魔法(?)の使い手アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
はんた。
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
1人
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期間 |
06/27〜07/01
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●本文
――エピローグ‥‥
某プロダクションの、一室。部屋にいるのは面接官と、一人の男‥‥いや、『漢』だった。
「特技は、えぇート。‥‥『芸セクシャル』とありますが?」
「はい、芸セクシャルです」
「芸セクシャルとはどんな芸風ですか?」
「カマです」
「え? カ、カマですと?」
戸惑い隠せぬ面持ちで再度問う面接官。
漢は、そんな面接官に、自信漲る表情でこう‥‥言い返したのだ。
「はい、カマです!」
・
・
・
まぁ勿論、そんな変態は間も無くお帰り頂く事になった。
しかし、この英断(?)が悪夢の起因となってしまうとは、この時誰が予想できたであろうか‥‥。
――起きるべくして起きた、悲劇‥‥
「ああ、今日は遅くなっちゃったなァ」
歌って踊れる少年アイドル、周防翔太は、事務所からの帰路そう呟いた。
彼は13歳というその年齢ながら‥‥いや、むしろその年齢だからだろうか、同年代以上の女性から人気を集めつつある、将来有望の歌手だ。
そんな彼が今歩くのは、街灯疎らな夜の道。
これは何か出来てきてもおかしくない‥‥でも、何も出てきてほしくないな、と、少し怯えながらも、自宅目指して小走りの彼。
「‥‥性〜(せぇーい〜)」
何処からともなく、聞こえて、くる。
「性性性性〜〜〜〜」
声の主は、「せい」という言葉をやたら連呼している。なんとなく、漢字変換したくないようなイントネーションで。
「やぁショ‥‥いや、翔太君〜。こんな夜までお仕事なんて、偉いねぇぇ〜」
声の主の姿が、翔太君の眼前に。
「〜〜〜〜〜!!」
そして言葉を失う、翔太。理由は、その男の容姿にある。
暗くて詳細まで分るわけではないが‥‥、顔と声からして、恐らく男。その頭には、恐ろしく不似合いな、狐耳。
いや、そんなのは瑣末な問題だった。問題は、恰好そのもの。
狐耳男。装備:男性競泳用パンツ。‥‥以上。
そのパンツは隆々とした男の筋肉を、嫌と言うほど‥‥いや、とっても嫌にアピールしてくれている。
‥‥おや?
‥‥もう春も終わりましたよね。そして、夏もまだですよね? 今は、頭の沸くような季節ではないですよね?
なのに‥‥。
「さぁ〜ショタ‥‥、いや、翔太君〜。そんな偉いキミには、お兄さんがご褒美を上げようじゃないかぁぁあ」
それでいて、激しく腰を動かす――二番煎じ感が激しく漂う――その動作。思いっきり某芸能人のそれのパクリだ。寧ろこんなパクリ方は、オリジナルに対して失礼千万。オリジナルは、こんな非・常識人ではない。
嗚呼、こいつはひどい変態さんですね。
「さ〜〜ぁ。性性性〜!」
結構です! そう叫んでから逃げよう! と思った翔太の目に映ったのは‥‥
(「!?」)
何故だろう? グラマラスな、おねーさんだった。
おねーさんは、妖艶に笑い、そして寄り添ってくる。
あれ? ちょっと待て、この展開なに? こんな突拍子も無い急展開、幾らなんでもストーリー破綻しすぎてやいないかい?
さっきの変態狐耳オヤジは一体ドコいった‥‥?
それに何だか‥‥眠く‥‥なって‥‥。
びりびりー、ちくっ。
「え、う‥‥うわぁぁあああーーー!!」
痛覚によって、今まで見ていた甘い夢から醒めた翔太は、気付く。自分は今まで幻覚を見ていた事と、肉薄しているその男達の存在に。
男達は白い爪を伸ばし、鼻息荒くしながら翔太の服を切り刻んでいたのだ!
何人かなんてわからない! たくさん! 多分たくさん!
爪! 爪? ってことは獣人だけど、何の獣人かなんてわからない! これ以上、犯人達を見たくない!
翔太は必死なって、叫び、走った。そりゃーもー必死に。覚えたての俊敏脚足さえ使って。
――さあ立ち上がれ!
後日、都内某所。とあるプロダクションのオーナーから、先晩起きた通り魔事件、そしてそれの解決に対して有志が募られていた。
オーナー曰く、そのプロダクション所属の少年が、夜の帰り道通り魔に遭い、次の日の朝オーナーの元に泣きついてきたそうだ。
もうその少年は精神的にひどく病んでおり、至近距離で男性の顔を見るだけで拒絶反応を示すくらいらしい。
これ以上犠牲者を出さないためにも、犯人らをぶん殴って、正気に戻して欲しいとの事。
そこで、有志の一人として被害状況を聞いていた芸能人の一人が、オーナーに問うた。
‥‥で、これ、どうやって誘き寄せんの?
「囮で誘き寄せるしかなかろう。ああ、勿論、囮はそっちで用意な」
下記、注意点。
犯人は複数。加えて、どうやら獣人としての特殊能力を使う模様。
昼、そして囮を用意する手段以外では、犯人側から姿を現すことは無い。
どうやら犯人は、外見十代の、それなりの容姿の男性がお好みの様子。
男性が犯人に攻撃する場合は注意が必要。ダメージが無いわけではないが、むしろ喜ぶかも? また、相手が捨て身でナニカ試みてくる可能性あり。
相手はアレな人達ですが、一応獣人。生命与奪は無しで。
夜道とはいえ、街中であり、皆様は芸能人。火器は全面的に禁止。
勇士よ、今こそ立ち上がれ!
でも男性は、自分の貞操は自分で守ってね。
●リプレイ本文
促されたドアを、訪問者は押し開ける。
「オーナー‥‥その人達は誰です?」
明らかに不安がるのは、被害者:周防翔太。伝ノ助(fa0430)は彼に、和気を含めた微笑を浮かべ――
「ダイジョブネ翔太君。オネーサンを信用して下さいネ!」
――ようとしたその時、森村・葵(fa0280)が単騎突撃。
「オーナー! 怖いよ助けてーー!」
ハァハァ言いながら詰め寄る葵により、翔太は事件のフラッシュバックが起きた様子。今の彼に、被害の記憶を呼びこす動作はタブーだ。完全獣化の行使も、危ういかもしれない。
「翔太君、翔太君! あっ、これ食べて落ち着いて!」
「ぅぅ、怖かった‥‥」
年齢の近い男子なら、それほど恐怖はないのだろう。ユリウス・ハート(fa2661)が差し出した板チョコを齧りながら、なんとか落ち着き、事無きを得た所で伝ノ助が話し出す。
「あれ、翔太君はこんな朝早くから仕事っすか?」
切り出しは、どうということない話題から。
「あ、はい。暫くしたらライブがありますので、それに向けて‥‥」
「ライブっていったら、大仕事でやんすね! それじゃ、それまでに厄介事はあっしらで片付けるでやんすよ」
和気穏笑の効果と、男性恐怖症が彼の天秤を大きく揺らしている様だが、翔太は俯き加減のまま、伝ノ助と何気ない雑談を続ける。 恐怖症解消、はすぐには無理だが、こうした会話が無意味でもあるまい。
「あのね‥‥俺の時は、ママが助けてくれたの。だからね。翔太君も負けないで‥‥だって変態は、許せないよね。絶対、やっつけてあげるからね」
ユリウスはぐっと掌を握り締め、決意を口にする。
「ぷりちーなショタっ子は国の宝‥‥それを汚す者を私は決して許しませんネ!」
ちょっとアレなノリだった葵も、目的は履き違えていないらしい。
一同、変態の撃退を誓う!
「つまり翔太君は国宝級貴重性を内包したぷりちー少年だったって事なんデスよーー!!」
「な、なんだってーー!」
葵の報告を聞いて、白鳥沢 優雅(fa0361)、鈴生 六連(fa0194)、森里時雨(fa2002)の三人は、まるで地球規模の破局兆候を目の当たりにした様に驚いた、ように見えた‥‥気がする。
「って、そんなノリは今度にして、今はその犯人のお灸の据え方を考えますか」
「そうね。番組として変態行為に及ぶならまだしも、カメラ外でヤルのは頂けないし」
即興でツッコミ役誕生。ビスタ・メーベルナッハ(fa0748)と草壁 蛍(fa3072)の二人。尚、クールにそう言っているビスタだが、欲求の程度なら、相手に負けないかもわからん。
と、こんな愉快な仲間達の中から選出された囮役を、メモ帳開きながらの六連が言う。彼女の普段の職種から、役割管理の姿がやけに似合った。
(「今回の役割は袋叩き班‥‥の、応援ッ」)
「今回のいけに――こほん。囮役の方は護衛兼任も含めて、ユリウス君、伝ノ助君、時雨君、それと優雅君」
「え゛、僕も!?」
ぶっちゃけ戦わないつもりでいた優雅。思わず裏返る彼の声。一瞬彼の瞳に講義の色が帯びた気もしたが、
「いいじゃない。『美形青年』という触れ込みなら、これ以上の適役は無いわよ?」
ころころと笑いながら、ムチャクイーンがなんかムチャなこと言った。んじゃ、そーいうことで行こうか。
そして芸能人達は、その一歩を踏み出した。
勿論、変態撃退への道の、だ。
‥‥アレな道の第一歩にならない事を、切に願う。
「ふふ‥‥僕はこれでもヒールレスラー‥‥格闘は出来るのさ!」
テンション上げてしまえばこっちのもの。優雅は寧ろ喜々として、妙なポーズなんかも取っちゃったりして勇気の咆哮をあげる。そんな彼にも変態の兆候が見られなくも無いが、気にしていても始まらない。敢えてスルーする他の囮メンバー。
「いや、路上格闘はむしろ俺の本職なんだよ。僧衣を脱ぐ時、美しき野獣の俺が一番セクシー☆」
と思ったらそうでもなかった。何故か脱衣宣言で優雅に対抗する時雨。
「脱ぐとかそういう問題じゃあ――」
ユリウスは、そう言いかけ、止まった。
「こんな夜中に青少年達が出歩いているって事は〜」
曲がり角から、シルエットが‥‥
「覚悟完了って事ですね〜、オォケェーイッ」
‥‥腰を激しく振っている。そして。
「腐(フ)ーー!! どうもー、ハード芸でーす」
姿を現すなりまずは両手を広げて、はい、ポージング。
ジャーン! そんな効果音さえ聞こえてきそうだ。
「げぇっ、変態! 出たなこの二番せ――」
「性性性ー! ご覧下さいコノ腰の躍動!」
変態に言葉を遮られて、気分のいい人間などいない。少なくとも、時雨はコメカミに青筋を浮かべている。
とは言えここは堪えて、仲間と罠の待つ然るべき地点へと敵を誘導すべくユリウスに目配せした時雨。
が、しかし!
(「え、何故目がトロっとしちゃっているんだ、ユリウスっ。まさかあの腰つきに魅せられた!?」)
悔しいけれど、あの腰に夢中‥‥なんて事はない。狐の獣耳という事前情報から予想できた通り、相手は狂月幻覚の使い手だ。ユリウスがどんな幻覚を見ているかは分からないが、そんな状態の彼を放っておくわけにもいかない。ここで応戦か、と時雨は身構える。
「君達変態の手はお見通しさ! それゆえ囮を一人にする愚は犯さなかったわけさ!」
狂月幻覚の対象は一人。半身捻り、ビシっと指差しその辺を指摘する優雅。その台詞の暇に戦いなさい、なんて無粋なツッコミは誰も言わない。
「そうとも! く○○そテクニックで死のロンドだっ食らえ!」
そして彼自身も何だかおかしいテンションで攻勢に出る時雨。我流の拳が変態に迫る。
彼のそんな勢いを殺したのは、香り‥‥誘眠芳香。
周りを見れば猿獣人が三名。三人で誘眠芳香一斉発射‥‥ああ非常。
「よし、効果は抜群だ!」
一人、赤いキャップをした猿が叫ぶ。特に、狂月幻覚の術中だったユリウスの瞼は既に落ちている。
「よーっし、このまま既成事実を作っちゃえ☆」
更に別の猿獣人。‥‥既成事実って何の事だ!? しかし、迫り来る眠気のせいで、その場にツッコミ役はまたもやいない。
ユリウスのベストが切り裂かれ、タンクトップ一枚の上半身は、12歳児の二の腕を惜しげも無く露出して、
「僕、こういうの初めてだけどいいんだよね?」
変態の荒々しい鼻息。この分だと相当我慢してたみたいである。
そしてハード芸も一歩一歩近づいてくる。相手は恐らくノンケでも関係なく食っちまうテクニシャンだ。このままでは、成熟しきっていない心と体に大き過ぎる傷痕を残す事になる。
「さぁバッチ故ー意‥‥ッ!?」
けたたましい音が鳴り響いたのは、その時だった。
急なそれに、驚きを隠せない変態達。見てみれば時雨が眠気を堪えながらも、ユリウスのポケットに手を突っ込み防犯ブザーを鳴らしていたのだ!
「最後‥の、防犯‥‥ブザー(メッセージだ、受け取ってくれ‥‥伝わって‥‥くれ)」
その音で気がついたユリウスと優雅は、睡魔の抵抗に成功し目を覚ます。ユリウスは変態の顔を爪で掻いて、その手から逃れる。
憤慨を面に表す変態達。後一歩‥‥後一歩で無防備な男にょ子のカラダに及ぶ事が出来たのに!
とゆーわけでっ。
「どうしても私を本気にさせたいようだな」
変態達はいきり立って時雨に襲い掛かった! 予想されるそれは、多分痛恨の一撃!
「もう後戻りは出来んぞ!」
怒りのせいで、凄い‥‥いや、酷い表情。伸ばされた爪は大胆且つ鮮やかに、彼のパンツを切り裂く。
そして、時雨に集いし幾つものシルエットが、一つに、重なって‥‥
「アッー!」
「し、時雨さん? 時雨さん、時雨さぁぁーん!」
「駄目だ、見ちゃ駄目だユリウス君!」
何かが、散った。
(「嗚呼、護月耐幻取るべきだったかな‥‥」)
そこに誕生した一つの結合体‥‥。
森里時雨、再起不能(リタイア)
(「時雨、さん‥‥」)
変態猿の股間に、空を切る何かが迫った。猿もそれに気付き、空間を歪めながら来るそれを避ける。
登場したのは光学迷彩にて姿を朧にした、伝ノ助だった。
「キミも見てくれたまえ、この時雨の姿を! こうならないためにも、伝も頑張って」
「えっ、優雅さんも戦いますよね?」
「今回の僕の役割は袋叩き班‥‥の応援」
なんてやり取りの間に、伝ノ助の光学迷彩の効果がきれる。その半獣の姿を露にした伝ノ助。
「ウハッ! あのコもいい獣人!」
「よし、キミに決めた☆」
「ま、待つでやんす! あっしこれでも24。狙っている年齢層とは違うはずでやんす」
相手の勢いに、思わず狼狽気味に言ってしまう伝ノ助。
その言葉でピタリと歩みを止め、話し合う変態達。
「凄いですねー。あれで24歳そうですよー。あいつをどう思う?」
「すごく‥‥童顔です」
「だが、それがいい」
「むしろそのギャップが、たまりませんな」
可決!! 何度も思うが、こういう変態達は聞く耳持たないみたい。
ユリウス、その細い指に獣人としての爪を伸ばし、斬撃!
「いい、いいぞ! もっとだ!」
「わー、気持ち悪いのー! 怖いのー!!」
ダメージを与えているはずなのに、テンションを上げていく変態。これはもう、駄目かもしれない。
「この肉と肉とのぶつかり合い――」
「自慢の逸品、ちょっと試してみたい気もしたけど‥‥悪いけど潰させて貰うわ」
!!
足が、猿獣人の股間――パンツ一丁のそれに、足が‥‥。
後ろに、俊敏脚足で接近したビスタがいた。ブザーを聞いて、他の待機メンバーも駆けつけている。
股間に一撃を食らって、時が止まったように動かない、変態。
「ふふふふ‥‥」
笑い出した。
「ふはははははは!」
笑い出した、何故!?
ビスタは、攻撃の際に感じた違和感に、もう気付いていた。
(「こいつ‥‥硬い?」)
「私は(男としての)エゴを強化したのだ。どうだ、怖かろう?」
どうやら股間のそれに、何らかの策が講じられているらしい。‥‥ファールカップ装備、だと思う‥‥、多分。ファールカップであって欲しい。
「って、それでも股間以外無防備なのにかわりないじゃない」
「ギャー! ア、アキレス腱ッ、アキレス腱がー!」
模造刀によって足首を痛打された変態猿、転倒。
「ナイス奇襲です、蛍君! とりあえずそいつのナニを拝――い、いえ袋にしてしまいましょう」
模擬刀の蛍、更に六連も加わり、二対一でボッコに。
「蛍、そっちは順調のようだね。早々に片をつけて、こっちに‥‥」
「ああ、まだ足りな‥‥じゃなくて、まだこいつには手間がかかりそうね。そっち、頑張って」
(「そ、それヒドいんでねか!?」)
内心、出身の方言でその理不尽をごちりつつも、必死に逃げる優雅。やっぱ戦わないらしい彼。
「こ、こっちに来る! い、いやぁぁぁああ!!」
(「それではカマの‥‥大きさも見ておきましょうか。優雅さん頑張ってください!」)
六連、眼前の敵への攻撃よりも、アッチが気になる様子?
戦わない彼も問題だが、助けない彼女も問題アリだ!
「ホラ、どう? これが欲しいんでしょ? もっとハッキリおねだりしてみなさいよ」
ぐりぐりと模擬刀を突きたてながら、もう片手でデジタルビデオカメラを構えながら、ついでに言葉でも攻め立てる蛍。
(「蛍さんは変態の18倍怖い‥‥」)
むしろ変態よりも怯えるユリウス。その気持ち、わからんでもない。
そしてそろそろトドメの好機。
「ネギは万病に効く薬膳デス」
今週のビックリドッキリ武器。葵が手に持っているのは、ネギ! 向かう先は、猿のケ――
「や、やめろ! そんなプレイは酷過ぎる!」
「ネギパゥワーで貴方がたも真っ当な芸人に戻るですネ」
叫ぶ変態達なんぞ歯牙にもかけず葵は、押し込んだ!
‥‥‥‥ぅわぁ。
多分もう駄目っぽい。変態一人目、再起不能。
「なんて、酷い事を‥‥ッ」
「芸能人は度胸、何でもまずは試してみるものデス」
彼女に罪悪感は無い。
変態達は、葵の行為に恐怖した。
「さて、お仲間は浮き足立ちそうだけど、あなたはイイの?」
「退きませんよー。変態としてもハード芸としても」
同義語だろ、なんて言葉は置いといて、ビスタの足はアスファルトを弾いて敵との間合いを一気に詰める。しかし相手も彼女と同じ狐の獣人、目にも留まらぬ瞬発さえ想定していたかの様に、迫る彼女の一撃を捌く。
そしてあの腰の動きを支える比較的引き締まった彼の肉体。そのラリアットはガードの上からもビスタに衝撃を与える。
素早くその衝撃から体勢を立て直し、回避に切り替えるビスタ。身を翻しそれらを避けるたび、齢不相応の肢体が舞う。
「子供だけに留まらず女子にも、何やってるんすかっ!」
スパァァーン! 隙を突いた伝ノ助の振り下ろしたハリセンの音。それによってハード芸の意識は伝ノ助に転換。
「そうでしたね。私の相手はキミでした〜。今から行きますよー!」
「ぅわー! やめるっすー!」
伝ノ助に魔手が伸びた、‥‥のだが。
「‥‥ん? アレ、今‥‥――ッ!」
「どうしたのかしら? 『可愛らしい少年の幻聴』でも聞こえた?」
無防備な背後から決まった裸締めというのは、なかなか解けない。耳元で囁きながら、そのままビスタは一気に締め上げる。
タップの手は無視。そしてそれがガクっと落ちた時、周辺も静かになっていた。
辺りを見渡せば、傷刻まれつつ、ネギやら大根やらの‥‥結合体が転がっている。
この風景‥‥
こ れ は ひ ど い !
でもまぁ、変態倒したし‥‥結果オーライでいんじゃね?
変態の今後なんて、知らんがな。
‥‥ってワケには流石にいかないので、この後ちゃんと、真っ当な道を説いたんだとか。