チェンジ!アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 初瀬川梟
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/06〜02/10

●本文

●メインキャスト
・笹倉充‥‥顔はいいが、女心がまったく理解できない鈍感人間。そして面倒くさがり。
(※キャストは男性ですが、鈴香と入れ替わっている間は基本的に女言葉で演技してもらいます)
・三嶋鈴香‥‥芯が強く気も強いお嬢さん。それゆえ、美人だが近寄りがたい印象を周囲に与える。
(※キャストは女性ですが、充と入れ替わっている間は基本的に男言葉で演技してもらいます)
・秋庭陽介‥‥充の悪友。幼い頃から、よく2人でつるんでイタズラばかりしていた。
・魔女‥‥お節介焼きの魔女。恋のキューピッドを気取っているが、かなりの頻度で魔法が失敗するのでとても迷惑。

●ストーリー
 笹倉充は、顔だけは良いものの、女心の機微というものをまったく理解しない鈍感人間。それゆえ、せっかくできた彼女にも愛想を尽かされ、フラレてしまった。
 一方、三嶋鈴香は旧家の生まれで、少々‥‥いや、けっこう古風な考えの持ち主。気も強く、お堅くて近寄りがたい人という印象を周りに与えてしまい、浮いた話にはまったく縁がない。
 そんな2人は小学校に上がる前からの幼馴染み。お互いの性格から言って相性が良いわけもなく、いつもケンカばかりしていた。‥‥が、ケンカするほど仲がいいという言葉もあるように、鈴香はいつの頃からか充のことが気になり始めていた。もちろん、充がそれに気付くはずもないし、鈴香自身も絶対にそれを認めようとせず気付かないふりをしていたのだが‥‥
 ところがある日、ケンカする2人をたまたま見かけた魔女が、2人に「相思相愛になる魔法」をかけた‥‥のだが、なんとも迷惑なことにその魔法は失敗し、なんと充と鈴香の中身が入れ替わってしまった!
 しかし魔法が失敗したことにはまったく気がつかず、「お幸せに♪」と言い残して去ってしまう魔女。
 充と鈴香は慌てて魔女の行方を追う。
 果たして2人は無事に元に戻ることができるのか?!

●解説
いくつかのシーンをピックアップして録ります。

・魔女がお節介を焼くシーン
下らないことでケンカする充と鈴香。それを見た魔女が余計なお節介を焼いて魔法をかけた結果、魔法が失敗して充と鈴香の中身が入れ替わってしまった。衝撃の事実に気付いた2人は、どこへともなく去ってしまった魔女を手分けして探すことに。

・充(中身は鈴香)が陽介に会うシーン
町でばったり陽介に会ってしまった充。しかし中身は鈴香なので、うっかり会話の端々で女言葉を使いそうになってしまう。それを必死に誤魔化しつつ、何とか怪しまれないよう男言葉で喋ってその場を切り抜ける。
会話の内容は、ゲームやドラマなどの他愛もない話。

・鈴香(中身は充)が絡まれるシーン
魔女を探す鈴香に、チャラチャラしたナンパ男3人組が絡んでくる。中身は充なので、乱暴な言葉遣いで追い返そうとするものの、体はあくまでも鈴香。非力な女性では男3人に適うはずもない。女であることの不便さを痛感しつつ、どうにかこうにか隙を見て切り抜ける。

・クライマックス
どうにかその日のうちに決着が付く、ということだけ決まっています。詳しい内容と結末は皆さんで考えて下さい。ラブをメインにしてもコメディをメインにしても、どちらでも可。

●今回の参加者

 fa0531 緋河 来栖(15歳・♀・猫)
 fa0642 楊・玲花(19歳・♀・猫)
 fa0745 ミーア・ステンシル(18歳・♀・小鳥)
 fa2385 霧島・沙耶香(18歳・♀・パンダ)
 fa2469 比企岩十郎(34歳・♂・獅子)
 fa2765 黒羽 闇風(23歳・♂・蝙蝠)
 fa2821 フラット(16歳・♂・猫)
 fa2846 竜崎鎧斗(17歳・♂・竜)

●リプレイ本文

−CAST−
笹倉充‥‥フラット(fa2821)
三嶋鈴香‥‥緋河 来栖(fa0531)
ミーメ‥‥楊・玲花(fa0642)
矢野由美‥‥霧島・沙耶香(fa2385)
笹倉綾‥‥ミーア・ステンシル(fa0745)
秋庭陽介、ナンパ男‥‥竜崎鎧斗(fa2846)
アルケ、ナンパ男‥‥比企岩十郎(fa2469)
ミスト、ナンパ男‥‥黒羽 闇風(fa2765)


「充君、こんな所でなにをしているんですの?」
 のんびり昼寝を楽しんでいた充の視界に、突然にゅっと鈴香が現れた。やかましい奴が来た、とばかりに、充は露骨に嫌そうな顔を作る。
「そーじなんてめんどいだろ?」
「だからって、いつもわたくし1人に仕事を押し付けるなんて酷いんじゃありませんこと?」
「お前きれい好きなんだから別にいーじゃん」
「そういう問題じゃないですわ!」
「いちいちうるさいなぁ」
 まるで先生のような態度で叱る鈴香だが、充は真面目に聞こうともしない。
 そんな2人を、空の上から眺める人物がいた。
「あらあら、痴話喧嘩ですわね〜」
 のほほんとした口調で喧嘩を傍観する彼女は、魔女ミーメ。ツバ広のトンガリ帽子にフード付きの黒マント姿で、箒に乗ってふわふわと宙に浮いている。
 お節介が大好きなミーメは、困っている人や悩んでいる人を見つけ出し、魔法で手助けしてやることを生き甲斐にしているのだ。だから当然、彼女が充と鈴香に目をつけないはずはなかった。
「そうですわ、素直になれない若いお2人さんには仲良くなる魔法を掛けてあげましょう」
「また魔法を使うのか? 今度は何が起きるのか、楽しみだねぇ」
 嬉々として翼をはためかせるのは、八咫烏の姿をした使い魔ミスト。
「いや、もう少し慎重に行きましょうよ‥‥」
 と諌めるのは、黒ぶち猫の姿をした使い魔アルケ。
 しかしミーメはアルケの忠告は聞かなかったふりをして、杖の先でくるくると円を描く。
「ラ〜ルラ、ラ〜ラ、リ〜ルレ 二人の心を繋げましょ♪」
「ああ、そこの人、逃げて〜〜!」
 アルケの声に気付いた2人が顔を上げるが、時既に遅し。杖から溢れ出した虹色の光が2人を包み込んだ。
「何なんだアンタら‥‥?」
「この光は?」
 光に包まれた2人は、目眩を感じて軽くよろけた。そして意識がはっきりした途端、とんでもない違和感に襲われ、お互いに顔を見合わせた。
「‥‥なんで俺の前に俺がいるんだ?」
 まじまじと充を見つめる鈴香だが、何故か口調は男っぽい。
「わたくしの目の前に、わたくしが‥‥?」
 一方、充のほうは喋り方が鈴香そのものになってしまっている。
 それに気付いた2人は大声で叫んだ。
「どういうことだ?!」
「いやぁっ! 勝手に触らないで下さいっ!」
 びっくりして自分の体をぺたぺた触りまくる鈴香と、それを見て悲鳴を上げる充。
 どうやら、2人は中身が入れ替わってしまったようだった。
「あら?」
「クワックワッ、こりゃ傑作だな!」
 本当は相思相愛になる魔法だったはずなのに、まさかこんなことになってしまうとは。しかしミーメにとって、これは決して珍しいことではない。彼女の魔法はほとんど成功した試しがないのだ。ミストなど、今度はどんなふうに失敗するのかと楽しみにしているほどだ。それでも彼女は失敗の事実をさらりと無視して微笑んだ。
「‥‥うふふ、良いことをした後は気分が良いですわ〜」
「おいこら、全然良くないっての! さっさと元に戻せよ!」
 鈴香が下から怒鳴るが、聞いちゃいない。
「お礼なんて良いですわ〜、これも魔女の当然の役目ですもの〜」
「いや、向こうはお礼なんて言ってませんよ。むしろ怒ってるような‥‥」
「あらそうそう、用事を思い出してしまいましたわ〜。それでは、私はこれにて〜」
 アルケの言葉にも耳を貸さず、ミーメはさっさと逃げるように飛び去ってしまう。
「ちょっと、お待ちなさいったら!」
 慌てて追おうとする充だが、ここは学校の屋上。箒でどんどん遠くへ飛んでゆく魔女には到底追いつけない。
「くそっ、手分けして追うぞ!」
 2人は急いで怪談を駆け下り、追跡を開始するのだった。


 充が玄関に辿り着いた時には、既にミーメの姿は完全に見えなくなっていた。こうなったら地道に探し回るしかない。しかしタイミング悪く親友の陽介に呼び止められてしまった。
「あ、充。この前やりたがってたゲーム、うちの弟が買ったから終わったら貸すってさ。ほら、何て言ったっけ‥‥」
「え?」
 外見は充だが中身は鈴香なので、充がやりたがっていたゲームなど分かるはずがないし、そもそも鈴香自身はゲームなんてやったことがない。仕方なく、CMで見かけたタイトルを適当に挙げてみる。
「『動物の島』?」
「あれ? 充って、ああいうほのぼのしたゲームは苦手って言ってなかった‥‥?」
「あ、いえ、その‥‥」
「そうだ、思い出した。充が言ってたの『戦国夢想』だよ」
「そうで‥‥だな」
 うっかり鈴香の口調で喋りそうになってしまうのを必死で抑える充。が、やはり明らかにいつもとは違うので、陽介は少し不審げな目で充を見ている。
「‥‥なんか‥‥今日の充って‥‥いつもと違わない?」
「そんなことあり‥‥ないだろ」
 やっぱり変だ、と言わんばかりの怪訝そうな視線。
 このまま会話を続けてはマズイ。充は冷や汗をたらたら流しながら、
「こ、これから急ぎの用があるんです‥‥だよ! それじゃあ、これで!」
 こう言い残してダッシュでその場を立ち去った。


 一方、鈴香は一足先に校舎を出てミーメを探していたのだが、こちらも運悪く親友の由美に捕まってしまっていた。
「古典の小テスト、難しかったね〜。鈴香ちゃん、古典得意だから羨ましい」
「それほどでもねぇ‥‥ないですわ」
「今度、教えてくれる?」
「ああ‥‥じゃなくて、ええ」
 鈴香のほうも、慣れない口調で話すのに苦戦している。由美はおっとりした雰囲気とは裏腹に意外と鋭いのだが、これでは由美でなくとも様子がおかしいことに気付くだろう。
「鈴香ちゃん、どうしたの?」
「どうって‥‥別に何もない、ですわ」
「でも」
 由美がさらに何か訊こうとしたところで、いきなり横から邪魔が入った。
「へへ、可愛い女の子が2人で寄り道かい? どうせなら俺たちと一緒にお茶でもしようぜ」
 見るからにチャラチャラした雰囲気のナンパ男だ。しかも1人ではなく3人。みんな下心丸見えのにやにや笑いを浮かべ、ゆっくりと近寄ってくる。
「いい店知ってるんだよ。な、いいだろ?」
「嫌っ‥‥」
 由美はすっかり怯えた様子で鈴香の後ろに隠れるが、ナンパ男は無理やり由美の腕を掴んで引き止めようとする。それを見た鈴香はついカッとなって、充の口調が出てしまった。
「やめろ、この野郎!」
 しかし外見はあくまでも美少女なので、ナンパ男からすれば「可愛い顔して必死に虚勢を張ってる」くらいにしか見えないらしい。
「女の子がそんな乱暴な言葉でしゃべっちゃいけないなー?」
「うるさい! 俺は急いでるんだ、どけよ!」
「何をそんなに急いでんだ? 用事なら俺たちが手伝ってやるぜ」
 駄目だ、この姿では何を言ってもなめられてしまう。そう悟って、鈴香は悔しげに歯噛みした。強行突破しようにも相手は3人、しかも由美も連れて逃げなければならないので、圧倒的に不利だ。
 さて、どうしたものかと思ったその時‥‥
「ちょっとあんたたち、何してんのよ!」
「ぐっつーーーー」
 威勢の良い声が聞こえたかと思った途端、男たちのうち1人が前に倒れ込んだ。突如現れた少女が背後から思いっきり飛び蹴りを食らわせたのだ。その少女を見て鈴香は思わず叫ぶ。
「彩!」
 それは充の妹、彩だった。鈴香はいつも「彩さん」と呼んでいるのだが、今はそんなことを気にしている余裕はない。
「鈴香さん、こっち!」
 言われるままに、鈴香は由美の手を引いて逃げ出した。
「あ、待て、逃げるなぁっ!」
「誰が待つかっ!」
 ナンパ男に怒声を浴びせる鈴香を見て、由美がぽそりと零す。
「なんか充さんみたい‥‥」
 鈴香はぎくりとしたが、今はとにかく逃げることに専念して誤魔化すしかなかった。


 ようやくナンパ男から逃げ切ったところで、鈴香たちは充と合流した。
「どうだった?!」
「いえ、全然‥‥」
「まぁ、俺としちゃあ戻らなくてもさしたる問題は・・・・」
「大ありですわよっ!」
 言い争う2人を、彩は訝しげに、由美は心配そうに見つめる。
「お兄ちゃん、喋り方変だよ?」
「鈴香ちゃんもさっきから様子がおかしいですよ」
「そ、それは‥‥」
「しまった、つい地が‥‥」
 もはや隠そうと思って隠し通せるものでもない。こうなったら本当のことを話すしかないか‥‥2人が同時にそう考えた瞬間、異変が起こった。魔法の光を浴びた時と同じ、軽い目眩。そしてそれが治まった時――
「あ‥‥元に‥‥」
「戻った!」
 どうやら魔法の効果が切れたらしい。充は充に、鈴香は鈴香に、しっかり戻っていた。
 自分が自分であるということの、なんと素晴らしいことか! 思わず2人は普段の自分たちの関係も忘れ、手に手を取り合って喜んでいた。
 ぱちぱちぱち。
 そんな2人を祝福するかのように、空から拍手が降ってくる。
「愛の奇跡ですわ〜」
「お前はっ!」
 見上げると、ミーメが何事もなかったかのような顔で手を叩いているではないか。それを見て2人は我に返り、乱暴にお互いの手を振りほどいた。
「何が愛の奇跡だ! こっちは大変だったんだからな!」
「そうですわ! どうせならもっとマシな魔法はなかったんですの?!」
 散々責め立てられ、ミーメはわざとらしくゴホンと咳払いをひとつ。
「‥‥これも全部わたしの深慮遠謀の上のことですわ〜。どうです? 相手自身になってみたら、お互いのことが今までより良く解りましたでしょ?」
 深慮遠謀、などと言っている割には、明らかに視線が泳いでいる。
「にゃにが深慮遠謀ですかい。軽佻浮薄って言うんですよ」
 呆れた様子でアルケがツッコミを入れるが、ミーメは軽やかにそれを無視した。
「こいつに目を付けられてのが運の尽きって奴だよ、お2人さん! まぁ元に戻ったんだからいいじゃねぇか! クワァーッ!」
「やかましいボケ鴉、ちったあ黙ってろにゃ」
「ケッケッ、やなこった」
 などと漫才を繰り広げる使い魔2匹を引っ掴んで、ミーメは充たちに満面の笑顔を送る。そして
「それではお2人とも、これからも仲良くしてくださいね☆」
 無責任に言い残すと、最初と同じように脱兎の如く飛び去ってしまった。
「逃げたな‥‥」
「逃げたわね‥‥」
 忌々しげに魔女の後ろ姿を睨みながら、見事にハモる充と鈴香。2人は顔を見合わせ、ほんの少しだけ頬を染めるが‥‥
「ま、真似しないで欲しいですわ!」
「馬鹿、お前が勝手に同じこと言ったんだろ!」
 すぐに元の調子に戻り、ぷいっと顔を背けてスタスタと別方向に歩き出してしまった。
「ああいう言葉遣いする鈴香さんも、新鮮でよかったけど」
「やっぱり、2人にはこっちのほうが似合ってるかも?」
 彩と由美も顔を見合わせ、苦笑を漏らす。


 ドタバタの大騒動もどうにか片付き、どうにか元の日常に戻った充と鈴香は、翌日からもまたいつものように他愛もない喧嘩を繰り広げるのでした。
 めでたしめでたし‥‥?




−fin−