female Buccaneers2ヨーロッパ
種類 |
ショート
|
担当 |
極楽寺遊丸
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
3Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
7.9万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
1人
|
期間 |
09/27〜10/01
|
●本文
『海を彩る美しき女海賊たち』
一艘の木造船が沖を滑るように進んでいく。その旅立ちを真っ青な空も海も祝福しているようだ。
風を孕み脹れる真っ白な帆。高々と立てられたマストに真っ赤なジョリー・ロジャー(海賊旗)がはためいてく。
そこに映し出された金色の飾り文字『female Buccaneers 〜海を彩る美しき女海賊たち〜』とこのドラマのタイトルが流れ消えた。
ヒスパニョーラ島を出発したジョリールージュ号。波間を滑るように進む船の後をカモメ、トビウオにイルカと次々と動物達が楽しげに追いかけてくる。まるでついて行きたいと言わんばかりである。
乗組員達も笑顔でそんな彼らを見ては手を振った。しかし歓迎できる相手ばかりとは限らない。やや後方からプライベーティア達の整備の行き届いた大型船がスピードを一定に保ちながら着いてきている。
狙う宝『紺碧の心』が一緒なのだから当然であるが、どうにも気持ちの良いモノではない。
「どうします? 船長」
望遠鏡を覗いた娘が隣に立つ船長に聞いた。
一方、プライベーティアの甲板。最新型の船だけあり、その速さもさることながら大砲や弾薬が豊富である。
船長の休憩に替わって、指揮を取る副船長は届いた手紙に目を通し含み笑いをみせていた。それは王室からのもの。
「紺碧の心臓を手に入れるに不可欠なロードストーンの存在を探り、取りに行けか‥‥。ほう、この先にあるレネ島の教会に‥‥か。 確かにその話は聞いた事はある。ジョリールージュ号の動きからしても、事実のようだな。ふぅん、あの女船長は色々と知っているみたいだ。そうだ、彼女達に一つ案を提示してみてもいいかもしれない。あの方達が条件を呑めればだが‥‥そうでないと足止めをさせて貰おう。まずは船長に報告しようか」
羊皮紙を綺麗にたたみ直すと足早に船長室へ向かった。
■参加者を募集します。
ヨーロッパ発の海を渡る冒険活劇『female Buccaneers』に出てくださる出演者を募集してます。
女性海賊達が乗り込むジョリールージュはなるべく女性の船員が好ましいと考えており、またプライベーティアの方は王室から許可書を得た私掠船。こちらは男性の乗組員で構成をして頂きたいと考えております。
そして配役は二つの船の船長以外、まだきちんと決まっておりません。この二つの役が重ならない限り、皆様の演じたい役のご希望を頂ければ嬉しく、また添えるよう努力させて頂きます。ただしこのドラマに沿った役でお願いします。
ジョリー・ルージュの船長 腕っ節と機転の良く利く女船長。
プライベーティアの船長 明晰な頭脳と繊細な神経の持ち主だが、土壇場に強い男
操舵手
帆手
甲板長
調理長など船に関わる仕事など。
また今回から使われる武器等の説明をいれさせて頂きます。
ピストル 原始的なフリントロック式のピストル。殺傷能力は高いものの一発撃ったら再装填しなければならない。また潮風で火薬が湿気り不発もしばしば。そのため何丁も肩帯から提げることがある。
マスケット銃 銃身の長いフリントロック式の銃。殴り合いの時でも使われる。
カトラス 海賊が用いた片刃の小剣。船など狭い場所で戦う時に威力を発揮した。
※ この番組はあくまでもこれはドラマですので、本当に殺し合うことはありません。ご注意ください。
その他、皆様がこれを使いたいという武器がありましたら、ご遠慮なくプレイングにお書きください。
●リプレイ本文
●
「帆を張るのは任せるのじゃ」
「うわぁリーザ、いきなり引き過ぎ! 驚いたな、そんなに力がありそうに見えないのに‥‥。それにしても良い風。このまま続けばいいけど」
抜けるような青空と眩しい陽光、そして海。その海原を滑るように進む女性のみで構成される海賊船、ジョリー・ルージュ号。
その甲板で太い粗綱を引き帆を操るリーザ(エキドナ(fa4716))とサイリーン(豊浦 まつり(fa4123))の姿があった。
いつでも重そうな甲冑を着込む大柄なリーザはバッカニアよりもバイキングのようだ。鉄で覆われる腕は想像も出来ないほどの力を発揮しグッと力強く縄を引く。その隣で作業をしていたサイリーンが反動でぶら下がって遊ぶ子供のように吊された。軽く文句を並べるも、やや高いところで浴びる潮風にギャンブルで培ったカンが良い風と称し、心地よさを覚える。
その通り、温かく穏やかな空気の流れが彼女の操る真っ白な帆の中へ滑り込み、グングン船を走らせていった。
「はぁい、サイリーン。頼んでいたラムとジンを買ってきてくれた? 待っていたのよ」
「あぁ、あるよ、そこに。それにしてもエステルはいつも船を下りないのね。他人に買いに行かせるより自分で行った方が好きな銘柄が選べるんじゃない?」
「ありがとう、確かにあなたの言う通りそうなんだけれどね‥‥。あたしが船を下りると面倒なことばかり起きるのよ。すれ違い様に女の尻を触って喜んでるような男を殴り飛ばすのはもう飽き飽き。あたしはそういう事をしない強い男が好きなの。だから船に乗ってりゃ、半端な男に会うことはないでしょ? 尤も海の上じゃ、強い男に会う機会も少ないけどね」
作業中の二人の前に現れたエステル(グレイス・キャメロン(fa3627))は美しいブルネットの髪を掻き上げ、声を掛けた。
素晴らしい美貌を持つ彼女だが、酒は呑んでも呑まれるながモットーとなかなかの豪快さを持っている。しかもその豪快さは酒ばかりではない。態度にも出ていた。船を下りる度にちょっとした騒動を巻き起こす。尤もエステルが悪いのではない。彼女の美貌にちょっかい出してきた酔っ払いが絡むからだ。しかし過剰に蹴り倒す場合もあるのでどっちもどっちと言えるが。
本気とも冗談とも取れるエステルの言葉に甲板にいる一同、笑う。しかしたった一人、見張りをしながら銃の手入れをしているマルコ・ロッソ(ブラウネ・スターン(fa4611))は和む彼女らに参加しない。馴れ合いを嫌うのではなく、ただ単に愛想がないだけなのだ。
「‥‥まぁ、なんにせよ今は私達を追っているプライベーティアを引き離す事が先だな‥‥」
ポツリと呟き愛用の拳銃を潮風から守るべくぎゅっと肩ベルトに押し込んだ。
「そうね。わたくし達と彼らの目的は同じ‥‥先にレネ島へ向かうのなら、“嘆きの海”ジルニーニャを通れば、振り切れると思うけれど? ジョリー・ルージュ号なら大丈夫よ。少し型は古いし、あまり大きな方じゃないけれど、流石に名にしおう伝説の海賊船だわ。よく使い込まれて整備に全然隙が無いもの。そして何より‥‥とても綺麗。舵はちょっとお転婆だけれど、わたくしとは気が合いそうですわ」
蜻蛉の羽根のような光沢のある薄衣を幾重にもあしらったドレス姿のメアリー・ショウ(マーシャ・イェリーツァ(fa3325))。狭い船内では不自由もあろうと思いきや、愛用する衣装は慣れたモノ。差し障りなく舵を握り操り、航路について意見を一つ出す。
「あ、嘆きの海‥‥?! あそこを通るのか? 確か通れば近道だな‥‥」
「あら、サイリーン。自信が無いの? わたくしはこの娘、ジョリー・ルージュとなら通り抜けて見せますわ。そんな程度の腕では、わたくしの相棒は務まりませんわよ? どうです、わたくしに賭けてみません? 万が一、乗り切れずキャプテンに舵を取られたら、操舵手から降りて下働きをいたしますわ」
メアリーの意見に賛成をしつつも、どこか言葉が詰まるサイリーン。
そんな様子にメアリーは挑発的に口角を上げ勝負を挑む。挑まれた方は根っからのギャンブラー。勝負といわれたら黙ってはいられない。
「OK。リスクの高い賭けは嫌いじゃないよ、チップは船の命運。あんたの目に賭けたげるわ、見返りは‥‥最強の操船コンビの結成ってとこね」
そういって互いの目を合わせメアリーとサイリーンは、にやりと笑った。
●
一方、目の前のジョリー・ルージュ号に、くっつきすぎず離れすぎずの速さを保って走るプライベーティア号。彼女達の航路を確認しつつキャプテン・ホーキンス(AAA(fa1761))は甲板の上で副船長、ジルから渡された王室からの手紙の文字を軽く目で追った。
読み終えると手紙を軽く畳み静かに右手を挙げ、物思いに耽る時の癖なのか整えられた髭をひと撫で。その下にある薄い唇の端を僅かに上げて呟いた。
「ほう‥‥無能者の集まりかと思っていましたが、中には多少使える者もいるようですね‥‥。皆さん、ジョリー・ルージュの海での追跡は、ここまでにしてレネ島へ向かいます。彼女達も目的が一緒のようですので、近々会える事となるでしょう。尤もアレを超えられればですが。異存はありませんか?」
「船長、本当にいいんですか? まだジョリー・ルージュの方から解答が来てないが‥‥」
狙撃手は寡黙であるべきという風変わりな信念を持つペジャール(深森風音(fa3736))が珍しく口を開いた。解答によっては、あちらの船に乗る凄腕の狙撃手との対決を楽しみにしていたのだ。
「‥‥えぇ、そうなんですが‥‥仕方ありません。彼女達に答える気がなければ、危険な海域に侵入する進路を取り、我々を振りきろうとする事を考えると、こちらも進むのが仕事ですが‥‥、皆さんと船を危険に晒してまで追う事は得策とは思えません。ジル副船長、ある程度追って後の進路は、いつも通り貴方にお任せします」
「はい、女性のお尻を追い掛けるばかりじゃダメということですね。恋と海路は駆け引きが必要という事でしょうか? 船長」
どこまでも穏やかな口調でペジャールを説き伏せるホーキンス。彼に忠誠を誓っているペジャールは文句など言うことなく、さも当たり前のようにイエッサーと呟くと黙って従う。
ホーキンスはいつものように冗談口を叩くジルに操舵を任せると踵を返し自室へ帰ってゆく。姿勢良く颯爽と歩いてゆく彼の背にペジャールはグッと親指を立て、
「‥‥船長、今日もダンディ」
と小さく呟いた。
豪奢な美術品や骨董品で飾られた船長室のソファの上で、くつろぎ読書に勤しむのはこの部屋の主のホーキンス。だが彼の頭の中には本の内容ではなく他の事が渦巻いていた。
「ロードストーンの事をあの無能の集まる王宮が知っていたとは‥‥侮れないものです。しかしそれ以上に脅威は、この最新鋭の船ですら追いつかせないジョリールージュ号。なんという操船技術なのでしょうね‥‥。本当にあの方達を潰してしまうのは惜しい事ですが、仕方がありません‥‥」
ホーキンスは優雅な動作でページを捲る。そこにノック音と共に戸が開き、現れたのは調理長兼雑用全般を統括する役のクライド(四條 キリエ(fa3797))。手にはホーキンスのために用意された上等のワインにサンドウィッチとカナッペが添えられたトレイを持っている。
「船長、まぁ一杯どうだ? あちらさんは随分、面白い道を選んだようだな」
「ありがとう、クライド。けれど今回は戦闘は避ける事となるのでご安心下さいな。尤も嘆きの海を僅かに掠める事となるので少々、揺れる事になりますから、厨房の方はお任せ致しましたよ」
「あぁ、そうか解った。そろそろ俺らも配置につくぜ。下は任せとけ! 船長。 船倉‥‥特に厨房を荒らされてたまるか」
グラスを受け取り、注がれた赤ワインを傾けるホーキンスにクライドはパンッと拳を打ち鳴らし、厨房へと戻っていった。静かに戸が閉められたのを目で追ったホーキンスは再度、上質のワインに口付けると本を開いた。
クライドは彼の砦‥‥厨房を守るためにさっそく作業に取り掛かる。やっている傍からグラグラと揺れ、皿やワインの瓶がカチカチ音を鳴らす。
「おらおら、もたついてんじゃないぞ、お前等!! 材料傷めでもしたら‥‥おい、ペジャール! つまみ食いしている暇があったらあの船沈めて来い!」
彼は手を動かしながらも激を右往左往する船夫達に飛ばす。もちろんつまみ食いに来ていたペジャールにも飛んできた。尤も飛んでくるのはそれだけではない。ひゅっと空を切りナイフが耳の傍を掠めた。
「今度、つまみ食いをしたら刺すと言ったはずだ! 早く持ち場に行け!!」
「うわっクライドがまたキレたぁ〜‥‥」
軽快にナイフを避けながらペジャールは厨房を後にした。
●
そろそろ嘆きの海の入り口。さっきまでの青空とは打って変わりどんよりと暗い空が二艘の船を迎える。嘆きの海と呼ばれるここは難所の一つ。吹きすさぶ潮風と、そこかしこにある渦。そして白波に隠された岩が見えづらく船を寄せ付けない場所なのだ。そんな中、ようやくジョリールージュ号に追いついたプライベーティア号に向かって銃声が轟く。
「船長が振り切れって言ってるんでしょ? じゃぁ思いっきりいこうじゃないのさ! 取り敢えず操舵手を狙えば良いかしらっー!?」
長身のマスケット銃を構えるエステル。彼女に続きマルコも愛用のマスケット銃で振りきるための射撃開始。もちろん撃たれた彼らだって黙ってはいない。両方の船から激しい攻防の銃声が響き、マルコの顔スレスレに弾が掠めた。
「‥‥っと、外れたか。普段、瓶を打ち抜いているから割りと自信はあったが‥‥。動く標的を撃つのは至難だな」
ペジャールは、外れた事を確認し素速く身を潜め火薬を詰め直し銃を構える。彼の言う通りいつも甲板の上でラム酒の瓶を粉々にしては甲板員に怒られているその腕は素晴らしい。が、しかし波を避けるために大きく揺れる船の上では通用しなかった。幾度の撃ち合いの後、プライベーティア号がゆるやかに追跡を止め曲がり始めた。
「あの優男が横にいて迂回? 冗談っ! ギャンブル運も女運も無いけど‥‥ここで回避を取るとは‥‥確かに的確な判断だよ‥‥ジル」
リーザと帆を支えているサイリーンが離れてゆく船を見て驚く。そう、彼女の言う通りジルは回避の道を選んだ。本来ならこのまま追いたいところだが船が岩に当たり座礁してしまっては元も子もない。彼なりの苦渋の決断だろう。ジルはいつもの甘い笑みを浮かべ軽く手を振るとそのまま舵を勢いよく回し、旋回していった。
「一応、一つの関門は突破ですわね。次はもっと強力ですわよ。皆さん、振り落とされないように掴まっていて!」
「早いトコ、通過をお願いするわ。実体の無いもの相手に喧嘩するのは苦手なのよっ!」
得意のレイピア同様に舵を巧みに操るメアリー。左右に大きく揺れる中でエステルは縄を握りしめ叫んだ。一同、彼女の言葉に笑みが浮かぶ。
ジョリー・ルージュ号の前を遮る潮渦を巧みに避け進む。隠された大きな岩も上手くかわし、ようやく嘆きの海の終わり間近に安心したメアリーに突如、大きな渦が現れた。波が中心に向い激しく船の先端を巻き込む。急いで舵を切るもそう早く船は動く事が出来ない。危機を察したサイリーンが素速く風を読み帆を引いた。それに反応したリーザも力強くともに動く。
間一髪。船は呑まれることなく先へ進む。出口はもうそこ。いつものように青い空と海が彼女達を迎え入れた。
「前に言ったでしょ? 最強の操船コンビの結成ってさ。賭けは私‥‥いや、私達の勝ちね」
「‥‥助かりましたわ。思ったよりもやりますわね。これからもよろしく‥‥相棒」
人懐っこい笑みでメアリーを包むサイリーン。彼女の機転を素直に受け入れ認めるメアリーは右手をそっと出した。サイリーンは嬉しげにその手を力強く握りしめた。
●
深夜、眠るように穏やかな波間を滑るように進むプライベーティア号の船長室。ホーキンスは窓から静かな海を見ていた。先程、ジョリー・ルージュ号が嘆きの海を抜けレネ島間近だと伝達があったところだ。彼はふぅっとひと息つき、おもむろに窓から離れると携えた愛用の剣に指を掛け、黄金と様々な宝石が飾られた鞘に収められた長剣を優雅かつ隙のない動作で抜く。
シュッと空を切る音と共に銀色の冷たい光りが生まれた。それは装飾用とは思えぬほど良く鍛えられ、間近に掲げたホーキンスの冷淡な笑みを美しい刃に映しだす。
「ふふ、私にはこれが合っているのですよ。武器は自分に合ったものを使うのが一番です。さぁ次はお覚悟なさい‥‥」
口元に浮かぶ笑みは普段の穏やかなものと変わり、背筋も凍るような笑みであった。