教! 鈴音的声音道士アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
極楽寺遊丸
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
2Lv以上
|
難度 |
やや易
|
報酬 |
1.9万円
|
参加人数 |
9人
|
サポート |
0人
|
期間 |
12/11〜12/13
|
●本文
――それは昔‥‥神も人も、そして妖怪もがひとつの地で共存をしていた時代の話。
ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出している。
画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように左から右へ流れては消えていく。
――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、異形の妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた――。
画面は切り替わり、隔週火曜に放送される『鈴音的声音道士』が作られているロケ地。
今日もここで撮影が行われ、「カーット! お疲れ様ー」と監督の声が掛かると、演技をしていた出演者や見守っていたスタッフの顔が緩む。
終演間近のせいか終始、緊張の糸が張りつめる現場。しかし監督の一声で一転、誰もが微笑み和気藹々とした雰囲気となり、休憩所に向かっていく。
だが今日は少しばかり勝手が違うようだ。
何故なら、彼らの入りを待っていた『最終回目前、緊急スペシャル』と題された番組のインタビュアーとカメラが、新たに向けられているからである。
撮影風景やエピソード、今後の展開を特集し、最終回の宣伝を兼ねて放送する事になっていた。
休憩所に入り、ひと息付いた出演者やスタッフ達の頃合いを見計らったインタビュアーが、マイクを向け声を掛ける。
「撮影、お疲れ様でした。お忙しい中すみません。そろそろ皆さんにお話を聞いても、宜しいでしょうか? お願いします。今回お聞きしたい事はいくつかあります。もしこれからの番組に差し支えございませんでしたら、お答え下さいね。では‥‥」
カメラが回り出し、インタビューが開始された。
インタビューに関しては解答に困るモノもあると思いますので、それには答えずにいてくださっても大丈夫です。
また、インタビューにない質問も一つ二つ入れてくださっても大丈夫です。
・過去、楽しかったシーンを一つ。また苦労されたシーンを一つお話し下さい。
・撮影現場でのエピソードをお聞かせ下さい。
・今後、どういった展開になる予定ですか? また、ファンにメッセージを。
・撮影しているシーンで撮られている場面を皆様で一つ上げて下さい。(過去の場面を使って下さっても大丈夫です)
・NGシーン
など皆様が日頃感じた事をどうぞお答え下さい。
●リプレイ本文
●
鈴音的声音道士18の撮影が終了し落ち着いた彼らに向かって、メイキングのインタビュアーを勤める紅輝(fa5216)と見学者を許可された、だいふく(fa3566)が、ソファーに座る出演者達に挨拶をする。
「撮影お疲れ様でした。最終回が間近という事で、出演者の皆さんに撮影秘話やお話しを聞かせて頂きたく、特別番組を組ませて頂きました。差し支えない限りでいいので質問にお答えて下さい。ではお願いします」
紅輝は気恥ずかしそうな出演者達に手際よくマイクを渡すと、キューを合図。
ここでドラマと違う彼らの一面を見せて貰うべく、新たにカメラが回りだした。
●
「ご紹介します。鈴音的声音同士にご出演の皆さんです!」
スタッフやだいふくが送る拍手の中、紅輝が出演者を紹介すると、七名はそれぞれ自己紹介を始める。
「インタビューって初めてでドキドキです。赤鈴と黄鈴を持った事のある春霞役の月見里神楽です」
「桃音と申します。私は後半の要になる華林公主&太真王夫人の二役をさせて頂きました」
「緊張するなぁ〜。けど皆一緒やから大丈夫やろ。青鈴の小風役、基町走華やねん」
「あいやー皆、固まり過ぎネ! いかなるインタビューであろうと真っ向から打ち砕く、中国五千年の秘技を見せるアルね! 黄鈴の道士星麟役アル」
「黒鈴の道士、天曹役の藤宮誠士郎です」
頬を紅潮させ頭を下げる月見里 神楽(fa2122)と桃音(fa4619)に続いて、基町・走華(fa3262)も緊張の面持ちで話す。星辰(fa3578)は物怖じせず冗談を交えた挨拶。賑やかな女性陣の後、藤宮 誠士郎(fa3656)が頭を下げた。
合わせるように画面左隅に活躍する画が流れていく。
琵琶を弾く春霞に剣を振るう太真。笛を吹く小風と鋭い突きを放つ星麟。そして天曹が結界を張る画。追うように今度は悪役である冷たい面立ちの雷后と温かな笑顔の麗君役の桜 美琴(fa3369)、そして牙を剥く妖怪役のレイリン・ホンフゥ(fa3739)が続いた。
「雷后&麗君役の桜美琴よ」
「はいヨ〜毎度妖怪役でお馴染みのレイリンネ〜! ゴ解答しちゃうネ!」
物腰が静かな桜と対照的に、レイリンは笑顔で手を振る。一通り過ぎると、
「ではさっそく、質問をさせて貰います! 楽しかった、苦労した場面を一つずつ教えて下さい」
紅輝は礼儀正しく質問へ移る。目の前にいる基町がすぐに答えだす。
「楽しかったんは龍笛を奏でるシーンで、苦労は戦闘シーンやな。青龍は戦闘向きでないから。いやぁ、しんどかったけどちゃんとやったで!」
記憶に新しい竜巻を起こした場面が出た。桃音が続く。
「私は以前、視聴者側だったので、参加する事自体が楽しかったですっ。苦労したのは最初の戦闘場面ですね。華林の時は捕まっているだけでしたが、太真は動くのでギャップがありましたの」
合わせて法剣を翳す太真の画。
「先に苦労した点を‥‥。楽士がどうやって立ち回るのか‥‥と初めて赤い道士を演じた時は戸惑いました。設定上、華麗な剣技は無理と判断して法術をメインに使う、珍しい道士となりました。逆に楽しかったのは、やっぱり黄鈴の撮影場面でしょうか? 実は春霞の琵琶は全部、生演奏。お家で練習してきてるんだよ。合わせて作詞もやらせて貰い、出演するドラマの曲を作る事も夢でしたから、すごく嬉しかったですね!」
「あー俺が苦労させられたのは、黄鈴を奪われた場面。シナリオを読んで愕然としたアル!」
月見里の背後からドラマで弾いた『望月』が掛かる。星辰は十五話目の台本を取りだし、書かれていた最後の部分を指す。
「ワタシは十六話のユウアンの役の必殺技ネ。CG演出は苦労したヨ。ケド楽しかったネ♪ 色々はっちゃけられたシ」
「‥‥アレはな。俺は毎回、楽しませて貰っているな。で、いつも苦労してますが。それは皆、真剣に取り組んでるからこそだな」
星辰の後に答えるレイリン。相づちを打つ藤宮は、役の荒々しさとは違い落ち着いた様子で話す。
「私は楽しいとは違うけれど、感動した場面は三話目のラスト。色々考えさせる内容だったわ。それに姑獲鳥役も印象深かったわね。苦労したのは、一人芝居に近い雷后から麗君に替わる所ね。冷酷から、威厳と暖さのある人にチェンジするのは思った以上に大変。それと言葉使いが‥‥ねぇ。あとはCG合成用の演技ね。ブルーシートの前で一人で演じるのは寂しいわよ〜」
桜は演技での苦労の連発を思い出しながら苦笑いを浮かべる。
「そういえば、撮影の合間にレイリンさんの料理の差し入れあると伺ったのですが‥‥。そのお話とリクエストを是非お聞かせて下さい」
ここで紅輝が話題を移した。女性陣はその質問に嬉しそうに語る。
「はい、とっても美味しいのです、実は神楽の密かな楽しみ」
「特に十二話の差し入れの杏仁豆腐は絶品。誠士郎はんが美味しそうに食べるのを見て、意外な一面が印象的で感心したわ。あ、ごめん! 悪い意味やないから!」
「ほんと藤宮さん甘党疑惑は発見だったわ! 意外性のある男って奴?」
月見里は香り豊かなアンニン豆腐を挙げる。基町がふと一つ思い出した。桜もクスクス笑いで更に追い打ちを掛ける。的になった藤宮は堪らない。照れて頬を掻き、ただ過ぎるのを待つ。
「見られなくて残念。私は初めての撮影、頂いた胡麻団子と神楽さんの工芸茶です。どちらも美味しくて和みました」
「差し入れはどれも美味かったアル。けどスタッフと食べた棒々鶏冷やしラーメンも捨てがたい。店の位置も解りずらい、ところで食べたアル」
「はーイ、リクエストに答えて杏仁豆腐作ってきたヨ。追加でエビチリの春巻、棒々鶏もネ」
桃音は見られなかった事に残念そうな表情を浮かべるも、初めに食した胡麻団子と工芸茶の温かな味を語る。
その後を星辰は撮影の合間に食べに行った時の食堂の事を話すと、レイリンがタイミング良くパックを取り出し振る舞う。美味そうな匂いが鼻を刺激し、誰もが歓喜の声を挙げると箸と紙皿を手に取り、頂きまーすと笑顔で頬張り始めた。勿論、見学しているだいふくにもレイリン直々に渡され、食べるように促される。
「レイリンさんは、ほんと炎の料理人ね!」
「‥‥美味しい! では食べている間に皆さんが選んで下さった名場面、メイキング映像に交えエピソードとNG集をどうぞ!」
紅輝は春巻きを飲み込み、次へ転換した。
●
彼らが選んだのは十六話。戦闘場面も豊富で皆生き生きと動いている。
カメラの前に立つレイリン。ユウアン役で道士達に牙を剥き襲いかかるところだ。画面一杯に恐ろしい表情を作る彼女は普段から想像出来ないほど迫力はある。
次の必殺技を繰り出す場面。ブルーシートの上で手刀を数回切る。その時、監督が苦笑いを浮かべながら、
「レイリン、口で空を切る音を出さなくても、後で入れるから」
メガホン片手に言う。言われた彼女は頬を染めた。そして次は雷后役の桜。ユウアンを窘める場面だ。
「〜〜〜〜さぁ、鈴よ力を見せておれ。無理じゃろうがな、ははは〜ごほっほほ‥‥っ」
「だ、大丈夫? そんなに高笑いしなくてもいいよ。それと口調をもう少し若々しく。お婆さんではないので」
「〜〜っ。く、苦しいかった‥‥はい、も、もう一回お願いします」
スタッフに背中をさすられる桜。落ち着いたのを見計らい再取り直しをし今度は見事成功した。
戦闘場面に移り、殺陣の段取りをする星辰と藤宮。それぞれの武器を手に打合せを繰り返す。一歩間違えれば大怪我をしかねないので当然ながら真剣な表情だ。
カメラが回り出し星辰は、ユウアン目掛けて三節棍で突きを出すが途中で止まる。そう、片側の肩に垂らす太い三つ編みが絡んでしまったのだ。
「あいやー三節棍と三つ編みは良く引っかかるアル!」
顔を歪め、メイクさんと一緒に解していく。そこから少し離れた所でCGを使い丁寧に山河社稷図の印を結ぶ場面を撮影していく藤宮。
本来なら一つのカメラでの撮影だが、時間関係上仕方がない。
星辰の殺陣が終わると次に藤宮はそのカメラで雷后役の桜と戦闘の絡み。後のCGで合成される場面で彼女の放つ氷雪の嵐を棒の旋回で砕き叩くいう二人の演技。
一旦、飛び離れると天曹はグルルっと体の前で棒を回し、勢いを利用して今度は後ろで回した後、決め啖呵。の予定が、ごぉん! という鈍い音が響いた。
勢いあまり棒を後頭部にヒットさせてしまったのだ。激痛に藤宮は蹲る。神楽とレイリンが駆け寄り優しく彼の頭を撫でた。この時ばかりは女性共演者の多い現場の良さとヒシヒシと感じる。
痛みが落ち着くと再開。次は台詞の多い話し合いの場面である。
「西王母を奪われ逃げられちまった‥‥それが羅豊にちじく道らしい‥‥。鍵を連れて穴をももぐって‥‥※?!#‥‥スイマセン!」
長台詞で舌が回らなくなりながらも、続けようとする藤宮だが噛みまくってしまい結局NG。早口でトレーニングをすませると再度撮影に望む。それでも二回NGを出し、藤宮は三回目でようやくカーットを貰い安心した。
終盤は、赤の道士・太真役の桃音が名乗りを上げる場面。
「〜〜〜〜参上致しました。私は華林公主。どうぞお連れ下さい」
台詞に違和感を感じ出演者達は一瞬、止まる。監督の隣で見ていた桜が、
「桃音ちゃん、太真よ。役が違うわ!」
「ま、間違えてしまいました。ごめんなさーい」
桃音は小さく悲鳴を上げ、頬を真っ赤に染め小さくなる。だが名誉挽回か法剣振るう場面の演技は冴えていた。
楽しげな撮影風景とNG集が終わり、ここでまた画面は皆の元に戻る。
「和気藹々として賑やかな撮影現場ですね。そういえば、月見里さんはNG見受けられませんしたね」
「えぇ、なるべく気を付けているので‥‥」
「あらー? 実は神楽ちゃんってNGは少ないけれど、最大級のボケをかましたの。ねえ」
紅輝が感想を一つ。そしてNGが見られなかった月見里に問う。真面目な顔で答える月見里を桜が肘でつつく。更に俯いてしまう月見里は小さく言葉を綴った。
「実は十話目で春霞の迷子の場面があるのですが、実は神楽もセットを見ているうちに迷子になったの。だって広いんだもんっ! その時、スタッフさんが血相変えて探しに来てくれました。あの時はごめんなさい。けど今ではよい思い出かな?」
「アレはみんな驚いたんや。そういえば、うちもこの回ではNG少ないけれど、三話まで演じた風華と全く違うタイプで関西弁から標準語になったから五話目からの小風では台詞をよく間違えたわ。標準語は難しいわぁ」
頷く基町が、回が違い披露されなかったNGと秘話をこっそりと打ち明けた。
「そうだったのですかー。そういえば皆さんは仲がよろしいようですが、オフも会われるのですか?」
「皆とは撮影現場で会うだけやから、他には交流ないねん、ごめんなぁ」
「そうネー。ワタシも撮影以外はあってないヨー」
「俺も学校があるので、中々いけないアルよ。でも正月にどこかに初詣には行きたいアル」
「良い案だが、メインキャストが俺意外はほぼ女性だし、歳も離れてる事もあって撮影以外では接点が無いし、華やかな場所に俺が混じるのもな‥‥」
互いの顔を見合わせ残念そうに話す基町とレイリン。星辰は要望を挙げた。藤宮は承諾したいが、やはり女性の多さに気が引けるらしい。
「オフと言うか、神楽は仕事中だったんだけど美琴さんがライブハウスに来た時は、びっくりしました!」
「私は美琴さんと事務所でもお会いすることもしばしば。バイクを乗られていて格好いい! けれど猫漫才に関しては仲間のお兄さん達が面白いですの」
「そうね、桃音ちゃんとは事務所で話したり猫人漫才見たりしてるわ」
月見里が以前、桜とライヴハウスで会った話をすると、話は桜を中心に桃音が事務所での話を披露。それに桜が頷いた。
「では今後、どういった展開になるのですか? そして最後にファンにメッセージを」
「全て終わったら春霞は宮廷に戻る予定ですが、それ以外は最終回でね♪ いつも応援ありがとうございます。春霞としてお会いできるのも僅かになりました。寂しくないと言えば嘘になりますが‥‥終幕に向けて精一杯頑張ります」
「今後? それは見てのお楽しみやな。皆さん『鈴音的声音道士』と出演者達を応援してな〜♪」
時間の都合上。紅輝はもっと聞きたい事を押さえ、最後の質問をする。全員が一旦ここで姿勢を良くし挨拶をしていく。
月見里が丁寧に頭を下げ、基町が小風の役そのままに手を振る。
「勿論、格好いいオトコノコと一緒になる。いや、これは星辰側の意見で。星麟は鈴に頼らなくても、立派なお医者さんになる事アル。まずは見習の文字を取る事からアルが」
「んふふ〜、ワタシ的には最後までのお楽しみって感じヨ♪」
「私自身も驚きの連続なので、撮影が始まるまで予想不可。出演者側もラストを楽しみにしている状態ですっ」
冗談っぽく言う星辰とレイリン。桃音は微笑みながら、
「最後までホントひ・み・つ。皆さん、応援を有り難う御座います。特撮悪役女優はこれからも頑張るので応援宜しくね〜」
「あっと驚く展開が待つこのドラマを見逃すな! 監督、これでいいよな? えー、一同、ラストに向けて頑張ってます。最後まで鈴音的声音道士を宜しくお願いします」
桜が色っぽくウインク。藤宮もカメラの向こうのユウ氏達に視線を送ると、視聴者に向けて一言。
「本日はお忙しい所をありがとうございました。終盤に近付き、手に汗握る物語はとても楽しみですね。では紅輝がお送りしました」
紅輝にカメラが戻り締めの挨拶。その隣でだいふくが手を振った。