いろはに諺 くの巻アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 易しい
報酬 1.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/15〜10/17

●本文

 サブタイトルは実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
 一応、教育番組である。いや、そのはずだ! 何と言おうと‥‥。
 どうも言葉が濁る理由は、番組担当のプロデューサーの指示で運び込まれる小道具、衣装の所為だからである。華やかで奇抜、要するにイベントパーティーでも行われるのではないかと思えるモノばかりなのだ。
 スタッフの手により次々と運び込まれる段ボールと、大道具さん達が作る和風なセットが着々と仕上がってゆき、大きな筆を持ったヘラジカがモチーフのマスコット『マロ君』が、スタジオの隅で衣装さんの手を借り着替えを済ませると、スタンバイOK!
 あとは文字ぃ君となる出演者、司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
 さぁ、賑やかに放送開始である。

■出演者募集
 いろはに諺の出演者を募集します。
 楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。

■演出
 その1 諺とは関係なく「く」の文字を頭に使い面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となって、体を張り文字を作って頂きます。
 その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントなど、お願いします。
 ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうのも良いですし、創作した諺の披露や、体を使ったスタントでコントもオッケー。
 とにかく一番大事なことは、皆様がワイワイ楽しんで番組を作ってくださること!
 コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。
 最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第!
 用意した諺は、全て使わなくても大丈夫です。

■番組マスコット情報
名前:いろはの守言彦麻呂(略称いろは麻呂でマロ君)
外見:赤い色をしたヘラジカっぽい、ふわふわもこもこでなんか可愛い。
持ち物:大きな筆を所持。
性格:基本はドジ。ボテボテした動き。だが、意外と俊敏な時あり? (中に入った人次第)。好きなモノは毎週のお題で変動


■お題
 く
「薬も過ぎれば毒となる」
意味:病を治すのに効く薬も使い過ぎれば、逆に毒となってしまう事から、どんなに良い事でもやり過ぎれば、かえって悪くなってしまう事。どんな事も、ほどほどが大切であるとういう事。

「口と腹とは違う」
意味:口で言う事と、腹の中で考えてる事は違うという事。

「雲を掴んで鼻をかむ」
意味:空に浮ぶ雲を手に取り鼻をかむという事など、どうやっても出来ない事を揶揄した諺。

●今回の参加者

 fa0243 郭氏文 令明(20歳・♂・鷹)
 fa0402 横田新子(26歳・♀・狸)
 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa1340 HIKAGE(18歳・♂・小鳥)
 fa1986 真田・勇(20歳・♂・猫)
 fa3120 (14歳・♀・狼)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)
 fa4361 百鬼 レイ(16歳・♂・蛇)

●リプレイ本文


 彩色豊かに描かれたタイトル文字が子供達の声で読み上げられると、画面は切り替わる。
「にゃにゃっ! 今週も『いろはに諺』始まり始まりやで。え〜『愚公山を移す』の言葉もある通り、積み重ねた努力は報われる筈や。諺は難しそうで嫌や言うても『食わず嫌い』で敬遠せんで『来るもの拒まず』の精神で一緒に学んでいきまひょ。司会はウチことユラお姉さんやねん。ほなよろしゅう」
 突然のキューに驚いた豊浦 あやね(fa3371)は、つい口癖が出てしまうが素速く切り替え笑顔で挨拶すると、郭氏文 令明(fa0243)が、いつも通り淡々と言葉を紡ぐ。
「はい、司会者の郭氏文令明です。では、いつも通り諺を一つ‥‥本当に良い物は古くなったりしても値打ちがあるという例え『腐っても鯛』という諺がありますが、鯛もお姉さん達もいつまで経っても素敵ですよ」
「うぷぷっ『喰えない人』‥‥郭氏文さんは、まさにやなぁ。『の』の時みたいに何時も涼しい顔でサラリと仕込んできよるわ」
「ユラお姉さん、郭氏文さんは食べられるのだ。それに鯛みたいに腐ってないのだ! あぐぅ〜」
 すぱぱぁぁ〜んっ!
 諺を巧みに操り甘い台詞に変換する郭氏文に向かって鳥肌を立たせつつ豊浦が諺で応酬。そこに何を勘違いしたのか、食物ネタに釣られ以前より郭氏文を狙っていた苺(fa3120)が大口を開け腕に飛びつく。
 可愛い歯形が付く直前、豊浦のハリセンが空を切り郭氏文のボケと苺のいただきますをダブルブロック!
「や、せやからってマイお姉さん、食おうとせぇへんように! その意味とちゃいまんがな」
「あいたた‥‥『口は災いの門』ですね。不用意な言葉が後で災いを招く。話をする際は言葉に気を付けよという戒め。ですが仕事上そうも言ってはいられません。やはり『君子は危うきに近寄らず』。に賛同した方が良いのでしょうねぇ‥‥」
「言いたい事はそれだけやな? あんなぁ『口の虎は身を破る』な言葉がありますねん。意味は迂闊な事を言うと身を破滅してしまう。‥‥わざわざ実践せぇへんでもええのんや! 郭氏文さんっ」
 豊浦はきらり鋭い眼光で郭氏文を捕らえた瞬間、勢いよくハリセンを振り下ろす。
 どばごーーんっ!
 鋭いあたりに彼は床にべちょっと叩き落とされた。
「むぅ、『口は災いの元』‥‥。皆、一つお勉強になったね、なのだー。あ! 口で思い出した。今日は番組に届いた質問に答るのだ! なになに‥‥マイお姉さんは口から先に生まれたんですかぁ? 勿論なのだっ。おいらは声を出す事が得意で食べるのも大好きなのだっ。こんなに解りやすい話はないのだー」
「‥‥懲りない面々に『口を酸っぱくして』言うてもあかんかも知れへん。このまま突き進んでもろうて一度、苦渋を舐めて貰いまひょか‥‥ん? く、臭い‥‥なんや?」
 郭氏文の不幸に苺は諺を巧く当てはめると、続いて送られてきた葉書を大きな声で読み、輪を掛けて大きな声と笑顔で答える。
 あまりの突っ込み所満載すぎに豊浦はハリセンを振りかぶるも、プルプルと左右に頭を振り腕を下ろすと、今気付いた異臭に小鼻をヒクつかせる。
「えぇ‥‥何か匂いますね」
「クンクン、確かにきついけど、微妙に美味しそうな感じがするのだー?」
 いつの間に復活したのか郭氏文も怪訝な顔で、ハンカチで鼻と口を覆い匂いの元を探った。苺は鼻を鳴らし匂いのする方に顔を動かす。それに釣られ文字ぃ君ず’もキョロキョロ。
 皆で匂いの元を探ると、行き着いたのはスタジオの隅で背中を丸め何かをしているマロ君の姿。その中身は前回同様に真田・勇(fa1986)が入っている。
「何をしているのだー? マロ君」
 優しげに声を掛ける苺に真田のマロ君が振り返ると、両手いっぱいにくさやを持ち、七輪で炙っている最中だった。
 彼が退いた瞬間にツーンと襲う刺激臭。誰もがあまりの匂いに涙目で訴え出す。
「うがっ臭っ」
「何やってるのー」
 言われて真田のマロ君は『今回の好きな食べ物はくさや。 癖ある馬に能あり』と、書かれたフリップをサッと上げる。豊浦はやや納得顔で腕を組み、
「成る程‥‥よく走る馬には何らかの癖があるいうわけや。人も一癖ある方が何らかの取り柄があると言いたいんやね。要はくさやは臭くて一癖あるけど、美味しくてええよーって事? しっかしよぅこの匂いに耐えられるなぁ〜」
 聞くと、真田は頭が落ちそうなほど激しく縦に振るう。
 そんな彼にふと疑問を持った豊浦。どうしてこの臭い中、平気でいられるのかとマロ君の口にある空気穴から覗き見た。目に飛び込んできたのは驚くべき光景。両方の鼻穴にティッシュをねじ込む暴挙で匂い防いでいる青年がいた。ネタのためなら息苦しさは二の次。見上げた芸人魂だ。
 何もしなくとも暑苦しい着ぐるみの中で、鼻を塞いだ真田はヘッドバッキングのし過ぎで酸素不足に陥り、クラリと膝を付く。
「‥‥何も生死を賭けてまで。えぇ勿論、その努力は凄いと思いますが‥‥ところでそのくさや。こちらへ下さい。臭いので片付けましょう」
 冷静な郭氏文にサクッと流され、かつ、くさやまで没収されてしまった。真田のマロ君は、B級愛憎劇ドラマのヒロイン宜しく大袈裟に泣くジェスチャーの後、ダッシュで場を後にする。が、途中ぼてっと転がりそのままフレームアウト。イマイチ何がしたかったのか要領を得ないがそれは良しとして、
「モグモグ‥‥実は先日、薬物抵抗を習得したのだ。ちょっとくらい美味しくなかったり、体に悪くても大丈夫なのだー! では始まりなのだー」
 片付けし損ねたくさやを囓りながら苺が、TVの前のよい子が解りづらいオチで締め始まり挨拶をした。


「くあはははっ、少佐役がうけておったとは‥‥こりゃぁ嬉しいのぅ。そうお題ネタじゃ! CROW‥‥つまりはカラスの事。なんでもギリシャ神話では当初白かったらしいのじゃ。日本ではヤタガラスと言うて、三本足の鴉が神様のお使いをするそうじゃ」
 CM明け、カラスの着ぐるみ姿でどーんと現れたのは鬼王丸・征國(fa0750)だ。英語の発音もなかなか良く、羽根の付いた両手をブワッサブワッサっと羽ばたかせ、タメになる小ネタ披露。
 彼自身も楽しみながらやっている所為か場を盛り上げ、その強面の顔が明るく豪快な笑顔が良い。だが、初参加の百鬼 レイ(fa4361)は、どうにも進行を掴みきれず、やや緊張の解れた顔でカメラに向かい挨拶する。
「初参加の百鬼レイと申します。よろしくお願いします。自分はコントに挑戦★ では秋の味覚の「栗」拾いを。く、草の根を分けて探しちゃいます!」
「くふふっ、百鬼さんそんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。私はもう五回目ですけれど久し振りですので、番組の進行のコツを忘れてそうな気がします。けれど皆さんとTVの前のよい子のみんなと仲良く、精一杯頑張っていきますね。‥‥あら、栗拾いですか? それは良いですねぇ。本当に秋も深まり食べ物が美味しい季節がやってきました。『く』の付く食べ物といえば、栗以外にクッキー、クリーミーコロッケ。それにクラムチャウダー‥‥」
「横田さんてば、食べてばかりやんっ!」
 ぱこぉん!
 まだ強ばる百鬼の後ろにそっと立ち、優しく声を掛ける横田新子(fa0402)。百鬼は良く通る涼やかな声に天女到来かと思い、振り返ると、そこにはでっかい栗。
 頭のみの栗の被り物をつけた横田だ。百鬼は驚き目を白黒させるも、彼女はマイペースに『く』の付く菓子を紹介し始め、ポケットやら袋から取り出してはパリポリ食べていく。スープ系は流石に出せずスタッフから受け取ろうとしたところで、ようやく豊浦の突っ込み。
「ん〜、流石に食ってばかりではいけませんね。まぁ『く』のつく食べ物は何でも美味しいですが、ここは秋らしく百鬼さんが拾って下さった栗で栗きんとんと栗ご飯を作ってみようかと思います。では頑張って拾って下さいね」
「は、はい解りました。実はもう拾ってきているんですよ。どれくらい拾えたかはVTRで確認してください‥‥。その間に横田さん、調理をお願いします。ではスタートー」
 百鬼は気を取り直して、栗拾いをした時のVTRを流す合図を送った。
 そこは、局からそう離れていない栗林。撮影をしているのはカメラマンではなく、一人ロケに慣れているあの人物。
「え〜、来たのはいいのですが、そんなに落ちてませんねぇ。そうだ! 木を揺すったり蹴っ飛ばして、上にある栗をおとしちゃいましょう!」
 そう言うが早いか思いっきり木を揺すり始める。なかなか大胆な行動をかます百鬼。
 ユッサユッサ、ポトッ、ポトポト‥‥ドドドドドドッ
 最初はポツポツ落ちてきた毬栗もあまりに激しい揺り方によって怒りに駆られたのか反撃の如く落とす。もちろん防具なしの百鬼。当たればかなり痛い。
「くりぃ? ぎゃぁぁ〜〜うぅ‥‥これは自分の生命のCrisi(危機)。自分の行動で己をピンチに陥れるとは‥‥これは正に『草を打って蛇を驚かす』だ‥‥がくっ」
 お約束通り、たっぷりの毬栗の下敷きになり、一言巧く諺を宛てるとがっくりと気を失った。
「‥‥とまぁ、苦労して取ってきた栗です。‥‥お? もう出来上がったようですね。ホコホコの匂い‥‥が?」
 VTRが回っている間にわざと映像と同じようにボロボロの姿で戻った百鬼。その鼻孔を擽るのは横田が調理した栗料理。
 栗の被り物を装着したままで調理した所為か些か動きづらくこちらもボロボロだ。マロ君とスタッフが用意したテーブルに並べられた栗きんとんは黄金に輝く黄色ではなく、燻したようなセピア色。ごろり転がる栗も岩のようだ。
 誰もがそれを見てたじろぐ中、
「私、家事は得意なんですが‥‥。今回は、まさかの失敗です。まさに『孔子の倒れ』とはこの事でしょうか? けどきっと美味しいと思いますので食べてみて下さい」
「あ、いえ‥‥今お腹空いてませんので‥‥」
「う、そ。そうなのだ! 郭氏文さんと一緒でお腹は空いてないのだ‥‥じゅるり」
 ニッコリと微笑み促すも、豊浦は素速く逃げ出し、掴まった郭氏文は首を細かく横に振る。苺は彼に合わせるも口元は何とも正直だ。
 仕方なくスタッフに勧めていく横田だが誰もが、蜘蛛の子を散らすように逃げだした。
 しかし勇者もとい猛者は居る。
「ふむ、皆は『口が奢って』おるんかのぉ。美味しそうに出来とるじゃないか。滋養たっぷりというのも、体調崩し気味のわしには、ありがたい」
「えぇ‥‥自分が酷い目にあって取ってきた物をそう邪険にされてはね。う〜ん微妙な色合いだけど空腹は最上のソースってな事で、いただきまーす」
 鬼王丸の台詞に合わせて『口が奢る:美食に狎れ過ぎて、普通の料理では不満に思う事』のテロップは流れ、百鬼は色合いを確かめるように眺めて共に一口。
 モゴモゴと動く二人の口を固唾を呑んで見守る司会者トリオとスタッフにマロ君。
 ピィンと張りつめた緊張感漂う中、二人の顔が徐々に変化してゆく。それは秋の日の釣瓶落のように早い。
「モグモグ‥‥モグモ‥‥ウボアァァッ!! くはぁ〜っこ、これは‥‥口に合いません‥‥」
「‥‥く、ぐふっ‥‥す、すまんのぅ、やはり『薬も過ぎれば毒となる』様じゃ‥‥。わしもここら辺りでご遠慮いたそう。『薬より養生』じゃよ。『君子豹変す』。きちんと改めさせて貰う。本来は、君子は誤りとわかったらすぐに改めることをいう良い意味じゃ。しかし今は誤用が多く酒を飲んでがらりと態度が変わったり、無節操に考えを変えたりする事にいう場合が多いようじゃが。それは間違いじゃよ」
 あまりの味にのたうつ百鬼。あんまりと言えばあんまりだ。それを見ている鬼王丸は大人の男として耐え、なんとか飲み込むとおしぼりを手に、こっそり冷や汗を拭った。勿論彼の台詞に合わせて『薬も過ぎれば毒となる:どんな良い物でも度を越すとかえって害になる。 薬より養生:薬を飲む事は大切だが、薬は手助けに過ぎず養生が大切である』のテロップが流れる。
「くっすんっ! そこまで酷いとは‥‥『臭いものには蓋』ですね‥‥」
 半ベソの横田が誰も手を付けない栗きんとんに近くにあった布巾を被せて立ち去った。


 番組終了間近。栗を手に現れたのは真田のマロ君。固い皮があるにも拘わらず齧り付く。
「それを食べるんは無理やろ。それは苦肉の策かいな?」
 豊浦が半ば呆れた表情で聞くと、真田のマロ君は激しく首を縦に振りまくる。
「なんや、今日はよぅ首を振るなぁ‥‥って、もしかして首振り三年ころ八年?」
 頭を掠めた諺を聞くと、更に首を振るうも、あっさりと事実を突きつけられる。
「マロ君、あれはなぁ尺八を吹くのに首振るって音出すのに三年、良い音色になるのに八年‥‥つまりどんな道でも、相応の腕になるには長い修練が必要って事やねん」
 それを聞いて真田のマロ君が大仰なリアクション後、しょぼーんっと肩を落とす。
「まぁそう言った事も『愚公、山を移す』。意味は忍耐強く努力を続ければ、何事もきっと成し遂げられでしょう。いつも言っておりますが、努力は怠らないように。いつか実るものですよ。では‥‥」
「まったねー」
 郭氏文の言葉で素速く元気を取り戻すと、モニターに向かって大きく手を振る。釣られて出演者達も大きく手を振った。
「そういえば‥‥筆はどないしたん?」
 最後の最後で豊浦の一言にハっとした表情を浮かべるマロ君。
 それとは別にこっそり陰で横田の作った栗ご飯をつまみ食いしていた苺が後日、ハッとした表情と共に不調を訴えるのも先の話である。