どうぶつ競う天才アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
はんた。
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
難しい
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/20〜03/24
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●本文
『動物の中には人間達に追随する‥‥いや、むしろ勝るとも劣らない技術で人々を驚かす者達がいる。これは、そんな天才とも呼べる動物達と人間との、壮絶な戦いを記したものである』
大袈裟な演出とテロップがお馴染みなのはこの番組『どうぶつ競う天才』。毎回、その分野では著名な動物に、若手〜中堅芸能人が挑戦するといった内容だ。
往々にして動物の身体能力を生かした競技内容が多く、毎回動物がやや有利な仕様となっている。というわけで番組の過去を振り返ってみれば、動物側の勝利が多めである。
「そろそろ、芸能人側が勝ってほしいところだな」
咥え煙草のスタッフが、呟く。それを聞くと、近くの若手スタッフの青年がすぐに言葉を足してきた。
「でも、難しいところッスよね〜。だって今回の相手はかの有名な黒井サーカス団のスター三匹ッスからねぇ」
「そうなんだよなぁ‥‥」
男は頭をかきながら言う。
今回の対決テーマは『曲芸・大道芸』。有名サーカスで『黒井の三連星』というキャッチフレーズのもと、不動の花形役者として君臨している猿‥‥大地君、摩周君、ノレテガ君の三匹が相手なのだ! 三匹の抜群のコンビネーションには多くの固定ファンがいるほどで、駆け出しの芸人より確実な腕を持っている。
「まぁ、負けても別に番組成り立たなくなるわけじゃあないから、別にいいか‥‥」
「でも芸でもし敵わない場合でも、演出とかで見栄えを良くする事は出来るッスよ。それで観客の目を引けば、勝敗は思わぬ方向に転ぶかもしれないので‥‥わからないッスよ」
「できれば頑張ってほしいところだがな。じゃあ、出演者に声かけて来てくれ」
●リプレイ本文
観客無きそこには数人の芸能人達が来るべき決戦の日に備え、己の技を磨いていた。そう、あと幾日かすればここで彼らは天才曲芸動物、『黒井の三連星』と雌雄を決するのだ。
数日前から練習を続けており、今日は確認の意味合いも込めて実際の場所にて練習をしている。
「お猿さん、でも芸歴的には大先輩でしょうか‥‥う、なんか緊張してきました。」
「そう弱気になりなさんなって、司。黒井の三連星だか何だか知らないけど、芸で人間様に勝とうなんて100年早いってこと教えてやる。大道芸人の意地に賭けてな! 見てろよ!」
「‥‥そうですね、お猿さん相手に負けるわけにはいかないですねっ。頑張っていきましょう!(勝っても負けてもいい勉強になりそうですけど)」
「よし、その意気だ! じゃ、練習の続きいくか。‥‥よ! はっ!」
不安がる鏑木 司(fa1616)を励ましたのは志羽翔流(fa0422)。今回芸のパートナーとなる二人は熱心に練習中。
「よしよしその調‥‥子、ぅおあ!?」
「あぅ! すいません〜‥‥」
何はともあれ、要・演練。二人の気合が一致するのにはもう少し時間がかかりそうだ。
威勢のいい声が響くその練習の場で、時折、別の場所から威勢のいい声が‥‥イヤむしろ、異様な声が?
「オマエの覚悟とは、そんなものか!? くだらないプライドは捨てろ! パンダになりきれ! でなければ、奴らに勝つことはできん!」
怒声にも似た色を帯びたそれは鶸・檜皮(fa2614)の口から発せられる。その先には常盤 躑躅(fa2529)。躑躅は今、全身パンダのキグルミに包まれていた。
そんなパンダ状態の彼に、芸を叩き込む檜皮。
「キグルミのパンダを本物のパンダ以上に可愛く見せる‥‥これも一つの芸‥‥否、芸術と呼べるだろう」
時々そうやって、哲学者の様な重々しい口上で呟く檜皮。まぁ、その呟きの内容がどーだとかは、敢えて言及しないが。
「パンダを越えるキグルミのパンダ‥‥それが新たなるパンダの革新‥‥ニューパンダだ!! ‥‥俺はオマエならなれると信じている」
「檜皮、お前‥‥。よし‥‥ッ、天才猿を超える天才パンダ、ニューパンダってヤツをやってやるぞ!!」
檜皮の熱の篭った言葉に感銘を受けて(もしくはそれで一種の諦めの境地に達して)、躑躅の中で、何かが弾けた!
「その意気だッ、躑躅! バカと天才は紙一重‥‥ならば、バカがもっとバカになれば天才を超えられる筈だ」
もう、論理的にどーだとかそういうツッコミは‥‥今の二人には通用しない。多岐に渡る、様々なジャンルのパフォーマンスに手を染める二人がいた。
「なんだあのパンダ‥‥圧倒的じゃないか」
「感心するのもいいけど、こちらの方もよろしくお願いね?」
「あ、これは失礼」
三条院真尋(fa1081)に言われて、振り返るたまた(fa3162)。バイオリン奏者の芸人と、手品師兼占い師の二人‥‥というなかなか見ないコラボレーション。果たしてその、相性の程は如何に? 兎にも角にも、丁寧に練習を重ねている。
「勝敗ばっかりにこだわって必要以上に気負ったりしないで楽しくやろうかな。でもまあ一応芸人のけじめとして‥‥宣誓ー、負けた時は頭を丸坊主にしまーす!」
誓いを実際に口にするHAKASE(fa2600)。はたして彼の毛髪は、生き延びることが出来るか?
そんな中、練習とはまた別のナニカに勤しんでいる者もいた。湯ノ花 ゆくる(fa0640)だ。
「あれヨシ‥‥これヨシ‥‥。うん‥‥、全部調達‥‥出来そう‥‥完璧です」
何やら色々準備・確認中。縄、玉入れ籠、中にはタマゴやサラダオイルまで。何するつもりだろうか‥‥?
芸の成就、自我研鑽、打倒・黒井の三連星、とにかく見る人を楽しませる‥‥芸もそれぞれ。
なら想いも、人それぞれ。
「く、あれは卓越した曲技でなけれな倒しにくい相手だな」
「これは駆け引きなのだよ。芸術の域にまで昇華させたキグルミパンダの愛くるしさなら、必ず勝てる」
そう言ったのは、ステージ横から覗き込んでいた躑躅と檜皮。
ここは収録スタジオ本番中。たった今、「黒井の三連星」の芸が終わったところだ。
「最初は一匹に見えるのに‥‥そこから三匹に展開しての曲芸。敵ながら見事なものね」
輪郭に指を這わせながら、真尋は呟く。ちなみにその三位一体の業、誰が呼び始めたか謎だが、『偏西風アタック』の名で世に広まっている。
「ま、弱気で勝てる相手じゃない。いくぞ、司!」
「はい、翔さんっ」
流石はあの『黒井の三連星』といった所でしょうか、スタジオでは先程の大地君、摩周君、ノレテガ君の見事な芸による興奮冷め遣らぬ状況です。こんな状態からのスタートは少し厳しいところがあるか? ‥‥いえ、そんなことは言っていられません。相手は猿、ここは芸人として、いや人間としてッ、退けないものがあります。プライド? 否、それは芸人魂!
人間サイド最初の曲技者、志羽翔流、鏑木司の登場です!
さて、早速開きますは手にした番傘。朱色のそれが出てくれば何をやるか、聡明な視聴者にはお分かりでしょう。そう、傘芸です。投げ込む方は楽じゃないか? そんな事ありません。司は一輪車に乗った状態。前後に動きながらバランスを取っております。
二人の息が合ってこそ成り立つこの芸、果たしてこの二人はどうでしょうか?
さて、司が手にしたボールが今、投げ上げられ‥‥はい! 回った! 回った! 回った! 回っております。回転する傘の上をボールが跳ねております。
第一球目、まずは成功です。続いて司の手の上にあるのは、枡です。歴史ゆかしきこの体積計測器。これは、どうか‥‥? 大丈夫です問題ありません! 傘の上に四角いそれが踊っています、成功!
この勢いに乗って三種目へ。今度は一体何を回すのか‥‥おおっと、猿の人形が投げられました! なるほど今回の相手を意識しての計らい。傘の上で転がる猿、まさにそれは釈迦の手の上の孫悟空! お見事!
「お疲れ様。見ていて楽しかったわよ」
「うーむ、でも唯一の心残りとしては、俺が皿一枚割っちまったところか。たまたが演奏でワザとだとごまかしてくれて、難を逃れたけどな」
その後の皿回しを終えて笑顔で退場後、翔流と司は、真尋の手品の準備を手伝っていた。
「今回の芸はいい勉強になりました。今後に活かしたいと思います。さて、次はHAKASEさんでしょうか」
続きましてはマジシャンの登場。HAKASEが今、相棒の鳩『白い彗星』を片手に登場です。
「ハジメマシテ。オ猿サンニ負ケナイヨウニ頑張ルヨー」
鳩人形が喋った!? 今、白い彗星の嘴の動きと共に、たしかに声がしました! しかしHAKASEの唇は動いていない! 腹話術とは‥‥のっけから、やってくれます。
おっと? 彼のもう片方の手には卵があります。一個、二個、三個! 次々に生まれてきたそれは、一度HAKASEが手をかざせば‥‥あ〜ら不思議! ご覧の通り、零個に消失。どこだ? どこだ? 消えた卵を探します。ん? どうやらHAKASE、何かに気付いた様子。ポケットに手を入れてみたら‥‥なんと卵出現。おおっとHAKASEが白い彗星につつかれています! 彼に卵を盗まれたと思ったか? 結構痛そう。ああッ、そんなんだからHAKASEの手から離れていきます。投げられた白い彗星は、その先の火の輪をくぐって、今その役目を終え‥‥。
なんと! 輪を抜けて羽ばたくのは本物の鳩! 白い彗星はパペットから本物の鳩に変化しました。あの火の輪に、一体どんな仕掛けがあったのでしょうか?
と、その火の輪にかざされ、そして燃える何か。カードですッ、カードが燃えています。しかしそれは手首を軽やかに翻せば、消化! そして消えた炎の代わりに照らす鮮やかなライト。そこに佇むのは三条院真尋。チャイナドレスで登場です。‥‥でもこの人、確か男性ですよね? ま、似合っているからヨシとしましょう!
真尋の手をご覧下さい。どこからともなく出現したプラスティック・ボール。HAKASEの手にも同じく。数個のそれらは、二人の間で投げ回されます。実にスムーズですね、まるでお手玉を横にした様です。ボールが流れるように‥‥あれ? ボールだったはずのそれの中に、マラカスが混じっています。先程からバイオリンにて演奏を担当しております、たまたのペースに合わせるように回転が速くなっていきます。しかし器用。マラカスなんて‥‥と思ったら更に投げられているものは変化して、今はナイフです、ナイフが二人の間を飛び交っている! これは危なげ! 見ている方が恐ろしくなります!
と、ここで投げ合いは終了。いやいや、二人とも無事でなりより。ここでHAKASEは恭しく礼をした後、退場です。
ここからは真尋のステージ。その手には再びカード。俊敏、且つ華麗にカードがシャッフルされます。ここで手招きする真尋。これは、どうやら黒井の三連星に向けての様です。
来たのは大地君。真尋は彼に束を渡し、カードを一枚引いてもらい、どうやらそれを当てるようですね。
「キキキキ‥‥(ここは意表をついてジョーカーを‥‥)」
「それは、ジョーカーね?」
「ゥ、ウキ! ウキキィ!(うっ、当てた! 俺の狙いを!)」
的中です! ズバリ言い当てました! 決め台詞の「星は何でも知っている」が、真尋を照らす光と共に、カードマジックを映えさせます。たまたの演奏も、それに賛辞を送るかのようです。芸人という肩書きにしては美しいこの音色。皆様暫くご静聴願います。
さて、そうして聞き入っている間に用意されたのは箱。さて、ここにたまたがセットされるわけです。胸から下は既にはこの中、依然として左肩の上にバイオリンを乗せて演奏を続ける彼に、鋭利な刃物が近づきます! ゆっくり、されど確実に! 近づくたびにたまたのスティックさばきも忙しくなってきます。近い、近い、近い! 残り30cm、20、10‥‥一気にいった! 胴・体・断・裂!
おっと‥‥たまたの演奏が止んでおります。トリックならそろそろ動き出していいころでは?おや、照明が落ちました。まさか、本当に‥‥。
‥‥? 皆様、この哀愁漂う曲が聞こえますでしょうか? 今、ステージにスポットライトが‥‥なんと、この演奏はたまた! まるで自分の死を自ら弔う様な物悲しい曲‥‥生きております! 切断マジックの成功です!
「この調子ならイケるかな‥‥。あ、スタジオの広さからして、種類限定した方が楽しめるかもね」
「そうで‥しょうか? それなら‥‥厳選して‥ですね」
HAKASEとゆくるは現在準備中。彼らの仕掛けが、今回最も手間のかかるものといっていいだろう。その準備は、翔流や司も手伝っている。
「どうやら演奏は無事終了したようだ。よし、我々も負けてられん。躑躅‥‥」
「応! 出番だな、いくぞ!」
さぁ、次に現れますは‥‥これは! パンダ、パンダです! 動物VS人間の当番組に、ここまで全身パンダな御仁が来たのは初めてです! このパンダのキグルミを装備しているのはスタントマン・常盤躑躅。傍らの調教師姿の鶸檜皮と登場です。
檜皮が鞭を鳴らせば、玉乗り、逆立ち、綱渡り‥‥火の輪くぐりだってハイこの通り! 若干キグルミが焦げている気がしないでもないですが、敢えてツッコミません!
ここにきて、瓦割り敢行ー! 先程の愛らしい仕草とはうって変わって、凶暴! 凶暴な風景です。次々と瓦を破壊するそれはまさに殺人パンダ!
そんな殺人パンダに飛来するナイフの数々! 躑躅がどれだけ避けようと関係ない処刑方法だ! が、それでも避ける! 映画・マトリックスのワンシーンさえ髣髴とさせます。あ、なんか数本当たって痛そうにしておりますが、それでも目を見張る運動神経には変わりありません。
これで二人の芸は終了。素晴らしい体捌きのキグルミスタントマンに対し、自然と拍手が沸き上がります。
さぁ、そして諸準備の後‥‥、最後の曲技者の登場です。メロンパン芸人という肩書きが既に怪しいッ、湯ノ花ゆくる、これは‥‥体操着姿で登場です! 萌えた奴、正直に手ぇ挙げろ! 少なくとも私は萌えた!
さてこれから何をするのか‥‥と思ったら、配置される数々の資機材。どうやら障害物競走をするようです。え‥‥と、でも対決テーマ、曲芸・大道芸だって知ってますよね? あー‥‥でも放送時間まだ残っている事ですし、もう好き勝手やってください!
なんて言っている間に既にスタート!
ゆくるの他に、たまたとHAKASEも参戦しておりますこのレース、まずは玉入れ。走者は籠に玉を投げ入れます。何か別の物も飛んでいます。ゆで卵です。誰だ混ぜたの!
次に待ち受けているのは平均台。ここで転倒者続出。何故なら台に、油塗ってあるから! はい、ちゃんと落下地点からやり直してくださいねー。
そして最後の障害は、お馴染みの借り物。HAKASEは何やら、黒井の三匹にひっかかれています。どうやら指定は『黒井の三連星』だったようです。たまたは客席まで降りて、『メガネ』を探しています。
そしてそんな中、ゆくるが今、大好物であろう『メロンパン』を咥えてゴールイン。完走を成し遂げました! でもここ、運動会じゃないよ?
最後、若干混沌気味であったが全曲技終了。結果は‥‥。
黒井の三連星48 芸能人チーム52
苦戦の末、僅差で人間側が勝利した。最後のゆくるで、所謂『萌え票』が入ったのではないか! と相手側から異議申し立てがあったが‥‥勝てばよかろうなのだ!