鈴音的声音道士 19アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
2.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
12/17〜12/21
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●本文
――それは昔‥‥神も人も、そして妖怪もがひとつの地で共存をしていた時代の話。
ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出している。
画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように左から右へ流れては消えていく。
――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、異形の妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた――。
画面は切り替わり、映し出されたのは異様な姿をした馬。否、駮である。
「くっくっく‥‥残念じゃったのぅ道士達よ。我の影じゃったとはくやしかろう? くははははっ‥‥。それにうぬらを守る四神と麒麟の神気も無くなってきたようじゃな。さてどう戦う? 城の中に捕らえられている西王母の神気でも使うか?」
太鼓の様な音を響かせながら、さも楽しげに笑う駮に道士達は苛立ちを覚えた。しかし連続した戦いの中で気力を使いすぎた鈴達は弱々しくなり響き、駮の言う通り既に神気は薄れてきているのが解る。
「いったいどうすりゃいんだっ!」
道士の一人が砂を噛む思いで言葉を振り絞った。それに反応したのは白澤から借りた金棍だ。淡い光りを放ち、道士達に何かを問いかけている。
『‥‥聞こえておるか? 鈴の道士達よ‥‥白澤だ。駮はまだ気づいておらぬが、あの体の中に強い神気が入っている。そのおかげで微量だが四神達の力が戻ってきたようだ』
耳を澄ます道士達に駮は、鋭い爪を立てる。咄嗟に後ろに避ける少年。一瞬、白澤の言葉が途切れるがまた聞こえ出す。
『お主達の持つ鈴にもう余力はないようだ。そこでだ、四神達を呼び出せ! その場で鈴に神気を与え戦いに加わってくれるだろう。そして駮を打ち封印するのだ』
頭に直接響く白澤の声に誰もが顔を見合わせた。
「何をしておるのだっ! 戦いは終わっておらぬぞ、よそ見などするな!」
太い足で一蹴りした駮は空を掛け、まるで瞬間移動でもしたかのように道士達の間を渡り細かな攻撃を打ち込んでいく。
避けたり、武器を使い防御するのがやっとの彼らはなんとか一カ所に集まり、互いの顔を見合わせ何か示し合わす。
「くっくっく‥‥お主達は随分と仲が良い事だ。では最後に暫し時間を与えてやろう。ずっと戦ってきた友と別れの挨拶をするがいい」
焦りと殺気の表情が浮かぶ彼らに向かって、駮は高慢な態度で言い放った。
だが駮は何も気付いていない。これから起きるだろう、最後でありながら新たな戦いの幕開けに‥‥。
〜出演者募集〜
中国ドラマ「鈴音的声音道士」で、四神と麒麟の法力の宿る鈴に選ばれた道士になりきって妖怪を封じてください。
また妖怪側の役、カメラマンや妖怪を動かす技術スタッフ等の裏方さんも同時に募集しております。
〜道士の法力選択〜
・青い鈴
青龍
春と東の守護神
能力:水 守備型
武器 龍笛&方位計 龍笛で睡眠誘発や能力を激減させることができ、また方位計により妖怪や仲間の居場所を知る事が出来る。
玄武の結界と組むことで守備能力が倍増。
・赤い鈴
朱雀
夏と南の守護神
能力:炎 攻撃型
武器 桃の法剣&法術 桃の法剣は妖怪を討ち取る際に使われる。白虎の詠唱で力が倍増する。
・白い鈴
白虎
秋と西の守護神
能力:森または道 攻撃型
武器 召還&詠唱 様々な式神を呼ぶ事ができ、詠唱で攻撃が出来る。
・黒い鈴
玄武
冬と北の守護神
能力:山 守備型
武器 天鏡&棒術 天鏡で結界を作り、棒術によって敵を薙ぐ。
・黄色い鈴
麒麟
? 中央の守護神。生命ある獣の支配者。
能力:?
武器 ?
なお詠唱、技の名前や攻撃の方法は鈴を手にした方が決める事が出来ます。麒麟の場合のみ設定、能力、武器など一から決める事が出来ます。
ただ、詠唱が長すぎたり、技の設定が複雑ですと割愛させていただきますのでご了承ください。
鈴は玄武、麒麟に限り二つに分けることが出来ます。しかし力は半分となってしまいます。また能力に適した技以外の力は、使えないことがあります。
この五つ鈴は必ず埋めて下さい。
妖怪情報:
駮:甦った羅豊の支配者。禍々しいほどの赤い瞳に額には大きな肉角が生えている。体つきは馬の様だが、鋸を思わす歯と虎のように頑丈で鋭い爪を持ち、黒い尾を一振りすれば帯状の障気を召喚し鋭く尖らせ攻撃を仕掛ける。
しかも勾玉に封印された力を手に入れ完全復活に近い状態となる。が、神気がそこに織り込まれている事をまだ知らない。
この妖怪で最後です。役として使って下さってもNPCとしてくださってもOK。
召喚された神:鈴達によって召喚された鳳凰、玄武、白虎、青龍の四神と中央を守る麒麟。呼び出す鈴の力の関係と障気の所為で、多くて二神しか呼び出せない。そして戦いやすさのためか人の様な姿を取っているようだ。(四神役を取る場合、種族が合っていれば半獣可)
戦闘能力、戦闘か防御かはそれぞれ召喚された四神によって異なるようで法力選択を参考に、召喚したい四神を皆様がお選び下さい。
※ 西王母はこの時点ではまだ捕らえられたままのようです。
●リプレイ本文
●
低く地を這う太鼓の音が鳴り響き、大きな扉が出現した。驚く道士達の前で扉は軋む音を立てて開き、中から白い馬に良く似た妖怪‥‥駮(レイリン・ホンフゥ(fa3739))が姿を見せる。
麒麟の出来損ないと星麟(星辰(fa3578))が称する通り、ざんばらな鬣の間から生える長く太い一本角は力強さを誇示し、爛々と輝く障気を帯びた真っ赤な瞳は悪鬼そのもの。
「くくくっ‥‥最後に友と別れの挨拶をするがいい」
「あぁ、そうしよう。酒をゆっくり飲み、逝くのも悪くねぇ」
太鼓の音に似た声で道士達を嘲笑い憎々しい言葉を吐く妖怪を睨む彼ら。その中で妙に落ち着きを払った天曹(藤宮 誠士郎(fa3656))が、愛用の酒瓶を口に含ませ中に入る酒を煽り、他の道士達に視線を投げる。
天曹以外に動く事がない道士。だが彼らは恐れているのではない。
頭の中に直接響く、白澤の策に耳を傾け、四神を召喚する好機を計っているのだ。
誰もが気を集中し、白い身体から吹き上がる憎悪の念に酷い圧迫感を覚えながらも天曹の合図を待つ。
「‥‥そろそろ、主等を取り込め、真の地の覇者となろうぞ! ‥‥影刃」
グンッと虎の前足に似た足で地を一踏み。駮は術を繰り出した。
影で出来た刃が、空を切り裂き襲いかかる。が、機は熟した。
「待ってたぜ駮! この酒瓶は俺の作る宝貝だ。自然の神気が蓄積し、十年かけて溜めた神気をここで使わせて貰うぜ。再戦といこう」
技を放った後に出来る僅かな隙をつき、天曹が攻撃に転じる。大きく跳躍し、神気を取り込んだ彼はリンっと鳴る黒鈴の力も借り、酔拳による変則的な棒術を繰り出し、また振り翳される駮の角や鋭い牙、爪を寸前で避けていく。
「これが最後の戦い‥‥オイラはこれしか出来ないけど、早く決着をつけたいと思う気持ちは皆一緒。力を併せて頑張るよ!」
束ねた長い髪を翻し、少女のように高い声の小風(基町・走華(fa3262))が龍笛と共に青鈴を響かせ『鎮守の奏』『武神の奏』『疾風の奏』連続で奏で補佐をした。
駮を惹き、時間を稼ぐ彼らに春霞(月見里 神楽(fa2122))と星辰は頷き合う。長い戦闘の末についた阿吽の呼吸で互いの黄鈴を鳴らし術を唱える。
「私達は笑って帰る予定ですの! 駮、覚悟なさいっ」
「五行に曰く‥‥火は地を生み、地は金を生む 地と生の長‥‥麒麟の力を借りて 来来! 聖獣達よ」
春霞は大きな目で駮を睨み付けると琵琶と黄鈴を鳴らし『麒麟の湊』を奏る。星麟も天曹の作っていた領域結界・杏黄旗を利用し、黄鈴を掲げ詠唱。聞いていた小風は急遽、
「青龍様、オイラに力をお貸しください」
曲を替え『神壁の奏』吹く。黄鈴と青鈴の音が絡み、星麟の呼ぶ声に応えるように他の鈴達も共鳴した。
黒雲の立ちこめていた空が切れ、召喚された四神と麒麟が姿を見せる。聖獣達は空をクルクル回り召喚を待っているようだ。
そこに美蓮(朝葉 水蓮(fa2986))と太真(桃音(fa4619))の二人が、大きく手を広げ四神を身に呼び込む。
「四方の守護者たる四神、白虎よ! 我の鈴音に答えよ!」
「同じく、朱雀よ、我が声、鈴に応えよ」
クォォンっと鳴き声を発する朱雀と、雷鳴を轟かせる白虎が彼女達に憑依する。
「‥‥ったく遅せぇぜ、だがこれでっ‥‥ぐはっ‥‥?!」
「ほぅ、白虎に朱雀。我を封印すべく登場とは、これはようこそ。だが易々とはやられまいぞ? 我の体内に鍵の娘がいるのだからのぅ。黒の道士、お遊びはここまでじゃ! ‥‥影縛! 亡鬼招来!」
今まで戦っていた天曹を術の影で封じ体当たりを喰らわせた。召喚で神気を消耗し殆ど残っていない鈴を持つ天曹は耐えきれず、もんどり打つ。
そんな彼を後目に、駮は羅豊に送られた妖怪を召喚する禁忌の術を唱える。黒い靄が様々な変化を繰り返し、巨大な鳥‥‥蠻蠻が現れた。劈くような奇声と一緒に真っ青な炎を吐き散らし、道士達に襲い掛かる。
「な、何アル!」
「‥‥す、鈴の力が‥‥効かない?!」
「みなさん、下がってくださいませ」
炎の玉が小風と星麟を飲みこむ寸前、春霞が己の血に宿る神気を生かし黄鈴を奮い立たせた。琵琶を鳴らし『虹輝』で弾き返す。
「暴れすぎぞ、駮‥‥蠻蠻。主等はあまりにも罪が大きすぎる、購うのは大変そうだのぅ‥‥紫電雷刃」
白虎が媒介する影響で全身が白い光りに覆われた美蓮は、神の持つ鋭い爪を雷に変えて襲う駮に飛ばした。避ける間もなくもろに受けた蠻蠻はドォンッと地面に叩きつけられる。
「ほぉ、力をある程度、取り戻せているようだの白虎。‥‥クハハっ! 法剣を振るう朱雀よ、考えてみろ、主らは攻撃は出来まいて! さぁどうする」
駮は地に叩きつけられた蠻蠻を見て、感心したように言い放つ。自分と戦う朱雀の憑依する太真に向かって更に角を振い、影の刃を四散させ道士達にも襲いかかる。
剣技の神だっただけあり、攻撃は容赦なく鋭い。
強い神気と障気のぶつかり合いに圧倒された道士達は、襲い来る刃を避ける事しか出来ず我が身を防衛する事のみしかできない。どうしようもできない苦戦を強いられ、道士達と召喚された二神達は動きを取れずにいた。
●
「この辺のハズ‥‥。あ、これね。西王母様、お怪我はございませんか?」
「まぁ、麗君。ありがとう」
西王母を助ける為、道士達と別に気配を殺しながら探っていた女仙、麗君(桜 美琴(fa3369))。
幾度か駮の部下に出会し襲われるも仙術で倒していく。
邪気の間から僅かに流れる神気を頼りに西王母を見つけ出し、牢番をする部下を倒すと鍵を見つけ檻を開け助け出す事に成功した。
「良かった。西王母様‥‥。さ、ここから出ましょう。そして駮と戦いをしている鈴の道士達の元へ! 貴女の助けが必要なのです」
「承知しておるよ、麗君。行きましょう」
西王母が無傷である事を麗君は素速く確かめ、その手を取ると、戦っている道士の元へ急いだ。
●
「天曹さん、怪我を治すアル! 全ての生あるものは大地の精もて健全に復すべし、快功治癒、急々如々! それにしても無闇に手は出せないアルね。けど早く華蓮ちゃんを助けなければ‥‥彼女の神気、生命の力の流れも弱くなってきてるアル」
星麟は駮に弾き飛ばされ怪我を負った天曹に駆け寄ると、すぐさま鈴を取りだし呪を唱える。いつものように温かい光りが天曹の傷の箇所を治していくも、弱々しく治癒する能力が落ちているのが解る。
「‥‥一か八かで血路を開く。太真と美蓮に封印を任かす、その前に星麟、助けにいけ」
傷が癒えた天曹は真剣な眼差しで他の道士達に策を話すと、すぐさま飛び出していった。
「駮! 鈴が使えずとも俺は元から道士だ。見せてやる、こいつが俺の奥の手だっ! 結界之転・十絶陣」
「青龍様! お願い‥‥もう一度、貴方の力を貸して!」
ドゥゥゥン!!
「小癪なっ、鈴を使えないお前達に何が出来るのだ! ‥‥ギャァ?!」
天曹自身が編み出した最大級の結界技。次々と指を組み替え印を結び、溜め込んだ神気を太真と睨み合ったままの駮に向かって放った。
ポゥっ光が駮の胸に集中し、徐々に強さを増させる。そこに小風が渾身の力を込めて龍笛を吹き『神壁の奏』を奏で出す。力を無くした青鈴は弱々音を響かせていたが、小風の意志に応え始め、徐々に強く鳴く。
鈴音を聞きつけ、太真に代わり天曹へ攻撃を仕掛ける駮。だが一足早く天曹の結界が完成し光が強さを増し、小風の笛の音も更に強く響き、駮の体内の力を逆流させ動きを封じ始める。
駮は咆哮から劈く悲鳴へと声音を変わった。身体がボコボコと異様な盛り上がりを見せる。それは中で華蓮の居場所を示しだす。更に刃を放ち道士達を襲うが、春霞が奏でる琵琶の『麒麟奏』が掻き消す。
動けなくなった駮に星麟が三節棍を振るい刃を振りながら奔走する。しかし地に倒れていた蠻蠻が、突如黒い疾風となり彼女の前へ飛び出した。
「駮サマを守る‥‥」
「こっちだ蠻蠻! 破邪咆哮」
星麟を襲う蠻蠻を美蓮が白虎の咆哮で粉砕する。悲鳴を上げる間もなく召喚された妖怪は波動の中に消えた。
美蓮は息も付かずに天曹と小風が繋ぎ止める結界の中に入り、桃の法剣を振るい戦いの舞いをみせる太真に向かって視線を投げると、封印の呪を放った。
「白き西の守護者たる我が力持ちて、赤き南の守護者の法剣に四神の力を!」
「この法剣の刃を用いて、駮に再び永遠の眠りを‥‥」
雷音と共に白い虎が法剣目掛けて入り込み、炎を纏った法剣が白炎と化し、更に温度力を増幅させた。
「みんな、きっとまだ足りないと思う! お願い!! 四神様、力を下さいっ」
大地がたわみ、小石が吹き荒れる浄化の炎に渦を作る。小風の願う言葉に他の道士達も鈴を取りだし、天にいる四神に願いを込めて掲げた。
リリィィン!
小風の呼ぶ声に道士達はいっせに鈴を天に掲げる。天から四神の鈴音が響き、朱雀が宿る太真の桃の法剣に更に力を与えた。
「暫く眠ってくれや混世魔王、封!」
「駮! 勾玉の中で眠るがいい!」
術で縛っていた天曹がよろめきながら機を読み駮を解放した。そこに息を整えた太真が地を蹴り、浄化の炎を纏う法剣を振り下げた。
駮は怒りに任せて障気を放とうとするが、遅い!
爆発する聖なる炎に飲み込まれ、焦げていく。
「グォォオオ! 惜しいやぁぁ」
炎の中で猛り狂う駮の体内から小さな少女が現れる。華蓮が弱々しく瞳を上げた。
「か、華蓮!? 死なせはせぬ、絶対に‥‥助けに行くぞ!」
「駄目だ! 美蓮さん、一緒に消えちゃう!」
母である美蓮が突進した。誰もが悲鳴に近い声で、彼女を呼び止めようとするが美蓮の耳には届かない。
そこに無数の氷の刃が浄化の炎から美蓮を守るように前、後へと追う。
「以水気氷雪嵐成!」
西王母を助けた麗君が道士達の元に到着したのだ。彼女と西王母が共同で放つ神気に守られ、美蓮は我が娘を炎に消えゆく駮から助け出した。
次の瞬間、太真が手にしていた勾玉を駮目掛けて放り投げる。
ジュォオ! っという奇っ怪な音と共に駮は紅い玉の中へ吸い込まれた。
助け出した華蓮は、弱々しい力で母を見ると小さく微笑み、全ての力が抜けた。美蓮はぐったりとした娘を抱きしめ、
「待っておれ、いま元気にしてやる、‥‥受け取りるのじゃ!」
美蓮は手に神気を集め、全てを娘に注ぎ込む。まばゆい光と母の愛が華蓮に注ぎ込まれ、小さな胸が再度、上下に動き始めた。
息を吹き返した娘を見た美蓮は、小さく微笑み崩れた。助け起こす天曹と小風。
「美蓮!!」
応じない。すでに事切れていた。だがその顔は満ち足りた母の笑みを浮かべたままだ。
「呼びましょう! まだ間に合うわ。麒麟の力も借りて皆で呼ぶのです」
西王母の声に道士達は鈴を持つ手を握り合い、美蓮を囲い空に浮かぶ四神、麒麟に祈りを捧げた。最も強く祈るのは黄鈴を持つ星麟と春霞。
「天地四方の神力もて健全に復すべし、完功治癒! 律令の如く急ぎ行い賜え!」
春霞の琵琶の音に合わせ星麟は精一杯力を出し呪を施す。温かな光が美蓮を包み、死色を浮かべ始めた唇に再度、色を与え始めた――。
●
あれから数日が過ぎ、復興を急ぐ崑崙山では一つの儀式が行われていた。
太真が母の地位を次ぐ事となったのだ。厳かに行われる儀式の中、赤鈴を髪に付けた太真は威厳に満ちた笑みを浮かべた。
黄鈴を帯に付け正装した星麟が祝いの拍手を送る。宮廷の楽士となった春霞は、正式に天神の声が掛かり、ここで琵琶を弾く事となっていた。優しくリンと鳴る鈴の音に緊張が解れる。
晴れやかな日々を祝うのはここにいない者も一緒。
自らの罪を滅ぼす為、雷后と共に羅豊の門番を務める事になった麗君は不思議な色をする鈴を見やり、何か思うように小さく頷く。
神から人へ戻り、孤児院を経営する美蓮は、どの子にも分け隔てない愛を与え、毎日忙しい日々を送っていた。
「うちが生きておるのは、まだやらねばならぬ事がるということじゃな」
娘が遊ぶ白鈴がリリンと伝えるよう鳴り、音に応えるように美蓮は呟く。
そして旅をする天曹と小風は風に揺れる黒鈴と青鈴を聞きながら、
「あの時の事、夢を見てたような感じだったね、天曹さん」
「あぁ、しかし事実だ。ほらあの玄武と青龍の喧嘩する声が、聞こえるだろ? ‥‥他の皆は達者でやってるかねぇ」
絡み合う鈴音を聞き、天曹は笑いながら酒を煽った。
吹き抜ける風が四神の鈴を共鳴させ、エンディングが流れだす。
『鈴的世界』
「 白嶺より出ずる 見渡す大河のほとりで
白い小さな花が風に揺れた
太陽は優しく 恵みの緑が潤す 風渡る大地に道は続いてく
暗い闇夜の帳が降りて気付いた 星の輝き 月が照らしだす世界
安らぎと不安の中で 響く鈴の音 希望を胸に眠る 陽はまた昇るから 」
スローなテンポの琵琶が低く龍笛が高音を奏でる音に合わせ、出演者達の歌声が響く。
●
「「「「お疲れ様でしたー」」」
「ありがとうございました。出演してくださったみんな、謝謝、お疲れ様! 楽しかったよ!」
一言出演者に声を掛ける監督のユウ氏に花束を渡す桜と月見里、桃音。笑顔と拍手を向け、監督を労う藤宮に基町、そして朝葉。
差し入れのタッパーを手に大泣きするレイリンをユウ氏は優しく肩を叩いて励ました。
「これまでお疲れさんアル。再見!」
星辰はちょっとクールに手を振る。
楽しかった『鈴音的声音道士』はこれにて終了。皆さん、また合う日まで。