鈴音的声音道士 2アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
0.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/16〜04/20
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●本文
――それは昔‥‥神も人も、そして妖怪もがひとつの地で共存をしていた時代の話。
ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出している。
画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように左から右へ流れては消えていく。
――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、異形の妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた――。
画面は切り替わり、薄赤い夕日に包まれた街の画が映し出される。
大きな通りを行き交う人々の会話や物を売り買う声に沿うように、胡麻油と香草を炒めるこうばしい香りと饅頭の蒸される蒸気が、空に漂い活気に花を添えた。
しかし賑わいを見せていた大通りも夕闇が濃くなるにつれ、誰もがそそくさと家路に急ぎ、家の戸や窓に丈夫な柱の閂を差し入れ厳重な鍵を掛けてしまう。
ほんの数十分前まであった賑わいはまるで嘘のよう。今は所狭しと商店が軒を連ねる大通りに、もはや人の姿はない。あるのは闇と静けさだけ。
そんな道を小さな影が過ぎる。それも素速い。
影は足音一つ無く空を切る音のみを立て、全速力で目的地に向かって闇の中を駆け抜けていく。
民家を横切り、空き家を抜けてようやく動きを止めた場所は、街一番の裕福な李氏の邸宅。
足を止めた影は尻尾を動かし確認をする素振りを見せた次の瞬間、高い塀を軽々と乗り越え、花々の生い茂る敷地に入り込んだ。
ガサ‥‥ガササっ‥‥ズサササっ!
草をかき分ける音が響く。しかし建物の中にいる李氏とその家族、使用人は気付かない。それを良い事に影は、すでに家の窓の真下まで来ていた。家から漏れる明かりに反射して鈍い金色の瞳が悪意に満ちた色を見せる。
ニャァァゴォォ‥‥
怒りや呪念を含んだ低い唸り声が影から発せられた――
〜出演者を募集〜
中国ドラマ「鈴音的声音道士」は、四神と麒麟の法力の宿る鈴に選ばれた道士になりきって妖怪を封じてください。
また妖怪側の役、カメラマンや妖怪を動かす技術スタッフ等の裏方さんも同時に募集しております。
〜道士の法力選択〜
・青い鈴
青龍
春と東の守護神 水 守備型
武器 龍笛&方位計 龍笛で睡眠誘発や能力を激減させることができ、また方位計により妖怪や仲間の居場所を知る事が出来る。
玄武の結界と組むことで守備能力が倍増。
・赤い鈴
朱雀
夏と南の守護神。炎 攻撃型
武器 桃の法剣&法術 桃の法剣は妖怪を討ち取る際に使われる。白虎の詠唱で力が倍増する。
・白い鈴
白虎
秋と西の守護神。森または道 攻撃型
武器 召還&詠唱 様々な式神を呼ぶ事ができ、詠唱で攻撃が出来る。
・黒い鈴
玄武
冬と北の守護神。山 守備型
武器 天鏡&棒術 天鏡で結界を作り、棒術によって敵を薙ぐ。
・黄色い鈴
麒麟
? 中央の守護神。生命ある獣の支配者。
武器 ?
なお、詠唱、技の名前や攻撃の方法は鈴を手にした方が決める事が出来ます。麒麟の場合のみ設定、武器など一から決める事が出来ます。
ただ、詠唱が長すぎたり、技の設定が複雑ですと割愛させていただきますのでご了承ください。
鈴は一人、ひとつです。この五つは必ず埋めて下さい。
妖怪情報:
猫鬼(びょうき) 特殊な式神の術により鬼となった猫の妖怪。
二つ、三つに別れた尻尾が特徴。あとは猫となんら代わりはないが、威嚇した際に見える牙や爪はひどく鋭い。
おもに人を呪い殺すために作られた妖怪であるが、能力はそれだけではなく、財産や名誉、富をも奪う事もできる。
●リプレイ本文
●オープニング
「ひぃぃ、わ、儂を殺そうというのか? 使用人の分際で! 」
「おや、まだ気付かれませぬか? 鈍い人よ」
街を二分する権力者の一人、李は怒りと恐怖で声を震わせ、目前の女に罵倒を浴びせる。
だが女はそんな罵りも何のその。高らかに笑い、身を翻すと、途端に燃える炎を連想させる紅い長毛の猫となった。いや、猫というには悪意を孕みすぎている。そう邪法、蟲毒で妖怪となった猫鬼の紅花(桜 美琴(fa3369))だ。
もっとも凶悪な呪を駆使された猫鬼に憑かれるというのは酷い恨みを買ったに違いない。李は冷や汗が吹き出す。
獲物の急所に狙いを定めた紅花が、高々と飛び上がり鋭く尖った赤い爪を振り下ろそうとした瞬間、
「何じゃ‥‥蟲毒かえ、猫鬼とは面白い。うぬ。あやつらに仕返しを考えておったところじゃ‥‥これは使える。ワシに従え」
邪魔され怒りを露わに紅花は目前の妖怪にその爪を降ろそうとしたが、ただならぬ妖気に威圧され竦み上がった。
そこにいるのは妖狐、青隼(御崎伊庵(fa3298))と、その腕に抱えられた蘭々(蘭々(fa3364))。
さも楽しげに青隼はすぐさま服従の印を紅花に向かって結ぶ。猫鬼はすぐには理解出来ずにいたが、徐々に彼を主人と認めると人の形状を取り、伏した。
「旦那様、何かご用ですか‥‥? 」
それを満足げに見る青隼と蘭々。李は助かったと思いつつもまだいる妖怪を恐れ逃亡を企てる。しかし易々と見逃す二人ではない。
「ヌシの立場は利用できそうじゃからの。姿を借りる事にしよう」
にんまり微笑むと、地下へ幽閉してしまった。
●
人里離れた家屋。そこが妖狐、青隼の住処だった。
李氏の家から戻った早々、褥に入れられた蘭々は、前回の怪我がまだ完治していない。
「阿哥、阿哥‥‥。蘭々ちゃん身体痛いってカンジぃ‥‥道士達やっつけてくれなきゃ蘭々ちゃんグレちゃうってカンジぃ!! 」
「大人しくして下さい、傷に障ります」
「可愛い妹妹。蘭々よ‥‥解った。傷が癒えたら行こうぞ。早ぅ治おすのじゃ」
身体の痛みと悔しさに蘭々は兄に八つ当たりと我が侭を全開で挑む。青隼と紅花がそんな彼女を宥め賺している最中だった。
「それじゃ嫌なのぉ、それに阿哥はぁお世話が下手ぁ。蘭々ちゃん痛くってたまんなぁい」
「これこれ、そう我が侭を言うものではない」
下手と言われ、がっくり肩を落とす青隼。そんな兄の姿をよそに普段、帽子で隠れる黒く丸い耳をしきりに動かし、
「ってゆーかぁ、紅花ちゃん。蘭々ちゃんの看病してくれないとぉ、封印しちゃうんだからぁ!! 」
「はい、解りましたご主人様」
「なれば紅花、蘭々の世話を任せたぞえ。ワシは李に化け、更なる悪評流し、それをツテに現れるであろう道士等を討ちに行く」
蘭々の我が侭に根負けした青隼は、紅花に任せその場から掻き消えた。
●
李に化けた青隼は様々な妖を召還し、街の人々を苦しめだした。口々に以前の李氏とは違うと言い出す。
それを聞いていた陳はほくそ笑む。そう、猫鬼を送りつけたのは彼なのだ。街の権力を二分する李が、殺されなかった事は忌々しいが今のこの状態も悪くはない。もう一度、唇を歪め笑おうとしたその時、耳元で、風の翻る音がする。
「ヌシかえ、猫鬼を操って居ったヤツは? どれその凄まじき恨みをワシが喰ろうて力にしてやろう」
悲鳴を上げる間もなく陳は現れた妖狐の餌食となった。
街に入った途端、白い鈴が鳴り妖怪の存在を知らせる。
「うぬ、妖怪が居るようじゃの。どれ探りを入れるか」
白虎の鈴を手にした美蓮(朝葉 水蓮(fa2986))は、折り鶴を使った式神、光鴉で上空から妖気を探らせる。が、代わりに前回と同じ麒麟の鈴を持つ麗鈴(犬神・かぐや(fa0522))と、朱雀の赤鈴を持つ春梅(天深・菜月(fa0369))を見つけ、協力を申し出た。
「あたしは、道士なんて引き受けた覚えないっ」
「人に出来ないことを自分が出来るのじゃから、それが自分のするべきことじゃろう」
鈴につきまとわれ鳴り響く煩さに嫌々、道士になった春梅は美蓮に食って掛かる。が、美蓮の方はかかかっと、その反発を笑うだけで取り合わず光鴉の示す方へと連れて行いく。
そんな二人にぼんやりついていく麗鈴。その顔にいつもの笑みはなく、やけに静かだ。前回の戦いの青隼の言葉が頭に残りそれを考え続けていた。
旅芸人の飛雪(賈・仁鋒(fa2836))も側まで来ていた。
「この気配‥‥また、厄介な事になりそうだ」
ふらりと立ち寄っただけなのだが、自分の元に降りた黒い鈴の警鐘と李の噂に判断を下し、彼の家に向かっていた。
「何やら厄介なことになってまんな。妖怪の類は放っておけへん、退治しよか。他の道士さん達もおるさかい、ちょうどええわ」
青龍の力を持つ方位計で、妖怪と道士達が集まる場所を確認した風華(基町・走華(fa3262))は、鈴の導きによりいち早く李の家の玄関前にいた。
「よう、フォン。また会ったな、あの鈴を受け取ったのか? 」
「飛雪はんやないの。そうなんや、よろしゅうにな」
一足遅く、飛雪が現れ声を掛ける。一度、共に妖怪の戦いを経験している彼らはすでに顔見知りだ。また共に戦える事で不安が少し削がれる。
「今回の妖怪も手強そうだ。あの妖狐もいるみたいだし。心して行こうぜ」
「そやね、他の鈴の持ち主はんらも、もうすぐ来るみたいやし、その間に人が入れへんよう結界の準備やな」
風華の言葉に飛雪は、鈴をひとつ鳴らし結界の印を結ぼうとした。その時、突如、塀の内から鋭い悲鳴と何か重い物を倒す音が響く。
互いの顔を見合わせ屋敷の中に飛び込んだ。悲鳴が聞こえた広間に駆けつけると、そこには信じられない光景があった。
李の家族と使用人が主人、李の手により縛られ青龍刀を突きつけられていたのだ。
「ほほほ。案外、嗅ぎ付けるのが早かったのう、道士らよ。ヌシらの為にお膳立てをした所じゃ。存分に戦うがよいぞ。なぁに礼じゃよ、ワシの可愛い妹を傷つけたことのな」
「またあんたかいな、えぇ加減にしぃや。どうやらホンマに倒さなあかん敵みたいや」
まだ若い李にしては嗄れ、老年を思わす話し方。それに二人は確信した。妖狐、青隼だ。彼もバレた事を気にするどころか不敵に口元を歪め、くるりとっ回り変化を解いた。
呆れと怒りを露わに風華が捲し立てた刹那、青隼の青龍刀が伸びてくる。
「あかん、人が邪魔や」
飛雪は咄嗟に棒を構え刀を弾いた。鉄のぶつかる鋭い音が響く。風華は逃げだそうと半狂乱となった李の家族と使用人を『夢見の奏』で眠りにつかせる。
「のぅ、黒鈴の道士よ。ヌシには先日の礼をさせて貰うぞ。おや? ヌシも眠りに落ちそうじゃ、避けぬと斬るぞ」
「道士ならここにも居るのじゃ、白き鈴音の響きに応えよ――白鴉ッ! 」
耳を塞ぎ損い睡魔で動きが鈍くなった飛雪に襲いかかる青隼。そんな二人の間に式神がすり抜けた。白鴉だ。飛雪の代わりに一撃を受けると、そのまま元の折り鶴へ姿を変えた。
広間に飛び込んできたのは、少女三人の道士。
美蓮はすぐさま式神を呼び出し戦闘態勢を整えた。が、残りの春梅と麗鈴はどこか思案しているようだ。
「どうしたん? 早う剣を抜きなはれ! 」
「好きで道士になったんじゃない。ここにだって来たくなかった」
「私はなぜ、妖怪と人が仲良くできないのか解らないわ」
「今、そんな話どころではないだろう。構えないと来るぜ」
風華と飛雪が呆然と立つ二人を急かすが、動く気配はない。そんな隙を見逃さなかった青隼は春梅に襲いかかる。
「どこを見ておるのじゃ? 赤の道士。 ヌシの前の持ち主に酷い目に遭わされた。手加減はせぬよ」
「なんでそうなるの? もー嫌だ嫌だって人が言ってるのに、何で聞いてくれないのよっ」
キレ気味に春梅は赤い鈴が柄に付く桃の法剣を振り回す。が、スイスイと避ける青隼に当たらない。逆にゆるみを見つけられ青龍刀を振り下ろされる。
「白き鈴音の響きに応えよ――白蛇ッ!! 」
美蓮が再度、式神を呼ぶ。髪を結う紐が白蛇に姿を変え、細い腕を伝い青隼に巻き付き動きを封じる。
「‥‥あ、ありがとう」
「大したことではない、早く体勢を整えるのじゃ」
照れくさそうにぽつりと礼を言う春梅。元は素直な娘なのだ。
「ちぃぃ、小賢しいわ。こちらも一人で相手をするのは疲れる。猫鬼」
青隼の動きを止められたのは、つかの間。力尽くで白蛇をひき千切ると指笛を吹き、猫鬼を呼び出していた。
●
人里離れた一室。蘭々は褥の上に座り、猫鬼と共に遠視呪符で兄の戦いを覗き見ていた。
「阿哥、超強いってカンジぃ。蘭々ちゃんご機嫌」
はしゃいでいるものの段々と青隼の分が悪くなるにつれ表情が曇り、枕を床に叩きつけだす。
「えー、なんで道士達は倒れないのぉ?! 超最悪ってカンジぃ! 」
「傷に障ります。大人しくして下さい」
「んもー、解ったのぉ。今、阿哥が紅花ちゃんに助っ人を頼んだみたいだからぁ、行ってあげて」
「承知しました、ご主人様」
ひとつ礼をすると、狐の尾を思わすほど太い二つの尾を持つ猫鬼の姿となり、蘭々の転移呪符で青隼の居る李氏の屋敷へと送られた。
●
「な、なんて酷い事を‥‥こんな惨い術を使うなんて絶対に許せません! 」
蘭々の呪符により転移した猫鬼、紅花に道士達は守備を固めた。そんななか、黄色い鈴を持つ麗鈴だけが感じ取った紅花の過去。蟲毒の呪のため弄ばれた生命だと気付くと、普段は見せない吹き荒む冷気のような怒りを露わにする。
傍の仲間達は、彼女の突き刺す寒さような怒りに驚き戸惑う。
「なんじゃ? 麗鈴、凄まじき怒りじゃの。少し静めた方が‥‥皆、びっくりしておるのじゃ」
「いえ、この猫が受けたあまりに酷い仕打ち‥‥私は許せない」
「良く聞くのじゃ黄色の道士よ。そやつを猫鬼にしたヤツはもうこの世にはおらぬ、ワシが喰ろうたわ。だからこやつのヌシはワシじゃ。行け! 猫鬼、道士達を倒して参れ」
麗鈴の怒りに油を注ぐような青隼の言葉。麗鈴は妖狐に向かい金糸雀声で何か発しようとしたが、以前の彼の言葉が脳裏をすぎた。
ぐっと言葉を飲み込み、
「全ての人を怨まないで」
自分の言葉で話すと、戦闘を静かに見守る事にした。
「主殿のお言いつけだからねぇ。あんたぁ甘いねぇ、隙だらけだよ」
やる気なさ気な春梅に狙いを定めた紅花は、軽快にかつ鋭い爪で攻撃をする。まだ剣を扱いきれず振り回すだけの彼女は格好の餌食だ。
「あかん、やられてしまうわ。そや! これで少しは足止めに成るやろか? 」
風華は、持っていた荷物の中から白檀と木天蓼の混ざるお香を取り焚く。辺りに不思議な匂いが立ちこめだし、龍笛を取りだし『幻惑の奏』を奏で出す。それにより紅花の足取りが酔ったように鈍くなる。間をおかず飛雪が杖を振い黒い鈴を響かせ印を結ぶ。
「疾く生じよ、冬天が壁。汝、凡てを護るもの」
動きが鈍くなった紅花を結界の中に閉じこめた。しかしこれだけではすぐに青隼に破られる。風華が龍笛ですぐに『鎮守の奏』へ切り替え、風の壁を作った。
「では、参るぞ春梅。白き鈴音の響きに応えよ――雷虎ッ!! 」
「あぁ、わかったよ。やるよ! 」
手にしていた鎌を棒に戻し、牙の腕飾りを媒介に雷の虎を召還する。雷虎は春梅が持つ法剣に吸い込まれて行くと、木で出来ているはずの刃が白く閃く。
封じられた結界を青隼はなかなか破る事が出来ず、春梅の法剣が動きの取れない紅花めがけて振り下ろされようとした、その時。
「この子を傷つける事は誰にも許さない! 」
沈黙を破った麗鈴は金糸雀声で叫ぶ。術で皆ぴたりと動きが止まった。麗鈴は急ぎ結界から紅花を助け出した。弱々しくも威嚇を続ける紅花に優しく微笑んだ。
「もう人を怨まなくてもいいの、その妖気を払ってあげる」
風華が『沈静の奏』を吹きだすと、金糸雀声にひとつの歌を乗せた。みるみる猫鬼の顔が穏やかになり、元の美しい赤い猫へと変貌する。
「やっと‥‥解放される‥‥」
静かに蟲毒の呪が消えていった。
「ねぇ、この剣どうすればいいの? 」
力を帯びたままの剣に困り果てた春梅。だが逃げ出そうとする青隼の気配に身を翻し、斬りかかった。が、一歩及ばなかった。
「そんなのモノにやられぬ。次、見ておれ、道士達よ」
「またかいな」
逃げ出す青隼に風華は呆れたように言った。
●エピローグ
その後、道士達は李氏の家族を助け、地下室に幽閉された彼を発見した。
お礼の返答に黄色の鈴の音と共に麗鈴が、街の行く末を願い一匹の猫を李に差しだした。
「この子を大事に飼えば、町も人も幸せになるよ」
きっとこの町はこの猫と一緒に幸せになるだろうと、道士達は確信した。
そんな彼らから、こっそりと抜け出した鈴達は新たな妖怪に立ち向かうべく、道士を捜しに青い空を飛んでいった。
●
「もうもう馬鹿ぁ! やっつけてくれない、阿哥なんかもう知らないーっ!! 」
「すまぬ。まぁそう怒るでない蘭々や。可愛い妹妹‥‥」
またしても負けた青隼に蘭々が怒りに任せ、手当たり次第物を投げつける。青隼は懸命に避けながら宥め賺すが、聞く耳を持たれない。
「もぉ知らないったらぁ、知らなぁい」
枕を抱え、蘭々が力ずくで投げる。
‥‥ばっすん。
「痛い‥‥」
枕を避け損い見事に青隼の顔に命中した。何とも言えない沈黙が数秒あり、枕が落ちると青隼の情けない表情が現れたのだった。