とにかく捕まえろ! 4アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/25〜08/29
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●本文
「ぬひひひ〜〜‥‥」
「うわぁ、メチャ気色の悪い笑い方で近寄らないでくださいディレクター。それに僕はあなたともう関わりたくないんですっ」
「ふっふふ。何、純愛ドラマのヒロインじみた台詞を言ってるんだA君よ。そう言わずにまぁ今後とも宜しく頼むよ。で、僕はまたも良い企画が思いついたんだ」
いつもの会議室。懐中電灯を顔の下から照らしぬっとスタッフA君の目の前に現れた毎度お馬鹿なディレクターのT氏。
そんな彼に振り回され続けほとほと嫌気が差しているA君は、シッシッと手を振りすげなく追い払おうとするが、それは到底無理な事。
T氏の方から擦り寄り、背後霊よろしくとばかりに憑いてくる。もう呪われているとしか思えない。
「‥‥それで企画とは? 鹿も鰻も虫取りもナシですよ。もう予算はないし、その上、前回、あんたはポケットマネー出したでしょーが」
「そうなんだよぉ〜、アレは辛かった。ということで今回は大人しめにいこうと思ってね。ホラこれ、なんだか解るか?」
呆れるのを通り越し、やけくそ顔でT氏に対応するA君の前に差しだされた一体の日本人形。それは可愛い犬を連れた桃太郎だ。
「はぁ? も、桃太郎? コレが何か」
「何もへったくれもない。コイツは曰く付きの人形でな。その昔、お婆さんが家で昼寝してお爺さんが川へ洗濯に行くと‥‥」
「それはお婆さんが洗濯でしょーがっ! 何、寝てるんですかっ、お婆さんはっっ」
ずばしんっ!
「あたたっ! 何も叩かなくても‥‥。いや〜きっとうちの嫁のよーな人だったんだろうね」
「あっそ。まぁ、どうでも良いけど本題に入ってください。入らないのなら帰りますよ」
どこからか取り出した特大ハリセンと共に鋭い突っ込みを入れるA君。とっとと話を進めるように促す。
「ごめんよー。でね、この人形は局の傍にあるお寺の住職の親戚のお友達という方が寺前に立っていてさ、何故か呼び止められ、渡されたんだ。この人形がお寺にあるとどうにも眠れないから預かってくれっていって。‥‥その方、顔色が酷く悪いし、髪の毛も濡れたようにしっとりとしていたし‥‥。ついでに向こう壁がうっすらと見えるほど身体が透けてたしさぁ〜。本当に困っていたんだろうね。いや〜人助けをした」
聞いたA君は机に突っ伏した。もう言葉が出ない。
「どしたの? A君、お腹痛くなったのかい? お手洗いならドアを開けて向かって左側だよ」
「んなもん、言われなくても知っとるわ! あんた‥‥幽霊から何、貰ってきてんだよっ、馬鹿ディレクターぁぁ!」
ユサユサと揺すられようやく身を起こしたA君は、思いっきり怒鳴りつける。しかしT氏にとってはいつもの事、耳を塞いでやり過ごす。
そんな二人の横にいた人形がいきなりカタカタと震えだし、目に禍々しい光りが宿ると勝手に動き出した。
「‥‥オ前ラ、煩イ。クケケケッ!」
「うわぁ、電池も入ってないのに人形が動いたっ! どこからか遠隔操作かっ?! 最近の玩具は凄いなぁ」
「そうじゃないだろっ! どうみてもあんたが貰ってきたこの人形に憑いている幽霊が話てんでしょーが」
マジ顔でボケをかますT氏に再度一発ハリセンを見舞ったA君。
「‥‥お前、人形に取り憑いた浮遊霊だな‥‥微妙に悪霊になりかけているらしい。馬鹿ディレクターにくっついてTV局に入り込んだ、理由は何だ!」
「‥‥ココハ人ガ多イ。取リ憑クノニハ、モッテコイダ」
A君は人形を手に取ると力任せに揺すりさらりと暴言を浴びせる。人形も抵抗し勢いよく彼の手に噛みつき部屋を飛び出してしまった。
「い、痛たぁ! ま、不味い! このままでは大変な事になるっ、あんたがあんな変なモノを拾ってくるからだ! 今度こそ責任を取って貰う」
「俺も我が身はとっても可愛い。などと言ってられなくなったな。しかし俺では何も出来ない。霊感がありそなA君よ、任せた。頑張ってくれたまえ」
「またかよっ、前に僕が考えた企画『貴方に教えるあっちの世界』が本気の企画になっちゃたな‥‥おい。しかしお笑い事ではない、本気の幽霊対決。そう銘打つのはちょっと不味いな‥‥。そ、そうだ、貰って肝試しという形であの人形を捕まえて元の寺に返そう!」
部屋の隅で人形にビビリ震えるスタッフ達は、んだんだ、と頷く。
「‥‥例にも漏れず追い込みスタッフと出演者、それにお化けに変装して怖がらせる役をしてくれる出演者の手配だ! 道具も手分けして集めろ」
的確に指示を飛ばすA君。やっぱり気苦労が多い彼である。
――数分後、数箱の段ボールを前にしたA君は少し困った表情でそこに立っていた。
「お前ら、自分達が捕獲に加わらないからって‥‥出演者の命運が掛かってるんだぞ」
そこにあったのは怖いお面や白い浴衣。ざんばらのズラなどに紛れお守りにお札に数珠にお香。それと小道具の木魚など、あとは出演者達が持ち込んだモノで賄う気だ。
しかしもう時間がない。これでやるしかないのだ!
注意事項:お化け役の方は四名まででお願いします。あとは人形捕獲のほうへ、もちろんお化け役の方でも捕獲参加は可能です。
■出演者募集
またしても急遽、企画となった『とにかく捕まえろっ! 4』。何か曰く有りそな4の数字まで来ましたw
と、いう事で肝試し&幽霊捕獲大作戦を決行します。平気な勇者(猛者)さん方を大募集します。沢山の人が視聴していることがありますので、色々と(←強調)やりすぎないようにお願いしますね。
我こそは! と思われる恐がりやさん&怖がらせやさんに腕自慢のあーた! ご参加をお待ちしております。
申し忘れておりましたが、彼らに同行してくださるカメラマンさん数名を含む撮影クルーも同時に募集しております。
どうぞ奮ってご参加ください。
■内緒の注意事項
沢山の人間が出入りするTV局での撮影のため、獣人は禁止。半獣人になられる場合、ばれないようにしてください。
●リプレイ本文
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毎度の会議室。スタッフA君にディレクターT氏を交え、参加してくれた八名の勇者が幽霊捕獲の作戦会議を開いていた。
「某殺人人形も第4作目くらいから、急にデフォルメされ可愛くなるもんだって、お祖母ちゃんがゆってました。‥‥それはともかく本当にそんなのが逃げたんですか〜? 幽霊から貰ったってホントですよね?」
「どれも本当ですよ! ホラ‥‥この歯形。酷いもんでしょう? あの人形から放たれる悪寒は幽霊の気に間違いないっす!」
「わたしなんて幽霊どころか心霊写真でどこが変なのか、最後まで気がつかないタイプなんですが‥‥そんなわたしでも見られるでしょうかねぇ‥‥。もしかしたら今回も最後まで気付かない率が高そうです」
「本当に居るんだね〜、驚きが少ない? いや、獣人がいるから幽霊がいても‥‥ねえ? モゴモゴ」
「幽霊、か‥‥」
小峯吉淑(fa3822)はやや胡散臭気にA君の噛まれた腕の主張を聞いている。そこへ河辺野・一(fa0892)が、は〜いと手を上げ、己の霊感の無さをアッケラカンと言い放つ。
同じようにぽつりと姫野蜜柑(fa3982)も一言。最後の言葉は聞かなかったことにするのはお約束。
四人の問答にシャルト・フォルネウス(fa1050)がポツリと呟きを割り込こませた。フードの下に隠れた表情はかなり険しい。それもそのハズ、義妹であるミミ・フォルネウス(fa4047)から何も聞かされずに呼び出され、ようやくこの場で説明を受けたばかりだからだ。
「‥‥大体なんだ、どこどうすればこうなるんだディレクター‥‥。お前が全ての元凶か? 取り敢えず今回も自腹で金一封だな」
あまりに大胆というか無謀なT氏の企画に内心煮えたぎり、まるで噴火直前のマグマのように熱い怒りを露わにしている。しかし当のT氏の方はいつもの如くな柳に風の態度のままだ。
こんなに怒るのなら依頼を蹴ればいいのだが、シャルトはそんな訳にもいかない。母親からミミを預かったその責任がある。割りと律儀者であった。
「うみゅ〜今回も頑張るの‥‥」
「まぁ、前回のゴキちゃん捕獲よりは‥‥うぅ、どちらも嫌かも‥‥」
シャルトの怒りにビビるミミは、高白百合(fa2431)の背に隠れながら意気込みを弱々しく語る。
高白もやはり弱気。ミミとは違い正真正銘、幽霊に対するものだ。相談しているだけで膝が笑っている。
「ん〜N‥‥こほんっ! アレは喋らない筈だけど、行動パターンとか似てる気がするけどね」
「相手は人形に憑いた幽霊だろ? それも桃太郎のさぁ、ならこっちは鬼になって誘き寄せてやる‥‥って、何だよこれ!?」
すでに竜華(fa1294)は用意した浴衣に着替えていた。ウエスト部分が帯で締められ更に大きな胸が強調し、なんとも和なセクシースタイルだ。
その隣でブリッツ・アスカ(fa2321)が桃太郎からヒントを得、大至急事務所に鬼の仮装一式頼んでいた。しかし届いたモノはな、なまはげセット。この番組スタッフに輪を掛けての酷い仕打ちをする事務所にアスカは唖然とするが、時間もないので「桃太郎なのに‥‥肝試しなのに‥‥」と呟きながら奥で着替え始めた。
「なんだかマズイ発言が‥‥。そろそろ会議を終わらせて影開始に逝き‥‥いや、行きます。脅かし役、脅かされ役の方は各自スタンバイをお願いしまーす!」
色々と危うい会話が飛び交いはじめたのを機に、A君が無理矢理終止符を打ち撮影開始の合図を送った。
●
びゅぅ〜っと吹きすさぶ風の効果音の後に画面にタイトル『捕まえろスタッフがお送りする貴方に教えるあっちの世界』の赤黒い文字がおどろおどろしく現れ、悲鳴と共に画が切り替わる。映し出されたのはあの会議室。ぎぃっと戸が独りでに開き、その先に伸びる人気のない廊下。所々に設置された常夜灯が点ってはいるものの殆ど暗闇。
「A君、‥‥なんかすっごく迫力がアリ過ぎるんですけど‥‥?」
「名目上、肝試しだからね」
さっきよりも更に膝の震えがすごい高白がA君に問う。聞かれた彼は彼女の恐怖など気遣うことなくしれっと答える。それに怒りを覚えつつ、なんとか自分を奮い立たせるようにぐっと拳を握りしめ、ひとり力説。
「う、うふふ‥‥こういう機会にか弱さを見せて好感度アップです。おっきな仕事に繋げるのですっ」
「僕に高白さん、ミミさんと竜華さん‥‥、見たカンジ脅かされ役は女性が多いね。タイプの違う女性陣が肝試しって番組的には視聴率アップ? 僕もキャーとか叫べば、清純派アイドルへの道が拓けるかな!?」
「‥‥お二人の野望はマイクを切ってからお願いします。煩悩は幽霊の餌になるみたいですよ。あ、そうだ。もっと雰囲気を合わせる為にこのマントを装備しておきましょうか」
どうも当人達は小声で言っているようだが、思いっきりぶちまけてしまっている。そこにぬっと突っ込みをいれるのは河辺野。白い鉢巻きに固定した二本の蝋燭ならぬ懐中電灯。手に持った猟銃と包丁という猟奇的なアイテム‥‥ではなく、経文だらけの木刀にハリセンという、一見面白いんだか怖いんだか解りづらい出で立ちで、更に追い打ちを掛けるように取り出したボロいマントを羽織り、もうなんだか解らない幽霊役と化していた。それでもいきなり現れれば、驚く。
「ぴぎゃぁっ」
「ぎにゃーっ!」
「みゃぁ?!」
「あらん、怖い」
異なる四種類の悲鳴が上がり、脅かされ役の女性達は本気で役目を忘れ半ベソで暗闇の廊下を突き進む。最後に聞こえた竜華の悲鳴はあまり怖がっているように思えないが一緒に逃げ出している。その通り、彼女は全く恐れなどなく瞳を凝らし霊を抜け目なく探す任務は遂行していた。
そんな彼女らを追いかける河辺野。丁度、彼らが角に差し掛かった所でまたも脅し役が顔を出す。
「わ、悪い子はいねえがぁ〜、悪い人形はいねが〜‥‥、何でこんな恰好なんだ‥‥はっ‥‥! 悪い霊はいねぇが〜」
振り乱れた髪の間から突き出した角。射抜くような鋭い眼ざし、耳まで裂けた大きな口にそこからはみ出す牙。なまはげの面を被ったアスカ登場。手に持つ玩具の包丁を大きな動作で振り回す。
「ぴぎゃぁ! 動く人形を捕らなきゃ‥‥う、動く人ぎょ? 動く鬼じゃなく? ‥‥ふぅ〜〜」
「ぜ、前回のを考えたら気持ち的には‥‥凄く楽だけど‥‥ホント。けど、なんか怖いってば〜」
「ぬぉぉ?! わ、わたしまでびっくりですよーっ」
「お? 河辺野さんも一緒だったんだ。まだ例の人形の姿はないのか? ならここで一案。桃太郎がすでに犬を連れているなら、次ぎに出会う猿を鬼が苛めてれば助けにくるかもしれない、ということで悪い子はいねぇがぁ〜〜っ」
あまりに恐ろしい鬼の面の形相に高白と姫野はへたり込む。二人が屈むことで視界が開けた河辺野の目にもナマハゲが飛び込んできた。これは溜まらない。脅かし役の彼も度肝を抜かれ思わず半獣に変わってしまい、咄嗟にカメラに背を向け難を逃れた。
川野辺との意外な合流にアスカは、未だ姿を見せない幽霊憑き桃太郎を誘き出す一計を瞬時に頭に巡らせた。それを渡りに船とばかりに乗るが、よくよく考えてみればそれは泥船。更にアスカに驚かされる羽目になる。
「悪い子はいないかぁ〜? お供にお猿さんが付くならやっぱり豚も必要でしょ? 僕、絶対に猪八戒です」
ナマハゲ気分な台詞と共に黒い豚の耳が覗くざんばら頭に中華帽子を乗せ、顔面に血糊をこびり付かせた小峯が姿を見せた。白装束にも血糊を撒き、手にした熊手を振り回しポーズを決める。
「孫悟空と猪八戒なのね、そしたら私は三蔵法師をやろうかしら?」
そこに竜華が脅かし役の参戦に挙手。色っぽい高僧が出来上がるだろうと予測したT氏は嬉しげにOKを出す。
「‥‥おい」
「うわぁぁ! 何で俺を驚かすっ」
そんなニマニマなT氏の肩をフードを目深に被り、般若の面を着けたシャルトが叩く。T氏はマジ悲鳴を上げヘナヘナと腰から落ちた。
いよいよもって訳が解らなくなってきた事態に胃の限界を感じたA君がカメラを手にしながらも腹を押さえ、怒鳴ろうとした時、
「あぁぅ‥‥いい加減に‥‥」
「イイ加減ニシロッ! オ前達カラ取リ殺シテヤル!」
横から霊憑き桃太郎がふわりと空中を漂いながら参上。その顔は端午の節句の凛々しさが無く酷く醜いもの。高白と姫野が悲鳴を忘れ息を呑む。
「やっぱり最近の玩具は凄いなあ」
「なんで桃太郎が飛んでるんや、オマエは雉か! わたしは猿だ。吉備団子を一つよこせ〜」
「ソンナモノ有ルハズガナイダロウ、コレナラクレテヤル」
T氏と同意見をぶちかます小峯。その横で河辺野は勇敢にも経文入りハリセンをビシバシ振り回し突っ込みをいれる。しかし人形を壊すことで科せられる罰金が頭に過ぎっているのか手の動きは甘い。
見切った桃太郎は、ずんと髪を勢いよく伸ばし反撃。咄嗟に河辺野はマントを翻し回避する。キッと空中に浮かぶ桃太郎を睨み付けて、
「髪伸びすぎ! それに桃太郎のなのに吉備団子を持ってないのかよ!」
悪態を付く。桃太郎は怒りに任せ威嚇の声を上げた。もう人形とは思えない。そこに縄が切れるような音が響き、
「みょほほ〜〜っ! なーんだ。あなた、ようするにN‥‥なんですよね? なんです! だったらぁぁ〜」
極度の恐怖で高白の細い神経が切れた。色気も可愛げもないどころか怪しい奇声を発っしポケットに入れていたナックルを素速く装備すると人形に向かって飛ぶ。
鋭いパンチを繰り出すも桃太郎の動きが早く直前に掻き消え次の瞬間、T氏の背後に現れる。
「うわぁ、いきなり現れるなっ!」
「ここだそれいけ、犬君! 桃太郎をやっつけるんだ! わっふー」
河辺野が傍に置かれていた犬のぬいぐるみを手動操作、つまりはそのまま桃太郎に向かって投げつけた。これも咄嗟に避けるT氏と桃太郎。
「目的通りそのままディレクターに憑いちゃいなよ! もちいいよ? 漢らしい、漢らしすぎディレクターさん! 僕も覚悟を決めたよ。サッカー経験からあみ出した木魚シュートで必ず君共々幽霊も仕留める事を誓うよ!」
どこからか木魚を抱えた姫野は首を横に振るT氏を軽く無視し、無茶苦茶な言い分と一緒に木魚を勢いよく蹴り飛ばす。罰当たりなんだかもうよく解らない。
スローで映画さながらに背中を反らし避けるT氏。桃太郎もふわりと浮かび難を逃れた。当てを失った木魚だが、彼らの後ろに着地したばかりの高白に狙いを定め飛んでいく。
いきなりの出来事に高白は悲鳴を上げる余裕すらなく、ぽこ〜〜んと軽快な音を立て顔面キャッチ。無論、そのまま倒れた。
「痛い〜、胃がぁ〜〜」
「だ、大丈夫か? A君」
「医者を呼んだ方が良いかな‥‥?」
人形の堪忍袋の緒が切れるのが早いか、A君の胃に大穴が開くのが早いかの事態に発展しつつある現場で狼狽えるアスカと小峯。だが救世主はいきなり現れた。
「うみゅ! 捕まえたぁ〜」
「ナ、何ヲスル!」
不意打ちで桃太郎に網を被せたミミ。体が小さく黒い半袖短パン姿がカモフラージュとなり視界から外れていたらしい。
逃げようと桃太郎は藻掻くが網にはシャルト手製のお札が張り巡らされ、出る事が出来ない。ミミはご満悦でこれまた同じようにお札が巡らされた虫籠の中にぽとりと落す。
「出セー! 出セ!」
「ねー、捕まえたのぉ」
「これは虫ではない、こっちに渡せ」
「にゅ? これ‥‥虫じゃない? 解った‥‥の」
桃太郎の叫びも聞かず籠を嬉しげに振り皆に見せて回る。しかしシャルトの一言に渋々籠ごと渡した。手にしたシャルトは早速素手で桃太郎の胸倉を掴みグッと睨み付ける。
「お前か? 俺は今、物凄く機嫌が悪い。義妹の面倒見なきゃならないし、音楽番組にも参加したいし、その他諸々やることがあり‥‥とにかく忙しいんだ。それを何だ? お盆はすでに過ぎたというのに出てくるんじゃねぇ‥‥大体‥‥」
「グエェェ〜、ヤメロッ! 何ヲスル」
くどくどと説教開始。しながら長い数珠を人形に巻きつけ縛り上げお札を貼り付けている。
「以上。もう二度と来るな。‥‥返事は? へ、ん、じ、は?」
「離セ! 馬鹿野郎」
「ここまで悪態を吐くなんて見上げた根性ねぇ、この爪で切り裂いて、あの世の直送便に乗せてあげようかしら?」
縛られても暴れる桃太郎。本当に手に負えない。そこに護符の付いた袋を手に竜華が背筋も凍りつく一言ときらり輝く鋭い爪を見せ、シャルトから受け取ると、最後は人形に最高の笑顔を向けポイッと入れた。
●
ようやく捕り物も終わり、会議室に入ると見かけない人がいる。無言のまますっと手を伸ばし桃太郎の入った袋を指さす。
「‥‥あ、持ち主の方が取りにお見えになられてますね。おや、全身ずぶ濡れじゃないですか?! 土砂降りの中、わざわざご苦労様です。いやー、それにしても外は晴れてお彼岸日和ですね」
言っていることが、ちぐはぐだが気付いていない河辺野。にこやかな笑顔だから敢えてスルーをする優しい出演者達。
「これでわかったろ、現世‥‥竜華さんは怖いんだ。おとなしく寺へ帰れ」
手渡す前に袋に向かって話しかけるアスカ。未だ暴れていた人形はその名前を聞いた途端大人しくなった。
「ねーデジカメ買ってみたけど、捕獲成功の記念撮影なんかどうかな? いくよー、ハイチーズ」
姫野がデジカメを構えた。咄嗟にポーズを作る面々。
さてこの後、現像した写真に何が写っていたかは彼らのみぞ知るのであった。