いろはに諺 あの巻アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 易しい
報酬 1.8万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 12/10〜12/12

●本文

 サブタイトルは実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
 一応、教育番組である。いや、そのはずだ! 何と言おうと‥‥。
 どうも言葉が濁る理由は、番組担当のプロデューサーの指示で運び込まれる小道具、衣装の所為だからである。華やかで奇抜、要するにイベントパーティーでも行われるのではないかと思えるモノばかりなのだ。
 スタッフの手により次々と運び込まれる段ボールと、大道具さん達が作る和風なセットが着々と仕上がってゆき、大きな筆を持ったヘラジカがモチーフのマスコット『マロ君』が、スタジオの隅で衣装さんの手を借り着替えを済ませると、スタンバイOK!
 あとは文字ぃ君となる出演者、司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
 さぁ、賑やかに放送開始である。

■出演者募集
 いろはに諺の出演者を募集します。
 楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。

■演出
 その1 諺とは関係なく「あ」の文字を頭に使い(濁点可?)面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となって、体を張り文字を作って頂きます。
 その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントなど、お願いします。
 ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうのも良いですし、創作した諺の披露や、体を使ったスタントでコントもオッケー。
 とにかく一番大事なことは、皆様がワイワイ楽しんで番組を作ってくださること!
 コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。
 最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第!
 用意した諺は、全て使わなくても大丈夫です。

■番組マスコット情報
名前:いろはの守言彦麻呂(略称いろは麻呂でマロ君)
外見:赤い色をしたヘラジカっぽい、ふわふわもこもこでなんか可愛い。
持ち物:大きな筆を所持。
性格:基本はドジ。ボテボテした動き。だが、意外と俊敏な時あり? (中に入った人次第)。好きなモノは毎週のお題で変動


■お題
 あ
「青菜に塩」
意味:急に元気がなくなり、しょぼくれる様子の事。

「悪事千里を走る」
意味:悪い事やそういった評判は隠したとしても、その噂は千里でも走るようにすぐに遠くまで知れわたり、広まってしまうという事。

「浅き川も深く渡れ」
意味:浅い川でも深い川を渡る時のように注意しないと足を滑らせ危ない目に遭うという事から、簡単に出来る事やどんな小さい事でも決して油断してはいけないという事。

●今回の参加者

 fa0243 郭氏文 令明(20歳・♂・鷹)
 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa1340 HIKAGE(18歳・♂・小鳥)
 fa1986 真田・勇(20歳・♂・猫)
 fa2722 如鳳(49歳・♂・亀)
 fa3120 (14歳・♀・狼)
 fa3316 月森・ミューカ(18歳・♀・兎)
 fa3371 豊浦 あやね(15歳・♀・狸)

●リプレイ本文


 彩色豊かに描かれたタイトル文字が子供達の声で読み上げられると、画面は切り替わる。
 そこには三週間振りの豊浦 あやね(fa3371)の姿があった。出演者達の誰もが帰還を喜びつつも、鋭い突っ込みも同時に帰ってきた事を悟り、ダラけていた顔を引き締める。
「‥‥ってな訳でお久しぶりですっ、ユラお姉さん復帰で『いろはに諺』始まりやで。『雨だれ石を穿つ』とは微弱な力でも根気よく続ければ成功するという意味、皆もずっとこの番組を見続けたらきっと諺のエキスパートになれる筈や‥‥ほな、勉強していこかー。司会はウチと『合縁奇縁』のいつもの二人! 勿論、マロ君や文字ぃ君達も一緒や」
「『阿吽の呼吸』が出来るおいらの運命の片割れ、ツッコミの権化ユラお姉さんのご帰還、お帰りーなのだっ! お題はいつも元気に挨拶の『あ』なのだっ!」
「会いたかったよぉユラお姉さ〜ん♪」
 豊浦の隣に立つ苺(fa3120)が『挨拶第一』の腕章の付いた腕を大きく広げ包容。豊浦もハグを返すが、なかなか離れてくれない。焦り出したところに、この機を逃すまいとHIKAGE(fa1340)が突進してきた。
「マ、マイお姉さんお仕舞いや! そしてヒカゲン、乙女に向かっていきなりの包容は禁止やで!」
 ばばしぃん!
 衰えを知らないハリセン殺法を繰り出し、開始早々、二人を床に叩き落とす。HIKAGEの方は小声で「あぁ、久し振りぃ」と微妙に身悶えている。
 呆れと苦笑いの郭氏文 令明(fa0243)がカメラの前に立つ。
「はい、やってきました。いろはに諺の時間、司会者の郭氏文令明です。早々に三週間の『嵐の前の静けさ』が打ち破られましたね。しかしこれはまだ序の口でしょうか。そしてヒカゲンには『過ちて改めざる是を過ちという』諺を。意味は過ちを起こすのは仕方がないが、知りながら改めようとしない事こそ正に過ちだという戒め。過ちを認めることも大事なのです、を捧げます。変な世界に入りつつあるので、どうか改めて下さいね」
 HIKAGEの危うい発言を戒める。言われた方は追い打ちを掛けられ青菜に塩。しおしおと床の上で打ちひしがれる。
「郭氏文さんのお灸的な言葉。そしてお姉さんの突っ込み‥‥。俺には冷たいよな‥‥。こんなに好きなのにぃ『アワビの貝の片想い』ってやつかな」
「それを言うなら『磯のアワビの片思い』であって「い」やろ! さて、これから皆の三週間分の悪事を確認するで『明智光秀』やないけど、『三日天下』ならぬ『三週天下』や」
「そなのだー。ではここで復習VTR『三巻分特別編集ヴァージョン』いってみよー!」
 苺がマイクを口元でクルルっと数回、回しカメラに向けてぐぐいと押しだす決めポーズ。それを合図にVTRが流れ出した。
 そこには女装姿のHIKAGEや園児なりきりの真田・勇(fa1986)の冒頭挨拶に、文字作りと称し関節技を披露する鬼王丸・征國(fa0750)と如鳳(fa2722)のマロ君。駄目押しに海苔巻きを頬張る苺と慣れない突っ込みをする郭氏文が次々と映し出された。
 あまりの自由っぷりに豊浦は呆れて眉根を揉む。
「なんや、あまりに凄すぎて言葉が出てこないわ‥‥代わりにハリセンを出しちゃるっ!」
 ばしぃぃぃぃん!!
 一挙纏めて過去最大級とも云えるハリセンを彼らに見舞った。舞台に残された文字ぃ君はニューフェイスの月森・ミューカ(fa3316)のみ。彼女は豊浦の早業かつ適切な突っ込みに驚く。そしてちゃっかりと難を逃れた苺が騒動を見て、
「あとの祭、なのだー」
「マイお姉さんもな! 郭氏文さん『て』の巻で明智光秀が討たれた戦『天王山』をおおきにな、ここで明智光秀が討たれた三日とウチの出演できへんかった三週間を絡める事が出来たわっ」
 ずばぃぃんっ!
 苺に再度、突っ込みが入り、翻るハリセンは郭氏文にも一撃入った。こちらは行き掛かり上であるがまぁヨシとしよう。
「明智って人は確か、推理小説に出てくる探偵さん‥‥」
 月森は豊浦が語る人物について訊ねる。
「にゃ? それは明智小五郎や!」
 ばしっ!
「そうなのですか?! 明智光秀じゃなくて明智小五郎‥‥。あぅ〜これがホントの『穴があったら入りたい』です〜。恥ずかしくてもう『合わせる顔がない』〜」
 素で呆けた月森は可愛らしく口元に両手をあて頬を染めた。勿論、番組初と云えど豊浦はハリセンを振るう。しかし突っ込みが甘いのは気のせいか。床に這わせられたHIKAGEが恨めしげにその様子を眺め、ボソッと呟いた。
「甘ーいっ甘すぎるよお姉さん! ていたらくの所為なの? うぅ‥‥冷たい理由は何ぃーっ!?」
「では冒頭の、し、締めをここで『悪法もまた法なり』。悪い法律も通用している内は法であるから、従わなければならないと言う事‥‥あぁ今の状況でしょうか? では始まりです」
 豊浦は呟きを鮮やかにスルーすると、郭氏文からぽそりと油を注ぐ一言。危険な手段や方法と知っているが一度はやってみた方がいいという『危ない橋を一度は渡れ』を彼は実行したのだ。


 文字作りセットを前に四人の文字ぃ君、HIKAGEに真田、鬼王丸そして月森が立つ。画面の隅で如鳳のマロ君が『あ』と書かれたプラカードを手に踊っている。
「蛙鳴蝉噪の『あ』! 無駄な言い回しが多く内容に乏しい文章や騒がしいばかりで役立ずの議論の事じゃ。一名、耳が痛いディレクターがいるようじゃが‥‥。おっと読みづらい漢字ばかりじゃけん、振り仮名を振るのも優しさか?」
 TVの前の皆が見られないのが残念だが、裏にいるディレクターは鬼王丸の言葉に耳を押さえ苦笑い。彼がにやりとした所で反応が伺えるはずだ。更にお題に因んだ諺を披露していく。
「されどそれでも一緒に仕事をする‥‥人との縁と言うものはマコト不思議なものよのぅ『合縁奇縁』じゃ。気心の合う合わないはあるが、どちらにしても不思議な結びつきじゃ‥‥うごぉぉ!」
「いつも注釈が長いと絶賛の解説者の鬼王さんやけど、あまりに長いと番組が終わってしまうわ! 『彼方立てれば此方が立たぬ』じゃマズイやねん」
「俺からの諺は災難は一度起こると、またあるという『朝にある事は晩にある』だぁ!」
 すばーんっ、ごげし!
 しみじみとする鬼王丸にいきなり豊浦が乱入しハリセンで一撃! 更に追い打ちを掛けHIKAGEの横っ飛びで画面の外に弾き飛ばされてしまった。そこに真田がとととーっとカメラに走り寄りどアップで、
「挨拶の『あ』っすー。というわけで色んな国の言葉で、おはようをするっす! 日本語はおはよう。英語はグッドモーニング、ドイツだとグーテンモルゲンでフランスはボンジュール、イタリアのブオンジョルノ。中国だったらザオシャンハオ。韓国はアンニョンハセヨ。アイスランドがゴーオンダインにアイルランドのジェアグゥィチエルモジン。スウェーデンはグモロン、フィンランドはヒューヴェーフォメンタ、ロシアがドーブロエウートロ。ふぅ、そしてセルビアがドーブロユトロ。ネパールはナマステ! シンハラではアーユポーワン‥‥」
「はいはい、真田さんよく調べましたね。これくらいにして‥‥」
 指を折り話す真田。よくもここまで調べてきたものだ。まだ続けようとする彼に郭氏文が止めに入った。
「えー、まだまだいっぱいあるっすよー」
「そんなにはええって!」
 ばしぃん!
 豊浦が真田の顔面にハリセンをヒットさせた。
「あ‥‥絶妙なボケと突っ込みのタイミング、これが『阿吽の呼吸』ですね。私も見習わなくてはっ! 初めまして、月森・ミューカです! えへへ‥‥実は初めてのお仕事でちょっと緊張してます。失敗したりしないかなぁ。でもやる前からこんな心配しててもしょうがないですよね。成功するも失敗するもまずはやってみないと分からないんですから、ここは『当たって砕けろ!』の勢いで頑張りまーす」
 手際よく突っ込みをする豊浦に感心顔の月森は、諺を巧く当てはめ自己紹介をした。そこで四人の文字ぃ君が並び、画面の取り合いをしながら、
「「「「あ〜!」」」」
 と、彼らは素速くセットに登りだす。上部の鉄棒に寝そべり横棒役の月森に少し身体を重ねる縦棒のHIKAGE。彼の足下で鬼王丸だが、身体をモゾモゾ動かすも、どうにも平仮名では無理があると悟り、急遽片仮名に変更。月森がつま先をちょっと出し、繋ぐように縦棒のHIKAGEがくっつく。真田と鬼王丸は両脇に立ち、また皆で声を揃え、
「「「「アーー」」」」
「さー文字が出来たところで、僕の出番っすー。放送三十五回を記念して相変わらず激しいツッコミを繰り返すユラお姉さんのVTRが販売される事になったっすー。ちょっと見て貰うっすよ、キュー」
 真田が前に出てきて促す。写し出されたのは、今まで溜まった突っ込み映像。ハリセンが唸りを上げ、吹っ飛ばされる真田の繰り返し画だ。
「これぞ、正に阿鼻叫喚の地獄絵図っす」
「それは自分でしでかした事やろ。あとこのVTRは発売予定はあらへんで。ええ加減『足を洗』え!」
 ぶばしぃんっ!
 真田はまたも豊浦の怒号とハリセンに見舞われ床に落ちた。そこにHIKAGEと苺が、
「青菜に塩だね。はいはい〜あっちに行きましょう」
「真田さんはこれに懲りて、必要以上の用心をする喩えの『羹に懲りて膾を吹く』を覚えると良いのだー」
 倒れる彼を小脇を抱え退場させた。


 真っ白い少佐服姿の鬼王丸が舞台を練り歩く。
「甘い汁を吸おうと幾つもの悪事を進めてきた我が『新説いろは軍』ではあるが、二つのものを同時に得ようとしてもどちらも得られない『虻蜂取らず』となり。悪事千里を走るが如くにユラお姉さんに露見し、再三しばかれ悪戦苦闘してきたが、ここで『悪人正機』とばかりに悪人もハリセンで改心すれば救いは訪れると諭された。仏の慈悲を信じろと言う事じゃろうか‥‥と言う事で!」
 ピタリと舞台中央で足を止めると、ススッとHIKAGEと郭氏文がやってきて、せーので鬼王丸の衣装の両脇を引いた。
 瞬時に早着替え。真っ赤なタイツ姿となり、その昔に流行した歌を陽気に歌い始める。
「仏と言えばトンボ。極楽トンボ! これは秋の空に飛ぶ赤とんぼじゃがのぅ‥‥まぁよい。赤とんぼ、羽根を取ぉったら唐辛子♪ 唐辛子ぃに羽をつけたら赤とんぼ♪」
 若い世代にはまったく通じない捨て身のギャグ。だがディレクターは大爆笑だ。そこへ歌声にウズウズして出てきた苺が鬼王丸の背に付いた羽根をグイッと引っ張り毟ってしまった。
「赤とんぼ‥‥これを唐辛子にするのだ! ってあれぇ‥‥どちらかというと、ちょうろぎになったのだ?」
 ちょろぎとはお節に入る赤い貝巻状の実の事。スタッフの間から笑いが漏れだし、テロップが一つ。『よい子のみんなはむやみにトンボの羽根を毟っては駄目だよー』
 そしてCMへ入った。


 そろそろ終盤。如鳳のマロ君が締めの挨拶を考えている豊浦の服を引っ張り、短冊を渡す。そこには『明日ありと思う心の仇桜:明日を当てにし今を疎かにしていると、折角の機会を逃してしまう。今する事は即座にやってしまえという事』と書かれていた。
「な、なんやて! ‥‥ん、これをくれはるの?」
 即ざま沸点に達する彼女を宥めるように好物のアンパンを差しだす。だがこのマロ君、一筋縄ではいくわけない。ホワイトボードを取りだし赤マジックで『寇に兵を籍し盗に糧を齎す:敵側の利益を与える様な事をする。また悪事を働く者に都合の良い口実を与えてやる事と書きつけて、すぐに反転。
『与えよ、さらば与えられん:聖書の言葉。意味は無条件に与えなさい、そうすれば神の祝福が与えられるでしょう』
「な、なんや? 何が言いたいん? マロ君」
 豊浦は困惑し聞く。すると文字を消し、新たに書き『先ず与えれば後で返るという解釈は間違い。損得を抜きに純粋な心で他人に施せば、本人は気分が爽やかばかりか、感謝される。それが神の祝福であるという事』更に『予うるの取ると為るを知る:与える事は実は得る事になる。人民から吸い取ろうとするだけでは却って従わず、思うように得られないという事!』っと、イソイソ豊浦に見せ顔色を窺う。彼女はここで納得し、アンパンを彼に返すと、
「『悪の報いは針の先』という言葉があるやけど、この番組は針ならぬハリセンがバシバシと飛びますよって! 例外なしでいこかっコレも全て『愛の鞭』ですわー」
 ぶばしぃんっ!
 今回ばかりは如鳳のマロ君にもハリセンの鉄槌が下った。それ見ながら月森が最後に初出演の感想をポツリ。
「思ったよりも面白かったです。みんなも楽しい人ばかりで。まるで最初の心配が嘘のよう。もうするだけ損したって感じですよ。正に『案ずるより産むが易し』でした」
「ミューカさん、初登場お疲れ様でしたー。この番組は暗中模索でもまずはやってみるといいのだ! 当たって砕ける前にツッコミ合い(愛)を惜しみなく与えてくれるユラお姉さんがいるので大丈夫なのだー」
 やや人任せな苺の一言。続いて郭氏文が頭を下げ、
「ユラお姉さん、マロ君からアンパンを貰い損ねましたね。私からも『秋なすは嫁に食わすな』で、美味しい秋なすを嫁にあげないと言ういびりに使う諺です。なので秋なすはあげませんよ。っと、冗談はここまでに。では最後に私から一つ。私は何もしない人は嫌いです『蟻の思いも天に届く』で弱く無力な者でも、懸命に努力すればきっと希望は叶えられるとあるように、まずは動きましょう! それでダメな時は周りにいる人が助けてくれるはずです。ではまったねー」
 ディレクターが、ぎくりとしたのは内緒である。