終わる世界UNINSTALLアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 葉月十一
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 やや難
報酬 3.7万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/20〜07/24

●本文

 四方を白い壁が囲むだけの何もない部屋。その中央に一人佇む少年を前に、僕らはただワケも分からず困惑するだけだった。
 部屋に集まっているのは僕ら八人の少年少女。見たところ大人は一人も存在しない。
 どうしてこんな場所にいるのか。誰もが戸惑い、怯えている。
 そうか、これは夢だ。夢なんだ。そうさ夢に決まってる。夢、よね。
 誰もがそう思おうとして――だけど、振り向いた少年の言葉に誰もがその試みを否定された。
「――――やあ、ようこそ。今回選ばれたのは君達というわけか」
 純真無垢で無邪気な笑み。
 だけど今の僕らには、それはどんな表情よりも恐ろしく見える。
「言っておくけど、これは夢じゃないからね。君達はその身体ごと、今この場所にいるんだから」
 ざわり、と空気が揺れる。
 いったいどうして‥‥?
 疑問の声は、すぐに返された。
「君らは選ばれたんだ。この世界の滅びを防ぐ救世主として」
 どんな希望よりも深い絶望の言葉で。
「この地球は、もうすぐ滅びを迎える。それは今を生きる君達の方がよく理解出来るはずだよ」
 環境破壊。大気汚染。各地で起きる異常気象。様々な種の絶滅。
 並べられた言葉は耳に痛いものばかり。
 確かに少年の言うとおりかもしれない。人類が今まで行ってきた行為の数々は、いつ地球を滅ぼしてもおかしくないものばかり。
 だけど、僕らに何が出来る? まだ子供の僕らに。
 そう反論すると、少年は「だから君達が選ばれたんだ」ともう一度告げた。
「地球だって黙って滅びを待つのは嫌なんだよ。だから、世界中の子供達から無作為に八人を選び、なんとか滅びを防ごうとしてるんだ」
 君達を選んだのは地球。
 そして、君達の役割は――戦う事だ。
 えっと驚く僕らを気にかけることなく、少年は淡々と説明を始める。
 彼が差し出したのは、八枚のカード。そこには1から8までの数字と、それぞれ異なる武器の絵柄が書かれていた。
「そこに書かれてる武器で君達には戦ってもらうよ。大丈夫、ただカードに念じるだけでいいから。勿論、多少のバリエーションは可能だから、君達の自由に創造してもらって構わない」
 淡々と、笑みを浮かべながら説明を続ける少年。
 こちらからの質問をまるで意図的に避けているかのようだったけれど、その時の僕らには困惑の方が先にあって気付く暇すらなかった。
「当然戦うからには敵が必要だよね。ああ、心配しなくてもいいよ。別に君達同士に戦わせようって訳じゃないから。君達が戦う相手は――そうだね、例えるなら『滅びの獣』ってとこか」
 滅びゆく地球を襲う数々の現象。それを具体的な獣のような存在に具現化したものだ、と少年は言う。
 鳥のように飛ぶものであったり、動物のように地を駆けるものであったりと形状は様々だが、一つだけ言えることは、全ての獣が本能的に破壊を繰り広げてるということ。
「地球を蝕む外敵みたいなものかな。とにかくそれらの獣を全て倒せば、今回の滅びは免れるって寸法だ。ま、言ってみればゲームみたいなものだね。どうだい、簡単だろ?」
 事も無げに少年は言う。
「たったそれだけで君らはこの世界の『救世主(メシア)』になれるんだ」
 地球を救う救世主――確かにゲームのような言葉の響きに、僕らはさっきまで困惑すら忘れて少年が差し出したカードを手に取った。
「よし、それじゃあ始めようか」
 少年が指を鳴らす。
 すると、一瞬にして場面が転換した。先程までの白い部屋ではなく、そこは――僕らが見慣れたとある都市。
 驚く間もなく、轟く咆哮とともに『滅びの獣』が迫ってきた――――。

 ――さて、今回の『救世主(メシア)』は誰になるかな‥‥。


●募集する配役
○集められた少年少女 8人
 男女の性別に人数制限はありません。
 ただし、年齢は13〜18歳の間に設定して下さい(参加を制限するものではなく、役柄上の設定だけです)。
 役柄の設定に関しては自由です。
 それぞれの間柄も顔見知りやまったくの見知らぬ他人など、自由に決めていただいて構いませんが、血縁関係(兄弟、従兄弟など)は無しの方向でお願いします。
【設定に必須な項目】
役名/年齢(13〜18)
数字(1〜8)/武器(後述の設定から選択):重複は無し
救世主(メシア)に選ばれた際の言動(希望と絶望)

●設定
 世界はこれまでに何度も滅びの危機を迎えています。
 そのたびにそれを回避するための八人の少年少女が選ばれてきました。選ばれた彼らの役目は、具現化された『滅びの獣』を打ち倒すこと。
 選択出来る武器は以下の八つ。
 【剣】オーソドックスな前線で斬ることを主体とする
 【槍】直線の鋭さとリーチの長さが有利
 【斧】重量があって一番破壊に優れている
 【弓】後方からの遠距離攻撃
 【鞭】動きを封じるなどしたトリッキーな攻撃が可能
 【鎖】自在に操ることであらゆる方向から攻撃出来る
 【牙】拳を凶器とした肉弾戦を主とする
 【玉】念じることで様々な魔法を放つ
(ここより下の設定はPC情報になりますが、演じる世界では知らない設定になります)
 戦いの結果、滅びは回避され、一人の『救世主(メシア)』が選ばれます――文字通り『全てを背負う者』として(『救世主(メシア)』に選ばれる者は事前に数字で設定しています)。
 選ばれた者は、全ての滅びとともに世界から削除(アンインストール)されます。痕跡もなにも残さず、周囲からは最初からいなかったものとして扱われます。
 そして、残った者達は再び元いた場所へ戻ります。ただし戦いの記憶は断片でしか思い出すことは出来ません。
 なお、OP中に登場する少年は、NPCである一哉が演じます。

●今回の参加者

 fa0531 緋河 来栖(15歳・♀・猫)
 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa1772 パイロ・シルヴァン(11歳・♂・竜)
 fa2573 結城ハニー(16歳・♀・虎)
 fa4181 南央(17歳・♀・ハムスター)
 fa5313 十軌サキト(17歳・♂・一角獣)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)
 fa5810 芳稀(18歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●8――冴場きらら
 迫り来る異形の存在――『滅びの獣』と、あの少年は言った――を前に誰もが射竦む中、私はひどく高揚した気分だった。まるで自分の中にあった何かが解き放たれたかのように。
 身体が動き、殆ど無意識に私は飛び出した。手の中のカードが光って拳に巻きついていくのを、驚くよりも当然のように感じてその拳を振り上げる。
「私の牙が光って唸る、お前を倒せと輝き叫ぶ! 必殺! 白虎閃光掌ぉぉっ!」
 前もって用意したかのような口上を唇から放ち、神速のスピードで私はそれを撃破した。
 大財閥の令嬢として生まれ、あらゆる贅を尽くした生活。それが当たり前だと思った日々。
 だけど、この衝動はどんな日常よりも私を昂ぶらせる。
「‥‥すげぇ」
 感嘆の声を上げたのは‥‥確か翔太くんだったわね。
 他の仲間は茫然と眺めている――いいえ、きっと私を崇め讃える者達ね。にこりと笑みを浮かべた唇は、きっと誰よりもセクシーに映るに違いない。
「ほら、何をしてるの! 四の五の言っても仕方ないでしょ? サッサと戦いなさい」
 私だけに戦わせようなんて、ズルをしたらダメよ。
「よーし、かかって来な! 勇者様が魔物を全て退治してやるぜ!」
 興奮気味の翔太くんが、勢いきって突っ込んでいく。
 あら、可愛いわね。そうよ、そうやって私の為に戦うのが勇者よ。精々頑張りなさい。
 そんな風に他の仲間達にも発破をかける間に、すぐさま新手が姿を見せた。
 今度は亀のような化物。いいわ、そんなヤツ私がすぐ倒してみせるわ!

●7――香月巴
「‥‥迷惑な話」
 溜息とともに私は小さく呟く。生憎と襲ってくる敵に皆夢中で、その声は誰にも届かない。
 降って沸いた突然の選択に、私は憤ることなくただ諦観する。
 結局誰でもいいって事じゃない。だいたいあの少年は一体何者だったの?そんな疑問が脳裏を過ぎりながらも、敵の行動を冷静に分析する私がいる。
「彼は耀くん、だったかしら? そして向こうで突っ込んでいるのは、きららさん‥‥で、こっちがああ、ね」
 重い斧に振り回される耀くんや、拳を振るうきららさんの動きを目で追う。他の仲間達の動きも視野に入れた私は、脳内で目まぐるしく動く計算式のもと、手にした尖状分銅鎖を投げつけた。
 鎖が予想通りの放物線を描いて『獣』達を撃ち払う。
「凄いですね」
 琴と名乗った少女が私の動きに感嘆した。
「別に。大したことじゃないわ」
 にこりともせず答える私に、彼女は少し変な顔をする。
 おかしな人。こんな計算、当たり前じゃない。
 それに向こうの動きだってあまり動物的な動きじゃない。時々、人間みたいな動きをすることだって――そこまで考えて、私は一瞬動きを止めた。
「巴さん? どうかしました?」
「‥‥いいえ、なんでもないわ。ほら、そっち来たわよ」
「あ、はい!」
 ‥‥考えすぎよね。相手も同じ人間だなんてことは。

●6――吉村耀
 力任せに振り下ろした斧が、『獣』を文字通り真っ二つにした。
「おっしゃ、やっと当たったぜ!」
 俺はようやく敵を倒せたことで、思わずガッツポーズを取った。
 斧の予想以上の重さに最初は振り回されちまったが、ここにきてようやく使い方を覚えたっつうか。ま、これも無遠慮に突っ込んでいった俺を叱責してくれたこまちゃんのおかげかな。
「吉村君、前見て前!」
 そうそ、こんなふうに‥‥て、おいおい新手かよ!
 寸前でかわしたそれを一刀両断したのは、高麗南――俺の恋人こまちゃんだ。ホントは南って呼びたいんだけがな。
「もう‥‥何やってんのよ」
「わりいわりい。いや、やっとこさ敵を倒せたもんだからな」
「本当に‥‥心配させないで。誕生日、一緒にお祝いしてくれるんでしょ?」
「お、おう」
 う、やっべぇ。思わずドキッとしちまったぜ。
 そう、もうすぐ彼女の誕生日。俺はそれを期に呼び方を変えようと考えている。ま、あわよくばついでにその場で初キッス! なんてのもいただいちゃったりして。
「吉村君?」
「はっ、あ、いや、なんでもねえ」
「そこ、何をイチャツイているの! さっさと動きなさい!」
 やっべ、レザースーツの彼女がお怒りだ。
「‥‥んじゃま、とっとと倒してもとの世界に戻るぞ!」
「うん」
 舞い上がってた俺は、だから気付かなかった。
 この後に待ち受ける運命の残酷さに――。

●5――琴
 力強く弦を引き絞り、一点目掛けて矢を放つ。大気を貫く一閃は、私の狙い通り上空を飛ぶ鳥のような『獣』を射抜いた。
 瞬間、私の表情が曇る。
「本当は‥‥弓を殺生の道具に使う事は好ましいことではありませんが‥‥」
 痛む胸。
 だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
 世界の存続か、滅亡か。自分達の肩に背負わされた重圧は、私の精神を殊の外研ぎ澄ませる効果を発していた。自分でも芯から湧き出る力を感じる。
 それが、与えられたカードによるものなのかどうかはわからないが、少なくとも黙って見ているだけのジレンマを抱えなくても済む。
「向こうよ」
「はい!」
 同じ後衛に位置する巴さんの指示どおり、私は弓を射る。放たれた矢は的確に急所を突き、彼女の鎖が悉く薙ぎ払っていく。
 突如上がった土砂の向こうでは、江玲奈さんが土で出来た竜を操っている姿が見えた。その他にも前線で戦う仲間達を視野に収めながら、私は私に出来る攻撃で加勢を続けた。
 選ばれた救世主として――地球を滅びから救う為に、私は死力を尽くしましょう。

●4――ヴィクター・アダム
「うわっ?!」
 襲ってくる『獣』の爪が目前に迫るのを、俺は思いっきり飛び上がって後ずさる。上手く逸らしたと思ったのに、向こうは執拗にこっちを狙ってきた。
 くそっ、なんで俺がこんな事しなくちゃいけないんだよ!
 苛立ち混じりに振るった双鞭が、鈍い音を立てて『獣』の体を切り裂いた。
「お、やるじゃねえか」
 斧を振り回す耀さんが声をかけてきたけど、俺は別に気にもせず再び彼より一歩下がった。
「なんだよ、男ならもっと前出てやっちまえよ」
「‥‥俺はここでいいんだよ」
 他人なんか関係ない。俺は自分が生き残れたら、それでいいんだよ。
 こんなトコ、さっさと抜け出したいんだよ。
「吉村君は前に出過ぎだよ。もう少し皆で一緒に‥‥ヴィクター君も協力しよ」
 彼の恋人の南さんって彼女が、俺に向かって手を伸ばしてきた。
 なんだってそんな事しなきゃならなんだよ。別に他人がどうなったって関係ないだろ? むしろそっちが犠牲になって俺が助かるなら、その方がずっといいよ。
 そう思った瞬間、胸の奥がズキリと痛んだ。
「ヴィクター君」
 もう一度、南さんの声が届く。彼女が俺を見てにこっと笑った。
 ――きっと、ただの罪悪感。そうに違いない。だからその痛みを誤魔化すみたいに、俺は襲い掛かってきた敵目掛けて、勢いよく鞭を振るった。

●3――麻生江玲奈
 浮遊する玉に向かって、私はたた両手を翳す。そうすることで、まるで違う自分が現れたように感じる。
 実際、今の私の口から飛び出す言葉は、普段と違って酷く抑揚のない命令。
「‥‥焼き尽くせ」
 炎の竜が巻き付いた『獣』は、断末魔の声とともに焼き尽くされた。それは、私の周囲一帯も同様で。
 まるで無残な爪痕を残す焼け野原みたいね。
「本当にもう‥‥予定がメチャクチャだわ。早く終わらせて帰りたいよ」
「ふふん、そっちも終わったようね」
 何時の間にか前線にいたきららさんが戻ってきていた。よく見れば、他の人達もこっちに来るみたいね。あんまり周囲を気にしてなかったら気付かなかったわ。
 私は眼鏡を一度かけ直してから、もう一度周囲を見渡した。
「それじゃあ、これで全部終わり?」
「‥‥だといいのですが」
 弓を抱え込むように持つ琴さんが、少し心配そうに眉根を寄せる。
 そんな彼女に対して、巴さんが冷淡に呟いた。
「どうやらもう一ラウンド‥‥いえ、最終ラウンドがあるみたいかしら?」
 その視線の先を私も追うと、そこにはグロテスクな巨人の姿があった。仲間同様、私も思わず息を呑む。一歩進むごとに、大地が腐食していくのが見える。
 そう、あれが最後の敵ってわけね。なるほど、確かに今の地球の現状を具現化してるわ。
「だったら‥‥さっさと倒して終わりにするわよ!」

●2――翔太
「いっけーっ!」
 思わぬジャンプ力を披露して、俺は巨人の脳天から槍を突き刺した。まさかゲームみたいにここまでジャンプ出来るとは思ってなかった分、感動もひとしおだ。
 すっげーじゃん。この槍があれば、なんだって出来るぜ。
「さっきまでで、あんなに倒したんじゃん。そうなるとけっこう経験値入ったよな。レベルアーップって音楽なんないのかな?」
 ゲームのような世界をマジで体験してる興奮は、未だ続行中。そんなもんだから俺は、他の連中の事なんか眼中になかった。
 ふと視界に入ったのは、南って人が何かを叫ぶ姿。
 が、次の瞬間。俺は巨人が振り上げた腕に、思いっきり吹き飛ばされたんだ。そのまま身体が地面に投げ出される。
「ぐはっ!?」
 いってぇー、なんだよこの痛さ‥‥ま、マジかよ!?
 やべぇ、なんか意識が朦朧としてきたじゃん。なんか足音がこっちに近付いてくるのが聞こえる。
「江怜奈さん!」
「守ってっ!」
 弓の姉ちゃんと‥‥これは、派手に魔法ぶっ放してた姉ちゃんだな。
 ちぇっ、これじゃあ格好悪いよな。ま、ただのゲームにハマッってる中坊のガキが、救世主になんかなれっこないって事かぁ。
 ちくしょー。もう少し、遊びたかったんだけど‥‥ま、いっか。
「こまちゃん、トドメだ!」
「はいっ!」
 なんだ南さんがトドメを刺すのか。そう思った直後、俺の意識はブラックアウトした。

●1――高麗南
「こまちゃん、トドメだ!」
「はいっ!」
 吉村君に促されるまま、私の身体は宙を舞い、剣は弧を描いて一閃する。その刃はものの見事に巨人の首を真っ二つに切り裂いた。
 倒れる身体が派手な音を立てるのを、私は興奮冷めやらぬ状態で耳にする。
 やったの? 私が?
「おーすげぇ! やる時はやるもんだな」
 抱きつかんばかりに喜ぶ吉村君に、私はいまだ茫然としていた。他の仲間達も次々に歓喜の声を上げていく。
 ちょっと待って。確か翔太君が大怪我をした筈――そう思った時、突如割って入る静かな拍手の音。
「――少年」
 巴さんの鋭い声。ハッと見上げると、そこには宙に浮いた少年の姿。私達をここに招いた張本人。
「おめでとう、高麗南さん。今回はあなたが『救世主』に選ばれたみたいだね」
 にこりと微笑む彼に、私は得体の知れない恐怖を感じた。
 何故だろう。ようやく普通の日常に帰れるというのに。こんな風に戦わなくてもいい世界に、やっと帰れる筈、よね?
「『救世主』に選ばれたって‥‥いったいどういうこと?」
 何も言えなかった私に代わって、琴さんが少年に問いかける。その答えを――私は聞きたくなかった。
「簡単な話さ。『救世主』に選ばれた人間は、全ての『滅び』を背負ってこの世界から消える。そうする事で地球は滅亡を免れるのさ。これがこのシステムの純然たるルールだ」
「‥‥う、そ‥‥ッ!?」
 私が、消える? 消えるってどういうこと?
 そんな風に愕然とする中、色々な皆の声が聞こえた。自分じゃないと知って安堵する声。どうして私じゃないんだと嘆く声。
 そして。
「消えるって、こまちゃんが死ぬって事かよ!!」
 激昂する声。
「違うよ。文字通りこの世界から弾き出され、削除されるんだ。記憶も、歴史も、何もかも――そう、最初から存在しなかったようにね」
 絶望が目の前を暗くする。私は吉村君の方を振り向いて、ただ小さく呟いた。
「いや‥‥っ」
「そういうわけで今回の選別はこれで終わりだ」
 告げられた最終宣告。ただ呆然と立ち尽くす私に、彼が手を伸ばそうとして。
「みな――――」
「ご苦労さま」

 ――――ブツッ。

●0――日常
「――ッ!」
 ハッと目を覚ました翔太は、すぐに周囲を見渡した。そこはいつもと変わらぬ自分の部屋。
 思わず安堵の溜息をつく。
「やっぱ夢だったんかな?」
 と、思った次の瞬間、それは綺麗さっぱり霧散していった。
 江怜奈は机の上でハッと目を覚ます。
 慌てて時計を確認し、すぐに学校へ行く準備を始めた。彼女の中には、既に受験のことしか頭にない。
 変わらぬ日常を送ることに安心するヴィクターとは対照的に、琴は何故か罪の意識に苛まされていた。その理由もわからぬまま。
 巴もまた、すでに受験だけを見つめる日々に戻る。ただ目の前の現実を彼女は受け容れるだけだ。
 きららは相変わらず傅く僕を引き連れて、優雅な毎日を送っている。常に付き纏うどこか物足りなさを感じながらも。
 そして。
「――――みッ!」
 気が付いたら道端で、耀は手を伸ばしていた。すぐに引っ込めたが、恥ずかしさで顔が赤くなる。
 なんだってこんなところで俺は‥‥そう考えた途端、今度は涙が一筋流れる。
「あ、あれ? なんで‥‥」
 次から次へと溢れる涙は、しばらく止まる事がなかった。

●キャスト
 高麗南:南央(fa4181)/救世主
 翔太:倉瀬 凛(fa5331)
 麻生江玲奈:緋河 来栖(fa0531)
 ヴィクター・アダム:パイロ・シルヴァン(fa1772)
 琴:姫乃 舞(fa0634)
 吉村耀:十軌サキト(fa5313)
 香月巴:芳稀(fa5810)
 冴場きらら:結城ハニー(fa2573)