いろはに諺 ねの巻アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 易しい
報酬 2.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/20〜08/24

●本文

 サブタイトル:実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
 タイトル通りの教育番組である。いや、そのはずだ。何と言おうと。
 いつもの通りプロデューサーの指示に従いスタッフ達が運び込む小道具、衣装はイベントパーティーでもするのではないかと間違えるほどの面白グッズばかりである。
 そう、この番組の意図は楽しみながら諺を学ぼうというもの。
 和風なセット、そして大きな筆を持ったヘラジカがモチーフのマスコット『マロ君』もスタジオに一番乗りをして準備は万端。
 あとは出演者と司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
 さぁ、今回も賑やかに放送開始である。

■出演者募集
 いろはに諺の出演者を募集します。
 楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。

■演出
 その1 諺とは関係なく「ね」の文字を頭に使い面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となって、体を張り文字を作って頂きます。
 その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントなど、お願いします。
 ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうのも良いですし、創作した諺の披露や、体を使ったスタントでコントもオッケー。
 とにかく一番大事なことは、皆様がワイワイ楽しんで番組を作ってくださること! 
 コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。 
 最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第! 
 用意された諺は、全て使わなくても大丈夫です。 

■お題
 ね
「寝た子を起こす」
意味:せっかく静かに収まった物事を余計な事をして蒸し返す事

「猫を追うより魚をのけよ」
意味:何か問題が起きたら、その場凌ぎではなく根本から正すべきだ、という事。

「念には念を入れよ」
意味:注意した上に、更に注意をして間違えがないか何回も確認をした方がいい事。

●今回の参加者

 fa0243 郭氏文 令明(20歳・♂・鷹)
 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa1340 HIKAGE(18歳・♂・小鳥)
 fa1986 真田・勇(20歳・♂・猫)
 fa2722 如鳳(49歳・♂・亀)
 fa3120 (14歳・♀・狼)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa3599 七瀬七海(11歳・♂・猫)

●リプレイ本文


 毎週、六時にチャンネルを合わせれば映し出されるタイトル。いつものように元気よく子供の声で読み上げられると画面は切り替わり、司会者&出演者が映し出された。
「はい、今週もいろはに諺のお時間がやってきました。司会を務めますのは私、郭氏文令明と愛らしいお姉さん達‥‥おや? 今日のお二人は随分と淑やかで‥‥『猫被り』ですか? この諺の意味は本性を隠し、大人しそうに振る舞う事を言います。彼女たちの楽屋から聞こえてくる騒ぎがまるで嘘のよう。そして誰かさんが覗いていた事を知らない振りをする私も猫かぶりですね‥‥あいたた」
 いつも通り郭氏文 令明(fa0243)のしっとりと低音で始まるいろはに諺。なかなか上手い言い回しをする郭氏文だが、そうは思っていない豊浦 あやね(fa3371)と 苺(fa3120)。真ん中に挟んだ彼の足をカメラに隠れ、ぎゅっと体重を掛けて踏みつけ挨拶を始める。
「はいっ皆ぁ、こんばんはー。今週も始まりですよ。毎日の暑さで『ネジが緩み』かも知れないけど‥‥。この時間は私達と一緒にしっかり勉強しようね。一週間のお盆休みを経て復活のユラお姉さんと文字ぃ君から司会に返り咲いたマイお姉さん。勿論マロ君やみんなも一緒だよ〜」
「ね〜、おいらはやっぱり司会に慣れちゃってるから戻ってきたのだ。改めてマイお姉さんをよろしくなのだ。そゆわけでお姉さんの『ね』!」
「ね‥‥ね、すみませんが足を退けて頂けませんか? い、痛いです」
 ぐりりり〜〜!
 なぜだか標準語で話す豊浦も愛用のマイクにいつもの腕章『ネコ耳注意報!』をつける苺も表面上、笑顔だが表情がどこか硬くこめかみの血管が微妙に浮き出ている。そう怒っているのだ。彼女たちの話す合間も郭氏文は足を踏まれっぱなしどころか、更に力を込められ強くねじ回される。
 痛みに涙が滲む思いの郭氏文は、彼女達が組むと最強だということを身をもって知ったところで番組が開始である。


 パーティーなどでお見えする猫の耳を模した縫いぐるみ付きカチューシャを頭に付けて参上したHIKAGE(fa1340)。もちろん彼だけではなく一同、この番組のマスコット、ヘラジカのマロ君(如鳳(fa2722))までもネコ耳を付けている。ただ一人、付けていないのは、自前のネコ耳を付ける可愛らしい子猫(七瀬七海(fa3599))だけ。
「猫だらけだみゃー!」
「ほんと! 猫だらけネコ耳の『ネ』〜っす。まさに萌えの王道、腐女子なお姉さんががっぽがっぽ! ねへへぇぇ〜っ」
「さ、真田さん、涎、涎!」
 両手を顔の横に翳しポーズを決めるHIKAGE。その隣に真田・勇(fa1986)。
 なにやら異様なテンションで想像を膨らます彼は口元が緩みきっている。HIKAGEはやや引きながらもハンカチを手渡す。
「ありがとう〜HIKAGEさん! そう、これどうっすか? ハードコアネコ耳愛好家もメロきゅんっすよねーv」
「え? 表現が独創的すぎです、真田さん。それに鼻血も拭いた方が良いと思います」
「あ、さっきからなんかしょっぱいと思ったら‥‥!」
 鼻から赤い筋をたらーり流している事への指摘を受け、ようやく気付く真田。手にしたハンカチでそれを拭う。なかなかの強者だ。HIKAGEは彼の芸といえるか解らないが、その素晴らしさにインスピレーションを感化され尊敬の眼差しを送った。そこに毎度お馴染みの殺気。
「よい子が見ている前だというのに‥‥、いい加減にしなさいっ!」
 ばしっ! ばしっ〜ん!
 豊浦のハリセン殺法二連打が彼らの頭に決まる。だがやや手加減有りのおかげでいつもよりは痛みが少ない。
「あぅ、痛い‥‥『猫を追うより魚を退けよ』っす。ハードなネコ耳萌えの方を退けるより、根本的に皆でネコ耳を付けて萌えた方がって考えただけっすぅ〜。それに今日のユラお姉さんは標準語ばかりで変っす! え、それは禁句? いや、そんなに怒らなくてm‥‥」
「一言多いわ! それこそ『猫を追うより魚を退けよ』だ! 成敗」
 ずばしぃっん!
「うぅ‥‥ユラお姉さんは相手の出方次第で、猫から虎のように荒々しく変わるっすね‥‥ガクリ」
 汗だくになりながら取り繕う真田に豊浦は容赦無しの一撃。さっきと打って変わる凄まじい炸裂音が響いた後、無惨に床に突っ伏する真田の姿が虚しくそこにあった。
「あぁ、大丈夫かな、え? ‥‥時間がない。解りました。ではここで何回か取り上げられている『猫を追うより魚をのけよ』を題材にしたお題をひとつ‥‥」
 真田の容態を気にするHIKAGEだが、ディレクターの合図で涙を飲み、『ユラお姉さんの凶暴さと突飛な標準語を取り除く為には、どうしたらいいんだろう?』と書かれていた自作のフリップを画面に掲げた。
「僕はきっと幼少期に何かあったに違いないと考えまして、ユラお姉さんの地元を訊ね、原因を突き止める試みをしました! ではVTRスタート」
 HIKAGEがカメラ目線でキューを出すと画面が切り替わり、スタジオにいた時、同様に白タイツ姿の彼が町を練り歩く姿が映し出された。周囲から浴びせられる好奇な視線もなんのそので豊浦の実家傍で近所の方々や恩師に聞き込み調査開始。かなりお転婆娘だったことが伺え、当時の愛らしい写真や小学校時の文集までも拝見させて貰っている。その時はまだ関西弁だったようだ。
 次に初恋の相手だったという青年の身体のみが映し出され、印象や思い出などが清潔感溢れる声に乗って語られていき。最後に今の彼女へのメッセージまで貰ってきた。それは豊浦にとってハタ迷惑極まりない。そんな羞恥プレイと思えるようなVTRをHIKAGEは流し続けた。
 段々と豊浦の頬が引きつり、歪な笑みが浮かんでいる。
「ユラお姉さん、こんなに思って下さる方がいるんだから、もっとお淑やか&関西弁になろうよ! ユラお姉さんの標準語ってなんか不気m‥‥じゃなかった。みんなは優しく関西弁なお姉さんが大好きさ」
 ようやくVTRが終わり映像がスタジオに返されると、HIKAGEは輝くような笑顔で訴える。もちろん豊浦がこの訴えを素直に受け止め、答えてくれるはずもない。
「言いたいことはそれだけ? ふっふっふ‥‥ひかげんのした事は『寝た子を起こす』。意味は、せっかく収まった物事を余計な事で再度、蒸し返す事だ! さぁ、そろそろ『年貢の収め時』、つぁぁ〜!」
 ずばしぃ〜〜んっ!!
 豊浦のハリセンが唸りを上げ、真田に見舞った一撃をはるかに超える強打をHIKAGEの頭に炸裂させた。
「あぁぅ‥‥ユラお姉さん‥‥ご、ごめんなさ‥‥い」
 真田に覆い被さるように倒れたHIKAGEであった。


「おいらもお題をするのだ! ネーベルカステンの『ね』! オルゴールは鳴ってこそなのだ。そゆわけで鳴らしてみよー」
 鬼王丸・征國(fa0750)のコントが始まる間を縫って苺が大きなオルゴール機を運び込み、麻呂君と一緒にネジを巻き鳴す。針が鍵盤を弾く耳に心地よい音が聞こえだし誰もが知っている曲が流れが始める。聞こえやすいようにと苺は愛用のマイクを近づけ音を拾った。
 曲が終わってもまだコントの準備が整わないのか、再度マロ君がモコモコの手でネジを回し曲を流す。だがおかしい。さっきとは全く違う曲が奏でられているのだ。
「なぜ、先程と違うメロディーなのでしょう?」
「ほぇ? この曲名は『神曲』なのだー」
「それはオルゴールの形の事で、曲名ではありません」
 不思議に思った郭氏文が突っ込むがどうも意味を分かっていない苺は意気揚々と胸を張り答える。もちろん再度、突っ込まれる。
「がぅっ!? じゃあ神曲ってどーゆーメロディーなのだ!?」
 苺の問いに『神曲は叙事詩の事です』とテロップが走る。慌てた彼女は取り繕うように、
「そ、そうだったのか!? えとえと〜『念には念を入れよ』ってゆー諺は、同じ曲を流さなきゃいけないのに、違う曲を流してしまうような間違いを犯さないよう、何回も確認をした方がいいと教えてくれるありがたい諺なのだ。スタッフさん覚えておいて損はないのだー」
 またもテロップ、『その通り、オルゴールは何度、鳴らしても同じ曲しか流れません。また忘れ物が多い子は特に覚えておこう』と注意事項が流れた。


 最新の装置を使うため遅くなってしまった鬼王丸のコントが開始。
「諺を楽しく学べる原点回帰な感じで頑張るんじゃ。今回は『猫も杓子も大慌て』じゃよ。確か落語家の方のネタだった気もするんじゃけどなぁ? ‥‥うおぉ?! 炊きたての熱いご飯に突っ込まれたからって、そんなに大慌てで巨大化することもなかろう!」
 そこにCGで作られた巨大な杓子が大暴れし出す。カメラをガタガタと揺らす指示を受けているカメラマンが臨場感たっぷりに動かしている。
「みゃ? みゃ〜〜んっ」
 ひょいっと画面端から出てくる子猫。巨大杓子と強面の鬼王丸を見比べ、どっちが怖くないか天秤にかけること数秒。小さく鳴くと鬼王丸に掴まった。足下がふらつく演技をする彼は何とも複雑な表情を浮かべている。
 そこに大きく文字がバン! っと現れた。『これがホントの猫も杓子も大慌て』。
「なんで猫と杓子が大慌てするのじゃろう?」
「猫はとにかく、杓子は慌てることなどでしょうね」
 ふいに疑問の浮かんだ表情の鬼王丸。微妙な突っ込みを入れるのは郭氏文。そこに豊浦の諺説明講座が始まった。
「猫も杓子も大慌てと言うのは元は寝子も女子(じゃくし)も大慌て、もしくは若子(じゃくし)だった説があるの。つまり寝た子からお年寄りまで、女も男もみんな大慌てって意味。けどもうひとつ、禰子も釈子も(神道信者も仏教信者も)という説もあるのよ」
 教育番組らしい説明を淡々と行う豊浦。解りやすいようにフリップに纏められ、彼女の隣でマロ君がそれを捲り補佐している。
「そうか、その意味じゃったのか! 寝子も女子も大慌て‥‥」
「にゃ〜ん、そういう意味だったんですね。なら、これで若子です。寝子も若子も大慌て!」
「す、すご〜いトリックなのだー!!」
 鬼王丸にしがみついていた子猫がくりりっとトンボを切る。とたんに愛らしい猫から本来の姿である少年、七瀬の姿へと変わった。マジックだ。苺の歓声が上がった。しかしそれが違うことは内緒な話で、実は人目に付かない所に隠れて獣化を解いた上での繋ぎ撮りである。


「大掛かりなセットといえばこっちもっす! 熱湯風呂の『ね』。と言うわけでこれを用意したっす〜。誰かやりませんっすか? ‥‥あらら、立候補者なし? オイシイのに‥‥残念っす」
 豊浦の一撃からようやく立ち直った真田は、スタッフ達が用意した透明な風呂桶の中に張られた熱湯の前で嬉しそうに話している。
 皆の視線は言い出しっぺがやれとばかりに冷たい。しかし彼も入る気、満々なのか水着姿だ。
「解りました、僕が行くっす! ねぇ、やるから押さないでっすよぅ、押さないでっ」
 演技でややビビリな姿を見せつつ浴槽の縁を掴んで嫌々をしているが、背後を見れば誰も背中を押してなどいない。
「ちょっと、ちょっと! 熱湯風呂時は押すな、押すな! は、押せ、押せ! っていう芸人の基本じゃないっすか〜。これを押さなければ猫に小判、芸人に熱湯風呂になっちゃうっす。どんなにオイシくても押されなきゃ無意味っすよー!!」
「なら、お望み通り押してあげるのだー!」
 どぼ〜〜〜んっ!
 その真田の激論に苺が感化され熱湯風呂に押し込んだ。いうまでもなく茹り、真っ赤になる真田。豊浦とマロ君が渾身の力を込め大きな杓子で彼を押さえつける。まるで鬼だ。
「熱い! 熱い! 熱すぎっす!」
「あちちち〜! な、なにこれ?!」
 逃れようと熱湯の飛沫を上げ大暴れをする真田。足下で伸されていたHIKAGEがお湯を浴び目を覚まし悶える。
「芸人なら大人しく入っとけ」
「ぼ、僕は芸人じゃないっすよっ!」
「‥‥わしゃ、鬼王丸老人じゃ‥‥婆さんよ、いつもすまないねぇ。ところで孫の七海ちゃんやご飯はまだけぇのぉ?」
「それは言わない約束じゃよ、お爺さん」
「あのぅ、苺お婆さん。白髭を付けていたらお爺さんですが? おじいちゃん、さっき食べたでしょ。大きな杓子を使って三合も」
「そうじゃった。しかしこの賑わいは何じゃ、猫も杓子もじゃのぅ」
 やや離れたところから七瀬に手を引かれて歩いてくる老人姿の鬼王丸。素速く彼らの傍に立ち白髭を付けて合いの手を入れる苺。二人揃って伝統芸的ボケをかましたそこに七瀬が溜め息混じりで突っ込む。その後、目の前で繰り広げられている画をみてポツリと呟いた。
「熱いっす〜! 勘弁して下さいっす」
「あ。あぢぢぢっ! 何すんねんっ!!」
 ずばこーんっ!
 熱湯風呂は猫も杓子も上や下への大騒ぎを繰り返している。しかしそろそろ終演。真田は誤って豊浦にお湯を掛けてしまった事で、とうとう地に戻ってしまった彼女のハリセン制裁を食らった。
 そこににょっきっと画面前に現れた郭氏文。
「さてそろそろ終わりに近付いてきました。ふと私からの疑問をひとつ。猫に木天蓼。マイお姉さんに食べ物。彼女に嫌いな食べ物などあるのでしょうか? では最後に「寝る子は育つ」と言います。よく眠るのは健康な証拠。そういうい子は丈夫に育つという意味ですよ。皆さん、夏休みとはいえ夜更かしは程々にして早寝早起きを心がけましょう」
 ぺこりと頭を下げる。
「まったねー」
 お風呂の周辺から皆のお別れの挨拶。今回もてんやわんやのうちに番組が終焉を迎えたのだった。