happy birthdayT氏?アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 極楽寺遊丸
芸能 3Lv以上
獣人 フリー
難度 やや易
報酬 5.2万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/06〜04/08

●本文

 終了した番組の片付けに追われ、スタッフ達が目まぐるしく働くスタジオ。その間をふらりふらりと歩くのは、あの『とにかく捕まえろ!』の名物ディレクターT氏。ここ最近は昇進したらしくプロデューサーとなっていた。
 だが本質はまったく変わらず、糸の切れたタコのようにあてど無く歩き、誰に向けるとなくいきなり背後から取り出したメガホンを口に当てると、迷惑極まりないくらいでっけぇ独り言を呟く。
「もー幾つ寝るとぉ俺の誕生日ぃー、誕生日にはケーキ買って、プレゼントを貰ってお祝いしましょーぉ。早ぁく来い来い誕生日ぃぃ♪ それに昇進もしたんだし、部下としてはお祝いをするべきだよねぇ??」
 何事かと振り返り見るスタッフや残った出演者達。だが、ここでもT氏の奇行は慣れたものらしい。誰も咎めることなくクスクス笑い、彼がコールしているだろうとおぼしき人物に視線を投げた。
「あんのぉ‥‥すかぽんたぁーんんん‥‥」
 T氏の奇行によっていらない注目を浴びせられてしまったスタッフA君。奥歯でギリリ鳴らし、苦虫を五百匹を飲み下したような表情をなんとか耐え、引きつった笑顔で会釈しやり過ごす。
 何故そんな表情を? と言う事なかれ。彼の最近の仕事といえばもっぱらT氏の守り役兼監視役なのだから。
 日に日に募る、無鉄砲かつ無茶苦茶&無秩序に無能とM4な仕打ちに、出来る事なら今すぐに解放され自由の身になりたいという思い。
 できないのであれば、せめて他の番組の手伝いをしている時だけでも‥‥。そんな小さな可愛い願いすら難しくなっているようだ。
「あ、いたいた! ということでお祝いだよA君、お祝い! さっさと俺の祝いの席をもうけたまえ」
「なんで俺があんたの36歳のお誕生日をお祝いしなきゃなんないんだ。それにコネで昇進した癖に‥‥それを祝えとは、どこまで何様な事を述べちゃってんだよ!!」
「な、何様って? 俺様だけどv」
 A君の傍に来ると、T氏はえっへんとふんぞり返り、殿様よろしく威張りくさる。勿論、黙ってハイハイと言うほど彼だってお人好しではない。不満を猛烈アッタクでぶつけるが、いつもの通り柳に風。あっさりと返されてしまう。
 してやられた事にギリリっと奥歯を鳴らすA君。
「のーみそお子様な分際がぁぁ! よし解った‥‥お子様だと思えば腹も立つまい。お誕生日会を盛大にやってあげますよ。そうだな、趣向を凝らせて、毎度動物やらを追いかけ回すフロア全部を貸し切ってやるというのはどうでしょう?」
「ん〜〜、良いんじゃない? なんか嫌な予感がしなくもないけど‥‥」
 さっきの剣幕はどこへやら? にんまり微笑むA君に些か不安を覚えるT氏。だが祝ってくれるというのだから嬉しい。
「では、俺は、一緒にお祝いをしてくださる方とカメラの手配をしてきますね。あ、俺の代わりに片付けをお願いしまーす」
 言うが早いか、さっさと会議室に戻っていくA君。その頭の中には、今までの仕返しが待っているようだ。

〜T氏のお誕生日・昇進のお祝いを一緒にしてくださる方をA君が募っております〜
 今回はT氏の36歳のお誕生日。ということで一緒に祝ってくださる勇者・猛者さん方を募集します。
 尤もA君は日頃の恨みを晴らそうと何やら目論んでいる様子。彼と一緒にT氏をギャフン(死語)と言わせるのも良いかも知れません。
 ですがやりすぎにはご注意。壁、部屋を壊したり落ちないようなシミを付けた場合は、修理費やお掃除の負担代金を払って貰うことがあります。
 また準備段階から当日の様子を撮影し、TV番組として流す事を予定してます。色々な方が視聴していると思いますので、はっちゃけ過ぎのないようお願いします。(ま、暗黙でなんでもオッケとでてますが)
 では常日頃から持つT氏への恨み、はたまたストレス発散をしたい腕自慢のあーた! ご参加をお待ちしております。
 勿論、純粋にお祝いしてくださる方もお待ちしてます。

●今回の参加者

 fa0115 縞りす(12歳・♀・リス)
 fa0750 鬼王丸・征國(34歳・♂・亀)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1294 竜華(21歳・♀・虎)
 fa2361 中松百合子(33歳・♀・アライグマ)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3251 ティタネス(20歳・♀・熊)
 fa3982 姫野蜜柑(18歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●本人を前に会議
 毎度のお馴染み専用の会議室。集結した六名の勇者がピリピリオーラを放つスタッフA君に引きつつも、俺様的‥‥否、お子様プロデューサーT氏のお誕生会でギャフン作戦会議を開いていた。
「‥‥しっかし誕生会って本人は知らない間に準備したり、祝われる当人は恥ずかしかったりするもんだと思ったけど、本人が堂々と要求するのって見たことないなぁ」
「いいじゃん。だってして欲しかったんだもーん。いつまでも少年の心を忘れないのがウリなのさ」
 呆れた表情を浮かべる姫野蜜柑(fa3982)がごもっともな意見を述べる。横で反論するのはお祝い自己申告で強制した主役のT氏。
 アホな事をかます彼に誰もが閉口。少年の気持ちではなく少年並の頭しかないの間違いだろうと思うが黙っているA君。だが、考えている事が顔に出ていたようで。ボボンキュボンなナイスバディをチャイナドレスに収めた竜華(fa1294)が、
「好、A君。今更、彼に常識を解いても無理なのは承知しているわよね」
 激辛なお言葉。ま、今までT氏の行動と思考を考えればこれは至極当然といえよう。諭されるA君も納得している。そう、納得しているが‥‥どうにも今までやられっぱなし過ぎて腹の虫がおさまらないのだ。
 A君が放つ苛立ち静電気が強くなりだした事を察したT氏は、逃げるように無言で部屋から退散。戸が閉まったのを見届けた中松百合子(fa2361)がここで意見を一つ。
「ともかく、本人が祝って欲しいと言うのだからしてあげましょう。こういう機会は悪く無いし、そうね良い子に誕生会の仕方を教えるという形で美味しい物を作って皆で楽しく過ごすというのも良いんじゃない? あとはA君が偉い方々に怒られない程度に頑張ってギャフンと言わせてから、おめでとう! というサプライズを付けるなんてどうかしら?」
「その案は良いと思うのでぃす! しまりすはギャフンと言わせるよりパーティーのお料理を作るお手伝いをするでぃす☆  唐揚げとかフライドポテトとかピザとか‥‥みんなが好きそうな物を作るでぃすよ」
 閃いた意見を話し小さく微笑む。了解っというように小さな手をあげ、担当を言う縞りす(fa0115)。竜華も料理担当をするという意味で頷いた。
「自分はセット職の本領を生かし、お誕生日会の会場を設営させて頂きますよ。えぇ勿論このガムテで☆」
「なら、古河さんのお手伝いだな。力仕事や高い所の飾り付けくらいなら役に立てると思うよ」
「ではお二人に内装をお願いしますね。あっとは使用許可書を貰うだけ‥‥ってわぁ?!」
 セット職人の古河 甚五郎(fa3135)が、すちゃっとガムテープを取り出す。そこに買い出しから帰ってきたティタネス(fa3251)も同意した。ところで、A君がすっとんきょんな声を上げる。なぜなら彼女の背後に任侠役者顔負けの強面、微ワル系イケオヤジでならす鬼プロディーサーの鬼王丸・征國(fa0750)が立っていたのだ。
「新任プロデューサーの誕生日と就任祝いを放送するっちゅうなぁここか? ほれ、これが書類じゃ。話によりゃぁ彼は変わった事ばかりする人ゆぅて聞いた。面白そうじゃのぉ、わしも混ぜてくれ。他に何かありゃぁ言ってくれよ」
 どうも承認書やクルー達のスケジュールの用紙を持ってきてれくたらしい。A君は恭しく受け取とり、
「あ、ありがとうございます。では皆さん撮影開始です。気張っていきましょう‥‥」
 弱々しくおーっと腕を上げる。そこで一同準備に取り掛かった。

●番組名は『とにかく的お誕生会の仕方 裏方編』
「みんなー元気かな? 今日は楽しいお誕生会を紹介しちゃうよ。まずはお料理、美味しくて豪華なメニューのレピシと手際をどうぞ見てね☆」
 鬼王丸が手配したカメラクルーによって撮影が開始。司会を務める姫野が会議室に設けた料理場に入る。
 まず映ったのは春らしい淡いグリーンのギャルソンエプロンを締めた中松。手際よく三段重ねのでかいデコレーションケーキに生クリームを丁寧に塗っていく。それが済むと苺を主とした新鮮な季節の果物を飾り付けた。
「さあこっちはOKね。次はお料理‥‥。人数もいる場合は大皿で取り分けする方が良いわよ。スモークサーモンのサラダにローストビーフ、ロールキャベツと鴨と水菜の和風パスタ、後はカナッペに手軽に食べられるサンドイッチなんてどうかしら? あらA君、そこで涎を垂らしてないでドリンクをクールサーバーに移し替えて貰える?」
 姫野の向けるマイクに答えながら手慣れた様子で料理を作る中松。ケーキの匂いに釣られたA君が口元を弛めるとすかさず彼女は指示を飛ばす。慌てて動くA君に彼女はクスリと笑った。
 隣で菜の花色の可愛らしいメイド服を着た縞りすが、下ごしらえを終えた鶏肉を揚げていく。合間を縫って出来たてのフライドポテトに塩をまぶす。が、なんか匂いが甘い。近くで作業していたA君が訊ねた。
「ねぇ縞りすさん、ポテトから甘い匂いがするけど‥‥」
「塩が甘いわけないでぃs‥‥って、あ。ま、間違えて砂糖を掛けていたようでぃす! ど、どうしましょうかねい」
 家事全般が得意だが一度はドジを踏む体質の縞りす。焦る彼女に中華鍋からボッと炎を上げた竜華が、
「あらん、そのままでいいんじゃない? T氏に食べさせちゃえば」
 これまたキツイ発言。やはりキャンプ時に寝込みを襲われかけた事を根に持っているのだろうか。そりゃ当然な事だ。
 そんな彼女は中華鍋を振り、作るのはお得意の本格中華。
 四川風の麻婆豆腐や激辛タンタン麺。そして海老料理など辛い系が多いようだ。並ぶ小皿から調味料をおたまで掬い味を整えると、丁寧に器へ盛る。部屋に漂う香りが廊下に漏れだしフロアを包んだ。
「さぁ次は会場の方を見てみよう。こっちだよ!」
 姫野とカメラは会場の飾り付け作業をする古河とティタネスの元へ足を運んだ。

 彼らが見たのは、小気味よい音を立てガムテープを休憩フロアの床に貼る古河の姿。
「これで中央に来ているはずです。姫野さん良いところにいらっしゃいましたね。ティタネスさんとガムテのバミの上に机と椅子を並べてください。そうそう‥‥」
「はい、この通りみんなでやると楽しいんだよー」
 カメラの入るアングルや部屋の広さをガムテープで器用に計測すると、机や椅子を置いて欲しいと彼女達に促す彼。言われる通り会議机を軽々と運ぶティタネスから机を受け取った姫野は、流れ作業でバミの上に寸分違わず置く。その過程で一つ気付いた。
「あの、これだとケーキからかなり離れてない?」
「おや? そのようですね‥‥。まぁケーキの蝋燭が吹き消しにくくなってますがT氏の事です‥‥まぁ無問題でしょう」
 古河はあっさりとかわす。どこまでも天然系マイペースな彼。さっさと次の作業へ移る。今度はカラフルなガムテープで器用に造花を作り、壁に貼られた『☆お誕生日おめでとう☆』ボードの周りに飾るため、脚立に乗るティタネスに渡す。
 間が空くとクンクンっと鼻を鳴らす彼女。どうも料理の匂いが気になるらしい。がここは真面目に飾り付けに取り組んだ。
「ティシューを使わず豪華に花粉症にも優しい柔軟仕上げの造花を飾り終えましたら、最後はテープ飾りです」
 またもテープ代わりにガムテープを伸ばし黄色×黒、赤単色、そして緑×白っと色を合わせてぶら下げていく。殺風景だった休憩室が素晴らしいアートな空間となった。

●とにかく捕まえろ?!
「料理と会場はこれで整いました。参考になったかな? あとは主役を呼んでパーティーだね」
 ホカホカ料理と素敵な会場。そこに機転を利かせた鬼王丸がイタ飯屋から仕出しの料理を追加してくれたおかげで、更に豪華なモノとなった。
 部屋、机の真ん中に鎮座する中松お手製の大型ケーキには彼女が丁寧に書いた『Happy birthdayT氏』のデコメッセージもある。一同、出来上がりに満足のようだ。
 準備も仕上がったところで、どこかに潜伏しているT氏を見つけようと見回す姫野とA君。そこにひょっこり鬼王丸が現れた。
「ほうほう、これええ仕上がりじゃのぉ皆。そうだA君よ、今までのVTRを見せて貰ったのじゃが、ネタの余興ゆう形で鰻を素手で捕まえたら、その場で料理人が作る蒲焼きが食べられるなんてどうじゃ? ほれ水槽と鰻も用意してみた。あたぁ‥‥これなんて無理かのぅ‥‥あ、あら?」
 水槽を示した後、今度は反対の手で握っていた紅白の綱をグッと引いたが、ぶらん。手応えがない。彼の手には噛み千切られた痕跡の残る綱が皆の目の前で揺れた。
 そして、叫び声。
「だ、誰だぁ、猪を逃がしたのはぁ! またあのT氏かぁぁ!! そこのスタッフ、早く捕まえにこぉい」
 うわちゃーな事態に発展。
 大声で名前を呼ばれたT氏は、ん? っ現れた。彼に続いて鼻息荒い興奮気味の猪もご登場した。
「これが誕生日プレゼントとか言わないよね? うがぁ」
 猪はぶぎぃぃーっと奇声を発し、T氏目掛けて猛進。逃げ出す彼は皆の方へ向かってくる。
「ダメだよT氏! 向こうへ行けー」
「猪を触る機会なんて滅多にないよね。よぉし」
「このままでは不味いわね」
「お料理を守るでぃす」
「そういえばT氏は36歳。あぁ年男で‥‥猪年ですか。なるほど‥‥好かれるハ‥‥いや、なんでもございません。干支が一回りで一年も一回り。局内も一回り。廻り回って十干の方も一回りになるまで頑張りましょうね」
 追っ払う払う仕草の姫野。動物好きのティタネスが駆けだすと竜華も追う。縞りすは部屋の前で小さな体を張って料理を守死。だが約一名、非常事態にも拘わらずのほほん事を言う人物、古河だ。
 走る二人はT氏の脇をすり抜け、両サイドから猪を抑えに掛かる。だがでっかい猪。そう簡単に抑えきれず引きずられる。
「‥‥くっ」
 あともう少しで会場の入り口まで来ている。なんとしても抑えたい。猪の脚は彼女達の力で鈍くなっているものの止めるに至らない。
 そこに古河がシュルルっと華麗なガムテ捌きで猪の脚をふんじばる。
 ずどぉぉん!
 重みある音を響かせ猪がぶっ倒れた。
「ガムテには‥‥こういう使い方もあるんですよ」
 フッと笑う古河をハンディカムでこっそり撮影していた中松。その画面の右隅に右端に小さく『撮影:スタイリスト中松』とあった。

●祝杯
「えー、マイクのテステス、本日はT氏の誕生会に出席くださりありがとーございます。彼には過去2回ほど楽し‥‥く、あるような、ないような気がする仕事でお世話になりました。それでは誕生日を祝して乾杯!」
 ぱぱーんっ
 カチーン☆
 姫野の挨拶でパーティーが始まった。笑顔のT氏は古河が用意した黄金のガムテの玉座に座り、同じくガムテのクラッカーで祝福を受ける。
 そこに先程奮闘したティタネスが、
「T氏、お誕生日&昇進おめでとう! あたしからのプレゼントは歌だよ。A君、マイク持ってきてマイク!」
 今日はサービスという事で力一杯のハグ。加減無しの所為かT氏の背骨から鈍い音が響く。だがまったく気にせずティタネスは放すとA君からマイクを受け取り歌を始める。
 ‥‥‥‥。
 想像を絶する歌声。最終兵器となりうるそれに一同は耳を塞ぐ。惨劇が起きる前にA君によって止められた。
 次に竜華が妖艶な素振りでT氏の元に。
「おめでとう。私からの贈り物は四川料理よ、食べてね。ア〜ン」
「やったー竜華ちゃ‥‥うごご?! が、からーい! み、水」
 小皿に取り分けた彼女特製の麻婆豆腐。隠し持っていた山椒を大量に放り込んだのを捕らえたのは中松のハンディカムだけ。浮かれてレンゲを口にしたT氏は辛さに驚き出そうとした。が、そうは問屋がおろさない。竜華がその口を強く抑えた。大暴れするT氏にスープの入った器を手に駆け寄る縞りす。
「これを飲んで落ち着くのでぃす。‥‥うわぁ?!」
「うぎゃぁ! あぢぃぃ」
 暴れるT氏に蹴躓きスープを彼にぶちまけた。サッと避け逃れる竜華。辛さ地獄の次は熱地獄。ぶーたれ顔をするT氏に向かってA君はニヤリと一言。
「ま、めでてぇと言う事で!」
 さっぱりと黙殺。T氏は更に頬を膨らましたところで機嫌をとるようにティタネスが、
「まーいいじゃないか。そうだお祝いの胴上げをしよう」
「ナイスアイディア! 乗ったっ」
「ふむ。わしも参加するぞ」
「いいじゃない、それ」
「では、いきますよー」
 面白そうと集まる姫野に鬼王丸、竜華に古河。彼らはよいしょっとT氏を持ち上げると、
「「「「「わーっしょい!!」」」」」
 ‥‥どぐ。べちょ!
 高々と胴上げ開始。だが全員、手加減なしでT氏を跳ね上げたとたんに鈍い音が響く。天井にぶつかったのだ。驚いた一同は手を出す事を忘れ取り落とした。
 二度の激痛に悶えるT氏。彼の瘤になった箇所をガムテを使い介抱する古河。アリなのかという突っ込みは無しだ。
 中松はそんな彼を一瞥すると、机の奥のケーキに手を伸ばし蝋燭を36本立て火を灯す。
「T氏ったら伸びちゃったみたいね。ねぇ彼って妻帯者と聞いたけど、奥さんってどんな方なの? 一度会ってみたいわ‥‥。このお願い叶うかしら?」
 倒れたT氏を玉座にお供えをするとケーキの周りに集まり、彼に代わってお願い事をしながら火を吹き消した。
 最後、和気藹々と豪華な食事と談笑を楽しむ彼ら。姫野が、
「どうだった? これが正しくてちょっと変わったお誕生会だよ。最後に僕からT氏へのプレゼントを置いておこう」
 ぐったりする彼の膝にプレゼントを置いた。数時間後、金太郎と熊の人形がT氏の膝で踊っていたのを見た内気な少女がいたのは内緒の話。