‥‥せっかくの気遣いで良い人と思われ出した成果が台無しである。嘔吐を連想してしまった出演者達は口を押さえだし、色々我慢していた豊浦の怒りは弾けハリセン殺法の猛烈な炸裂音が響く。撃沈させられ床に突っ伏するHIKAGE。袖の下に回る子は打たれぬなどと言うが彼の場合、それは効果はなかった。
「あれ、ユラお姉さん卒業したのでは?」
あのようなHIKAGEの発言でも気にせずモグモグと口を動かしながら問う郭氏文に、
「卒業? ほなら速攻入学ゆー事で問題あれへんっ、『袖振り合うも他生の縁』‥‥番組で一緒になっといて、こないなボケの応酬を放置してはおちおち卒業などしとれへんわっ」
見事に一蹴。
「さて、『滄海変じて桑田となる』。今日のウチのように世の中の変遷が激しく、将来どうなるかなんて分からへん時もあるやろうけど、それだけに後悔は、せえへんよう皆もしっかり勉強せなあかんで! 何か不測の事態が起こった時も『備えあれば憂い無し』やっ」
と、豊浦は冒頭で話す筈の教訓をラストに回し、にこやかに締めくくる。
「んじゃ、最後にデザートを食べながらお別れするのだ! ソーダ水にソフトクリーム‥‥うわぁ涼しそうなのだ〜」
今回、なかなか波乱に満ちていたが皆の創意工夫でめでたく乗り切る事ができ、最後に苺が用意していた『そ』の文字をあてた夏にピッタリなデザートで乾杯したであった。
「まったねー」