とにかく捕まえろ! 3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 やや易
報酬 2.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/10〜08/14

●本文

「ぬふふっ、ぬふっふ‥‥ぬっふふふvv」
「何、にやけてるんですかディレクター? 気持ち悪いですよ。腹が痛いなら早くトイレへ行ってください」
「ぬふふっふ。そうではないA君よ。僕はとても良い企画が思いついたんだ」
 毎度の会議室。なにか悪い物でも食べたのであろうか、聞いた者をどよ〜んとどん底の気持ちのに陥れる含み笑いを繰り返すディレクターT氏。そんな上司に向かってスタッフA君は失礼ぶっこく一言。しかしT氏はそんな言葉をも聞かなかったことにしてふんぞり返る。毎度、怒られてばかりのT氏であるが今日は自信たっぷりだ。
 ぴぃ〜ん脳内に鳴り響く嫌な予感の知らせに慌てて背中を向けるA君。
「企画とは〜〜。ねぇ、聞いてくれよっA君」
「ハイハイ、聞いてまちゅよー。いちおーね」
 まったく小馬鹿にした口調で答えるA君。あまりの言葉にT氏はいじけようかと思ったが、企画を思い出し自分を奮い立たせた。
「え〜こほんっ! 今回の企画とは‥‥やはり夏! 夏といえば虫取り!! 子供の頃を思い出して虫取りなどしてみよー! おーっ」
「‥‥はぁ? 却下です! 却下! 前回の高級ウナギを弁償したので、虫を取りに山へ行く予算なんかどこにも、一円もありませんっ。それどころか、赤字でピーピーです」
 椅子の上に立ち、一人自信満々やる気満々に腕を掲げポーズを取るが、見事に三秒きっかりで退けられた。が、それでもめげない。
「っふ。甘ぁーい、小倉トーストのように甘いよA君。私だって、それは解っていた。だからこのフロアーで虫とr‥‥ごふぅ」
 どこか聞き覚えのあるギャグをかましながら鼻息荒く言い放とうとするが、言葉が終わらないうちに戦闘能力を一気に上げたA君の凄まじい蹴りが椅子にヒットした。もんどり打って床に転げるT氏。
「じょ、上司に手を上げるとは何事だぁ〜」
「手は上げてませんよ、上げたのは足です。‥‥もぅ、あの企画はしませんよ。どれだけ出演者やスタッフに迷惑を掛ければ気が済むのですか‥‥、あるとしたら僕が考えた企画『貴方に教えるあっちの世界』‥‥。どうです? 出演してみます?」
 ゆらり死神か悪魔を連想させるA君は転げるT氏に立ちはだかり、にやりと背筋が凍る恐怖番組の企画案を持ち出す。
 下から覗きこむ上司である彼は知った。A君は真剣(マジ)だ。あまりの恐ろしさに嫌々と頭を振るが、小さく呟く。
「けどけど、もう虫‥‥放しちゃった」
「貴様ぁぁぁ〜! すでにやっちまったのかぁ〜っ! 何を放した! 全部言え、すっかり言え、きっちり言え!」
「く、苦しいっ! 死んでしまう〜。話すから放すて‥‥あぁ、ダジャレてる場合じゃない‥‥」
 A君、T氏の胸倉をいきなり掴みガクガク揺すり上げる。それでも余裕なのかダジャレてるお馬鹿なT氏。もうどうしょうもない。
「クビになれ。サクっサックって飛んでしまえ!」
 A君の呪いの言葉に部屋の隅で怯えるスタッフ達も頷く。
「それは君にできない‥‥だろう。うぐっ、にしても非常に不味い。俺も我が身はとっても可愛い。と言うことでA君、またも任せた。頑張ってくれたまえ‥‥がくっっ」
「ほんっっと無責任にも程がある!」
 限界とばかりにT氏は態とらしく死んだフリをした。憎々しげに手を放したA君に向かって、別のスタッフが声を掛ける。
「あのぅ、A君。本気で不味そうですよコレ‥‥」
 A君はドアの向こうを彼らと共に覗けば、沢山の甲虫がウヨウヨと飛び這いずり回っている。とんでもない光景。しかし虫好きには堪らないとも言えようか。
「‥‥と、とりあえずこのまままではまた始末書モノだ。いつものことだがT氏の案は採用! 例にも漏れず追い込みスタッフと出演者、それを撮影してくれるカメラマンの手配だ! 道具も手分けして集めろ」
 苦虫をかむ潰した顔で的確に指示を飛ばすA君。やっぱり気苦労が多い彼である。

 ――数分後、数箱の段ボールを前にしたA君は笑いたいのか泣きたいのか、解らない表情で立っていた。
「お前ら、自分達が捕獲に加わらないからって‥‥なぜ、ちゃんとしたモノを集めて来ない?」
 そこにあったのは蜜の入った寸胴、捕獲網など、あとは出演者達が持ち込んだモノで賄う気だ。
 しかしもう時間がない。これでやるしかないのだ!

 注意事項:フロアを閉めきって逃げられないようにしています。相手は高級な昆虫も混ざってますので注意して扱ってください。
 昆虫情報:国産カブト虫からクワガタ、オオクワガタにたまた外国産のネプチューンオオカブト、ヘラクレスオオカブトなど高級甲虫がおよそ数十匹。そして嵩を増やすためにチャバネゴキブリやオーストラリア産の大きなゴキブリも混ぜてあります。
 これらは害虫ですが、あまり殺さないようにお願いします。またフロアを汚したり殺しすぎには罰金が待ってるかも知れません。

 ■出演者募集
 またしても急遽、企画となった『とにかく捕まえろっ! 3』。虫捕獲大作戦を決行します。わさわさと動き回る虫が平気な勇者(猛者)さん方を大募集します。ただし子供も視聴していることがありますので、あまり、色々と(←強調)やりすぎないようにお願いしますね。
 我こそは! と思われる腕自慢のあーた!! ご参加をお待ちしております。
 申し忘れておりましたが、彼らに同行してくださるカメラマンさん数名を含む撮影クルーも同時に募集しております。
 どうぞ奮ってご参加ください。

 ■内緒の注意事項
 沢山の人間が出入りするTV局での撮影のため、獣人は禁止。半獣人になられる場合、ばれないようにしてください。

●今回の参加者

 fa2431 高白百合(17歳・♀・鷹)
 fa2825 リーベ・レンジ(39歳・♂・ハムスター)
 fa2910 イルゼ・クヴァンツ(24歳・♀・狼)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa3822 小峯吉淑(18歳・♂・豚)
 fa3982 姫野蜜柑(18歳・♀・猫)
 fa4047 ミミ・フォルネウス(10歳・♀・猫)
 fa4087 結城 光(25歳・♂・竜)

●リプレイ本文


 毎度の会議室。スタッフA君にディレクターT氏を交え、今回参加してくれた八名の勇者が虫捕獲作戦の作戦会議を開いていた。
「‥‥まったく、虫取り企画なら普通に野山にでやればいいような気もするが‥‥。まぁ世界王者級の甲虫など日本の山ではお目にかかれないモノも混じってるみたいですけどね。しかし‥‥こんな尻拭いばかりだとそのうちやったもん勝ちで、なし崩し的に続きそうな気がしますね‥‥この企画」
「○月×日 はれ きょうはむしとりに、てれびきょくへいきます。おおきなかぶとむしと、きょだいなごきぶりをたくさんとりたいです、まる‥‥って感じの光景だねー。芸能人より夏休みの自由研究に困ってる小学生を集めた方が良かったんじゃないかって思いたくなるよ」
 イルゼ・クヴァンツ(fa2910)が冷めた目でT氏を一瞥すると同じように姫野蜜柑(fa3982)も同調。皮肉めいた二人の意見の通り、やった者勝ちだということは否めない。T氏の顔は思いっきり不満めいた表情になったが、否定のしようがなく珍しく言葉数も少なかった。
「まぁ、良いじゃねえか、楽しきゃ。おっと紹介が遅れたな、本業はマネージャーで今は俳優を目指す結城光だ、よろしくな。昆虫採集か‥‥ガキの頃はよくやったなぁ〜、こんな都会で貴重な体験できるとは思わなかったぜ、色々と楽しませて貰うな。勿論、虫に対して抵抗はまったくねぇ、ゴキにもだ。逆に殺してしまわないよう注意しねぇとなぐれえだぜ」
「アンニョン! 僕も抵抗はないですよ、っというか寧ろ虫は好きです! あの甲虫のウゴウゴした可愛さ‥‥カナブンやカブトムシが顔を拭いている場面だけでたっぷり二時間は楽しく過ごせますよ! まぁいきなり飛ばれるとちょっと驚くけれど、飛んだ先で上手く葉や幹に止まれず、ひっくり返ってウシャウシャしている姿の可愛さなんて‥‥もぅハァハァですよ」
 そこに入ってきたのは結城 光(fa4087)。ぶっきらぼうの物言いにクールな外見の彼であるが、今回の捕獲作戦に意外にもやる気満々、鋭い目を少年のように目を輝かせていると、これまた彼と同様にキラキラ輝く笑顔の小峯吉淑(fa3822)が、さも楽しげに挨拶と虫について熱く語り始め、なかなか止まらない。
「わ、私は、む‥‥虫さんには少し抵抗が‥‥。特にゴッキーはちょっと嫌かな? けど頑張ります! ところでリーベさんは何でそんな恰好をしてらっしゃるのでしょうか?」
「右に同じく。まぁ取り敢えずゴキの脅威は虫が平気な方が考えて欲しいかな。あぁ、コレ? コスプレだよ、日本で流行っていると聞いたからね」
「みゃ‥‥頑張る」
 手には大きなゴミ袋と捕獲網、腰には高価な虫かごで武装をし、早くも捕獲準備を整える高白百合(fa2431)が、ちょっぴり気弱そうなコメントと一緒に、時差ボケと寝不足気味で大あくびを繰り返すリーベ・レンジ(fa2825)のフワモコのハムスター耳への疑問を投げるが、あっさりとかわされた。そこにこぢんまりと入るミミ・フォルネウス(fa4047)。人見知りがちな少女だが、虫取りが出来るとやってきた彼女は皆に感化されたのか小さく自分の意気込みを語った。
 そんな彼らとやや離れたテーブルに座りA君とその他のスタッフを交えてスモーキー巻(fa3211)が、念密な打合せを行っている。
「僕は持ち込んだ材料や現場にある物を使い色々な仕掛けを作りますよ。自分で捕獲するつもりは多少ありますが、メインはあくまで他の捕獲担当のサポートで行きます。待ちトラップは映像的に長そうなのであくまで保険という形ですが」
「では、その手で行きましょうか。‥‥はいは〜い、そろそろ自己紹介&批判&お話合いこの辺で終了っす。只今決まった作戦を実行します! 案はスモーキー巻さんの『攻めのトラップ』を制作するっす。集めるのはこの部屋、各自、個々にある道具か持ち込んだものでお願いします」
 メガホンを手にA君の指示がビシバシ飛び出すと、ガタガタと机を片づける音や色々な会話が飛び交う。
「はいはいー、私の方の案を説明するよー。役立たずの道具の中に蜜があるからこれを使うのか、よし。まず‥‥これこれ楽屋の窓に掛かっていたカーテンを壁に‥‥っと、あと大道具スタッフから奪った‥‥え〜コホン、借りたテープで止めていこう。次に蜜を塗って‥‥っと。これで終了! 皆の準備が終わったら照明さん、電灯の数を減らして薄暗くしてねー」
 ちゃきちゃきと姫野は皆を誘導しながら自らも動く。手に持つカーテンはどこから持ってきたのか許可を得たのか知らないが、壁に貼り付けそこに用意されていた蜜を手で塗りたくりだした。最後にいつの間にか仲良くなった照明さんに指示を出し終わり。顔に似合わずというか似合っているというのか、なかなかワイルドに事を済ませていく。
 その近くで、部屋を極力汚さないように自分で持ち込んだブルーシートを使い対処しながら、スモーキーが用意されていた板等を壁に貼り付けだす。綺麗に補強されたところへ、黒糖とビールを一昨晩かけて煮込んで作った特製の蜜が入る寸胴を手にしたリーベが刷毛を使い細かく塗っていった。
「どっかで得た知識なんだが、マーガリンを塗ったところはゴキは上れないらしいぜ。滑るらしい。こんな地味ですまねぇが、まぁ、この後の捕獲についてはそこそこさせてもらうとするぜ」
 結城の手により、ねっとりとしたマーガリンまでも壁に加えられ凄いことになりだした。虫達が逃げられないように密閉された部屋に甘いのかしょっぱいのか解らない臭気が漂い出す。
 匂いに釣られてきた虫達が早くも部屋に現れガソゴソと壁にへばり付き出す。
「い、今の私には隙はありません。さぁ、どこからでもかかってき‥‥あ! ゴッキー!! に‥‥逃げちゃ駄目ですか?」
「駄目です! 僕だってこんな恰好をしているのだから! ということで準備が出来たようなので捕獲作戦決行です! と、とにかく捕まえろっ!」
 ぐっと気合いを入れたトコを見せる高白の足下をかそこそと横切ったゴキに驚いて飛び上がり、この一撃でもう半ベソ気味だ。そんな彼女の背後から防虫ネットがついた帽子にビニールジャージに蜜をたっぷり擦り付けられた姿のA君が叱咤激励をし、作戦実行の合図を出した。それとともにバチンッとフロアの電気が消され、この部屋の一部だけ必要最低限の灯りだけが点った。
 とにかくこれで捕獲開始の幕が切って落とされたのである。


「みゃ〜凄いのぉ‥‥」
 辺りが暗くなることを予想していたスモーキーの指示により、カメラには赤外線とスタッフの手に懐中電灯が準備され、その灯りのみでフロアと部屋を照らしていく。トラップの仕掛けられた部屋にぞろぞろと集まりだした虫ではなく、まだ廊下などをうろつく虫の追い込みと捕獲に乗り出した彼ら。元気良く足下を走ったり飛び交う虫達に恐れおののきながらも果敢に勝負を挑み出す。
 光りを反射し居場所を知らせる蛍光塗料が塗られた麦わら帽子を揺らしながら黒シャツ短パン姿のミミが意気揚々、虫取り網を振り回し虫を捕まえては軍手をはめた手で掴み籠の中に入れていく。そんな中、
「う、うわぁ!」
「はみゃ?! ご、ごめんなさいなの‥‥えっとリーベさん」
「だ、大丈夫だ、ミミ殿。さて私も出来るだけ事態の収拾をつけるべく動こう。まずはあなたのお手伝いからだな」
 不覚にも前が見えづらくミミは虫と間違えリーベに網を被せてしまった。
 慌てて詫びを言う彼女にリーベは付け耳だと言い張ったハムスター耳を動かし、手伝いを申し出ると、彼女は羞じらいながらもこくりと承諾の頷き共に虫の捕獲をし始めた。
 彼らの傍にいたイルゼは室内ということを考慮し、虫網を使うのを控えてA君のジャージに付く国産クワガタやカブト虫等の甲虫に狙いを絞った。慎重に左手に被せた軍手を近づけ、逃げるのを牽制しながら誘導し右手に持った籠で虫を入れていく。なかなか頭を使ったいい作戦だ。そんな彼女と裏腹に、
「と、とやぁ〜っ! きゃっ、これはゴッキー‥‥、いやぁ〜あっちに行ってくださいぃぃ〜」
 無意味に華麗な体捌きで舞いながら高白がゴミ袋へ虫を追い込む。しかし大きな瞳はすでに涙目となり、捕まえてはいるものの微妙に逃げ回っているようにも思えた。流石にその姿を見かねた結城が柔らかい穂先の箒を手に現れた。
「どうもゴキが苦手な嬢ちゃん達もいるみたいだから、俺はゴキを中心に捕まえてやる。家だとスリッパで一撃で仕留めるところだが、どうも罰金制度があるみてぇだ。タダでさえ少ない生活費を減らすわけにもいかねぇ。穏便かつ地道に生け捕りだな‥‥あ! こ、これかオーストラリア産のヨロイモグラゴキブリか!」
「うぷぷ! 気持ち悪いっ」
「こ、これが世界最大級のゴキなんだ‥‥うわ〜ぁ‥‥。あ! そのそばにアトラス大カブト! これは凄い角だぁ」
 ブツブツ言いながらゴキをペイペイと穿きだし、彼女が分別した通りにゴミ袋の中に入れていく。と、モゾモゾと動く物体を発見。よく見れば芋虫型のゴキだ。結城は初めて見る変わった形のゴキブリに少年のように目を輝かせた。そんな結城の声に足下に細心の注意をひきながら姫野とスモーキーが興味深げに覗く。見た直後あまりのグロテスクさに二人とも引き気味だ。しかしその傍で餌を食べている鬼のような二本の角が生えたカブト虫を見つけたスモーキーの表情は一転、なんとも楽しげに目を輝かせた。
「みなさーん、こちらにはヘラクレスオオカブトがいますよ〜、このカブトは南米NO1、また世界最大として有名なのです! 近年ではコーカサスオオカブトの目立ちっぷりに押され気味ですけど、英雄の風格ばっちり‥‥。あぁ〜、腕と角を上げての威嚇ですか? ん〜良いです〜! 痺れちゃうっ」
 この機会とばかりにパチパチとカメラのシャッターを切っている小峯、自前で用意したプラスチックの水槽型虫籠に素手で掴んだ虫達を丁寧に入れていく。カメラさんやスタッフ出演者が傍に居ようものなら足止めをし、手にする虫の体長や特徴やらをハイテンションで詳しく説明し始める。虫好きの彼にとってここは天国といったところか。
「え〜、こちらがチャバネゴキブリ。一般の民家に住み着いており、皆にもお馴染みの虫ですね! メスが卵鞘を尾部にぶら下げて保護するのが特徴で‥‥」
「そ、その虫に関してはそこまで詳しく説明しなくてもいいから‥‥」
 割り箸で丁寧に摘んだゴキブリをカメラの前にだし説明し始める頃、流石にA君が止めに入りここはカットとなった。


 ようやくフロアの虫達が捕獲作戦に使われる部屋に集まりだし、大人しくカーテンや蜜の塗られた木にしがみつき食事を楽しみだしている。
 一網打尽とばかりに姫野とリーベがカーテンの裾を掴みふんわりと空気を含ませながら丸めた。大部分の虫達の捕獲の成功。またスモーキーの案である木にしがみつく甲虫達は結城と小峯が丁寧に取り、残っていないか念入りのチェック。こちらもきっちりと終えた。
 さてはて残るはチャバネゴキブリ。仲間を捕らえられ逃げ場のないゴキ達をミミが網をフリフリ一生懸命追いかける。
「さ〜、もう壁なのにゃー、観念するみゃ‥‥きゃぅぅ!」
 ゴキに向かって不敵な笑いを浮かべ網を下ろしたミミに逃げ場を失ったゴキは必殺の空中殺法。彼女めがけて飛んできた。大慌てで背のイルゼの元に逃げ込む。するとイルゼは咄嗟にゴキを籠キャッチ。大した反射神経である。
 そろそろ虫達も分別通りに大きなプラスチック容器に片付けだし、A君が安堵の溜め息と共に最後の活を皆に入れる。
「あと一息で締めといきましょうか! 残っている虫の捕獲とチェック、そして後片付け‥‥。そうそうアホディレクターから今回の件のお詫びとして皆様に金一封をお渡ししたいそーです。どうぞ最後まで残ってくださいね〜」
「まぁ言ってみるもんだな、最後の一仕事、頑張っていこう」
 番組開始前にそのことを口に出したイルゼの案を通しA君が迷惑料とばかりにT氏を脅しせしめたのだ。なんとも悪人スタッフと思うが今までのT氏の悪行から考えれば可愛いものである。
 聞いた七名は嬉しげに喜んだが、一名だけは部屋の隅で膝を抱えてうずくまりブツブツ呟いている。
「あぅぅ‥‥パパ、ママ‥‥黒い悪魔が出現しない北海道に移住しようよぅ‥‥」
 余程ショックだったらしい高白‥‥なんとも気の毒な話であった。