いろはに諺 のの巻アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 易しい
報酬 2.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/01〜10/05

●本文

 サブタイトルは実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
 一応、教育番組である。いや、そのはずだ。何と言おうと。
 いつもの通りプロデューサーの指示に従いスタッフ達が運び込む小道具、衣装はイベントパーティーでもするのではないかと間違えるほどの面白グッズばかりである。
 そう、この番組の意図は楽しみながら諺を学ぼうというもの。
 和風なセット、そして大きな筆を持ったヘラジカがモチーフのマスコット『マロ君』もスタジオに一番乗りをして準備は万端。
 あとは出演者と司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
 さぁ、今回も賑やかに放送開始である。

■出演者募集
 いろはに諺の出演者を募集します。
 楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。

■演出
 その1 諺とは関係なく「の」の文字を頭に使い面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となって、体を張り文字を作って頂きます。
 その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントなど、お願いします。
 ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうのも良いですし、創作した諺の披露や、体を使ったスタントでコントもオッケー。
 とにかく一番大事なことは、皆様がワイワイ楽しんで番組を作ってくださること!
 コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。
 最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第!
 用意した諺は、全て使わなくても大丈夫です。

■番組マスコット情報
名前:いろはの守言彦麻呂(略称いろは麻呂でマロ君)
外見:赤い色をしたヘラジカっぽい、ふわふわもこもこでなんか可愛い。
持ち物:大きな筆を所持。
性格:基本はドジ。ボテボテした動き。だが、意外と俊敏な時あり? (中に入った人次第)。好きなモノは毎週のお題で変動


■お題
 の
「能ある鷹は爪を隠す」
意味:優れた知識や才能を持つ人は、普段それを隠しみだりにひけらかさない事。

「上り坂あれば下り坂あリ」
意味:一生のうちで、幸せな時もあれば不幸な時もある事。

「喉元、過ぎれば熱さを忘れる」
意味:苦しかった事や助けてもらった恩も時が経てば忘れてしまう事。

●今回の参加者

 fa0243 郭氏文 令明(20歳・♂・鷹)
 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa1340 HIKAGE(18歳・♂・小鳥)
 fa1986 真田・勇(20歳・♂・猫)
 fa3120 (14歳・♀・狼)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa4286 ウィルフレッド(8歳・♂・鴉)
 fa4287 帯刀橘(8歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文


 夕方。彩色豊かに描かれたタイトル文字が子供達の声で読み上げられると、画面は切り替わる。
「はーい、いろはに諺の第二回目の放送がやってきたのだ。司会進行は、おいらマイお姉さんとユラお姉さんでお送りするのだっ 今日のお題は『ろ』。頑張っていくのだー」
「今週もノリノリで始まりや! この時期、TVは番組改変期やけど、皆さんの応援のおかげで乗り越える事ができましたー。おおきになぁ。ほな今日も勉強にのめり込んでいこか! 司会はウチことユラお姉さんといつものお二人、そしてマロ君と文字ぃ君達や。『のべつ幕なし』のネタ連続を期待してまっせ! にゃ、そんな訳で『ろ』の幕あk‥‥って何で『ろ』やねん」
 すぱこんっ!
 右腕に付けた『のんびり いこうぜ』の腕章と愛用のマイクを手にした苺(fa3120)が元気一杯に挨拶。豊浦 あやね(fa3371)も後に続いて負けじと勢いよく言葉を続け、苺の言葉に一瞬頷くもすぐさまそのボケにハリセンを一蹴。
「のぉんっ! 軽い冗談なのだ、仕込んだネタを使わない手はないのだー。では今日もこの通りユラお姉さんの突っ込み全開、おいらもボケ倒しで突き進む予定。それは過去を振り返えれば解るのだ! VTRきゅー」
 めげずに苺は回想VTRへの合図を送った。しかし急に出されても用意してないモノにスタッフ達は困惑し、カメラの裏で大きく腕を交差させ×を作る。見た苺はとっさに機転を利かせ、
「‥‥ねーなのだ。確かに食べたいものが食べられなかったりで、上り坂も下り坂もあったけど今は良い思い出なのだ。喉もと過ぎれば暑さを忘れるってゆー事は本当かもねー?」
「えぇ、そうですね。おっと紹介が遅れました。司会者の郭氏文令明です。マイお姉さんのお上手な諺活用に不覚にも感動してしまいました。『能ある鷹は爪を隠す』ですね。素晴らしいです」
 さも流れたような苺のコメントに関心した郭氏文 令明(fa0243)が彼女を褒める。嬉しさで破顔する苺だが、郭氏文を見るなり涎の筋を垂らした。
「そう、おいらは能ある鷹なのだー。ところで令明さんはどことなく鷹さんに似ているのだ。鷹ってトリだよねー? 鷹肉はおいしーのかな? トリ‥‥」
「は? いえ‥‥それはどうでしょう。存じ上げませんが‥‥。そ、そう、能といえばもう一つ『能書、筆を選ばず』という諺がありまして、書の上手な人は筆の善し悪し選ぶ事はせず、どんな筆でも立派な字を書くと言う諺があります。ユラお姉さんは愛用のハリセンが変わっても上手く突っ込みが出来るのでしょうか? そうそう海苔巻で試して‥‥」
 涎を拭う事も忘れた苺はウットリとした眼差しで郭氏文を見る。その視線はもの凄く痛い。彼は獣人である事がバレないようポーカーフェイスを装いながら豊浦にネタを振る。そんな郭氏文の言葉に大慌てで文字ぃ君達を掻き分け、白タイツ姿のHIKAGE(fa1340)が登場。
「の‥‥飲んでばかりじゃイ・ヤ」
 何を思っているのかカメラに接近すると、上目遣いで伸ばした人差し指をクイクイ動かし空中にのの字を書きまくる。それは蜻蛉を捕まえる仕草に良く似ていた。TVの前のみんなが目を回しかねないと思った豊浦が背後に忍びより一撃。ゲットされたのは蜻蛉でも視聴者でもなく、HIKAGEの方だった。
「うぅ、いきなり叩かなくても良いじゃないですかっ」
「いつもの事ながら『喉元、過ぎれば熱さを忘れる』やな、ひかげんっ。ふぅ‥‥この番組を長くやってて、なんや同じ人に似た突っ込みし、次も同じ事を繰り返してる気ぃしますわぁ。そこの人とかあの人とかに」
 文句タラタラのHIKAGEに、大きく肩で息を付く豊浦。彼女は最近感じた愚痴など零す。実はけっこう苦労性なのだ。
「じゃぁ、そんな毎日にもぅうんざり〜なユラお姉さんに朗報! 運試しをしてみよー。題して『残り物には福がある』ゲーム。ドンドンパフ〜っ!」
 一人勝手にゲームを企画し盛り上げるHIKAGE。だが、同じネタを企てていた郭氏文も一緒になって拍手し始め、舞台袖のマロ君を呼び込む。マスコットの彼の手は海苔巻きが積まれ盆を手に入ってくる。この番組の恒例となりつつあるロシアン食物だ。
「ネタに困った時のロシアンって訳じゃない、俺はこれが好きなんだぁー! では秋ということで行楽シーズン。今日はシューではなく海苔巻きでいきます。どうぞお取り下さいー」
「ご遠慮なくどうぞ。私は残り物には福があると言う事で、最後にします」
 季節感を取り込んだ粋なHIKAGEのはからいであるが、やる事は一緒。しかも用意された海苔巻きはマロ君の分まで入った九本あり、中にはややワサビをはみ出させ、あからさまな主張するモノまである。誰もそれを避け、かなり迷いながらも思う海苔巻きを手にした。最後にHIKAGEと郭氏文が顔を見合わせ、にかっと微笑むとサッと海苔巻きを取る。
「持った? いっせーのせなのだ! がぶぅ」
 全員が手にした事を確認した苺は掛け声と共にかぶりつく。数秒間、誰もが表情に変化なく辺りを見回すも、だんだんと涙目になる者がでてきた。それは豊浦と帯刀橘(fa4287)。ワサビのつーんに耐えながらも咀嚼し飲み込む。
「やったー。当たらなかったね郭氏文さん! 本当に『残り物には福』があった」
「えぇ、そうですね。これぞ『能ある鷹は爪を隠す』。フフッ‥‥前回の借りは返しましたよ。では気を取り直しまして、こちらの暖簾でも突っ込んで貰きましょう。尤も『暖簾に腕押し』という諺がありまして意味は手応えも張り合いもないことの例えで、無理だと存じ上げます。では番組開始と‥‥」
「ちょと待てぇい! なんや言うてた事がちゃうやんか」
「そうですか? もしこれがお姉さんに当たらず、俺に当たったら『喉もと過ぎて忘れていた苦しみの再来』とか、どんな風に転んでも諺を実演出来るよう考えていたんですけどね。俺って凄い? 爪隠してたんだー。誉めてぇん」
「褒められるかーっ! 小さい子にまでワサビを食べさせてぇ、天誅!」
 豊浦は郭氏文から長暖簾を取り上げると、怒りに任せ二人の身体に布を巻き付けだす。為す術も無くされるままの彼らは、すっかり布で覆われ一つに纏められてしまった。
「ふん。海苔巻の刑やねん!」
「こ、これは海苔巻きではなく簀巻き‥‥。のっ暖簾でも結構ツッコめますね‥‥」
「やっぱり、上り坂あれば下り坂ありだったよー」
「じゃーそろそろ番組開始なのだ」
 微妙に感心している郭氏文と用意していた諺で括ったHIKAGEの前に苺が現れ開始の合図。ようやくスタートである。


 まず初めは筋骨隆々の身体を白タイツで包み、仁王立ちする鬼王丸・征國(fa0750)。前回の演出、悪の少佐がよい子の間で受け、強面のおじさんから面白いおじさんへとランクアップを遂げ、その心をがっつり掴んでいた。
「のぅ、今回は初心に返りミニコントを頑張るぞ。ほじゃスタートじゃ!」
 お題文字に沿ったコント開始の合図を送る。画面が切り替わり、映し出されたのはどこかの公園。木枯らしに吹かれながらベンチに佇むのは以前、悪の組織幹部を務めていた鬼王丸。正義の味方株式会社と一二を争うほど株取引で儲け、その金で羽振りの良い生活を送っていたがバブルが弾けたと共に切ない生活を送る羽目となった。上質の白い戦闘服もくたびれ見え隠れ。追い打ち掛けるよう流れるノクターンの旋律がもの悲しさを更に上げた。
「はぁ‥‥人生たぁ『上がり坂あれば、下り坂あり』じゃのぉ。じゃが時代も安定しょぉったんじゃ、ここは一つ頑張って、もうひと花、悪を咲かせちゃる! そう‥‥この背後に流れる曲はノクターン(夜想曲)じゃ。ラテン語のノクトゥルヌス=「夜の」っちゅう形容詞が語源になっとるんじゃけぇの。夜想曲っちゅう日本語表記は字面の美しさばっかしでのぉて、言葉の意味を反映した訳といえるじゃろう。ほぃじゃがショパンのノクターン‥‥中略。こほんっ彼はこの遺作を含む二十一曲のノクターンを残したんじゃ。そして‥‥」
「説明長すぎやわっ! 早ぅ本題に入りなはれ」
 すぱぁんっ
 蘊蓄を垂れながす鬼王丸に豊浦がハリセンを振り下ろす。彼の頭部から小意気いい音が響いた。
「あたた‥‥。随分威勢の良いお姉さんじゃのぅ、気に入った。ワシに投資をするのじゃ! 借りたお金で会社を立て直し頑張るけんのぅ‥‥おぉ?! ありがとう! まずはこの資金で、競馬かパチンコで殖やして株取引で一攫千金k‥‥」
「なんら前と変わんやんっ『喉もと過ぎれば暑さを忘れる』やないか!」
 あらかじめ用意していたちみっこ銀行と書かれた札束を差しだす豊浦。それを受け取るやいなや鬼王丸はほくそ笑み、随分オトナな発言をぶちかます。しかし間髪入れずに豊浦の雷とハリセンが鬼王丸に落ちてきた。会心の一撃。打ちのめされた彼にもはや戦闘力は残っていない。画面に豊浦WIN! とテロップが大きく流れ、すーっとひいていくと、
「みんな〜、こういう大人になっちゃ駄目だよー。次は僕達ウィル&タッチー! 寸劇をするよぉーよろしくね」
 なかなか抉る突っ込みを可愛い笑顔でくるんだウィルフレッド(fa4286)と帯刀が画面に向かって呼びかけ、お題コント開始。
「あ〜ぁ、あそこで売っていた某ゲームのディブファイルが欲しかったなぁ〜」
「お金もないし、大体DVDを再生できるPCもないんだし仕方ないさ‥‥」
 都内にある有名な電気街からの帰り道らしい演出をする二人。いつまでも指を口にくわえブツブツ言う橘にウィルフレッドが優しげに声を掛け肩を叩き諭す。が、しかし橘の方は納得できないらしい。いきなり首と身体を激しく捻りながら暴れ出した。
「やだい、やだい!! そうだ、TCG買ってレアカードを売却するんだ! うまく行けば一攫千金──ぐはぁ!?」
「そんな事を言ったって仕方ない話でsy‥‥」
 ずばしっ!
 言葉に耳を貸さない橘の首にウィルフレッドの鋭い手刀が決まると、鈍い音と共に床に突っ伏する相方。いきなりの暴挙にスタジオ騒然。そんな様子をモノともせず冷静にウィルフレッドは淡々と静かに話し出す。
「先程、僕は見ました。タッチーの口から大変なモノが出たのです‥‥。そう、第三の手が伸びてあるはずもないDVDをがっちりと掴んでました‥‥。ぼ、僕は正常な世界の住人なので、今見た事は夢と思いこのまま去ります‥‥。これが僕、ウィルフレッドの心霊目撃譚です──」
「ちょい、待ちなはれ。これってなんやオチがずれてるやんか! はいっ次回はきちんと考えてこよー!」
 ぱぱ〜んっ!
 途中から心霊体験を語る番組になってしまい、妙に説得力のある言葉で終了へと導くウィルフレッド。しかし豊浦から待ったが掛かり、再提出と添えられた言葉と共にハリセンの活が入ってしまった。流石はネタに厳しい関西系な彼女であった。


 この番組のトリはやはりこの人、ボケ倒しの若侍・真田・勇(fa1986)。
「今回はの巻‥‥じゃなくて、ののの巻?! ではなく‥‥のの巻。うぅ、言い難いっす〜」
「真田さん、声優が本業というのに拙くないですか?」
 郭氏文のシビアな一言に凹むも、真田は素速く気を取り直し、文字作りセットをよじ登る。
「うぅ‥‥さぁ、『ノ』を作るっす。レッツゴー!」
 身体をゆるやかに右から左に傾け一人でお題文字『ノ』を作った。
「‥‥ふっ。一人で出来ない事はしない‥‥これぞ同じ『轍は踏まない』っすよ!」
「なんで『ノ』から始まる言葉じゃないのだー?」
「それは簡単っす! 『ノ』を使った同じ意味を持つ諺なんて、まーったく知らないからっす!」
 お題文字を使った諺を使うところを他の諺を代用。今度は苺が小首を傾げ真田に問うが、鉄棒の上でふんぞり返り威張りくさる。突っ込みたいがハリセンが届かない豊浦は下から真田の足を引っ張った。
「なに、開き直ってるのやっ」
 べちょっ!
「のぉぅ〜痛いっす‥‥。うぅ『の』は難しいっす。ノータイムで考えるのは無理っすよ、の『の』ー」
 無様な恰好で床に落ちる真田。強か打った頬をさすりつつ、続けて色々と話し始める。
「あ、思い出したっす。『能ある鷹は爪を隠す』これはまさに僕の為にある諺っす! 何時もは天然のように振舞う‥‥まさにっすよ」
「それは平素は才能をひけらかすような真似事はしないという例えであなたのは、ただのボケや」
 ばしぃんっ!
「あうぁ〜。痛いっす。あ、衝撃でもう一つ思いだしたっす『上り一日、下り一時』。意味は物事を作り上げるには、長い時間と労力を要するが、壊すのはあっという間の例え。ボケるにも時間が掛かるが‥‥突っ込みは一瞬‥‥なんてこったい!」
「ホント、喉元過ぎれば熱さを忘れるやな、真田さん。ほな、これが本日最後の大突っ込みや! のさばるボケを何とする、天(ディレクター)の裁きは待っておれぬ、もう一人のお姉さんも当てにはならぬ(ボケ筆頭)、なればウチが‥‥闇に裁いてツッコミを‥‥葬武乱!!」
 ずばしぃぃんっ!
 豊浦の渾身のハリセン殺法により真田の身体が画面外へと弾き飛ばされた。凄まじい打撃力に皆、顎がガックリ落ちた。
「で、では私も『乗りかかった船』いったん物事を始めたり、かかわりを持った以上、途中で止めるわけには行かなくなる事の例えがある通り、最後までお供しましょう‥‥。皆さん、スタッフさん。よろしくお願いしますよ。ではまったねー」
 驚きながらも、なんとか番組を締めた郭氏文であった。