輝け! 深夜販売王!!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
はんた。
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/24〜05/28
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●本文
「ステファン、海よ! 見て、目の前に広がる水平線!」
「燦々と照らす太陽‥‥磯の匂い‥‥ああ、そうだね! もう海のシーズンだね!」
五月、晩春‥‥。まぁ、温暖化の影響でもう熱いところもあるからこの点においては言及しないでおこう。
「でも見てステファン、あのパラソルの下にいるビールっ腹の人を」
「ああ、彼は脚本家でね、運動不足がたたってあの体型さ」
そう言って、おもむろにシャツを脱ぎ出すステファン。するとその下から覗かせる、これ見よがしの筋肉。‥‥微妙にテカっているのは何故か?
「見てご覧ジェニファー。この引き締まったボディを!」
「素敵よステファン! でも、ステファンも最近デスクワークが続いているって言ったじゃない? 一体コレはどういうこと?」
「このボディを築けたのは‥‥これのお陰さ!」
そして場面は、いきなり海岸から室内に変わる。
『今回ご紹介するのは、このエアロバイク型エキササイズ・マシン:さいくる君だ!』
まんま、エアロバイクだ。というか、海岸で上半身をアピールしていたが、これは下半身の筋肉を鍛える機具のような‥‥?
「使い方は至って簡単、このように――」
ステファンが普通にエアロバイ――さいくる君をこぎ出そうとした‥‥まさにその時!
「――!! アゥチ!」
「どうしたステファン? ス、ステファァーーーーン!!」
突如として痛みを訴えたステファンに駆け寄るCM撮影スタッフ。かくして肉離れによって戦線離脱したステファン。
ってわけで、誰か代役頼む。
●リプレイ本文
「ボ、ボクは、もう駄目デェーッス‥‥」
「何弱気を言っているのさ、ステファン」
病床に臥す(自宅ベッド:布団内)ステファンが弱々しく言う。その口上は正真正銘、カタコトだ。どうやら以前カメラ前に見せた流暢な日本語は吹き替えだったらしい。
そんな瀕死の重傷――ただの肉離れ――を負っているステファンを、激励しながらサロン○スを渡す竜之介(fa1136)。何はともあれ、まずは患部の冷却が基本だ。多分。
「オー、サンクス。キミなら、安心してボクの役目を任せられるヨ‥‥」
「ス、ステファン? ステ‥‥ステファーーーーン!」
言い終えると、安らかな眠り(普通に熟睡)についたステファン。
そして竜之介は思う。ステファン亡き(?)今、かの役を引き継ぐのは僕しかいない、ステファンどうか僕を見守っていて、と。
「おお、これは一大事。とりあえず応急処置のテーピングしますね、ガムテで!」
「ナォ! Nooooo!」
まずは患部の固定が基本だ。多分。竜之介の後ろでは、ガムテープ職人、古河 甚五郎(fa3135)によってステファンがグルグル巻きにされている。
ステファン絶叫。しかし今の竜之介には聞こえない。聞こえなくなるほど、今の彼はモチベーションの上昇により集中し、所謂『自分の世界』に入っちゃっている。
さぁみんな。素晴らしいCM、創り上げようぜ! 志半ばにして逝った(死んでません)ステファンのためにも!
これは‥‥漢達の、熱き魂の撮影録である。
「きゃー、ステファン! いつの間にそんなエキゾチックな魅力を身につけたの?」
エキゾチック=異国情緒。また、それを感じさせる雰囲気やもののさま。
単語の訳通りに解釈すると僅かながら謎が残る台詞だが、美角あすか(fa0155)の肢体からあふれる色香のお陰で、そんなものはまるで瑣末な問題に思える。
場所は海岸、波打ち際。晩春、曇り空となると実際寒いのだが、それでも出演者は水着敢行だ。
二股に分けられた髪、耳に飾られている小物‥‥そして星条旗柄のビキニに包まれたあすかの豊満なバストは今日も絶好調、である!
「もっとよく見てゴラン。このボクの引き締ったボディを。見て来て触ってボクのボディ!」
あすかにステファンと呼ばれた男性、それは竜之介。彼なんてもっと凄い、もう水着を超越して褌姿のお披露目だ。それで様々なポージングを繰り出す。
竜之介の口調は、まるでステファンが乗り移ったかのような(死んでませんよ)不自然なカタコト。
彼は黒髪、でも彼の名はステファン。彼の姿は究極の和装:褌‥‥それでも彼の名はステファン!
「おいしそうな肉体ね‥‥!」
艶っぽい言葉は、語尾を擦れさせる声量ながらも、熱が篭っている。指使いがやたら扇情的で‥‥これなら、男性視聴者は思わず、『こんなナイスバディの女性に触られるような肉体が欲しい!』と胸中で吼え猛るに違いない。
「ふふ、このボクのグラマラス・ボディには秘密がある! 今日はそれを、みんなに紹介しちゃうよ!」
そして画面が切り替わり‥‥
‥‥映し出されたのは室内。
まずカメラに収められているのは宝塚菊花(fa3510)。深紅のレオタードの彼女が漕いでいるのは、ただのエアロb――否、グラマラス・ボディの秘密、『さいくる君』だ!
漕ぐ菊花からは絶え間ない笑顔。一体何が楽しいのだろう? しかし彼女の面を満たすは、紛れも無く笑顔。爽やかなそれからは、むしろ愚直ささえ感じられる。
「ワーオ! たったこれだけの場所があれば置けるなんてステキ! 空間の匠いらずだワ!」
森村・葵(fa0280)、思わず感嘆の一言。因みに葵は、役柄で言えば『驚き役』と言った比較的地味なポジジョンであるにも関わらず、装備はフリル付のドレスだ。何気に自分の存在感を押し出している。
「本日の商品はエキササイズマシン:さいくる君!」
担当ナレーターは長澤 巳緒(fa3280)。そうだ、きっとこれから彼女が、菊花のこの輝かしいばかりの笑顔の理由を、さいくる君の魅力を、懇切丁寧に説明してくれるはずだ。
「え? 自転車を買って外を走った方がよっぽどいいって? いいえ、違います。何故ならッ! 外には危険が盛り沢山だからです!」
「そうネ。美しいカラダを手に入れるためのエキササイズで、怪我なんてしちゃったら本末転倒だワ」
と思ったらライバルのマイナスイメージから入るのかよ! そんな声が聞こえてきそうだ。
しかし、野外における危険性とは如何なるものか? 普段は別段気にもしない話題に、若干興味を惹かれる。
「交通事故は元より、野良犬に追いかけられる‥‥」
そんな事故は、‥‥まぁ、あるか。
「怖いお兄さん達に絡まれる、容赦を知らない子ども達の悪戯‥‥」
なんて世知辛い世の中‥‥って、そんなこと、頻繁にあるか?
「自転車泥棒と間違われ職務質問、セクシーなお姉さんに見とれ池にダイブ」
段々、ケース紹介はレアの事例を取り上げるようになってくる。
「調子に乗って坂道を下る最中ナイスタイミングで飛び出した車にはねられる‥‥などなど! どれも目も当てられない悲惨な事態ばかり‥‥」
それは確かに悲惨だ。っていうか、多分即死。
「それに雨や嵐、鉄砲水、落雷と言った自然現象も嫌ですよね?」
「嫌デス! もっと平穏にエキササイズに勤しみたいデス」
落雷‥‥。いよいよサイクリングが生命を危機に晒す危険なスポーツだということが理解できてきた‥‥気がする。気がするだけな気もする。
「でも! 家庭で出来るさいくる君にはそんな心配一切無し! 安全・確実にシェイプアップが出来るんです!」
「ワーオ! イッツ・ブラボーゥ! まさに女性の悲願達成だワ!」
巳緒の向けた手の方では、不変の笑顔、菊花。なるほど、彼女の笑顔の理由は、安全性・確実性からくるのか。納得納得‥‥納得できる?
「それでは、もし普通のサイクリングだったらどういった危険の可能性があるか? こちらの検証VTRをご覧下さい」
そして、またもや画面の切り替え‥‥テロップが出てくる。
『CASE1 子供のイタズラに引っかかる』 (テロップが、何故かガムテープ)
「ンっン〜〜♪ 流石は新車のマウンテンバイク。乗り心地は最高〜♪」
軽快なスピードの自転車。それに乗っているのは鼻歌混じりのチェダー千田(fa0427)。余程快適なのだろうか、満面の笑みだ。
どかッ。
「ん? あれ?」
「オウオウあんちゃん、ドコに目ぇ付けとンねん!?」
前方不注意により、なんと背広にサングラスという(ジェネレーションギャップなんてこの際気にしない)怖ーいお兄さんの肩にぶつかってしまったチェダー。逃げろ、逃げるんだチェダー千田! ちなみに、怖いお兄さんは余りスタッフによる友情出演となっております。
逃げろ逃げろ逃げろ! ペダルの残像さえ見せて全開モードで漕ぐチェダー!
そんな彼の眼前に突如現れた、クリームパイ‥‥構えるは、少年役:Tyrantess(fa3596)! 『容赦を知らない子ども達の悪戯』か。確かにこれは容赦ない!
「い、いやあぁあぁああぁーーァ!」
悲鳴に引きつったチェダーのアップ顔‥‥黒白に反転&停止。
スピード+クリームパイ=転倒・クラッシュ=お兄さん達ラッシュ!
「かくしてマウントポジジョンでパンチされるチェダーさんでした」
巳緒の声によって締めて、暗転し‥‥そして次! CASE2へGO!
『CASE2 よそ見していて池にダイブ』 (テロップは、何故かガムテ)
「んッん〜〜♪ 流石は新車のマウンテンバイク。乗り心地は最高〜♪」
‥‥使いまわしの台詞のどこが悪い。
そんなチェダーの遠くに見えるは、婦人警官。なんともまぁ、際どい丈のスカートをお履きになっていらっしゃる。
そんな彼女が、チェダーに向けて両手を振っている。
極短スカートの女性が自分に向け、諸手を挙げて歓迎していらっしゃる! きっとチェダーにはそんな風に見えているだろう。実際は違うが。
とにかく彼女に向け、加速加速加速! もうチェダーにはミニスカー‥‥じゃなくって、婦人警官しか見えていない!
というわけで、脇道から出てきた車両にも気付かない。
どかッ☆ 生傷だらけの衝突事故!(ポロリもあるよ!)
そしてチェダーは、翼を得た。
「イナバウァッ!」
何かの技っぽいそれを叫びながら、彼は身体を反り返り、そして宙を舞う。
おまけにその着地地点が(何故かそこに在る)池。嗚呼、なんて怖い偶然。
「みなさん、余所見は怖いですよね」
響いた巳緒のナレーションはまるで明るく朗らかで、チェダーの惨事と見事なコントラクションとなっている。
凄い勢いで吹っ飛んで(ちゃんと演出だよ! ‥‥多分)池に着水したチェダーに近づく婦人警官:Tyrantess。
「こいつ、動くのか?」
足蹴にしながらそう呟く。返事が無い。ただの屍のようだ。
「し‥‥死なばもろとも‥‥」
なんて思ったらチェダー再起動。最後の力を振り絞ってTyrantessにしがみ付く。どうやら道連れにしようという目論み。
「逝くのはお前一人だ!」
Tyrantessの踵が、チェダーの頬に勢いよく当たる。
彼女は服だけ破れ――ワーオ! 中から出てきた黒レースの下着姿! 丁度よく服だけ破れてサービスカット。これなんてギャルゲ?
ちなみに、服だけ破れたので勿論チェダーは単独潜水を敢行する破目と相成った。
●番外編・カメラ外
「し、死ぬかと思ったぜ‥‥ホント」
「なんか、アレだな。もうちょっとカメラワーク工夫できそうだよな。あのシーン、もう1カット撮った方がよくねぇか?」
「ま、まじスか!?!?」
「ふむふむトニカク無事に撮影出来て‥‥おや、千田さん! これは酷いケガ! 応急処置をしますよ」
「ちょ、おま‥‥!!」
「安心してください! 全身くまなく、ガムテで!」
「ーーー!! 〜〜〜〜!!!」
チェダー千田『再起不能(リタイヤ)』
「こんな危険性も、さいくる君さえあれば、不必要なお肉と一緒におさらばです!」
「オー! イッツベリーセーフティー! ベリーワンダホーゥ」
巳緒と葵。もう彼女らの賛辞からは白々しさは感じられない。ええ全く。
「ああッ、身体が悦んでるのが‥‥解るの‥‥!」
「ハハハッ、ボクはこれで運動した後、アジの開きを食べてアミノ参を摂るのが日課でね。それで、この肉体さ!」
いつの間にか海岸からスタジオに移動完了しているあすかとステファン(竜之介)。っていうかステファン‥‥アジの開きは日本食ですよね?
「ああ、イイっ、イイわ! もう‥‥、最高ォ!」
苦しくなったらお色気だ! ここで突拍子も無く嬌声放つあすかの胸へのズームアップ。
そして段々と白くなり、画面の切り替えが行われ‥‥
「ああっ‥‥たまんなぁあい!」
信じられない光景が、そこにあった。
つい先程まで、さいくる君で運動しながら全身に汗を纏い艶めかしい声を、あすかが上げていた‥‥はずだった。
あ‥‥ありのまま、今起こった事を語ろう。
『美角あすかの胸に向けてズームインした、画面が切り替わったと思ったらいつの間にか古河甚五郎になっていた』
そう、本来あすかがいるべき位置、いるべき役に、同じ服装で甚五郎がいるのだ!
頭がどうにかなりそうである。物凄く恐ろしいものの片鱗を味わった気がする。
『効果には個人差があります』
と点滅テロップ。ああなるほど、トレーニングの成果か、この変化は。それなら納得納得‥‥納得できるか!
『っていうかこうなりません』
当たり前じゃ!! ‥‥そう、そんな声が聞こえてきそうだ。
「凄い効果ですね。効果は抜群ですね!」
「ワァーオ! イッツ・ベリーストロンガー!」
言わずもがな、巳緒と葵。もう彼女らからの賛辞は白々しさを感じさせない。ええ全く全然。
「海岸における女性からの黄色い声援も、美しい肉体も、安全な運動も‥‥これ一つでアナタのモノだヨ!」
白い歯を輝かせて(照明二割増し)言うステファン。そういえばこのステファン、今更ですけど『ステファン』なのに日本語ペラペラでないですか?
「一日5分から始められるさいくる君。効果は未知数! お申し込みは今すぐ! あなたもさいくる君で素敵ボディ手に入れてみませんか?」
未知数なのかよ!? そんな声が聞こえてきそうだ‥‥が、もうあんまそういうこと気にしないでおこう。
和製ステファン:竜之介、あすか役:甚五郎、終始笑顔:菊花‥‥三人をバックに番組宛の住所・電話番号などが表示されていくのだった。(テロップは、何故かガムt(略)
「ふぅ、生きているって素晴らしい。俺は生きて‥‥生きて帰ってこられたんだ!」
ガムテープを自力で解き、スタジオに生還したチェダー。
撮影も終わって無人と思われるそこだが、せめて仕出しの弁当だけでも持ち帰ろうという寸法だ。
しかし、
「え、無い? なんで!?」
担当者の話によると、どうやらチェダーの分は余りと思われ金髪赤眼の御婦人が持っていったらしい。
「やぁ、そんなところで項垂れていないでキミもコレ、やってみないかい?」
白い歯を輝かせて(照明無くても光る)そこに唯一残っていた竜之介が、何故かまだステファンをやっていた。ハマったのだろうか、ステファンの魂(死んでませんからね)が抜け切れていないのか‥‥。
ホントはただのエアロバイク、さいくる君。
かくして、さいくる君の溢れんばかりの魅力を紹介するための漢達の闘いは、今此処に、終焉を迎えたのだった。
ってゆーか、ホントにこの内容でCM流すからな!