いろはに諺 せの巻アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
極楽寺遊丸
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
1.8万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
02/18〜02/20
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●本文
サブタイトルは実体験で諺(ことわざ)を学んじゃおう!
一応、教育番組である。いや、そのはずだ! 何と言おうと‥‥。
どうも言葉が濁る理由は、番組担当のプロデューサーの指示で運び込まれる小道具、衣装の所為だからである。華やかで奇抜、要するにイベントパーティーでも行われるのではないかと思えるモノばかりなのだ。
スタッフの手により次々と運び込まれる段ボールと、大道具さん達が作る和風なセットが着々と仕上がってゆき、大きな筆を持ったヘラジカがモチーフのマスコット『マロ君』が、スタジオの隅で衣装さんの手を借り着替えを済ませると、スタンバイOK!
あとは文字ぃ君となる出演者、司会のお姉さんのスタジオ入りを待つばかり。
さぁ、賑やかに放送開始である。
■出演者募集
いろはに諺の出演者を募集します。
楽しく頓知のきいた芸人さん出演者と番組進行係のお姉さんS’&司会者さん、演出を手伝ってくださるスタッフの方々の応募をお待ちしております。
■演出
その1 諺とは関係なく「せ」(濁点可)の文字を頭に使い面白発言や全身黒タイツ(女性はピンクでスカート付き)を着用し文字ぃ君となり、体を張り文字を作って頂きます。
その2 各個人、または団体で諺に沿ったコントやドラマ仕立てミニコントを一つお願いします。
ボケをかましお姉さんにツッコミを入れてもらうも良いですし、体を使ったスタントでコントもオッケー。
とにかく一番大事なことは、皆様がワイワイ楽しんで番組を作ってくださること!
コントの大道具、衣装はスタッフが用意致します。
最後に諺の意味をちゃんと説明して終了予定? それは参加された皆様次第!
用意した諺は、全て使わなくても大丈夫です。
■番組マスコット情報
名前:いろはの守言彦麻呂(略称いろは麻呂でマロ君)
外見:赤い色をしたヘラジカっぽっくふわもこでなんか可愛い。
持ち物:大きな筆を所持。
性格:基本はドジっ子でボテボテした動き。だが意外と俊敏な時もあり?(中に入った人次第)。好きなモノは毎週のお題で変動。
■お題
せ
「せいては事を仕損ずる」
意味:急ぎすぎれば失敗してしまい、かえって時間が掛かる事が多い事から、急がなくてはいけない時も焦らずゆっくりやりなさいという事。
「前門の虎、後門の狼」
意味:一つの災いを防いだところにまた別の災いが来る事。
「千里の道も一歩より起こる」
意味:千里という長い道のりもまず最初の一歩を踏み出して始まることから、とても大変な計画でも少しずつ頑張る事から始めようという事。
●リプレイ本文
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いつものタイトル画面からスタジオへと切り替わり、文字ぃ君達と司会進行を勤める三人が映し出された。
「今回も始まりました、いろはに諺の時間です。恋しい人の元に行く時はどんな遠くとも苦にならない心境の例え『千里の一理』の心境で、毎週楽しみに司会者を勤めさせて頂く郭氏文です。お姉さん達や文字ぃ君達は如何ですか? 『席暖まるに暇あらず』のように多忙の例えでしたら、羨ましいですね。私も仕事が欲しいものです」
自虐的なネタで挨拶をする郭氏文 令明(fa0243)。続いて苺(fa3120)が『先行! 潜行! 先攻!』と書かれた腕章を元気に振いながら、
「かうんとだうんすりぃー。今回も数を間違えなかったのだ。物事は正確に‥‥の『せ』。慌てず騒がずご利用は計画的に‥‥」
すぱこぉん!
聞き覚えのある宣伝文句を述べる苺に有無も言わさず豊浦 あやね(fa3371)が初っ端からハリセンでしばき倒す。
「こぉらマイお姉さん。潤んだ瞳のワンコが出てきそうな話を‥‥。さて、この通り最後まで『全力疾走』でいきましょ! 今週も『千変万化』のネタで『千篇一律』なマンネリにならへんように『善は急げ』でいこかー」
豊浦の突っ走り気味を指摘したい文字ぃ君達だが、彼女が両手に携えるハリセンを見て何も言えない。
勿論、それは豊浦の『前門の虎、後門の狼』的な牽制だ。
さて今日も豊浦政治の元、番組の幕が開けた。
●
ライトが当たらないスタジオの隅でHIKAGE(fa1340)は、いつになく真剣な表情でドミノの碑を等間隔で丁寧に並べながら、
「俺は最終回を迎える前に『千里の道も一歩から』をテーマに大役を為し遂げるぜ。今日は是が非でも頑張るよ」
爽やかな笑顔で決意を語る。隣では如鳳(fa2722)が入るマロ君も軽く手を振り、抱えた段ボールの中からドミノを渡しお手伝い。
少々地味な活動を続ける彼らから、再度カメラはスタジオへ戻り、苺を映す。
「はいーヒカゲン、『前人未到』な企画、頑張れなのだ。っとゆーわけでおいらも負けていられないのだっ。と、ゆーことで取り出したるはガチガチに硬い煎餅‥‥」
ヒョイっと顔程もある大きい丸煎餅を二枚取り出しフリフリ。
苺の鼻に香ばしい醤油の香りが入り込み反射的にツ〜〜っと涎の糸が一本引く。が、じゅるっと啜り上げ、煩悩を振り切り、ネタに入る。
「う、美味し‥‥じゃなくてー、硬いお煎餅を柔らかく食べる方法をみんなに提案するのだ! それは洗濯なーのだ」
「な、なんと煎餅を洗濯? それは前代未聞。まさに『青天の霹靂』ですね。意味は思いがけなく起こる突然の大事件や出来事の事。また突然受ける思いもよらない衝撃の例えです」
出演者&スタッフ達は彼女の発した言葉に耳を疑る。だが、気にせず実践に移す苺。
用意した鍋に煎餅を浸しゴォリ‥‥ゴォリっとこすり合わせ洗いだす。
郭氏文は呆れつつ、淡々と諺を交え解説し始めた。内心、彼が本当に青天の霹靂を感じているか解らない。
「こらぁ、食べ物を粗末にしたらあかんっ! 『折檻』や! 最近はなんや、あまり良い意味に使われまへんが本来の意味は厳しく意見したり、叱ること。後の戒めのため、叩くなどして懲らしめる事や。悪いコトしたら当然やな。しかし度が過ぎるのはあかん。そこんところ弁えな‥‥ということで」
ぶばしぃん!
言っている本人が弁えているか不明だが、豊浦が勢いよくハリセンを振った。強か叩かれた苺は、その拍子に手が滑り煎餅を放り出してしまった。
放物線を描き飛ぶ煎餅の行き着く先はHIKAGEの作るドミノ。
どがっ! じゃぁーーっ。
「OH〜〜NOぉぉんっ」
賑やかな音をたて倒れる碑とHIKAGEの叫びが重なる。
真っ白に果てた彼を哀れむように如鳳のマロ君は、苺に抗議のプレート『節句働き:皆が仕事を休む節供の日に普段怠けている者が、自分だけ殊更に忙しそうに働く事』を掲げた。しかも彼なりに頑張っていたのにとリアクション付き。
よく考えればこの諺、貶しているようにも聞こえ無くない。
微妙にありがたくない好意にHIKAGEは涙を拭い、再度チャレンジ碑を立て出す。一応、なんだか丸く収まった所で郭氏文が次に待つ文字ぃ君を呼ぶ。
「ではヒカゲンが頑張っている間、ウィル&たっちーにも頑張って貰いましょう!」
待ちかまえていたあまり似ていない双子兄弟、ウィルフレッド(fa4286)と帯刀橘(fa4287)が笑顔で登場。
「久しぶりのウィルフレッドだよ。今日は似てない双子コンビ、タッチーと一緒にみんなと諺の勉強していこう」
「そうそう、けれど僕達は本当に双子なんです」
「ねー。こんな俺達にぴったりの諺があります。それは『性相近し、習い相遠し』! 人間が先天的に持つ性質には個人差はないが、後天的な習慣の違いや教育の違いによって、種々の大きな差が生じてくんだって」
本人達も認めているほど似てはいない。その一番は衣装。
ウィルフレッドは寒さに弱いのか暖房の効いているスタジオだというのに防寒に撤した重装備。かたや帯刀の方は季節感を無視した夏と見間違うタンクトップに半ズボン、更に足下にはサンダル履きという出で立ち。
突っ込みどころ満載は帯刀だが、彼は逆にウィルフレッドに意見する。突っ込まれる前に突っ込めの『先手必勝』の実演なのだろう。スタッフが流したテロップの後に、
「ところでウィルは意味を判ってるのですか?」
「も、勿論じゃないか! 何を言っているんだか、た、たっちー」
鋭い突っ込みを入れる弟にしどろもどろで答えるウィルフレッド。
帯刀は伺うような顔で兄を見ると、少々鼻を鳴らし、
「ならいいのですけど。どうやら『正鵠を得る』が無きにしもあらずかなって思ったのですけどね。あぁ意味は物事の急所や要点を正しく押さえ、核心を突く『正鵠を射る』。そうとも言うけれど、本来は『正鵠を得る』が良いようです。参考に正鵠は的の中央の黒点で図星って事だそうだよ」
淡々と話す帯刀。彼の出した慣用句にテロップが入り漢字の違う箇所は赤く記されていた。
彼の言い分同様、ウィルフレッドに対する嫌味とも捕らえられる言葉。仕掛けられた方も黙ってはいない。
「むぅ。そっちこそちゃんと判ってるの? 無闇に人の真似をして世間の物笑いになること、また人に倣って事をする場合に謙遜して使う『西施の顰に効う』なカンジ。タッチーの場合は前者のようだけどね」
「そんな事無いです。けどその内容は中国の西施って美女が胸を病み、苦し気な表情を美の仕種と思い込んで醜女が真似たとか真似ないとか?」
にたりと応酬するウィルフレッド。帯刀も負けじと追い打ち。ついでに彼は言葉のもっと深い意味を紹介する。
「そうそう。ちょっと引いちゃうよね。まぁこんな句は使われるのはご免だけどね」
「って、もう僕に使ってるでしょ! 失礼しちゃうよっ」
プンスカ怒る帯刀にしたり顔のウィルフレッド。睨み合い火花が散る双子のネタ収拾をする為、燻し銀のように渋い男鬼王丸・征國(fa0750)が仲裁に入る。
「これこれ喧嘩はいかんぞ。世界は一つ、誰も仲良く皆兄弟。両親を大切にしようというじゃないか。さぁ、これから仲良くワシと歌うのじゃ。セーガー、せーがーは東京都大田区ー‥‥♪」
「そこまで言うんやったら、他の歌にせんかいっ!」
ぶばしぃん!
意味不明な事を大声で歌う鬼王丸に、素速く豊浦のハリセン突っ込みが下る。
「ユラお姉さんの言い分はご尤もじゃがな、それを歌ったら著作権云々があってな‥‥おぉ、そんな事はどうでも良い。さてワシの亀の甲に年の功コントじゃ。どちらも為になるモノ請け合い! ゼノンの逆理についてじゃよ」
それでもめげない鬼王丸は、いやにリアルでオトナな言い分をたれて、ついでに背負った亀の甲を見せつつネタ披露し本題に入った。
「さてさて競走において速度の遅い者は決して速い者に追い抜かれる事は無い。何故なら追う者は先を走る者の去った点にまで到達しなければならず、その時点で先を走る者の速度との距離だけ必ず前にいるからだ。例えば十秒先に走っている亀に追いつこうとすると百分の一。千分の一、一万分の一秒と‥‥」
鬼王丸が足踏みをし始めると画面がCG映像に切り替わる。そこに亀に扮する彼を追うギリシャっぽい衣装のアキレスCGが現れる。アキレスが鬼王丸を抜こうとする瞬間、ぐわんっと時空が歪んだ。
歪んだ時空に入れないアキレス。更に先を行きながら解説を続ける。
「何処までも割り切れるかという数学の大前提のより、早く走れるアキレスは決して前を走っている亀を追い抜けないとされるパラドックスの事じゃ」
難しい説明に困惑顔になるTVの前の良い子達。しかし凝っている映像に引き込まれているのは確かだ。
「ぜーぜー。やはり追いつけないな‥‥。時空を越えるのは辛い事だが‥‥ゼノン‥‥神の領域に達した気がする‥‥おお‥‥全知全能の神ゼノンよ‥‥」
「古い漫画ネタはやめぇぃ! アキレスは逃がしてもウチは逃がさへんで。『背中に眼は無し』と思っていたら大間違い!」
すぱこーんっ!
突如、追い抜かれていないはずのアキレスが前に登場し、クルリと振り返るとなんと豊浦。彼女は有無を言わさず専売特許の突っ込みハリセンを豪快に打ち下ろした。
景気の良い音を立て床に落ちた鬼王丸を如鳳のマロ君が見ていたがヒョイっとプレート『雪中の松柏:松や柏は冬でもその色を変えない。苦難に遭っても主義や主張を変えない。節操が極めて固いことの喩え』を掲げた。ずっと蘊蓄ネタの彼への労いか?
「おぉ‥‥解ってくれるのはマロ君だけじゃ‥‥」
破顔する鬼王丸。如鳳のマロ君はその顔を見届け、フリップを返す『雪中の松柏:松や柏は冬でもその色を変えない。苦難に遭っても主義や主張を変えない。節操が極めて固いことの喩え』
そして近くに落ちていたスケッチブックを拾い捲る。そこには『事と次第によって、良きにしもあらずっ』と書かれていた。
がっくり項垂れる鬼王丸。
しかしマロ君の矛先はそこだけには留まらない。クルリともう一枚、紙を返し『殺生八分の損、見るは十分の損:生き物を殺める人間に良い事は巡ってこない。それを見て喜ぶような者にも幸運は来ない』
ビっと他の出演者を指さしていく。
「あんさんが引導を渡しといて何言うねんっ!」
ばしぃぃん!
突っ込みと共に強力なハリセンを浴びたマロ君。鬼王丸と仲良く床で寝たところでCMが入った。
●
未だにドミノを並べてるHIKAGEから、ブヨンブヨンの物体と成り果てた煎餅を掲げる苺にカメラがゆっくりと流れ映し出された。
「ほらぁ、柔らかいぷるぷる煎餅の完成なのだ♪」
苺が嬉しそうにそれを振り、辺り構わず薄まった醤油を微妙に含んだ水を散す謎の物体。
郭氏文が優しげに彼女を諭す。
「それはどう見ても煎餅ではなくUMAです、マイお姉さん。これを試食するのは『瀬を踏んで淵を知る』ですね。ここは『背に腹は代えられぬ』‥‥。HIKAGEさんが食して下さるハズでしょうですから、せめて少しは煎餅らしくしてあげて下さい」
「むぅ、解ったのだ。こうすればカラリと揚がって元通りぃに、投入なのだ!」
郭氏文はひたすらドミノを並べていたHIKAGEを罰ゲームの参加者として勝手にロックオン。
苺はスタッフが用意した熱した油が並々入る鍋へ水気をたっぷり含む煎餅をなんの躊躇いもなく投げ入れる。
ばひゅーーんっ!
散弾銃の如く炸裂する油と煎餅。これはまぁ当然の事態。
「がぅ!? あ、あっつぅ!? ‥‥そういえば水分を絞るのを忘れたのだっ、これぞ急いてはことを仕損ずるなのだ」
驚きの声を上げつつ、苺は諺を交えながら左右に体を揺らし軽くかわす。テロップも一緒に『注:大変危険。よいこは真似しない事』と流れた。
呆れ返る他の出演者達だが、決して彼らだって無事ではない。
しゅぱーーんっ!
「うわぁ?!」
油は勢いよく弾け、右往左往に逃げる彼ら。しかしそれでも手を休めずドミノを一心不乱に並べるHIKAGE。
尤も集中しまくって惨劇に気付いていないようだ。
「‥‥さぁこれで終わり‥‥ばんざーい! 精神一倒何事か成らざら〜ん!」
コトッと一個碑を置き、ようやく終了。
HIKAGEは達成感に感涙し万歳三唱をする。合わせてかの某拳闘映画のエンディングも流れる。
「さぁ色々と仕掛けをしたんだ。良い子のみんな見てくれー」
HIKAGEの言う通り、段差があったり縄ばしごやゴンドラの仕掛けが施された凝った作りのドミノ。嬉しげにスタート地点を指で突こうとした時に、
しゅぽ〜〜ん。
油で撥ねた煎餅の固まりがドミノに被弾し、ガココっと小気味のいい音を立てて倒れていく碑。
「あぁぁ〜〜と、止まってぇぇ〜〜。これぞ『青天の霹靂』っ」
叫ぶHIKAGEの思い届かず、加速し倒れるドミノは賑やかな音を立てフィニッシュ地点。
倒され青と黄の二色を利用した碑。そこ現れたのは『せ』の文字。
誰もが歓声を上げるが、作った本人は床に突っ伏し泣いている。この涙が先程と違うのは知らない方が良い事らしい。
「‥‥今日も賑やかなうちにお時間ですわ。しかし『千里の道も一歩から』とは言いますけど、ほんまに色々な事がありました。『前事を忘れざるは後事の師なり』、前にあった事を心に留めておけば、後に物事を行なうときに良い参考となるに‥‥ならへん事ばかりやけど。ほな‥‥まったねー」
安全キャップを被る豊浦がしみじみと過去を振り返りつつ、手を振った。