鈴音的声音道士 4アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 0.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/30〜05/04

●本文

 ――それは昔‥‥神も人も、そして妖怪もがひとつの地で共存をしていた時代の話。
 ゆったりとした口調のナレーションにあわせて、墨で描かれた絵が映し出される。描かれているのは昔の中国風の画。
 人と神が繊細なタッチで描き込まれ、どこか神秘的な雰囲気を出している。
 画に被さるようにじわりと浮き出した縦書きの書体テロップもナレーションを追うように左から右へ流れては消えていく。
 ――空には美しい天女が舞い踊り、実り豊かな地上を四神が静かに見守る。人は神に恩恵の念を抱きながら暮らしていたが、異形の妖怪達は忌み嫌われ避けられていた。妖怪達もまたその鬱憤を晴らすべく人を苦しめ始め、時に殺めて喰らい始めた――。

 画面は切り替わり、長閑で素朴な田園風景が広がる。ここは山の中腹にある小さな村。平和で静かな村に住む農民達は、楽しそうに畑や田圃で働きその稼ぎのみで村の生計を立てている。
 今年も田植えの時期が来た。いつものように湖から水を引こうと、水門を開きに出掛けた農民は驚いた。
 湖は涸れてしまい一滴も水がない。ただの窪地となり果てたそこに人面の龍、鼓と一本足の大きな鳥、商羊がいた。
「農民よ、私は商羊。お前達に申す事がある」
 直に農民の頭に響き渡る。この商羊は普段、山の頂にある泉の傍に建てられた祠に住み、滅多に人里には降りてこない。
「私はお前達の祖先に長いこと雨水を与え、作物の実りを見守ってきた。お前達の祖先はそんな私を敬い崇めた。が、しかしここ最近はどうじゃ? 住処に来る事もなく、祈る事すら忘れておる。もう、お前達に都合で動くのは嫌だ! 」
「かっかっか、この通り商羊はお怒りのようじゃ! そうそう、我は山を支配する神の子、鼓。村の者、水が欲しければ我に娘五人と酒を十五斗よこせ。さもなくばここにいる商羊と共に日照りを起こさせようぞ? いやいや、暴れさせ洪水を引き起こすのも悪くないか? 」
 親の支配する山で傍若無人に振る舞う鼓と共に、商羊は自分を奉る事を忘れてしまった農民に罰を与えようというのだった。


〜出演者を募集〜
 中国ドラマ「鈴音的声音道士」で、四神と麒麟の法力の宿る鈴に選ばれた道士になりきって妖怪を封じてください。
 また妖怪側の役、カメラマンや妖怪を動かす技術スタッフ等の裏方さんも同時に募集しております。
 

〜道士の法力選択〜
 ・青い鈴
 青龍
 春と東の守護神 水 守備型
 武器 龍笛&方位計  龍笛で睡眠誘発や能力を激減させることができ、また方位計により妖怪や仲間の居場所を知る事が出来る。
 玄武の結界と組むことで守備能力が倍増。

 ・赤い鈴
 朱雀
 夏と南の守護神。炎 攻撃型
 武器 桃の法剣&法術 桃の法剣は妖怪を討ち取る際に使われる。白虎の詠唱で力が倍増する。

 ・白い鈴
 白虎
 秋と西の守護神。森または道 攻撃型
 武器 召還&詠唱 様々な式神を呼ぶ事ができ、詠唱で攻撃が出来る。

 ・黒い鈴
 玄武 
 冬と北の守護神。山 守備型
 武器 天鏡&棒術 天鏡で結界を作り、棒術によって敵を薙ぐ。

 ・黄色い鈴
 麒麟 
 ? 中央の守護神。生命ある獣の支配者。
 武器 ?

 なお、詠唱、技の名前や攻撃の方法は鈴を手にした方が決める事が出来ます。麒麟の場合のみ設定、武器など一から決める事が出来ます。
 ただ、詠唱が長すぎたり、技の設定が複雑ですと割愛させていただきますのでご了承ください。
 鈴は一人、ひとつです。この五つは必ず埋めて下さい。


妖怪情報:
鼓 :山を支配する神の子。人面で龍の姿をし、傍若無人で手の付けられない乱暴者。木をなぎ倒し振るう事もしばしば。
商羊:雨神のお使い、一本足で鳥の姿をした妖怪。普段、農民の味方だが、今回は鼓と共に暴れる。大きな嘴に水を吸わせたり、暴れて洪水を起こす事も出来る。

●今回の参加者

 fa1776 ルゥナ・ヴェール(13歳・♂・小鳥)
 fa2648 ゼフィリア(13歳・♀・猿)
 fa2986 朝葉 水蓮(22歳・♀・狐)
 fa3262 基町・走華(14歳・♀・ハムスター)
 fa3280 長澤 巳緒(18歳・♀・猫)
 fa3369 桜 美琴(30歳・♀・猫)
 fa3393 堀川陽菜(16歳・♀・狐)
 fa3578 星辰(11歳・♀・リス)

●リプレイ本文


 色々なスタントの道具が中華風のセットに運び込まれている。その裏手に用意された休憩所。出演者達が和気藹々とお茶を飲みながら、台本の確認をしていた。今回、スタッフが用意した妖怪の模型は二つ。どちらも精巧な作り物だ。
「今回、うちは青の道士やのうて悪役や。声だけの出演やけど頑張るで!」
「私は基町さんが、演じていた風華役を頂いたのですが、巧く演じられるか心配。少し緊張してます」
「そうね、以前の話とは違って、色々と変更が多くなってるみたい。私も声だけで演出する妖怪役は初めて。しかも声を変えるなんてね。それに仙女、麗君役の二役もあるのね。どうしましょう。あ、堀川さん大丈夫? リラックスよ」
 商羊役の基町・走華(fa3262)と、鼓と麗君二役の桜 美琴(fa3369)はボイスチェンジャーを駆使し、低い男の声で演技に臨むらしい。
 堀川陽菜(fa3393)は今回、基町が演じていた風華役を演じることとなり、落ち着くため飲み物に口を付けているが、顔に浮かぶ緊張の色は隠せない。
「皆さん、準備が出来ました。お願いします」
 撮影の準備を終え、スタッフが呼びに来た。その声に銘々、緊張を解したり意気込んだりする。
 ――さぁ撮影開始だ。


 山の頂きにある小さな祠。祀っていた農民達が足を運ばなくなって数十年、すでに彼らの記憶からこの場所は忘れられてしまい、通り道など茂る雑草で消え、朽ちるのを待つばかりとなっている。
 そんな場所に一羽の鳥が佇んでいた。否、鳥というには少しばかり様子がおかしい。身体が異様に大きく紅鶴のように片足で立っているのだ。鳥は崩壊寸前の祠の前で悲しみとも怒りとも言い難い表情を浮かべていた。
「人よ、いつまで放っておくのだ? 己の都合ばかりだな。‥‥私を敬い、崇める事を忘れたのは大罪ぞ。村を滅ぼされる事で思い知るがいい!」
 凶悪な感情に支配された鳥、商羊は、傍にいる山神の子、鼓と共に農民の住む村へと飛んだ。


 山間にある小さな村は、この時期、田植えを終えているはずなのだが田圃には苗があるどころか水も張られていなかった。そう、田に入るべき水源が商羊に襲われ、全て飲み干されていたのだ。
「お参りや感謝の気持ちを忘れた村人にも非はあるけど、ちょっとやりすぎやなぁ」
「村人達を困らせるなんて許せないアル。神の息子や使者なら相応の尊厳ってものが必要でアルよ!」
「でも‥‥商羊が怒った気持ちは解らなくはないの。だって長年、村に恵みを与えた商羊への感謝の気持ちを忘れてしまったのですから」
「やはり、人と妖怪は共存が難しいのかのぅ?」
 青鈴の道士、風華は青龍の方位計を駆使し、白鈴を手にする美蓮(朝葉 水蓮(fa2986))の式神、光鴉と共に村を救うべく他の道士達に呼びかけた半日後。集まった彼らと、そして村人達が広場で話し合いをしていた。
 この話、よくよく聞けば村人達にも非がある。黒鈴の道士、美狼(ゼフィリア(fa2648))は歯に衣着せぬ一言と一緒に黄鈴の道士の一人、星麟(星辰(fa3578))も一本の三つ編にした長い髪を揺らし憤るが、その隣に座る黄鈴の片割れ、涙麒(ルゥナ・ヴェール(fa1776))は穏やかに商羊の気持ちを口にする。
 賛否両論。こればかりは意見が分かれて当然だが、困り果てた村人に頼まれたのであれば、道士達も動くしかない。再度、額をつき合わせ対策を考えていた。
「のう、娘を五人寄こせと言うておるのじゃろう? だったらうちらがその花嫁になり油断させ、退治するのはどうじゃ?」
「そうね、それいいんじゃない?」
 美蓮の提案に賛成を出したのは、麗君。赤い髪をふわりと掻き上げ微笑んでいる。
「なぁ、聞きたいんだが、あんたはなんだ? 鈴はあるのか?」
「ま、怪しい者じゃないわよ。流浪の道士ってところかな?」
 赤鈴の道士、飛麗(長澤 巳緒(fa3280))の突っ慳貪な言い方にも、麗君は愛想良く答え、金とも銀ともつかない色の鈴を取り出した。
「なれば七人目か? いったい幾つ鈴が存在するのじゃ? ‥‥まあ今、話すことでないか。真偽を疑うわけではないが、今回は黄色が二つあるじゃろう。まったく不可思議。どれ、互いの鈴を出してみて、確認してみようぞ」
 鈴がどれほど存在するのか見当もつかない美蓮は、溜め息をつくと真贋を問うため懐から白い鈴を出す。それを期に銘々、鈴を取り出した。出された鈴達はすぐに互いを見分け、反応し鳴り響く。どうやら歴とした四神の鈴のようだ。
 だが本来は五色で五つの鈴。ここにあるのは六。否、七つ。
 麗君の出した鈴は別としても、黄色の鈴が二つあるのはおかしな話だ。なんのため鈴を二つに分けたか麒麟の意図が定かではない。しかしその能力を従兄弟同士の涙麒と星麟に託した。それは前代未聞。前例のない事。
「ほら、鈴が鳴り合っているアル。全部、本物アルよ」
「ふぅん。麒麟が選んだ二人、どうやら真の道士みたいね」
「‥‥ま、解ったところでさっき美蓮さんの作戦どおり行きましょうや。うちからのもう一つの提案や。商羊と鼓を食べ物と酒で酔わせて、動きを鈍くしようやと思うんやけど。うちはその準備をするさかい衣装の方よろしゅうに」
 麗君は小さくごちる。だがその声は鈴に消され他の者には届かなかった。美狼が話を纏め、一流の料理人になるべく旅をする彼女らしい提案が織り込まれ、それぞれ戦闘の準備に掛かった。


 酒と食べ物を持った白い花嫁姿の道士達は、村はずれの空き地にいた。
「涙麒くん、花嫁姿とても似合っているアルね。どうした、緊張してるアルか? 」
「え? あ‥‥そ、うかな? 星麟。うん、緊張というか不安があるけど、僕にも出来ることなら精一杯やり遂げたいの」
 星麟は不安でいっぱいの涙麒の手をそっと握り、安心させる。
 幼少時、家族を亡くした涙麒は誰よりも命を大切にし、また命を奪う行為に酷く抵抗し恐怖心を見せた。親戚である星麟の家に引き取られ兄妹同然で育った二人だが、星麟の胸中には心優しい涙麒への想いがひっそりと秘められている。
「皆さん、こっちに向かっている妖怪の気配があります」
「作戦通りに行くのじゃよ。抜かるでないぞ」
「よっしゃ。腕に縒りを掛けて作った料理で酔わせて、封印や」
 風華の方位計に妖怪の存在が示された。互いに顔を見合わせ頷く。そんな緊張が漲る中、突拍子もない声と内容が聞こえてくる。その主は麗君。
「あ! ごめん。ちょっと行く所あるの思い出したわ。ま、頑張ってね。道士さん達」
「なんだそれは? ま、待てよ!!」
 飛麗が止める間もなく、麗君は木々の間をすり抜け姿を消した。飛麗は舌打ちしたくなるのを抑え、迫る妖怪に気を集中させた。


 花嫁達から注がれる酒を商羊は嬉しげに呷る。この騒ぎに便乗する山の神の子、鼓もさき程から勢いよく酒を飲み、旨い料理に舌鼓をうっていた。
「この中で一番可愛い娘を嫁にしよう。あとは妾だ」
「この娘はいけないアル。‥‥きゃっ」
 商羊は彼女達を眺め回し、一人の大人しげな娘、涙麒に近付く。星麟がさり気なく庇うが嘴に弾かれた。
 身を堅くした涙麒を覆うヴェールが嘴で取り上げられ、商羊は驚いた。
 娘だと思っていた者は美しい容姿をしているが少年だった。動揺と怒りを隠しきれない商羊は叫ぶ。
「貴様らだましおったな! 」
「人と共に自然に上下無く生きるが道だろう。自分勝手がすぎる!」
「やかましいっ! お前達にはわかるまい。人間の都合の良いように扱われる妖怪の苦しみが‥‥、邪魔だてするでない。女子供といえど、容赦せぬぞ!」
 ばれたことで、弾かれるように全員、戦闘態勢を整えた。飛麗の言葉に商羊が怒りに任せ嘴と爪で激しい攻撃を仕掛ける。咄嗟に大きく飛び上がり退き法剣を構えると赤鈴が鳴り響き、
「怒れる嵐、焔で繰らん!」
 橙色の炎を纏う独楽が、法剣の上を踊り商羊めがけて飛ぶ。鬼宿・轟転炎翼の技だ。風華も龍笛を取り出し青鈴の音と共に攻撃減退の『沈静の奏』を奏でた。
「おのれ‥‥。鼓! お前も手伝え!」
「俺はこの山を支配する神の子、鼓ぞ! お前らなぞ一捻りで倒してやる!」
 焦る商羊は応戦を願う。鼓は酒を飲み干し、龍の身体を大きく振り回すと木々をなぎ倒す。酔いが回っているせいか動きは緩慢だ。
「無駄や。玄武とは北方の蛇亀のことや。結界が亀。そして蛇!」
 首から下げた天鏡を翳す。黒い鈴が鳴り、亀の甲羅のような形の光の結界が現れた。その後、棒を構え無数の突きを放つ。まるで蛇がうねるように不可思議な軌跡を描き、鼓と商羊を乱突する。
「道士達よ、私を倒すと村はどうなると思う?」
 にやり。鳥の癖に笑うとは不敵だが、嘴から大量の水を吐き出す。それは飲み溜めていた湖の水。すぐに大きな流れとなって村に襲いかかる。
「あかん、このままじゃ村は水浸しや!」
 美狼は杖で地面を打ち、大きな結界を張る。それに反応して風華が『鎮守の奏』を奏で、疾風を起こし結界の防御を上げ水を止めに掛かる。が、商羊の怒りも含んだ水の勢いは増し、結界をも壊しに掛かる。
「みんなが頑張ってるアル! 涙麒くん、私たちも鈴の力を合わせるアル」
「う、うん。星麟、わかった! 陰陽合力! 麒麟出来急々如律令!」
 手を繋ぎ、黄色い鈴を掲げた星麟と涙麒の二人が更に結界に力を与えるべく麒麟に願いを込める。二つの鈴が鳴り美狼と風華の能力をぐんと上げた。
「くっ、おのれぇぇ! 」 
「以金気剣成、疾!」
 水の勢いを止められ、術が無くなった商羊は悔し紛れに鼓を連れ逃げだそうとするが、どこからか剣が木に突き刺さり逃走を阻む。
「なぜ、こんな事をするのじゃ? 商羊。過去とはいえお前を崇めていた農民を苦しめるとは許しがたいぞ! 白き鈴音の響きに応えよ――光鴉、白蛇ッ!」
 逃げ場を失った商羊と鼓に、今まで黙って傍観していた美蓮が式神を召還した。光鴉の高速攻撃と白蛇がその身体に絡み付き、あがいても呪縛から逃げられない。
「のさばる悪童、親の裁きなど待ってはおれぬ。共に封印してやる。白の道士!」
「森羅万象の詔持ちて赤き鈴の法剣に白き鈴音を!」
 飛麗は地を蹴り高く飛び上がり大きく法剣を振りかぶった。美蓮の詠唱で橙の炎が白熱した炎を纏う。
「法剣に焔を宿し舞て、妖を封ず!」
 発光した法剣が雷光を伴い商羊を貫く。飛麗は二回宙返りをし地に音もなく着地した。背後に轟音が響きわたり商羊の妖気が浄化されていく。
「ぐふっ‥‥人に振り回され、暴れれば封じられる‥‥。人は勝手よの。私のように恨みを抱く妖怪がいることを‥‥忘れるでないぞ」
 言い残すと、その姿を天へと帰した。
「残るは鼓、いくぞ!」
「お待ちなさい」
 法力の残る剣を翳した飛麗を一人の女性が制止する。麗君だ。いや、先ほどとは違いどこか神々しい。
「我は仙女、麗君。このものは我の知人、山の神の子だ。鼓よ、悪戯が過ぎたな」
 麗君の登場で縮こまる鼓。彼女が恐ろしいらしく怯え顔色を窺っている。その姿に呆れ、
「‥‥まぁよいわ。我と天へ来るのじゃ。悪さが出来ぬよう、仕置きをしてやろうぞ」
 凄味ある口調の麗君に、鼓ならずとも道士達も引きがちだ。それに気付いた彼女はとんぼを切ると、先ほどの道士の姿に戻る。
「ごめんねー。この子、落ちこぼれでさぁ。商羊に使われてるって気付けっカンジだよね。やっぱりこっちの方が話しやすいよね」
 途端に口調が変わった。皆、ズッコケそうになるが堪える。
「あのぅ、どうしてここに仙女様がおいでなのですか?」
「あぁ、黄鈴が二人を選んだでしょ。前例がないもんで、他に影響が無いか調べにきたの。っていうのは建前。本音は俗世に出てみたかったのよ♪ 戒律が五月蠅くてぇ。ついでに知人の子が、悪さしてるって聞いたしね」
 事情を聞く風華にノリ軽く答える麗君。誰もが、いましがた見た彼女の本性に疑問を持ったのは言うまでもない。
「あ、そろそろ行かなくっちゃ不味いわ。みんな、じゃあね。‥‥ほら、何グズグズしてんの、行くよ鼓!」
 足下の鼓を蹴り飛ばし、活を入れるとその背に乗り瞬く間に天へ上がっていく。誰も呆気にとられ挨拶もろくろく出来なかった。


 道士の活躍で村に水が戻り、ようやく田植えが行われた。まだ小さな苗が初夏の風に揺れ、元気よく伸びようとしている。
「終わったな。私はこれから武術に精進の旅だ、皆ここで別れだな。さらば」
「うちも、そろそろ行くとしようか。前の黄鈴の道士が残した答えを見つけなくてはいかんのじゃ」
 立ち上がった飛麗と美蓮は村を後にする。
「私も早く両親を見つけないと、ではみなさんまた」
「早く見つかると良いアル。私たち祈ってるアルよ。ね、涙麒」
「はい、祈ってますよ。お元気で、風華さん」
 涙麒と星麟と握手を交わした風華は、また両親を探すため道を進んだ。
 そんな彼らの後ろで、美狼は農民達からこの地方独自の料理や味付けを教えてもらうため、色々と聞き込んでいた。

 彼らから抜け出した鈴達は、空に浮きクルクル回っている。黄鈴も元に戻り他の鈴に合流すると、新たな妖怪と立ち向かうべく道士を捜しに元気よく飛んでいった。