いろはに諺 つの巻アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
2.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
2人
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期間 |
08/13〜08/17
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●本文
サブタイトル:実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
タイトル通りの教育番組である。いや、そのはずだ。何と言おうと。
いつもの通りプロデューサーの指示に従いスタッフ達が運び込む小道具、衣装はイベントパーティーでもするのではないかと間違えるほどの面白グッズばかりである。
そう、この番組の意図は楽しみながら諺を学ぼうというもの。
和風なセット、ちょっと前から登場し始めたヘラジカがモチーフのマスコット『マロ君』もスタジオに一番乗りをして準備は万端。
あとは出演者と司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
さぁ、今回も賑やかに放送開始である。
■出演者募集
いろはに諺の出演者を募集します。
楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。
■演出
その1 諺とは関係なく「つ:濁点可」の文字を頭に使い面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となって、体を張り文字を作って頂きます。
その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントなど、お願いします。
ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうのも良いですし、創作した諺の披露や、体を使ったスタントでコントもオッケー。
とにかく一番大事なことは、皆様がワイワイ楽しんで番組を作ってくださること!
コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。
最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第!
用意された諺は、全て使わなくても大丈夫です。
■お題
つ
「月にむら雲、花に風」
意味:良い事には邪魔が入りやすい事。
「月夜に釜を抜かれる」
意味:凄く不注意な事。
「爪に火を灯す」
意味:切り詰め、とてもケチな生活をする事。
●リプレイ本文
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番組開始の三十分前、スタジオ入りした出演者達が銘々、ネタ合わせや段取りをスタッフと打ち合わせしている中、未だ楽屋の中のHIKAGE(fa1340)とユラお姉さんこと豊浦 あやね。いつになく神妙な面持ちだ。
「今回、ウチはディレクターさんと見学するため収録に参加できへんのや。やから突っ込み係をあんさんに任せまんねん。そや、突っ込みの仕方をちびっと伝授しまひょ」
「そ、そうなんですか?! 解りました。で、出来る限り頑張ります」
「あのぅ、そろそろ撮影のお時間だそうです」
差し出された豊浦愛用のハリセンと一緒に突っ込み作法も伝授されるHIKAGE。
さてはて、今回のお題文字は突っ込みの『つ』。しかし突っ込み担当の豊浦が不在という形だ。今まで以上に波乱の予想有りで撮影は開始された。
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毎週、六時にチャンネルを合わせれば映し出されるタイトル。いつものように元気よく子供の声で読み上げられると画面は切り替わり、司会者&出演者が映し出された。
「やってきました。いろはに諺の時間、司会者の郭氏文令明です。御相手はお馴染みと言いたいのですが、ユラお姉さんはお休みで、代わってこの方、HIKAGEさんが突っ込みです。『杖とも柱とも頼み』の諺の通り心底、頼りにしてますので、頑張ってください」
「はい、ユラお姉さんに代わってこの大役をやらせていただきます! という事で、最初の一言は「つ」。突っ込むぜー!」
「というわけで、いつもと違った組み合わせでお送りするのだ。これはおいらにとって、すごく都合がいいのだ。あ、な、なんでもないのだっ」
毎度、淡々とした挨拶で司会を務める郭氏文 令明(fa0243)は豊浦愛用のハリセンを手にするHIKAGEへ振った。嬉しくていつも以上にテンション高めなHIKAGEは豊浦のウォーミングアップスイングを真似て、思いっきりハリセンを振るうが、どこか頼りない。
そこへ愛用のマイクとお馴染みの右腕の腕章『しかいしんこ〜司会役切望中☆』の付いた腕で、彼らの真ん中に捻子入りながら苺(fa3120)が一言。彼らの顔を見て、じゅるりと涎をたらすが、すぐにハンカチで拭う。
「‥‥さて今回のお題は『つ』! 『朔日ごとに餅は食えぬ』なのだ。つまり朝昼夕飯メニューの話。えっと、おいらのメニューはお昼がチキンカツサンドで朝はツナサラダ。昨夜はツミレ鍋でお昼はトリのから揚げ‥‥、トリ肉が大好きで毎日食べても、まったく飽きないのだー、けど食べ過ぎはよくないから一日一回に控え、「朔日ごとにトリは食える」なのだ!」
と、苺は昨日の昼食まで指折り数えながら食した物の話し出す。段々と青ざめる郭氏文とHIKAGE。
「そ、その諺はいつも良い事ばかりはないという意味で、正月一日に餅を食べたからといって、毎月一日に食べられるとは限らないという事。そんなに毎回、食べてたら諺の意味無いやん!」
ぱすんっ、
「痛いなのだー。これでも遠慮してるのだ!」
「わ、解りました、マイお姉さん。その話は後々に聞きます‥‥」
「え〜なんでなのだ?! もごもご」
おシルシ程度の突っ込みを入れるHIKAGE。こんな甘っちょろい一撃など効かない苺はHIKAGEに食いついていく。慌てて止めに入るの郭氏文にもプンプン怒りながら抗議するが、背後からいきなりモフモフなマロ君の手で口を押さえられようやく終わった。
「で、ではここで私からの諺を、世の中は『綱渡りより世渡り』と言いまして、古来から綱渡りは危険な技で簡単に習得できません。しかしその綱渡り以上に世渡りの方が難しいという意味です。生きる為に危険な事までしなければならない‥‥なんとも矛盾。テレビの前の良い子はそんな危険な事をしてはいけませんよ。そんな事をせず『追従も世渡り』という諺があるように人にへつらうのも一つの手ですね。さてそろそろ準備は良いですか? では番組開始です」
苺の視線に冷や汗をかきながらも上手く纏め上げた郭氏文。やはり微妙なバランスで番組が始まった。
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「こんにちは、僕達はウィル&タッチーだよ。この番組のためにコンビを組んでみたんだ。よろしくね」
帯刀橘(fa4287)がカメラに向かって愛らしく微笑みながら手を振る。その隣で緊張で表情の硬いウィルフレッド(fa4286)。なんとまだ八歳という子役年齢の彼らはコンビを結成し、お題文字を使って解りやすくネタ諺を披露しようというのだ。
「お題は爪に火を点すだ。ではいってみよう! ‥‥あぁ、暗いなー、明かりはないのか?」
彼らが画面向こうに挨拶をしている間に手早く組まれた今にも崩れそうな家の絵が描かれた簡易セットを前に、ウィルフレッドが襤褸布を繕いながらぼやきだした。そこにちゃちゃっと可愛らしく女装をした妻役を務める橘がパチンパチンと軽快な音を立ておもむろに手の爪を切り始める。その様子に恐る恐る声を掛けるウィルフレッド。
「ねぇ、何してるの?」
「うん、灯りの代わりに爪に火を点そうかと思って。そのまま付けたら危ないから切って灯そうと思ったんだ」
にっこり微笑み答える橘に呆れ顔でウィルフレッドは切り返す。
「それは諺の爪の先に火を点すだよね? その意味は切り詰めてとてもケチな生活をすることで、由来は油や蝋燭を手にする事が出来ずに自分の爪先に火をつけて灯りにする事だって解ってる?」
「そんなコトしたら火傷しちゃうよ」
「いやいや‥‥そういう意味ではなく、この諺はそれくらい貧乏の意味。それがケチケチ切り詰め生活というものなんだぁ!」
「これがそうなんだ! うわ〜、なんかすっごく極貧になった気分だ‥‥」
橘の繰り出すボケに対してきっっちり突っ込みを入れるウィルは実践とばかりに自分の爪にポッと火を灯す。実は仕掛け付きなので熱くはないのだ。そんな二人のやり取りの前にテロップ『よい子は真似しちゃ駄目だよ』、が流れ終了した。
●
「この番組を視聴してくれているみんなと同じくらいかな? ウィル&タッチー君たちは。とても可愛いくコントを披露してくださいましたね。さて、お次は‥‥ま、マイお姉さん? 司会もなさらず何をしてらっしゃるのですか?」
「おいらもひとつネタをやろうと思って仕込み中なのだー」
郭氏文が番組進行をしていく横で目に付いた苺に話しかける。イソイソと大きな積み木を重ねていく彼女は受け答えをするが手を休めることはない。
「そ、そうですか。なら頑張ってくださいね。では、お次はパペットで諺を学ばせてくれる‥‥」
「え? 郭氏文はん、いつも以上に素っ気ない対応やんけ!」
ぽすんっ、
そんな訳の分からないところで突っ込みを入れるHIKAGE。叩かれた郭氏文は、一瞬何事かと目を見張る。
「そこって‥‥突っ込むところなのでしょうか? というか、それはHIKAGEさんのボケ?」
「はぁわ、ち、違った?! そ、そうかも‥‥えぇ、ボケですボケ‥‥」
「ん〜流石に付け焼き刃‥‥。つまりはその場凌ぎで慌てて身につけたものは、すぐにボロが出てしまい結局駄目だという事ですね。その突っ込みではユラお姉さんには及ばなかったようです」
すぱーん!
突っ込みに突っ込み返す荒技をみせた郭氏文にたじろぐHIKAGE。しどろもどろのHIKAGEの手からハリセンを奪うと豊浦並の鋭い一撃を郭氏文は繰り出した。伊達に豊浦の隣に立っていたわけではない。
「あぅぅ〜『使っている鍬は光る』と言うけれど、使っていないとやはり無理。光らないですね〜。ショボ過ぎてユラお姉さんどころか郭氏文の突っ込みとも『月とすっぽん』だ‥‥。とほほ」
ひとつ呟くと床に突っ伏するHIKAGE。それを見届けた郭氏文は舞台袖でパペットを手に出番を待っているHAKASE(fa2600)を呼んだ。
「付け焼き刃の知識でも使っている鍬は光ると信じて、日々ネタ作りに力を尽くしているHAKASEでーす。今回も恙なく続けられるよう慎んで頑張りマース。ではスタッフさーん、テロップヨロシク! ツルっとカメっと」
今回用意したパペットは「鶴は千年、亀は万年」に因んで赤い頭をした鶴の「ツル君」ともっさり甲羅に苔の生えた亀、「カメ君」。胸前で二つの人形に毎度のキメポーズ。
「夜遅くなっちゃたなぁけど畑仕事を終わらさないと‥‥あ?! こ、これは金の釜。『月夜に釜を掘り出す』だね! ふふ、思いがけない幸せとはこのことだ」
右手に付ける鶴を上下に首を振らせ嘴で穴を掘る動きをさせた後、何かを見つけたように羽根で物も包むような仕草をさせた。
「よし、畑仕事を早く済ませよう。釜はここに置いて‥‥」
鶴を喜びの表現をさせるもすぐに続きとばかりに穴を掘る仕草。そこに通りかかった風の左手にはめるカメ君が登場。
「あ! 金の釜。鶴君たらこんな貴重な物を置きっぱなしにしてるのか。まさに『月夜に釜を抜かれる』。鶴君は不注意だな。そしたらこれを盗んでツル君の良い事を邪魔しよう。『月にむら雲、花に風』だな」
亀に何かを持たせる動作をさせて背後に回す。そこでいったん、背後に隠している画用紙に書いたHAKASE自作の『数年後』と書かれたテロップを取りだし。鶴と亀の人形に持たせた。
「あれからツル君は爪に灯を灯す極貧の生活を送ってるそうだ。僕の生活とは月と鼈だな。悪いことをした。そうだ、釜を持って謝りに行こう」
悩むように短い手を組ませ登場させた亀。そこでテロップ『月日変われば気も変わる』が流れ、HAKASEは背中に隠していたツル君を再度、胸前に出しカメ君と対面させた。
「おや、カメ君、どうしたんだい?」
「ごめん、何年か前に君の金の釜を盗んだのは実は僕なんだ」
「そうだったんだ。てっきりまた埋めてしまったのかと思ってたんだ。謝って返してくれるのならもういいよ。『罪を憎んで人を憎まず』さ‥‥。ツルっとカメっと!」
おそるおそる盗んだ物を返すカメ君、ツル君が釜を受け取り、最後にキメポーズでお題コントが終了した。
「罪を犯す者は罪の奴隷なりって言葉もあるし、つい出来心で悪い事をしちゃった時はちゃんと謝ろうねー」
最後にHAKASEはひとつの教訓を話すと、ぺこりと頭を下げた。
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「さぁ、今回のトリはこの方達です!」
郭氏文の紹介と共に現れたのは愛らしい容姿の霧隠・孤影(fa1010)とオドオドとした表情の真田・勇(fa1986)。
「どうもー東海ドロップスの霧隠・孤影ですー」
「声ゆu‥‥げふっ何するっすかぁ〜」
まずは自己紹介。だが真田は挨拶もそこそこに孤影の拳を食らう。しかもグーだ。
「あんたは芸人でしょーがーです」
「いや‥‥それは、ちが‥‥いえ、はいそうです。うぅっ‥‥げ、芸人の真田・勇です」
孤影に真っ向から職業を否定され、真田は涙目で訴えるも再度固められた拳に戦きガクガク首を上下させて認めた。それに満足したのか孤影は話を切り替える。
「さて勇君、実は僕、忍者の末裔なのです」
「‥‥は? ってか、僕ら姉弟っすよ? そんな話は聞いた事ないっすよ」
「この通り秘伝の巻物もあるです」
「あのぅ〜僕の話聞いてます?」
「さて内容といいますは‥‥」
「うわぁ、無視‥‥ぐふっ! だからグーはヤメテっす」
真田の言う通り実はこの二人姉弟。孤影は勝手に忍者の末裔だと思いこんでるらしく、弟の突っ込みをいとも簡単にスルーした上、またも鉄拳を浴びせる。ぶっ倒れた彼を横目に握った巻物を広げて話を進めていく。
「黙って聞くです、まずは忍者孤影ちゃんテーマはゴスペルです」
「おかしくないっすか? それ忍者とは関係ないじゃないっすぁ! もう無茶苦茶っす」
「そういう無茶苦茶も含めて秘伝なのです。あと忍の里に戻れと書いてあるです」
「はぁ? 何を唐突に‥‥それは実家からっすか?」
なんとも姉の不思議話に振り回される真田。眩暈を起こしそうだ。それでも話を聞く健気な弟である。
「それは地球からちょっと先の芸忍惑星です」
「いや、僕達の実家は東海地方で両親もそこに居るっすよ! それにどうやって宇宙へ行く気っすか!」
「すぃーって泳いでです」
「それは空気ないっすから無理っす」
「やる気の問題です!」
「あのぅ、やる気でだけで理屈を曲げないでっす!」
巻物を脇に挟み、泳ぐ動作を見せる孤影に力無く突っ込みを入れる真田。しかし姉はなんのその。またも不思議ちゃん空間を炸裂させる。
「所で‥‥今回はつの巻っすけど? 話がずれまくってません?」
「月夜に釜を抜かれる‥‥ふふっ! 最後だと思って油断したらダメです」
最後の最後に話のズレに修正を掛けようとする真田に向かって、孤影は隠し持っていた鉄アレイを握りしめ渾身のアッパーを浴びせる。傍若無人すぎだ。
流す涙と共に綺麗な放物線を描きながら真田の身体は、苺がようやく積んだ積み木、達磨落としへ凄まじい音を立て着地した。
「あうぅ〜、真田さん〜なんてコトするのだぁ。この突っ込みハンマーで、達磨落としを成功させて番組を終わらせよーと思ったにぃ〜。月にむら雲、花に風なのだ。せっかくの良いところを邪魔されたのだー」
目を潤ませ強引に諺を絡めながら訴える苺だが、とうの真田は伸びてしまっている。やはり、始まりの時に見越した通り、結果、壷に填ってしまったのだった。収拾を付けようと動き回るHIKAGEと郭氏文を横目に豊浦がこっそりカメラの前に立ち一言。
「まったねー」
可愛く手を振った。