CRAZY NIGHT!アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
初瀬川梟
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
易しい
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報酬 |
不明
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
11/01〜11/03
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●本文
万聖節の前夜祭、ハロウィン。
子供たちがお化けの仮装をして、「トリック・オア・トリート!」と言いながら家々を訪ね、お菓子を貰って回る‥‥という、何とも楽しいイベントだ。
日本ではまだクリスマスほどは浸透していないものの、この時期になるとグッズやお菓子が売り出されたりして、だいぶ知られるようになった。
今年もまたハロウィンの季節がやってきた。
ジャック・オー・ランタン、ハロウィン用お菓子の詰め合わせ、果ては仮装グッズまで‥‥
様々な商品が店頭に並び、お祭好きな人々の心をくすぐる。
そんな中、ハロウィンをもっと広めよう!という目的で、仮装ライブコンサートが開催されることとなった。
出演者はもちろん、観客も全員、お化けの扮装をすることが参加の絶対条件。
ライブに耳を傾けるも良し、一緒に歌ったり踊ったりするも良し。
お菓子を持ち寄ってみんなで交換し合うなんてのも楽しいかもしれない。
年に一度のお祭り騒ぎ。
たまには、はっちゃけてみてはいかが?
それでは‥‥
HAPPY HALLOWEEN!
* * *
<諸注意>
・ライブ出演希望者も、一般参加希望者も、必ず仮装すること。
・報酬はライブ出演者にのみ支払われます。
●リプレイ本文
至るところに置かれた大小様々なかぼちゃランタン。
天井から吊り下げられたコウモリの人形たち。
ゴシックな洋館と墓場をイメージしたちょっぴり不気味な会場のセットの中、メイド姿のスタッフたちがお菓子を配って歩く。
♪今夜はピカピカの満月で こんな夜は秘密のPartyが始まるよ
猫も鼠も ゆらゆらダンスをしているよ
人間も怪物もケンカしないでDanceParty♪
陽気なBGMが、お祭気分をより一層盛り立てる。
すっかりハロウィン気分に浸った観客たちは、思い思いの衣装に身を包み、開幕の時を心待ちにしていた。
やがてゆっくりと会場内の照明が落とされ、ステージの暗幕が開いていく。
スポットライトの中に浮かび上がったのは――1人の少女。
純白のコートに身を包んだリドル・リドル(fa1472)は、厳かにバイオリンを奏で始めた。
ツィゴイネルワイゼンの悲愴かつ荘厳な調べに、観客たちの視線は舞台に釘付けになる。普段あまりクラシックを聴かない客層も、奏者がまだ12歳の少女というだけあって、興味を引かれているようだ。
途中からはコーラスも入り、さながら小さなクラシックコンサート。
しかし演奏が終わり、再び舞台が闇に閉ざされると、それまでの静かな雰囲気からは一転。
「ハロウィン特別ライブ! CRAZY NIGHT! はじめるよ!」
司会役のアカネ・コトミヤ(fa0525)の元気な声を合図にして、ドラムリードが始まる。演奏するのはアルク・ソム(fa1707)。ねじれた角と手足を覆う漆黒の鱗が、凶暴な悪魔を思わせる。
「Hello win!」
力強いシャウトと共に舞台がライトアップされ、今回のイベント限定の特別バンド「Jack O’Lantern」のメンバーがお目見えした。シド・リンドブルム(fa0186)、椚住要(fa1634)、アルクの3人で結成されたバンドだが、キーボードの笹原詩音(fa1457)も助っ人として呼ばれている。
『 Hello win! 今の自分が負け犬でも
Hello win! いつか皆に見せてやれ
Hello win! 君が望み願うもの
Hello win! それは輝くGlory!! 』
黒づくめの衣装に黒い翼を生やしたヴォーカルのシドが、広い声域を生かしてサビを綺麗に歌い上げる。普段は年下にさえ敬語を使い、快活ながらも礼儀正しい少年だが、今このステージの上で熱唱する姿はまるで別人のようにも見えた。
激しい曲調のロックで会場も一気に盛り上がり、ノリのいい手拍子が響き渡る。
(「こういうライブって初めてだけど‥‥やっぱり歌って気持ちいいな」)
歌うことが大好きなシドは、心地好い波に身を委ねるようにして無心に歌を紡いでいった。
1曲目の「Hello win!」が終わると、今度はシドに代わってギターの要が前に躍り出る。
中世の貴族のような格好に、全身に散りばめられたアクセサリー。鴉頭のかぶり物――実はかぶり物ではなく本物だが――には大きな羽根飾りが揺れる。その姿はさながら派手な悪魔。
他に歌う人がいないからという理由で、今まで作った曲は自分で歌ってきたカナメだが、今日は思う存分ギターに専念できる。
吼え猛るようなギターに、天を撃つような情熱的なドラム。
これが初めてのセッションにも関わらず、要とアルクは息の合ったユニゾンを奏で、滞りなく次の曲へと繋いでいった。
『 年に一度のお化けの祭り
今夜は楽しいハロウィン ハロウィン
ジャック・オー・ランタン明かりを灯し
準備は良いかい? さあ出掛けよう!
合言葉は Trick or Treat
お菓子の準備は出来ている? 』
先ほどより少し落ち着いた、明るく軽快なメロディー。しかしところどころにホラーテイストも混ぜてあり、お化けたちが集うハロウィンの雰囲気にとてもよくマッチしている。
2曲目の「HAPPY HALLOWEEN」も無事に終わり、大きな拍手の中、「Jack O’Lantern」のメンバーは舞台の袖へと消えていった。
入れ替わりで飛び出してきたのは、紺色のローブに身を包んだ魔女姿のアカネ。
「みんなどう? 楽しんでいる〜?」
という問い掛けには拍手と歓声が返ってくる。アカネはそれに満足そうに頷いて、ずり落ちそうになるとんがり帽子を軽く直した。
「それじゃあ私の曲聞いて下さい、『Go for it!』」
『 いつもは教室の窓から見ている憧れの先輩
今日こそはこの思いを伝えたい
だけどライバル多くて伝えられず終い
そんな毎日
気が付くと鏡の中もう一人の自分が言う
本当にそれでいいの? 』
今度は、前向きな恋心を描いた明るいポップスだ。
リズムに合わせてアカネが体を動かす度、長い髪と青灰色のしっぽも楽しそうに揺れる。
『 Go for it! やってみなっくちゃ始まらない
夢も何も手に入らない
さぁ歩き始めよう
その思いは必ず叶うから 』
ステージ上には、アカネとお揃いの色とりどりのローブを纏った猫耳魔女たちが集まり、それぞれ楽器を演奏したりダンスを披露したりしている。それが一部の観客に受けたらしく、会場内では「可愛いね」などと囁き合う声が聞かれた。やはり、猫耳人気は根強いといったところだろうか。
アカネのソロの次は「Wind’s」の登場。
「Jack O’Lantern」と同じく即席バンドだが、メンバーのうちLaura(fa0964)とMIDOH(fa1126)は双子の姉妹だし、詩音とリドルは顔見知りのようだ。
「ローラとセッションできて嬉しいよ」
「頑張りましょうね、マリアちゃん」
「よろしく、リドルお姉さま」
「ええ、最高のライブにしましょう」
皆それぞれ軽く挨拶を交し合い、眩い光に照らされたステージへと進んでゆく。
そして‥‥
「Trick or Treat! うふふ、最高の夜だわ」
まだ幼さの残る顔に妖艶とも言える微笑を浮かべ、リドルはコートを脱ぎ捨てた。その下から現れたのは、レースに彩られた黒いゴスロリファッション。ショートパンツとガーターの間にちらりと覗く太股には、黒蝶のタトゥーシールまであり、かなり手が込んでいる。純白の天使を思わせる衣装からは一転して、堕天使のようだ。
長い髪を針金で細かくまとめ、メデューサに扮するローラもまた、衣装は黒ゴス。リドルと2人で並ぶと、むしろこちらのほうが姉妹に見えてしまう。
一方、実の姉であるマリアことMIDOHは、猫と蛇と鳥を混ぜ合わせたキメラの格好。すらりと引き締まった体つきに加え、顔が隠れているため、男性と間違えてしまいそうだ。本人いわくあまり得意ではないらしいが「Wind’s」ではギターを担当、同時にローラとWボーカルも務める。
『 今日も朝からいいお天気で 心がウキウキ笑っちゃう
お洗濯もしなきゃいけないけど バスケットにお弁当詰めてピクニックに出かけよう
風はちょっと冷たいけれど 折角のお天気なんだもの
目一杯楽しまなければ勿体無いよ 』
明るく可愛らしい曲と、それにぴったり合ったローラのピュアボイス。
その目を見たものを石に変えてしまうという恐ろしいメデューサだが、ローラ扮するメデューサはとてもキュートだ。
「ピクニックへ行こう」が終わると、詩音のキーボードが間奏を奏でる。
洋装が圧倒的多数を占める中、詩音は和風の鴉天狗姿。今回の「CRAZY NIGHT」では最年少の詩音だが、そのせいもあってか、少年鴉天狗は会場のお姉様方の熱い視線を集めていたとかいなかったとか‥‥
それはさておき、間奏の後はいよいよラスト。
『 何時の頃からだろう
僕が貴方の方を見なくなっていたのは 』
最後の曲はバラード。
語りかけるような静かなメロディーを、リドルと詩音の伴奏がしっかりとサポートする。
そして寄り添うようなローラとマリアの歌声が、会場内にしっとりと染み渡るように響いてゆく‥‥
『 悲しみはいつか思い出に代わるのだろうか?
僕はこの思いを大切に‥‥生きていく 』
曲の終わりと共に、舞台は再び暗転。
それからしばらく間を置いて、ライトに照らされた舞台に出演者が勢揃いする。
「ハロウィン特別ライブ『CRAZY NIGHT』、楽しんでもらえた〜?」
アカネの声に応えるように、ひときわ大きな拍手。
それを受けて、ある者は照れたように、ある者は嬉しそうに、またある者は誇らしげに一礼した。
するとここでリドルが悪戯をひとつ。
「Trick or Treat!」
お決まりの台詞と共に、彼女はまず最初に詩音の頬にキスをした。
「‥‥リドルお姉さまの悪戯って、このことか」
ちょっぴり照れた様子の詩音。
リドルはくすくすと笑いながら、他のメンバーにも次々にキスのプレゼントをしてゆく。アルクや要は少々戸惑っているようだったが、それでもリドルに腕を引っ張られ、
「まあ、ハロウィンだし‥‥」
「‥‥こういうのも悪くないか」
と、彼女の背に合わせて屈んでやった。
微笑ましく可愛い悪戯に、観客たちからも自然と笑顔が零れる。
暖かな雰囲気に包まれながら、舞台の幕がゆっくりと下りていった――
♪皆でDanceParty 今宵は踊ろう
皆でDanceParty 朝まで踊ろう♪
楽しい音楽に送られて、夢のようなひとときも終わり。
会場を後にする人々はそれぞれライブの感想を語り合う。
「あの人たちって、普段どこで活動してるのかなー?」
「『Jack O’Lantern』も『Wind’s』もハロウィン限定なんだよね。なんかもったいないね」
「また何かの機会に逢えるかな‥‥?」
それぞれの心に思い出を残し、CRAZY NIGHTは無事閉幕を迎えたのだった。