鈴音的声音道士 16アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
2.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/05〜11/09
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●本文
――それは昔‥‥神も人も、そして妖怪もがひとつの地で共存をしていた時代の話。
ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出している。
画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように左から右へ流れては消えていく。
――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、異形の妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた――。
画面は切り替わり、辺り一面は風の刃で無惨にも瓦礫と化す山。ユウアンの起こす風に乗り瞬く間に切り裂かれ、薙ぎ倒されていくのだ。道士の誰もが呆然と赤鬼の最後に放った言葉と惨状に動けないでいる。
一方、白鬼を追撃している二つの鈴と三人の道士達。
「ふはははは‥‥いつもいつもお主達にしてやられる我ではないわ! 西王母を返して欲しくば、駮様のお力を甦えさせる鍵‥‥白鈴の道士の娘を連れて参れ! 邪仙、お主も来るのだ。ようやく奪い取れた黄鈴、半分の力しかないとはいえ駮様には必要じゃ。勿論、お主自身も必要だがのぉ。早く参られよ!」
白鬼は西王母を抱え既に歪んだ時空を超え羅豊へ掻き消えた。悔しい声を上げる白鬼を追った道士達。
「むはははは‥‥もう少しで儂が収める混沌の時代の到来じゃのぅ‥‥それが嫌ならば、道士達よ羅豊に参られよ! 待っておるぞ」
木々が倒れる直前に上げる悲鳴の間から聞こえる低く不気味な声が、道士達を挑発した。それはあの羅豊の主、駮のものであるに違いない。
「来いって‥‥どうすればいけるんだよ?」
誰ともなく道士達が呻く。だが一人の道士が気付いた。赤鬼が開けた壁の大穴の存在に‥‥。
〜出演者を募集〜
中国ドラマ「鈴音的声音道士」では、四神と麒麟の法力の宿る鈴に選ばれた道士になりきって妖怪を封じてください。
また妖怪側の役、カメラマンや妖怪を動かす技術スタッフ等の裏方さんも同時に募集しております。
〜道士の法力選択〜
・青い鈴
青龍
春と東の守護神
能力:水 守備型
武器 龍笛&方位計 龍笛で睡眠誘発や能力を激減させることができ、また方位計により妖怪や仲間の居場所を知る事が出来る。
玄武の結界と組むことで守備能力が倍増。
・赤い鈴
朱雀
夏と南の守護神
能力:炎 攻撃型
武器 桃の法剣&法術 桃の法剣は妖怪を討ち取る際に使われる。白虎の詠唱で力が倍増する。
・白い鈴
白虎
秋と西の守護神
能力:森または道 攻撃型
武器 召還&詠唱 様々な式神を呼ぶ事ができ、詠唱で攻撃が出来る。
・黒い鈴
玄武
冬と北の守護神
能力:山 守備型
武器 天鏡&棒術 天鏡で結界を作り、棒術によって敵を薙ぐ。
・黄色い鈴
麒麟
? 中央の守護神。生命ある獣の支配者。
能力:?
武器 ?
なお詠唱、技の名前や攻撃の方法は鈴を手にした方が決める事が出来ます。麒麟の場合のみ設定、能力、武器など一から決める事が出来ます。
ただ、詠唱が長すぎたり、技の設定が複雑ですと割愛させていただきますのでご了承ください。
鈴は玄武、麒麟に限り二つに分けることが出来ます。しかし力は半分となってしまいます。また能力に適した技以外の力は、使えないことがあります。
この五つ鈴は必ず埋めて下さい。
妖怪情報:
ユウアン 前回同様に登場。入れ墨をした猿の姿をした妖怪。人を見ると嘲るように笑い、動きは矢のように速く、風を作る。これが姿を見せると台風が訪れ天災を撒く。
白鬼(通称 白)のっぺりとした無表情の冥界の鬼。武器は棍棒や妖術を操る。赤鬼同様に口から相手を混乱させる霧や溶解液などを吐き出したりする。西王母を攫い羅豊に逃げ込んだ。
彼の要望は『白鈴の道士の娘』。この娘をつれてこないと穴をくぐり羅豊に行く事は出来ない。
●リプレイ本文
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「白の奴めぇ! 私こそ本来在る者ぞ! ‥‥黒の道士よ、戦いは一旦預けるぞ、以金気剣成、疾!」
「く‥‥出し抜かれたっ」
危なげな足取りのような酔拳で雷后(桜 美琴(fa3369))に戦いを挑んでいる黒鈴の道士天曹(藤宮 誠士郎(fa3656))。
西王母を攫い逃げた白鬼と、奪った鈴が共鳴を計りダメージを負う前に、ここは一回身を引く事を考えた雷后はにんやりほくそ笑むと空から剣を作りだし、天曹に浴びせかけた。一瞬、彼が怯んだ隙に穴を潜り身を隠す。
あまりの無念と度重なる戦いで疲れた天曹は地に座りこみよれよれの道士服を更に汚し、苛立ち紛れに髪を掻きむしった。
その傍らで星麟(星辰(fa3578))も鈴を奪われてしまったショックで座り込む。ただ一人、星麟と同色の鈴を持つ春霞(月見里 神楽(fa2122))だけが、彼らにどう声を掛けて良いか解らず戸惑うように立っていた。
白鬼の残した言葉をそれぞれ三人の頭の中で咀嚼し、今後の行くへを早くも考えあぐねていた時、そこに複数の足音が聞こえてくる。妖怪と赤鬼を追った他の道士達だ。
「すまん、西王母を奪われ逃げられちまった‥‥。その穴が羅豊に続く道らしい。鍵を連れて穴を潜って来いだとよ。そっちはどうだ? 神の血を引く者は見つかったのか?」
「おいら達の方は天曹さんから預かった術の中に妖怪を閉じこめ、赤鬼を封印する事は上手く行ったよ、うん鍵となる方も‥‥ね。何か凄い事になっちゃってるよね‥‥」
「この子が鍵だそうじゃ。名は華蓮、うちの娘じゃよ。‥‥我が子を危険に巻き込んでしまうとは駄目な親じゃな‥‥」
「だ、駄目だなんて、そんな事ないアル。けれど連れて行くには危険過ぎアル。ここは美蓮さんと華蓮ちゃんを残して、俺らだけで強行突破でどうアルか?」
「それは難しいですわね、白鬼は連れて来いと言ってましたわ。彼女がいないと潜れないのでは? けれど連れて行くのは星麟さんが言うように危険ですわ‥‥。白鬼らがすぐ向こうで待ち構えてるかも知れませんし」
後ろで束ねた長い髪を揺らし駆け寄る小風(基町・走華(fa3262))に悔しげに俯く天曹が答え、彼らの報告を聞く。そこに美蓮(朝葉 水蓮(fa2986))が彼女に似た幼い少女を抱き現れた。白鬼の言う鍵は彼女の娘華蓮だ。無邪気に母の頬を触れ喜ぶ彼女に、美蓮はやるせない気持ちを呟く。
それを見た星麟は強行という一案を提出。しかし春霞が遮り、白鬼の残した言葉を伝え、困ったように首を傾げる。
「‥‥っちぃ。どうすりゃいいんだよ! まったく‥‥なんだ? あんたは」
「こら、天曹。口を慎め。この方は‥‥」
「よろしいですよ、白澤。随分と荒れておいでね、黒の道士さん。お気持ちを察します。私は西王母の娘の一人で華林公主の妹の太真王夫人と申します」
天曹は砂を握りしめ、やけくそ気味に投げつける。砂が舞った先に華林公主に良く似た少女――太真王夫人こと太真が(桃音(fa4619))が立っているのに気付いた。少女は長い髪をきっちり二つに結い上げた頭を軽く下げ、勝ち気な瞳を彼らに向け名乗ると、更に言葉を続けた。
「天帝より仰せ付かり、攫われた母と姉の友人の麗君様を救出すべく参上致しました。どうぞお連れ下さい」
太真の着こなす道士服と腰帯に慣れた様子で下がる剣に男勝りが板に付いているのが見受けられる。しかし彼女も神の一人。道士達は申し出に困った。
「そう仰っても、太真様を危ない目に遭わすわけにはいかないし、鈴がないと潜れないかも‥‥。お母さんの事は心配だろうけど、おいら達道士が頑張って連れ戻してくるから」
「‥‥鈴を持たない者は穴を潜れないのですか? 私は母を救えないなんて‥‥」
ちりーん‥‥。
小風は心苦しげに言葉を紡ぐ。太真は悔しげに視線を落とすと、鈴が一つ彼女に向かって転がってきた。そう、朱雀の赤鈴が彼女の気持ちに答え現れたのだ。太真は屈み鈴を拾い上げると、掌で鈴が嬉しげに鳴った。
「私もこれで壁の穴を潜れますわね。よろしくお願いします、道士様方!」
「まぁ赤鈴さんが独りでに? 良かったですわ太真様。‥‥鈴と言えば、黄鈴の片方が雷后に奪われてますわね‥‥。こちらも早く見つけ出さないと。麗君さんに変わっていたらすぐにお返し頂けますのにね‥‥」
意を決したよう太真は手しにた鈴をギュッと握る。春霞は独りでに転がってきた鈴を見て奪われた鈴の行方を心配しながら、星麟と黄鈴を間に手を取り合い穴を潜った。
●
壁の穴の向こう。入り口の傍で待つのは邪仙・雷后と、京劇に出てくるような派手な衣服で、入れ墨を隠す大猿の妖怪ユウアン(レイリン・ホンフゥ(fa3739))だ。
「キキィ! 雷后様、もうすぐ道士達が来るキィ! 倒してやるキ‥‥」
「そう焦るな、ユウアン。何時までも奴らの好きにさせるものか、さぁ、鈴よ力を見せてみろ? くっくく無理だろうがな」
彼らが門を潜った事に興奮を隠せないユウアンを諫める雷后は、そっと懐に手をやる。そこには黄鈴があった。以前の失敗を教訓とし、今回は羅豊の蔦で作られた籠に仕舞い懐に黄鈴を隠しているのだ。鈴に嘲笑うかのように話しかけ、ユウアンに攻撃の合図を送った。
「道士達、今度は閉じ込められないキィ! 風爪!」
シュシュ!
空気を刃と化したユウアンが突然、先制攻撃を仕掛けた。素速く前に飛び出した星麟は得意の三節棍で弾き返す。
「神獣の力とはいえ、鈴に頼りすぎていたアルよ」
「結界から逃げちゃったんだユウアン‥‥。大人しくしていればいいのに‥‥今回は容赦しないよ!」
すぐさま三節棍で突きに転じ、ユウアンの喉元を狙う。がユウアンも簡単にはやられない。長い袖を振り技を軽く流した。星麟が作った隙に小風が龍笛を取りだし、青鈴と共に『鎮守の奏』と『武神の奏』を連続で奏で道士達の防御力、攻撃力を上げていく。
「星麟さん、加勢をさせていただきますわ! ほらユウアンこっちです」
「あ、ならこっちは任せたアル。俺は美蓮さんの所に行くアル!」
「あれが鍵だな‥‥。そうはさせるか! 白鈴の道士、こっちに寄こすのだ」
三節棍の鋭い突きが繰り出される間を縫って剣を振るう太真。星麟は彼女の申し出に素速く身を翻し、娘を抱き手が塞がれて赤鈴の援護が出来ないで居る美蓮の元に急いだ。
勿論、神に目覚めたとはいえ子を守るのは母の本能の方が今回は勝った。その胸に華蓮を強く抱き寄せ身動きが取れずにいる美蓮を見逃す雷后ではない。物陰からゆらりと現れ彼女達を襲う。
「させませんわ! 美蓮さん屈んでくださいませ!」
春霞が黄鈴の音色と共に琵琶を掻き鳴らし『虹輝』を奏でた。先程掛けて貰った小風の術の効果もあり、眩しいほど虹色に輝く龍が出現する。龍は春霞の意志の通りに動きパッと凄まじい光を放つ。
モロに光りを浴びてしまった雷后は目が眩みよろめく。が、頭を二度三度、振るうと反撃とばかりに術の技を詠唱し始める。そこに棒を突きつけ邪魔をする天曹。
「雷后、あんたの相手は俺だ。ちっと付き合ってもらうぜ!」
「さ、先程の戦いの続きか? よかろう」
空を斬る棒術を軽々避ける雷后。天曹は酔拳を棒術の凄まじい突きを繰り出しつつも、ゆっくりと確実に彼女の周りを足で印を結んでいく。
「あんたにゃ聞きたい事があるんだよ。見よ玄北一門秘術の一つ、結界之陣・山河社稷図」
「な、なにぃ!?」
最後の印を結び終えた天曹は術を発動させる。羅豊の入り口から幻の地形へと転じた。そこは天曹が修行をした山中と酷似していた幻の地。
「あんたが鬼や駮に組しない理由は何だ?」
「私こそが羅豊の主に相応しいからとでも言っておこうか、くっ‥‥以水気氷雪嵐成!」
天曹にとっては慣れ親しんだ場所での戦い。天曹に分があるだけに徐々に押され気味の雷后が、彼を倒す事と法術を破るため、氷雪の嵐を呼び襲う。 彼らは結界中で一進一退の攻防を繰り広げている。
一方、宝剣でユウアンを翻弄していく太真。春霞は援護として『天射光音』を発動。掻き鳴らす琵琶の音色で一本の矢を操り敵が放つ風の技を打ち砕いていく。
「そろそろ仕舞いにしようユウアン! 森羅万象の詔持ちて赤き鈴の法剣に白き鈴音を!」
「さぁ、封印されるのです」
美蓮は懐から術符を取りだし宝剣に向かって白鈴の音色共々投げた。太真の握る宝剣の柄に付いた赤鈴が鳴り響き、刃は白く輝く炎を纏うとユウアン目掛けて振り下ろす。
「キィぎゃぁぁ!」
神気を帯びた炎を刃を浴び、劈くような悲鳴を上げ崩れ落ちた。
「む? ちぃぃ、ユウアンをやりおったなっ貴様ら」
「そうも言ってらねぇだろう? 雷后、お前もこれで終わりにしよう。宝貝・金棍」
悲鳴を聞いた雷后は憎々しげに天曹を睨む。天曹はにやりと笑い、使っていた棒から白澤に借りた崑崙山の宝貝棒と持ち替え、すぐさま技を繰り出した。手に持つ彼には羽根のように軽い棒に感じるが、当てられる方には凄まじい重さと衝撃を感じるのだ。
ドドンッ
雷后の胸に突きを決め、勢いよく弾き飛ばす。しかしその胸元から羅豊の蔦で編んだ籠が飛び出し、その衝撃を和らげていた。代わりに裂け黄鈴が転がる。
リリーン
リーン
「まだまだぞ? 天曹よ。‥‥な、なにぃ?! おのれぇ麗君‥‥小癪な真似を!」
雷后の体内に麗君が仕組んだ金とも銀ともつかない色の鈴が、落ちた黄鈴と共鳴し始める。苦しげに喘ぐ彼女に天曹はそこで術を解除した。
「幾ら薄まってるとはいえ、崑崙は最も神気の濃い地だ。その傍で響く鈴音は麗君を抑えるのにも限界があるって所か?」
「これは天帝よりお預かりした勾玉です。これで麗君を助けられると思うのです。小風さん、あなたの術で少々落ち着かせてあげていただけませんか」
「‥‥解った。雷后、お願い。麗君さんに戻って‥‥」
太真が腰帯に下げた小袋から神気を帯びる勾玉を取りだし、小風に補助を頼む。彼は小さく頷くと龍笛で『鎮心の奏』を奏で始めた。出された勾玉に反応したのかシャンッと他の鈴達も共鳴し始める。
怒りに満ちた唸り声から、苦しげな声に変わる雷后に太真はゆっくりと近付き、勾玉を当てた。黒い光が雷后の内側から流れだすと勾玉が吸収し、代わりに眩しい神光を流し込んだ。灰色の髪が美しい赤に変わり新たに彼女を包む。
「ふぅ、何とかなったかのぅ‥‥雷后よ、知略は貴様のみの十八番に非ず‥‥自惚れるでない」
「よかった、取り戻せたアルね。さて雷后‥‥じゃない麗君さんの傷の手当てアル。ほら、天曹も怪我しているなら一緒に治療してしまうから、そこに並んでアル! 全ての生あるものは大地の精もて健全に復すべし、快功治癒! 急々如々!」
「私もお手伝いを致しますわ」
穏やかな瞳に変わった雷后。否、麗君。やや傷だらけの体を痛そうに擦りながら勾玉に吸収された雷后を見て呟いた。
転がる黄鈴を拾い上げた星麟は華蓮を膝に乗せ、嬉しげに鈴を鳴らし詠唱する。春霞も『麒麟奏』を奏でだす。羅豊の入り口とはいえ、勾玉の効力もあり神気が満ちているおかげで、麒麟の幻が彼らを一周り走り空を駆け上がっていった。
星麟の膝で見ていた華蓮は嬉しそうに手を伸ばした。
●
「ほう雷后があの勾玉に囚われた? これは好都合だ」
戦い終わり、僅かばかりの休息の道士達。その背後から白鬼が彼らを盗み見ていた。
太真は勾玉を腰帯に付いた袋に戻そうとしたその時、白鬼が彼女に毒霧を浴びせ、勾玉を奪い取る。
「し、白鬼! 勾玉をどうする気だ! 西王母はどこに隠した」
いきなりの事態に慌てた天曹が棒を構え前に出た。星麟と春霞は華蓮を隠し、美蓮は安心したように懐から術符を取り出した。
「知れた事‥‥。駮様を甦らせるために使うのだ! さぁ西王母を返して欲しくば、その鍵も渡せ」
「させません!」
太真は毒を浴びながらも果敢に白鬼に挑む。しかし耐えきれず、すぐに膝を付いてしまった。その隙に白鬼は遁走を図る。が、美蓮がそれを許さない。
「人の心を遊ぶ、お主は許さぬ! 響くは鈴音、吼えるは雷鳴、白き雷の猛虎よ来たれぇ!」
牙の付いた腕輪に術符を巻き、詠唱と共に放つ。雷鳴のような咆哮を上げた白虎が空から疾走し、白鬼の背を鋭い爪で裂いた。
大きく背を割られ激痛に身を捩る白鬼。その手から勾玉を落とし、拾おうとするが追いつかれる事を考えた彼は、
「く‥‥貴様ら‥‥西王母を返して欲しくば、その勾玉と‥‥鍵を連れまいれよ」
背を押さえながら姿を掻き消した。
「逃げられた!」
「そうでもないかも? 血の跡がある。あっちに続いてるよ」
「あの白鬼がわざわざ残すなんて、罠かも知れないな」
「ありえるのぅ」
悔しがる太真。小風が続く血の跡を眺める。天曹と美蓮もそれを訝しげに眺めた。
「誰もが欲しがる鍵の存在‥‥封印を解くのなら、再封印の鍵にも成り得るのでしょうか? けれど血の点在する先には何か不浄で嫌な気配を感じますの。ですが、ここで諦めるわけには参りませんわね。乗り越えて行けば良いだけですわ! 諦めない限り道は続いてます。‥‥それは私の信念でもありますの。さぁ参りましょう!」
「段々えらいことになってきてる‥‥って、呑気に言っている場合じゃないね。皆の補助は任せて! おいら、必死で支えるからさ!」
力強い春霞と小風の言葉に華蓮を抱く星麟も麗君もこくりと頷いた。