IDOL Audition【欧州】ヨーロッパ
種類 |
ショート
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担当 |
葉月十一
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
フリー
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難度 |
やや難
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報酬 |
不明
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
08/13〜08/17
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●本文
●次世代アイドル募集
ハイパープロジェクト――通称ハイプロ――のオフィシャルホームページ上で、その告知は発表された。
女性アイドル達を中心とし、かつては勢いに乗っていたそのプロダクションも、最近ではアイドル達のジャンルの細分化に伴い、徐々にだが翳りが見え始めていた。
その打開策として練られたのが今回のオーディションだ。
『Global Artistic New Generation IDOL』――通称『GANG』。
すなわち、『Global(世界的)』で『Artistic(芸術的)』な『New Generation(新世代)』のアイドルを発掘しようというプロジェクトだ。そのため募集も日本――アジアだけに留まらず、欧州、中東、南北アメリカにまで広く手を広げた破格の募集だ。
そして、各会場ごとの予選を突破した1〜2名の者達が、本選を経てGANGのメンバーとして選ばれる形となっている。
その応募要項は以下の通りだ。
○GANGオーディション募集要項
中学生以上の歌う事が好きな者で、プロアマ及び男女問わず。
プロとしての活動があれば簡単な経歴を明記すること。
各会場ごとに歌詞の一節が提示されます。それに自分なりの歌詞を付け加えて予選会場で歌って下さい。その際、曲に対するイメージや曲調、歌い方などは確実に明記すること。
今回のオーディションに対するあなたの意気込みをどうぞ。
なお、本選を突破して見事選ばれた皆様は、職業が『GANGハイプロ』となります事をご了承下さい(予選の段階では職業欄は変更しません)。
○歌詞【欧州会場】
So FREEDOM 負けないで 前だけを見つめて
きっと叶うはずだと信じた日々を忘れないで
So FREEDOM 躓いても 諦めないで
歩いてきた道は決して間違いじゃないはずだから
審査・プロデュース――須崎渉(fz0034)
●リプレイ本文
●最終予選
ヨーロッパ会場に集まった参加者も、最終的に六名へと絞られた。
が、そのうちの一名が棄権したため、結果として五人で本選への出場権をかけて競い合う事となる。
それぞれのプロフィールを眺めながら、須崎・渉(fz0034)は控え室での彼女達の様子をじっと眺めていた。どの顔にも一様に緊張の色が見て取られ、彼は口角の端を軽く上げる。
「よし、それじゃあ始めるぞ。最初のやつ、入れ!」
それが、最終予選の合図となる――。
●御子神沙耶(fa3255)――和の心
「御子神沙耶と申します‥‥」
スタジオに入り、私は深々とお辞儀をした。
ふう、やはりこういう場は緊張しますね。私自身歌があまり上手ではないと自覚していますから。
でも、歌う事は好きですから、精一杯頑張りたいです。
「――まだ学生ですが、一応雅楽師をしています。欧州には、音楽留学という形で来ているのですが、その間にもいくつかお仕事を頂いて生活していました」
プロ、と呼ぶにはまだまだですけど。
心の中で私はそう付け加える。
そこまででインタビューが終わってホッとしたのも束の間、すぐに歌に入ると言われて、私は急いで姿勢を正す。流れてきたのは、自分の持ち味を生かそうと和のテイストでアレンジされた曲だ。
『夢の続きを見ようと 微睡む明け方
光り輝く 夢の世界
忙しい現実を 忘れるために
自由と希望を憧れと平和』
最初はゆっくりと。
丁寧に歌い上げて、次へと繋げていく感じで。
『追い求めるために 毎日生きる
夢を現実に 叶えるために――』
そこまで歌った私は一旦息を継ぎ、サビへ向けて一気に明るく歌い上げる――こんな感じでどうでしょうか?
●セシル・ファーレ(fa3728)――キセキ
髪を結い上げた今日の私は、極普通のカジュアルファッション。やはりこういう場ですから、等身大のセシルを見せないと
「おはようございます。セシルです。どうか今日はよろしくお願いします」
挨拶の後は幾つかの質問。
それに私は素直に答えていく。
「今は主に女優方面で活動してます。ですが、いずれは歌い手として、人々に共感してもらえる歌を歌いたいです」
そのために今は、音楽系の学校へ通って、学業の方に専念していますから。
「セシル、歌が大好きです。今日だけでなく、どうかこれからもお願いします!」
「それじゃあ歌ってみてくれ」
「――はい」
私は言われるままヘッドフォンを付けると、同じタイミングで曲が流れてきた。それは私が指定したややしんみりしたスローテンポな感じで。
『そんなまさかね 思いもよらなかったよ
何気ない一歩が はじまりだなんて
君に会いたくて 君の声を聞きたくて
僕は時間(とき)を超えた』
私がイメージしたのは、予期せぬ『サヨナラ』。
精一杯心情を織り込んで、誰ともなしに訴えるようにと、私は一音一音はっきりと声を出してみた。
『同じ夢を追い続けた 二人の思いは消えはしない
その手を伸ばせば 僕あここにいるよ――』
サビに向けて曲が徐々にテンポアップしていくのを、私もだんだんと明るくなるように歌ってみる。
そして。
『――信じた未来で 軌跡は重なる‥‥』
私の歌で誰かを励ませれば――そんな感じですね。
●煌姫 龍華(fa4464)――熱意
ハイプロのオーディションを受けられるなんて!
それも、予選の最終日まで残っていられるなんて嬉しいですね。こういうチャンスは滅多にないから、存分に楽しまないと。
私自身はどっちでも良いけど、やはり折角だから受かってみたいですけどね。
「私はただ自分の魂を歌うのみです。結果は後から付いてくるものですから」
私の意気込みを言葉にすると、こんな感じでしょうか。
衣装だってそんな気持ちに合わせて、真紅のゴスロリパンク風に仕上げてきたのですから。色々と見えそうな――というか、見せてるんだけど。
主体として、気にしないで動けば問題ないですよね。
「それじゃあ歌ってみて」
「はい」
流れてきたのはアップテンポなロック調な曲。自然と身体が動きがちだけど、今回は踊りは少し控えめにね。
『どんな困難が 立ち塞がっても
あの日の思いと 言葉を胸に』
歌詞に込めたのは、どんな困難にも負けないというメッセージ。
作詞は本職じゃないので、思いをぶつけるように私は激しく歌っていく。
『目指す光の先へ ただ進み続けて
どんな暗闇の中も 走り抜け――!』
少し誤魔化すような感じでしたけど、どうでしょうか?
●榛原絢香(fa4823)――自由の行き先
可愛いピンクのサマーワンピースを着た格好のあたしが、姿見の鏡に映し出されている。
うーん、こんな感じで大丈夫かな?
「あたし、今まで女優業に専念していたので、音楽に関する経験は殆どないです」
そう元気よく答えたあたしに、須崎さんが苦笑を零してるのが見えた。まあしょうがないよね、正直素人同然なんだし。
でも、アイドルとして上を目指したいって気持ちは誰にも負けないつもり。
だからこのオーディションを受けたんだから。
「だけど、色んな人と色んなことを感じて、それを吸収したいんです。そうすれば、もっともっと視聴者の皆に素敵な笑顔を返していけるから」
そう言って、あたしはとびっきりの笑顔を浮かべてみる。ちょっと緊張してるかもしれないけど。
「だから、どうかよろしくお願いします」
『So FREEDOM 負けないで 前だけを見つめて
きっと叶うはずだと信じた日々を忘れないで――』
前奏なしで最初から真っ直ぐ声を出してみる。歌い上げたところで流れてきたのは、バラード調だけど少しアップテンポのメロディ。
イメージしたのは、縛られていた自分が徐々に解き放たれて飛び立つ、そんな感じかな。
『いつからだろう 行き先見失って
見つめているのは足元ばかりで
踏んでいるのは自分の影? それとも』
歌唱力には全然自信ないけど、その分演技力でカバーしてみるよ。少しトーンダウンした時、少し視線を伏せて負けそうな気持ちを表現、なんてね。
『絡まった茨を 断ち切るのは自分自身
果てしない青空に気づかされるのも今更
だkど何もかも手遅れじゃないよ It’s all right!』
よし、こっから一気にラストまでリズムに乗って勢いつけて。
『So FREEDOM 追いかけよう 明日への翼
戸惑いの軌跡さえもきっと未来へ繋がる軌跡――』
上手く歌えたかな? とにかく笑顔だけはずっと忘れずにね!
●キム・ヘヨン(fa5245)――恋人のため
「アニョンハシムニカー、韓国から来ましたキム・ヘヨンです。今日は宜しくお願いします」
私は緊張した面持ちで挨拶をする。
シンプルなデザインの淡いブルーのワンピースは、少しでも好印象がもたれるようにと準備したものだ。
世界を回るオーディションと聞いていましたら、ひょっとしたら恋人がどこかで聞いているかもしれない。そんな期待を抱いて参加してみたのです。
――少し動機が不純ですね。
「歌手としての経歴は殆どありません。バーで歌っていたくらいです。後は‥‥一度チャリティーコンサートに出演させて頂いたことでしょうか」
それでも、一生懸命頑張らせていただきます。あの人がどこかで見ているかもしれませんから。
流れてきたのは緩やかなピアノ曲。あくまでも声を引き立てる感じの方が、私にとって歌いやすいから。
『いつまでも一緒と誓った私達
どこまでも共に手を繋ぐと言った貴方
けれど歩む道は今は違う お互いの夢を追いかけ離れ離れ』
ウィスパーボイスで、恋人に語りかけるような感じを演出してみます。
情景が少しでも浮かんでくれればいいのだけれど。
『泣き虫‥‥泣き顔はブスだな
って笑う貴方の顔と声 目を閉じればすぐに浮かぶ
いつも一緒に 今は姿は見えないけれど きっといるよね
どこまで共に 離れ離れだけど 心は繋がっているわ――』
歌詞に自分を入れてみたせいか、歌っていた思わず涙が零れそう。
けれど、ここからサビだからきちんと優しく歌わないと。
『――夢を信じて また遭う時 あの台詞を言ってね』
零れた涙が恥ずかしくなって、私は歌い終わった途端頭を下げた。
「カムサハムニダー」と誤魔化してみたけど、多分バレてますよね。
●最終選考発表
「それでは今回の最終選考を発表する‥‥が、以前の会場の時も言ったが、落ちた者もそれぞれの個性が光っていた事を忘れるな」
渉の言葉がテレビカメラの向こう――控え室で待つ参加者に向けて放たれる。当然、この映像はハイプロのHP上にも流れていた。
「それでは発表する――」
固唾を呑んで見守る五人。
その最初に呼ばれた名前は。
『――一人目、セシル・ファーレ』
「え‥‥私、ですか?」
長いブラウンの髪を揺らし、驚くセシルに次の渉の言葉が届く。
『今回残ったメンバーの中では、頭一つ抜けた歌唱力に期待して選んでみた。おめでとう』
「あ、ありがとうございます」
テレビ画面の向こうであるにも拘らず、突然の祝辞に彼女は慌てて頭を下げてお礼する。その様子がおかしくて、他の者達から苦笑が洩れる。
『――二人目、こちらは安定した歌唱力と音楽センスを持っていたな――キム・ヘヨン』
「‥‥っ」
声もなく驚くヘヨン。
が、すぐに気を取り直して彼女も同じようにテレビに向かって頭を下げた。恋人に会えるかもしれない。そんな想いを胸中に抱えて。
そして。
『あと一人。こちらは特に秀でていたわけではなかったが、アイドルとして抜群の笑顔を終始振りまいてくれた彼女を、特別に選考することにした。三人目――榛原絢香』
「うそっ!」
他の参加者の歌の上手さから、まさか自分が選ばれると思っていなかった絢香は、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
急いで画面に釘付けになるが、そこには自分の名前のテロップが表示されている。どうやら夢ではなさそうだ。
「やった! 嬉しい!!」
はしゃぐ彼女の声に紛れ、渉の声が続く。
『今回の選出は、あくまでも本選への切符を手に入れたに過ぎない。それまでは、よりいっそう努力して自分を磨いて欲しい――以上だ』