咲かせ、恋バナっ!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
はんた。
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/31〜11/04
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●本文
煙草を咥えながら、企画書らしきものに目を通す男性と、まだニキビを顔に残す青年。二人の男が話していた。恐らく、番組スタッフなのだろう。
「おい、ホントにこいつに司会まかせていいのか?」
「しょうがないッスよ、今予定空いてるの、この人しかいないんスから」
「(‥‥ただの調整不足だと思うが)で、出演者集められそうなのか? こいつの芸風も一癖あるからな」
「それが、有名どころには、なにかとナンクセ付けられて断られました」
何故か誇らしげに言う青年にツッコミでもいれようかと思ったが、男は止めた。彼なりに、何か考えがあるのかもしれないから。
「どうするつもりだ」
「ま、ここは仕事選択するほどの贅沢が出来ない新人にでも声をかければ、問題ないスよ」
「(問題ある気もするが)まぁ手筈は抜かり無くな。あの男が司会だから、イザと言うの時の悪ノリ対策も‥‥」
「それなら既に用意があるスよ」
「用意? ほう、何だ?」
「‥‥ふっふっふ、これッスよ〜」
女性マネージャーと話している銀髪の男。レビン・武村、彼はタレントだ。
「レビンさん、次の仕事決まりました。トーク番組の司会者です」
「む、ついに私にも司会の役が回ってきたか。ま、ゴールデンのようなオイシイ時間帯では無いとは思うけどね。で、内容は?」
「恋愛関連の話題が中心ですね。恋愛といいつつも、好みのタイプとかフェチとか萌える属性とか、その辺の話でとにかく面白くなればオッケーだそうです。えーっと、何やら出演者は、新人さんが多いみたいです」
多分『盛り上がればOK』的な、なげやりな企画だが、それでも彼は意味ありげな笑みを浮かべる。意味ありげ‥‥いや、それは明らかに意地の悪い笑みだ!
「恋愛話に、新人さん、そしてこの私が司会とは。へぇ、まさに狙ったようなキャスティングだね」
以前のトーク番組収録中、先輩タレント相手に執拗に聞いたり誘導尋問を繰り返し、先輩の浮気を暴露してしまった(生放送でなかったのは、不幸中の幸い)こともあったりと、とにかく根掘り葉掘りの悪ノリには定評のある彼。
「そんな新人イジりする危険性がにじみ出ているレビンさん対策に、今回はこんなもん用意されています」
マネージャーのその手に握られている物、それは‥‥。
「こ、これはッッ」
「‥‥ふっふっふ、これッスよ〜」
「こ、こいつは‥‥?」
煙草を灰皿に押し付けながら、男は動揺を隠した。青年の手に握られている物、それはハリセンだ。大きさは3割り増し(当社比)となっている。
「参加者にはこれを控えてもらい、トークにブレーキが聞かなくなったら、これでツッコミ! 打たれた相手は、このハリセンによる衝撃と音で、一時停止を強いられるルールっス」
‥‥暫く、沈黙。
(「‥‥俺は、ただ祈ろう。それしかなく、そしてまたそれが、最善の行動の様な気がするから」)
最初は問題箇所を訂正しようかとも思ったが、のっけからこの企画自体にツッコミ所が多すぎて直そうと思っても直せないので、そのうち男は考えるのをやめた。
●リプレイ本文
照明が灯される。ポップなBGMと共にカメラが回り始める。鳴り響く拍手は人の手からではなくただの効果音だが、それでも新人達の心を躍らせるには十分であった。いよいよ、番組が始まる。
集まったメンバーは様々。スタンスも各々。なんだかほのぼのとしている高邑静流(fa0051)あたりは、迷子になってここに来た気さえする。
「哀愁深まる秋の午後。周りの木々は枯れ始めても、色恋沙汰が枯れる時なんて事は、〜〜無いッッ、あるわけが無い! というわけで、より取り見取りな恋愛を展開してくれる、今日のゲストはこちらです。どうぞーッ」
「ボーカリストやってる光(fa1247)です。今回は恋愛のお話ということで、面白そうですねー♪」
司会者の男、レビン・武村がハリのある声で切り出し、出演者達の紹介に移行する。次々と紹介コメントを済ませる出演者。だが‥‥。
「声優の伊達正和(fa0463)です。現ざ―」
「さて、早速話題に移りましょうか。まず静流君の恋愛話から、ハイどうぞー(フ、私が司会をする番組でCMスポンサー以外の宣伝なぞ、やらせはせんよ!)」
自分の出演作品を言おうとしていた正和の紹介をいきなり折って、話を静流に振る司会者・レビン。振られた静流は、暫く考え、言葉を搾り出した。
「そうだな、例えば茨に囲まれた城の奥深くで眠ってたり、眠らされてたりしてるのを起こしたり起こされたり―」
Baam! 高邑静流休止。
「尚、今回のトークは先程の静流君のように、ちょっと皆さんにわかりにくい発言、少々問題のある発言などは、このハリセンによって止められる仕様になっておりまーす」
ハリセン片手に説明するレビン。自分で静流に話しかけておきながら、速攻でハリセンによる一撃。暴慢さ全開である。
その強引さにムっとした顔になったまま正和はトークに入る。「ちょっとコレ、早くも番組の雰囲気‥‥悪いんじゃない?」なんて皆が不安がったその時。
「好みのタイプは胸が大きくて‥‥すいません胸フェチです、そしてポニーテールフェチです」
厳しい表情と言っている事のギャップに、周囲から自然と笑いがこぼれた。
「ん、つまりはアレかな。巨乳好きって言うと、七瀬君ぐらいの?」
「そうそう、あのくらいのサイズが丁度‥‥って、ぉい!」
「ということで上半身に健やかな発育が見られる七瀬君の好みって言ったら、どんな感じかな?」
正和のノリツッコミ後、話題は傍らに座っている七瀬・瀬名(fa1609)へ。光が「豊満なアレをネタに話を振る事は、よくないと思います♪」とツッコミを入れるも、その光の表情は何故か嬉しそうである。瀬名は気まずそうに咳払いをした後に、口を開く。
「うーん。好み‥‥の逆で、『それはちょっと』っていうのならすぐに出てくるけどな〜」
伊沢・海里(fa0113)「え、それって?」と聞く。やはり女性同士の方が話しやすいのか、レビンに聞かれた時より滑らかに言葉が出てきた。
「初デートっていくら格好良い男の人でも『館』の付く所に連れて行くのって如何かと思うの」
「しかしまぁ、男の人と行く館って‥‥気のせい? 不思議とエロく聞こえ―」
Baaam! レビン・武村消沈。
下品な話題は好きません、そう顔に書いてあるかのような楊・玲花(fa0642)のハリセンによる一閃は、大音を伴わせてレビンのコメントシャットダウン。ちなみにハリセン、デフォルトで顔に向かう仕様だ。
「うん、エロいと思うのはズバリ気のせいだと思う」
にこにこ顔の静流にそう言われながらも、レビンは直撃した顔面を抑えて手を差し向けてトークの続きを瀬名に促す。このへんは、流石司会者。
「最初に『ホラー映画』とか『アニメ映画』なんかに誘われてもねぇ。興味の無い所に連れて行かれても、話題に困るもの」
(「え、アニメ映画って駄目!?」)
(「あー、まぁ、そりゃそうだろうね」)
現在進行形でアニメ好き故に動揺は隠し切れない正和とは対照的に、それとなく心の中で頷く有珠・円(fa0388)はカメラマン。この嗜好の違いは、二人の職業から来ている‥‥かは定かでは無い。
「それで、あえて好みを‥‥って言ったら、心の広い人かしら。私、我侭だから。体型は、細身の人より筋肉質な感じの人」
「それって、共感できるわ」
ハリセンを置いた玲花が話に加わって来る。
「筋肉質でスポーツマンタイプがいいわ。顔は良い方が良いけど、甘いマスクより、男臭い、ちょっと野性的な方がいいかな」
「そうだよねぇ〜、ここ一番って時に引っ張って行ってくれるような逞しさって、やっぱり惹かれるな」
盛り上がりを見せる玲花、瀬名。好みの話となると、女性陣は共感する点も多いらしく、海里も加わって話していく。
「私も強い人って好き。力というより、心の強い人。自分をサラリと守ってくれる『白馬の王子さま』とか待ってはいないけど、でもある程度は守って欲しいかなと思う。あー、どっかにいないかしら、そんな人」
「なるほど、つまりはワイルド志向、守られたい願望がヤッパリ女性には多いって事かな」
「そうですね。怪我とか病気とか、あと精神的にまいっている時とかは、尚更ですよね〜」
横田新子(fa0402)はそう言うと、「怪我と言えば‥‥」と、自分のコメントをきっかけに己の高校時代のある出来事がぼんやり思い出てきた。
「しかし、アレだね。今流行り(?)なナヨナヨした美少年ってのは、あまり皆好みじゃないみたいだね、結構意外。女性の好みは、なかなか狭き門かも」
静流は深く腰掛けながら目の前のお茶を啜っている。どうやら『聞き』に徹している様子だ。
「俺の場合は、広き門だけどな」
「ん、ではその節操無きストライクゾーンを露呈したまえ、正和君ッッ」
理由無き自信に包まれ、高いテンションを維持した今の彼の姿はまさにアニメ需要者の鑑。もはや正和に対しては、ハリセンなどなんの抑止力にもならない!
「萌える属性は武士とか軍人とか格闘家で犬属性や後輩、属性お姉さん属性もいける口ですっ。むしろまだまだ、余裕で萌えられま―」
Baaam! 伊達正和撃沈。
「全く、テレビで萌えとか言ってるんじゃないの」
円は溜息交じりにハリセンをしまう。
「で、‥‥キミの場合は、どうなるんだろうね。なんだか色々、厄介な気がするのは、気のせい?」
レビンは光を見て言う。見た目だけ見てみれば格好はまさしく女性のそれだが、光の履歴書なんかを見てみよう。その性別欄には‥‥。
「も〜、厄介って何ですか厄介って。僕だって『普通に』、そういった力強よさのある男性は好きですよ。積極的な年上って理想だなぁ」
「さて、『普通に』とは言ったものの光君、キミの性別は?」
「男ですよ?」
そう、性別欄にしっかり載っている。『男』と。
「で、再確認。好きな人とそのタイプは?」
「年上ですね。積極的‥‥むしろもう、責めて欲しいですね、いやなんていうかもうッ色々な意味で♪」
「ああナルホド。でもそんなコメント言ってしまったら、きっとその辺の腐女子が萌え出してしま―」
Baaam!(×2) 光、レビン・武村、ダブル銷沈。
「だーかーら。テレビで萌えとか言わないの」
「はい、よい子のみんなはさっきのお姉ちゃん(お兄ちゃん?)の発言はサラッと聞き流してねー。間違っても、お父さんお母さんに責め云々を聞かないようにねー」
いつの間にかハリセンを手にしていた円と新子。新子は子供向け番組のお姉さんよろしくカメラに向かって呼びかけている。
「話を戻して‥‥好みというか、女性に対して『こうあってほしい』というのは、結構明確にあるつもりだけどね、俺は」
「というと?」
すぐにレビンは円に聞き返す。慣れだろうか、ハリセンに打たれてからの復帰か早い。
「女性に貞淑を求める訳じゃなくて‥‥何ていうか『手の届かない存在』であって欲しいんですよ、『小悪魔的』って表現もしてますけど」
「でも、レンズに人の姿を収めると言うキミの職業からして、手の届かない存在というよりは、掌握できてしまう存在じゃないかな」
「レンズに収めていても、カメラマンとモデルには、絶対届かない『距離感』があると俺は思っている」
「なるほどね、‥‥で、因みにそのイチ・カメラマンとして、ここにいるメンバーでは、誰が一番撮ってみたいかな?」
「えっ」
質問は突拍子も無かった。円は顎を指で撫でながら辺りを見渡し、思案する。そしてようよう開いた口から出てきた言葉は‥‥
「‥‥撮りなれていない、という観点からして、新子さんかな」
「なるほど。では話題は、瀬名君と別の意味でッ上半身に健やかな発育を遂げた新子君へ!」
何気に失礼な事を言いながら、レビンは新子へ顔を向ける。言われた新子は、全然気にしていない、といえば嘘になるが、彼女の頭脳に逆転の発想が閃いた。むしろ、この肥満体型をネタに話そう、と。
「先程もチラっと言いましたが、私も、心強くてちょっと困っている時に助けてくれる人とかって好感持てますよ」
「ふーむ、もはや時代は頼れる男ブームだね」
「で、その助けてくれるっていうことで、高校時代にこんなエピソードもあったりします。高校時代、ちょっと気になっていた男子生徒がいたんですよね」
「うむ、青春の恋の予感ッッ」
「ある日、足を挫ちゃったんですよね私。でも、そのおかげでその人に保健室に運んでもらえる事になりました」
「誰もいない保健室、そこで二人は、‥‥!」
と、言いかけたところで、レビンは玲花がハリセン構えて臨戦態勢になっていたので、悪ノリを止めて、手だけで続きを新子に促した。
「それで担がれる事になったんですけど、あの、お恥ずかしい話なんですけどそこで、その人に、囁くように、こう‥‥言われました」
「なんて?」
『お恥ずかしい』という台詞に何かを期待したのか、参加者は声をそろえて訊いた。思い起こしてみれば、番組収録開始からはじめて、純愛ストーリーっぽい話が出てきた。
「‥‥「うわ、重」、この一言です」
‥‥‥‥。
それは、気の毒に。一同心の中で合掌。
「そういえば、この体型のおかげで、公開収録の時にはリスナーにはよく「あの人、声と実物のイメージのギャップ結構あるよね」とか言われますね〜あはははは、は、はは‥‥」
「ハイっ、新子君は自嘲の深淵にハマってしまったけど、気にせず次行ってみよー!」
こーいうのは気にしないと駄目なのでは? と静流はツッコミを入れそうになる。が、そこで気付いた。光の目配せに。
「今度は貴女の話も聞きたいなぁ」
光が言うとそれを合図に一同は眼を合わせた。作戦スタートだ!
「そういえば、あなたの好みのタイプってどういうもの? ソレ、初恋から変わっている?」
まずは玲花からの先制攻撃。レビンは一瞬悩んだそぶりを見せるも、すぐに答える。
「タイプ‥‥やはり、しとやかな女性はイイね。それは今も昔も変わってないよ」
「じゃ、初失恋はいつですか?」
和正は歯に衣を着せなかった。レビンも比較的ぶっきらぼうに応じる。
「ランドセル背負っている頃だね」
「現在、好きな人はいますか?」
光からの直球。喉を潤そうと目の前の飲み物を口に運びながら答える。
「ん、まぁそれなりに、ね」
「この間、レビンさんおめかしして街中歩いてるのみたけど、どちらへ行かれたんですか〜? もしかして、その人と?」
聞いて、口の中のそれを噴出しそうになる。海里は違う人だったかも、と付け加えるが、レビンの様子を見る感じだと、的を射抜いたようだ。
「ま、まぁあの時は彼女の買い物に付き合っただけさ」
「その時レビンさんは何か買ってあげたりした?」
殆ど聞き手ツッコミだった静流からの奇襲。もう、かなり私生活の部分まで切り込むつもりだ。
(「ま、司会者さんにも平等に喋ってもらわないとね」)
横では、瀬名がイザというときのためにハリセン行使の、心の準備を整えている。
司会者に完全包囲の質問攻めが展開されていた。ここまで一対多数だと、流石に大分劣勢に見える司会者。
(「よし、じゃあそろそろか」)
レビンは口を開こうとした。だがその時。
「あー、ちょっと、アレじゃないかな。もっと常識的で、視聴者にわかりやすい番組にした方がいいじゃないか?」
円のそれはハリセン無しのツッコミだが、それにて場は沈静化する。
結局、その後デートコースの話等をして、番組は比較的クリーンな締め方をみせた。
収録語の楽屋に、レビンと彼のマネージャーが話していた。
「お疲れ様でした、レビンさん‥‥って、なんでそんなに悔しそうなんですか?」
「く、あそこで質問攻めされている時、弱っているフリ見せて、機をみて一気に質問返して、逆に同様の質問訊き返して逆転して目立とう思ったっていたのだよ。が、結局、出だしの彼女と締めの彼に出番を取られてしまったッッ」
‥‥なんともまぁ、曲がった考え方で。