female Buccaneers4ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/25〜10/29
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●本文
『female Buccaneers 〜 海を彩る美しき女海賊たち 〜』
一艘の木造船が沖を滑るように進んでいく。その旅立ちを真っ青な空も海も祝福しているようだ。
風を孕み脹れる真っ白な帆。高々と立てられたマストに真っ赤なジョリー・ロジャー(海賊旗)がはためいて。
そこに映し出された金色の飾り文字『female Buccaneers 〜海を彩る美しき女海賊たち〜』とこのドラマのタイトルが流れ消えた。
ロードストーンを手に入れたジョリー・ルージュ号の面々。それ以上に彼女達を喜ばせたのはプライベーティア号から一本、勝利を奪う事が出来た事だろうか。探索隊から受け取ったロードストーンを翳す船長の表情は、いつになく明るく軟らかい。
「ちょっと見て、ほら。この針が示す方向にお宝『紺碧の心臓』が眠っているのさ。この方向に行けば間違いなくぶつかるね! さぁ行くよ、みんな!!」
ロードストーン‥‥つまりは方位石のこと。古びた文字盤の上に乗る針がクルクルと回りピタリと止まる。その先端は西を指していた。船長の手中にあるロードストーンを覗き見ていたジョリー・ルージュの面々は、顔を合わせ頷き合うとすぐさま配置に着き船を発進させた。
一方のプライベーティア号。島から戻った船長から、すぐにジョリー・ルージュを追うよう指示が出された。
レネ島でロードストーンを奪い合う際に一芝居を打ち、ロードストーンを彼女達に渡したのは何らかの意図があるとしか思えない。船に乗る男達の誰もがそう思う中、船長が汗と泥で汚れた服の着替えを済ませ、自室から現れた。
颯爽と甲板を歩き、手にした望遠鏡を覗きこむ。なにか考え深げに手入れの行き届いた顎髭を一つ撫で、距離を置いて前を進むジョリー・ルージュ号を見ると、ポツリと一言。
「‥‥そろそろ現れる頃です。一旦、船を止めなさい」
「‥‥?」
誰もが指示に首を捻る。しかし気付いた。ジョリー・ルージュ号の真上に差し掛かる黒い雲を。
雲の切れ間から現れる大型の船。破れた帆の代わりに無数の青白い炎を揺らめかせ、ゆっくりと彼女達目掛けて降りてくる。
誰もがその不気味な船に息を呑んだ。
「セント・エルモの火を湛えた幽霊船のご登場です。すぐにサイレンや様々な海の魔物達も現れるでしょう。さてさて‥‥彼らが勝つか、彼女らがあの船から逃げ切れるか‥‥見物と洒落込みましょうか」
口角を上げて声もなく笑う彼。
穏やかだった海面が急にうねり始め、白い波飛沫の間から歌声が聞こえだす。激しい波に揉まれるジョリー・ルージュ号。
しかしプライベーティア号も船長の予想に反して、その嵐に近かったらしい。サイレンが放つ美しくも悲しげな声に包み込まれていった。
■参加者を募集します。
ヨーロッパ発の海を渡る冒険活劇『female Buccaneers』に出てくださる出演者を募集してます。
女性海賊達が乗り込むジョリー・ルージュはなるべく女性の船員が好ましいと考えており、またプライベーティアの方は王室から許可書を得た私掠船。こちらは男性の乗組員で構成をして頂きたいと考えております。
そして配役は二つの船の船長以外、まだきちんと決まっておりません。この二つの役が重ならない限り、皆様の演じたい役のご希望を頂ければ嬉しく、また添えるよう努力させて頂きます。ただしこのドラマに沿った役でお願いします。
ジョリー・ルージュの船長 腕っ節と機転の良く利く女船長。
プライベーティアの船長 明晰な頭脳と繊細な神経の持ち主だが、土壇場に強い男
操舵手
帆手
甲板長
調理長など船に関わる仕事など。
前回と同じように使用できる武器等の説明をさせて頂きます。
ピストル:原始的なフリントロック式のピストル。殺傷能力は高いものの一発撃ったら再装填しなければならない。また潮風で火薬が湿気り不発もしばしば。そのため何丁も肩帯から提げることがある。
マスケット銃:銃身の長いフリントロック式の銃。殴り合いの時でも使われる。
カトラス:海賊が用いた片刃の小剣。船など狭い場所で戦う時に威力を発揮した。
今回の情報
セント・エルモの火と幽霊船 ロードストーンに呼び寄せられるように現れた幽霊船に付く火。本来は海の守り神が放つ火ですが、今回は勝手が違うようです。
セント・エルモが現れた結果、今回は海に住む怪物、サイレンが目覚めたようです。サイレントは美しい女性または男性の上半身に海蛇の下半身、背に蝙蝠のような羽根を持ち、甘く優しい歌声と問いかけで船乗りを誘惑し海に身を躍らせたが最後、ひと噛みで倒すという恐ろしい魔物。くれぐれも落下にご注意を。
●リプレイ本文
●
そう、気付いた時には遅かった。不穏な風に呼ばれた黒い雲が光り輝く青い空を闇に隠す。ジョリー・ルージュ号に乗る誰もが怯み辺りを見回す。
特に鋭い勘でこの非常事態を敏感に感じ取ったのは見張り台に立つマルコ・ロッソ(ブラウネ・スターン(fa4611))だ。クールを売り物にしている彼女が、雲が現れた途端、落ち着かなくなり、愛用の銃と酒を手にウロウロしている。
「なんか嫌な空気だな。どうにもこの航路には気乗りがしない。サイリーン、他に手はないのか?」
「‥‥そうね、じゃぁ、引き返すか、それとも避けてみる? まぁ、どのみちこの雲は追ってくると思うから、どれを選んでも無駄そうだけど。だったら正面から突っ込んで活路を見出す! 何者にも遮られないのがこの船! そして私達らしいやり方じゃない?」
膝の震えを隠すように行ったり来たりしては、ラム酒の瓶を口に運ぶ。どうやら雲からでる凄まじい障気を恐れているようだ。男百人に囲まれても素手で対峙出来るほどの度胸はどこへやらである。
呆れ顔のサイリーン(豊浦 まつり(fa4123))がルビーのダイスを仕舞い、帆を操りながら一言。マルコはフンッと鼻を鳴らし、またラム酒を口に含んだ。
「あら? 雲の次はひどい風と波‥‥。ねぇ‥‥あ、あれは何!?」
舵輪を握るメアリー・ショウ(マーシャ・イェリーツァ(fa3325))が、進路を保ちながらも、雲の切れ間から現れた大型の船を指さす。それは破れた帆の代わりに無数の青白い炎を揺らめかせ、ゆっくりと彼女達の船目掛けて降りてきた。
「‥‥やっぱりそうか。おぉ! 聖ルチアにかけて私は迷信深いのになんて事だ!」
船は空から海へ滑るように侵入を果たすと、ジョリー・ルージュ号と併走し始める。そのスピードは驚くべきもの。だがそれ以上に驚かせられるのは青白く、鈍い光りを放つ船体だ。縁にへばりつく無数の骸骨が、空洞の目でじっと彼女達を見つめて嘲笑うかのよう。
幽霊船登場に、いよいよ恐れをみせたマルコは正気でいなくても良いよう、酒を煽り揃いのルビーで出来た十字架のネックレスを取りだし神に祈りの文句を捧げた。
同じ頃、停泊しているプライベーティアもジョリー・ルージュと併走して走る幽霊船を目撃し、誰もがその不気味さに息を呑んでいた。
ただ一人、冷静に見据え口元を歪めているのはキャプテン・ホーキンス(AAA(fa1761))のみ。
「セント・エルモの火を湛えた幽霊船のご登場ですね。すぐに様々な海の魔物達も現れるでしょう。さて‥‥船から逃げ切れるか、はたまた飲まれて同様の道を歩むか‥‥ここで見物と洒落込みましょう」
口角を上げて声もなく笑うホーキンスに、いつものように愛嬌のある戯けた仕草の副長、ジル(Even(fa3293))は声を掛ける。
「そうしましょうと言いたいところですが、どうも波が妙な動きをしています。ゴールデイ、とり舵いっぱい、急いで! ‥‥ニルス、ちょっと甲板へ来て下さい。あぁ、やっぱり‥‥。船長、どうやら予定が外れてしまったようですね」
「そうなのか? ならこの蚊の鳴くような声も、予想外の展開‥‥といったところですかね?」
穏やかだった海面が急にうねり始め、白い波飛沫の間から航海士、ニルス(加羅(fa4478))が、称する蚊の鳴くような歌声が聞こえだすと、更に激しい波が現れ船は揉まれだす。どうやらホーキンスの予想に反して嵐に近かったらしい。
下を見れば無数の怪物が姿を現し、あからさまな敵意を剥き出し船を取り囲んでいた。
船に向けられる威圧を一身に浴びているホーキンスは、僅かに眉を顰め自慢の髭をいじりながら、
「たまには筋書き無しの舞台というのも、面白いとは思いませんか」
にやりと笑う。
●
追いつけ追い越せの接戦を繰り広げるジョリー・ルージュ号と幽霊船。
「最初は紺碧の心臓なんて、てっきり眉唾だと思っていたけれど。いよいよ真実らしくなってきたわね」
真剣な表情で舵を取るメアリーは、幽霊船と対峙するとは思ってもみなかったらしい。しかし彼女達の手にロードストーンがある以上、これから先、こういった困難が待ち受ける事があると確信した。その隣で頷く船長。
「手に入れた段階からこういう事って決まっていたのなら、教えて欲しいもんだ」
「確かにね。ま、これも大いなる賭の一つさ。尤も割のいい賭けじゃないけどね‥‥半分は意地かしら? メアリー進路はまっすぐでお願い。満帆! あいつらが起こした嵐を利用して、引き離すよ! そこ、帆をもっと膨らませて風を上手く掴むんだ。急いで!」
「サイリーン、時々貴女は驚くほど大胆なことを言い出しますのね。いいですわ、前進しましょう!」
尚もラム酒を煽るマルコは、揺れる船のマストに掴まり恐ろしげな骸骨達から目を背けている。そんな彼女に溜め息を付きつつサイリーンは冷静かつ大胆な指示を送った。あまりの豪胆な指示に驚くメアリーだが、にっこり魅惑的な笑みで承諾すると再度、舵を力強く握り直す。
それに合わせ甲板が船員達の足音で慌ただしくなり、全員言われた通りの配置に付き皆、出せる力を合わせる。
勿論、サイリーンも機敏に体を動かし船員に混じり、風を掴もうとロープを力一杯引き帆を直角に立て、メアリーは追いつかれまいと、技量の限りを尽くし波の動きを読む。
連携の甲斐あってか風に乗り、グングンと幽霊船を引き離した。すでにその姿は豆粒ほど。振り返り高らかに声を上げるメアリー。
「離したわ! これだけ離せば追いつけないわね」
「勿論! 風のご加護のおかげさ。自分たちで起こした嵐で出し抜かれるなんて、思っても見てなかったろうね」
サイリーンは汗を拭いながら応える。が、しかしあれだけ引き離したハズの幽霊船がジョリー・ルージュ号に向かってくる。しかも波飛沫一つ上げず不気味に海の上を滑り、その勢いたるや凄まじい。喜びに溢れた船員達の顔が恐怖に引きつる。
「そんな‥‥?! わたくしとサイリーンの操船に付いてくるなんて‥‥あの船は重さがありませんの?」
驚きの声を上げるメアリーに、横に並んだ幽霊船の一つ高くなった操舵から、青白い半透明な身体をした女性(那由他(fa4832))がカトラスを二刀引っ提げ立っていた。右目に眼帯を嵌めているが一方の開いた瞳は、まったく隙を感じさせず鋭い光を放っている。
「ふうん、お嬢ちゃんたちが『紺碧の心臓』を目指すのかい。‥‥ちょっと試させてもらうよ」
嵐の前の静かな波の音にも似た響く声がジョリー・ルージュ号の船員の耳に入る。
「あぁ、こんなことって‥‥主よ、彷徨える魂にお慈悲を」
メアリーは舵を握った手を胸の前で組み、天を仰ぎ見た。
幽霊船が離れていったとあって穏やかになり始める、プライベーティア号がいる海上。しかし、彼らの周りはそうではない。
「ん〜、もうその歌は良いですよ。飽きましたね」
ニルスは歌声を発する怪物に興味津々覗きこみながらも、どこかの港で聞いた話を思い出し耳栓を装着する。だがそれ以上の手出しがない彼らに物足りなさを覚えたニルスの興味はすぐに削がれてしまい、他の船夫達に耳栓を配り説明を始めた。
「良い判断ですね、ニルス。素晴らしい。そうこの怪物はサイレンと言いまして、上半身は美しい女性、下半身は海蛇。その魅惑的な歌声で船夫達を誘惑し船から落として喰うという恐ろしい怪です」
「はは‥‥だから歌で‥‥こういうことですか。これはこれは随分と魅力的で強引な客引きですね‥‥。しかし生憎、僕は足が綺麗で気っ風の良い女性が好みなんですよ。例えば君達に似た名前のお嬢さんとかね」
ジルは誘惑に駆られつつにやりと笑い、脂汗をかきながらいつも通りのたまわる。
しかしそうも言ってられない。誰かが誘いに駆られ縁を乗り越え海に落ちた。操舵手だ。無人となった舵のため船が勝手に動き始める。
慌てたジルが取り急ぎ舵を握り、
「うわっ!? 何やてるんですかゴールディ! 早く縄梯子に掴まって上がってきて下さい。彼が正気に返る間、僕が舵を取ります。船長、指示を下さい!」
船員が海に落ちた彼を助けるのを見届けたジルは、ホーキンスに指示を仰ぐ。一時の沈黙、ホーキンスは髭にをひと撫で、
「やってしまいましょう。本来は船での発砲は禁止ですがね」
「おぉ!!」
海にいる怪物達に向かって冷酷な指示を出す。その途端にガチャリとそこかしこから重々しい銃を取る音が聞こえ、次の瞬間、海に向かって一斉射撃が始まった。
●
幽霊船に横付けされた勢いでジョリー・ルージュ号が小刻みに揺れ、軋む嫌な音を立てた。誰もがそれを合図に武器を構え応戦の準備を整える。直後、船壁からよじ登ってきた骸骨達が姿を見せた。カクカクと顎を鳴らし武器を手に襲いかかる。
ジョリー・ルージュ号の甲板は一瞬にして修羅場となった。
マルコは混乱する戦場で愛用のマスケット銃を放つのは危険と感じ、手にした太い刀で力任せ、次々と骸骨達を薙ぎ粉々にしていく。勿論、帆手であり戦闘が苦手なサイリーンも加わり、腕を振るう。
一方、操舵を取られまいとメアリーと船長は背中合わせで骸骨達と対峙している。マルコの豪快な一撃を見たメアリーは、
「剣が通じるのですか‥‥それなら恐ろしくなどありませんわ!」
すぐさま骸骨達と剣を交え、鋼をぶつけ合う音と共に火花を散らす。
「ふふ、やるねぇ‥‥なら、これでどうだい?!」
幽霊船の船長は、しっかりと戦闘慣れしていない人物を見極めサイリーンに向かって両手に持つカトラスを振り下げ、素速い攻撃を見せる。
なんとかかわしていくものの、やはり押され後退るサイリーン。背中が縁に付き、振り返れば下は海。怪物達が奇声を発し、落ちてくるのを待ちかまえていた。
「‥‥あっサ、サイリーン!」
助けに行きたいのは山々だが舵輪を守るのに手一杯のメアリーが叫ぶ。その声に反応したマルコが素速くマスケット銃を構え、幽霊船長の背に一発ぶち込む。
「マスケットは裏切っても、ナイフは裏切らない‥‥。なんて思ったけれど、やっぱり銃の方が良いわね」
ゆっくりと振り向く幽霊船長に向かって一言呟いた。しかし次には予想もしていな、恐ろしい顔が彼女の前にくる。宙を掛け、牙を剥き威嚇する幽霊船長に思わず身を引いたマルコの後ろで、骸骨を片づけ終えたメアリーがレイピアを翳した。
「魂のみで彷徨っているとはいえ、誇り高い船長ならわたくしとの一騎打ちに応じなさい!」
一斉砲撃で打ち倒されていく怪物達を静かにかつ、冷め切った目で見やるホーキンス。その口元には残忍な笑みが零れている事を誰も気付かない。
耳栓をしていても指示は聞こえているらしいニルスはマスカット銃の弾が切れると、錆びて使い物にならない多くのカトラスをサイレントの胸目掛けとどめを刺す。
そんな中、奇襲を掛けた一匹のサイレントが海から跳ね上がり、ホーキンス目掛けて太く逞しい尾を唸ならせる。が、にんやり笑い異様な空気で身体を包むと、
「あの赤髭バルバロッサや海賊王女すら打ち破った私達が、この程度で怯むとでも?」
愛用の宝剣を閃かせその身体をすっぱりと両断。悲鳴を上げ海に沈むサイレントを冷徹な目で追った。
●
凄まじい形相でカトラスを自由自在に奮う幽霊船長。メアリーは冷静かつ、巧みにレイピアで交わしていく。しかし力の差か徐々に押されだしている。誰もが固唾を呑んで見守る戦い。
そこに流れるのは波音と剣が空を切る音に激しく擦れ合う金属音だけだ。
ガチィン!
ちょっとした隙に幽霊船長の鋭い一撃をなんとか抑えたメアリー。だが万力のような力で徐々に床へ押さえつけられていく。
「クッ!?」
しかし彼女は前回のホーキンスとの敗戦を忘れていなかった。押す事に気を取られている幽霊船長に肩を差し入れ、グッと体ごと押し返した。不意を突かれ怯んだ幽霊船長は反対側へ転がされる。そこに素速くレイピアで喉元を狙う。掻き上げた髪の間から揺れるルビーのイヤリング。
「ほう、なかなかやるもんだ。確かにその技量にはロードストーンを持つ資格があるようだ。これからも大変だろうが、頑張りな」
床に倒れる幽霊船長はにやりと口角を上げると構えるメアリーの身体を一瞬すり抜け空を舞い上がる。
隣に停泊していた幽霊船の帆代わりのセント・エルモの火が一つに纏まり一筋の光りとなって宝の在処を記す。ジョリー・ルージュの面々は美しい炎のラインをうっとりと眺めた。それににんまり満足した幽霊船長と散乱したがガイコツ達はその場から掻き消えていった。
●
「ふぅ、なんとか乗り切りましたね〜。‥‥ところで船長? さっきのは一体なんだったんです?」
怪物達を片付け終えたプライベーティア。青い血の付いた剣を拭うホーキンスに向かって、いつもの気軽な笑顔に戻ったジルはどこか曖昧にさりげなく問う。船長を見るその目は笑っていない。
「さぁ? セント・エルモの火が呼んだ怪物でしょう。これから先も注意が必要ですね」
いつもと変わらない丁寧な口調で答えるホーキンスに訝しげな表情を見せる他の船員達もチラホラ見えるが。彼らの間に素っ気なく割り込んだニルスは、一つ微笑み、
「ん? ジル、サイレンの歌で幻覚でも見ていたのか? ま、そういう船長も面白そうですし、‥‥野暮は聞かない主義なんです、俺。あぁ、そうだ。あちらはどうなったのでしょうかね」
いつもと変わらない様子で空を見上げまったりと航海士の仕事に就いた。