光と闇の黙示録/断章アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
葉月十一
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
08/22〜08/26
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●本文
●あらすじ
神話の時代より続く光と闇の争い。
それは、決して表には出ない歴史の影で常に繰り広げられてきた。光と闇の加護を受けた『覚醒者』達の手によって。
そして、現代。
闇の『覚醒者』が一人の少年に目をつけたところから物語は動き出す。
平凡な家庭に育った神威暁が、姉・春香とともに考古学者である父・与太郎のいる中東へ訪れた矢先、突然『闇の覚醒者』達に襲われた。『光の覚醒者』の応戦も空しく、春香が連れ去られてしまう。
そして――遺跡崩壊の最中、一瞬だが突如凶悪なオーラを纏う暁。
その後、病院へ入院する暁。そんな彼の元へまるで導かれるかのように次々と『覚醒者』達が集い始める。いまだ目覚めぬ者も、目に見えぬその宿星にいつの間にか手繰り寄せられていた。
やがて、激化する戦いに巻き込まれる形で父親も連れ去られ、失意の中で暁は考え始める。自分の身に起きた様々な出来事を。
無くす記憶、ユメに見る風景、時折感じる郷愁にも似た感情。
まるで天秤のように光と闇を揺れ動く少年の正体を――静音の誘導によって父である与太郎が語り出す。
かつて遭難しかけた彼が迷い込んだ遺跡で見つけた赤子、それこそが暁であると。
「あの子は‥‥鏡――」
光、そして闇の主を宿す存在――その秘密が語られた時同じ頃、導かれるように訪れた遺跡の中で、惨劇は始まる。
ファウストと名乗る『覚醒者』に操られ、そして命を散らした姉を目の当たりにした暁。
だが、それこそが暁の中の『大いなる闇』を覚醒へと導き、その場に居合わせたセシリアの命を容易く奪った。それは『覚醒者』の力を喪失させる事が目的だったが、すでに次の器が用意されていた事に僅かな落胆を覚える暁。
やがて、彼は何処へと姿を消した。
「――さあ、始まりだ」
崩壊の幕開けは、もうすぐ――――。
●出演者募集
ファンタジー映画『光と闇の黙示録』は、子役である一哉主演(役名:神威暁)の連作映画です。
今回は番外編という形で、これまでに演じた配役でのそれぞれのプライベート部分にスポットを当てた構成になります。
映画の内容の構成上、戦い部分ばかりの設定がクローズアップしがちですが、普段は社会の中に溶け込んで生活をしている筈、という事で普段の日常風景を今回は演じていただきます。
時間軸としては序章以前になると思いますが、基本的に四章以前ならばそれぞれ相談によって決めていただきて構いません。また、過去作品に出場していない方でも、「こういう役で出演していた/今後こういう役で出演する」という形で捏造していただいても大丈夫です。
今回募集する役柄は、以下のとおりです。
○『光』/『闇』の『覚醒者』
光の力を操って世界の破滅を防ぐ、もしくは闇の力を操って世界の崩壊を促す者達。
どちらの覚醒者も力の覚醒方法は様々で、事故や戦いに巻き込まれて瀕死の状態から覚醒する者、天から啓示を受ける者、悪の誘惑に飲まれた者、生まれながらの覚醒者など。
覚醒の際、一つの根源から力を得、それに合わせた武器を一つだけ具現化する事が出来る。
■前回までに登場した覚醒者■
『光』サイド:植物(死亡1)、聖火、水、創造、大地(死亡1)、精神(未覚醒者)
『闇』サイド:死、闇、背徳、破壊、悪意、灼熱
○神威暁の家族
これまでに父と姉をPCが演じた。但し、姉は第四章で死亡。
そのため、今回の番外編で演じる場合は、必ず序章以前になる事をご了承下さい。
なお、家族はあくまでも一般人であるため、『覚醒者』にはなりません。
○『光』/『闇』サイドの協力者、その他暁の友人知人等
あくまでも一般人ですが、後々覚醒する者として設定しても構いません。
前回参加者は、そのまま役柄を継続する事が望ましいですが、死亡した事にして新たな役として登場しても構いません。
また前回参加していないからといって、今回覚醒者となれないことはありませんので、気楽にご参加下さい。
【追記】
今回、展開上かなりハードな内容となります。本章までは希望しない限り演じる役が死亡する事はありませんでしたが、次回からはプレイング次第で死亡する展開となりうる事をご了承下さい。
●世界設定
物語は、神話の時代から続く光と闇の争いを、中東を意識した神話に基づいた設定で構成されています。但し、あくまでも映画上の設定として用いられてるだけで、実在するものとは一切関係ありません。
○『光』サイド
光の最高神アフラ・マズダーの守護の元、人々を闇の恐怖から守る為に人知れず戦う者達。長い年月を経て協力者の存在もありますが、戦うのはいずれも覚醒した者達だけです。
なお、覚醒した際の力の源としては、『聖火』『水』『大地』『鉱物』『植物』『精神』『創造』の何れかとなります。
○『闇』サイド
悪神アンラ・マンユの教えに従い、人々に悪徳をばらまいて世界の崩壊を目的とした者達。人々を闇で操り、堕落させ、やがては破滅へ導くためならばどんな手段をも厭わず、その為しばし歴史的大事件を引き起こして世界を震撼させてきた。
彼らの力の源としては、『灼熱』『渇』『破壊』『死』『背徳』『悪意』『闇』からになります。
【追記】
なお、過去に於いて覚醒する者達は光も闇もそれぞれの源となる力と同じで七人だったが、近年は何故か同じ力の根源を持つ『覚醒者』が現れているという。
それが何を意味するものなのか、『覚醒者』達の間では様々な憶測が漂っている。
○宝具
覚醒した際に具現化された武器の総称。
その種類は千差万別で、覚醒者達のイメージでその姿もまた変化する。名称もそれぞれによって異なり、覚醒者達によって命名される。
●リプレイ本文
――くすり、と彼は微笑を浮かべる。
その澄んだ青い瞳に映るのは、喧騒を繰り返す人間の姿。自分の利益のためならば、平気で他者を犠牲にする事すら厭わない、愚かで憐れな生き物。
とある一角では飛び交う罵声による恐喝が。
右を振り向けば、盗みを働く者達の凶行が。
広げられた新聞の中では、今日も誰かが誰かを殺した記事が掲載されている。
「‥‥そう、それが人間の本来の姿ですよ」
もう一度、彼は‥‥ファウストは嗤う。
理性など所詮は幻想、己の欲望に忠実であることこそ真意――幼い頃に聞いた『神』の声を思い出し、確信に似た笑みを口元に刻む。
そしてそのまま、彼の姿は雑踏の中へと消えていった。
●日常
「千歳、こっちよ!」
名前を呼ばれ、彼女はようやくホッとする。
「ご、ごめんなさい。遅れてしまって」
「千歳のことだから、また迷子になってたんでしょ?」
「う‥‥で、でもこの学校、本当に広いから。まるで一つの街みたいに」
からかうような友人の言葉に図星をさされ、千歳は顔を真っ赤にして一応の反論をしてみる。
とはいえ、元々方向音痴である自覚のある彼女。それ以上、言葉を続けることはしなかった。
「そりゃあ、なんてったって世界的規模の製薬会社『ドルゲ』がバックアップにあるからね、この学校」
友人の言葉に、そうね、と返事をしながら、ふと自分を見つめている視線に気付く。
振り返ると、一人の少年がこっちを見ていた。目が合うと、反射的に逸らされてしまったが。
「あ、あの子」
「知ってるの? そういえば最近、このカフェでよく見かけますね」
「何言ってんの。飛び級の天才少年君じゃない」
少年の名は、大伴蝉丸。目の前の友人の説明では、物理の天才で十二歳にして既にこの大学に籍を置いているという。
思わず感心する千歳。
もう一度彼の方に振り向くと、照れているのか少し顔を伏せた様子が子供らしくて初々しい。天才と聞いて少し気後れしてしまったが、こういう場面を見ると年相応な感じがして好感が持てる。
「あ、そろそろ時間じゃない?」
「そうですね。そろそろ行かないと、また遅刻してしまいます」
「千歳が迷子にならなけりゃね」
「もう! それは言わないで下さい」
友人と談笑しながら、千歳は席を立つ。
そのまま、残したスケッチブックに気付かず、彼女らはその場を離れていった。
「――あの人、千歳さんっていうんだ」
聞いちゃいけない、と思いつつ、つい聞き耳を立ててしまった蝉丸は、聞こえてきた彼女の名前を呟いて思わずほわんとした表情になった。
はたと気付いて慌てて引き締めようとするものの、彼女の事を考えるとすぐににやけるように表情が崩れてしまう。
「素敵な人だなぁ」
ある日立ち寄ったテラスで見かけた芸術学科の女性。
その可憐な姿に、蝉丸は思わず一目惚れをしてしまったのだ。今までずっと勉強勉強の毎日で、余所見する暇なんかなかった。この大学へもそのおかげで飛び級で入学出来たのだが。
まさか、そのおかげで彼女に逢う事が出来たのは、未だ十二歳という年齢の少年にとっては、まさに衝撃だった。
そのためここ最近は、暇さえあればついついこのテラスに顔を出すという日々を繰り返していた。
立ち上がって授業に向かうのだろう、そんな千歳の後ろ姿にも見惚れる蝉丸。彼女の姿が見えなくなったところで自分も戻ろうと席を立った。
その時、さっきまで彼女が座っていた場所に忘れ物があることに気付く。
「あれ? これって‥‥千歳さんのスケッチブックじゃ?」
蝉丸が手に取ると、そこには確かに彼女の名前が書いてあった。少年の記憶の中でも、彼女がいつも大切そうに持ち歩いていた事を思い出す。
一瞬、会いに行く口実が出来た、と喜ぶ蝉丸。
だが、すぐに気を取り直して彼女の後を追いかけようとした。
だから――気付かなかった。トラックが自分に向かって来ているのを。
●夜会
ガシッと蹴り飛ばす音が、会合の席で大きく響く。
「この程度のことも出来ないのかい!」
跪く男達を相手に、妖艶に微笑む女――静音様と呼ばれている彼女は、自分の年齢より倍以上の男達相手に、なおも罵声を浴びせていく。
企業の若き総帥である彼女にとって、周囲の人間は所詮使い捨てとばかりの扱いだった。
「お前達の代わりなど、幾らでもいるんだからね」
ひれ伏す男達に蔑むような視線を向けて、静音は口角を僅かに上げた笑みを見せる。それは誰もが畏れを抱くような雰囲気があった。
そんな会合の中であっても、ただ飄々としているのはたった一人。
その人物に気付き、静音はヒールの音をわざと立てて近付く。
「先生、いかがですか?」
「ん? ああ、あんまり私の趣味じゃないね。ここは」
静音が先生と呼んだのは、フリーで活動を続けるという神杜静という医者だ。さばさばとした性格で時々性別を間違えるが、こう見えてもれっきとした女性である。
「ま、食事代が浮いて助かってるけどな」
元々、金銭には頓着しない彼女。
これまでに多くの患者を助けてきたが、実際その大部分があまり裕福でない者達だ。それ故、薬などをある程度融通の利かせてもらっている製薬会社『ドルゲ』での新薬実験を、彼女が手伝うという経緯があった。
「まあ、先生ったら。そうそう、今度この薬を試して頂きたいの」
静音が錠剤の入った瓶を取り出す。
「また新薬かい?」
「ええ。この薬を使えば、病状は飛躍的に回復します。‥‥ただし、かなりの激痛が伴うことになりますけどね」
通常の五倍以上、だけどね。
そう胸中で呟きつつ、笑みを浮かべる静音。
「わかった」
副作用について細かく説明する必要はなかった。相手も特に気にせず、その薬を受け取るのだから。
「ああ、そうだ。これが前回の薬の結果だが、痛みを抑えるのは一瞬だけのようだ」
「いつもありがとう。助かるわ」
裏の思惑に気付くことなく会話が続く。
それに水を差したのは、静音の側近が近付いてきた時だ。
「なに?」
「実は――‥‥」
「‥‥そう、わかったわ。先生、少し用事が出来たみたいなので、この辺で失礼するわ」
仮面のような笑みを見せ、静音はその場から素早く立ち去る。
その後ろ姿を見送る静に、さっきまでの表情はない。まるで感情が抜け落ちたかのような視線が、ただ彼女の姿だけを追う。
「――‥‥そう、また始めるのね‥‥」
誰にも聞こえぬ呟き。
直後、彼女の世界に色と音が戻り、不思議そうに首を傾げながら静もまたその場を離れた。
「――行っちゃうの?」
「ああ」
賑やかな夜会の裏側――旅支度をした少女を見かけた真里菜は、会場を抜け出して彼女の元へ駆け寄った。
そこは、さっきまでの明るい場所ではなく、光も射し込まない暗い場所。
「そういえばピーチクラウンさんと会ったのも、こんな風に暗い路地裏だったよね」
「‥‥そんな事もあったな」
懐かしげに語る彼女に、ピーチクラウンと呼ばれた少女は怪訝な顔をする。もっとも彼女の顔の大部分は包帯で覆われて、僅かでしか覗き見る事は出来ないが。
それに構わず、真里菜の話は続く。
「わたし、ビックリしちゃった。路地裏に入ったら、いきなり蹲ってる人がいて怪我してたんだもの」
「その割にはあまり驚いた風には見えなかったが?」
「そんなの、必死で隠してたに決まってるじゃない。でも‥‥あの時のわたしは、それ以上の恐怖を知ってたし‥‥」
濁す言葉に、ピーチクラウンはその先を察する。
あの時、真里菜は確かこう言った筈だ。両親を殺されて住む家も焼かれた、と。だから自分も、彼女をここへ連れてくる事を選んだのだから。
その当時の感情を思い出しているのだろう。真里菜の表情が一瞬歪む。
「ホントに‥‥行っちゃうの? わたし、ピーチクラウンさんがいたから‥‥」
別れが淋しそうな彼女に、ピーチクラウンは手を伸ばして頭を撫でる。
「まあ、皆と一緒にいればいい。仲良くな」
「――うん」
彼女が元気付けようとした事に、真里菜はただ笑う。
普段こんなことしない人の筈だったのに。
そのことが嬉しくて、彼女に言われるまま再び会場の方へ戻っていった。その後ろ姿をじっと見つめる視線を心地よく思いながら。
「さて‥‥行くか。次のターゲットはIT関係にでもするか」
●序章
それは、とある街の一角。
「――大いなる神アンラ・マンユの声に、神の思し召しに耳を傾けるのです」
高らかに声を上げる女性――イリス。
フードを深く被り、表情のよく見えないといったいかにもな風体にも関わらず、彼女の言葉を信奉する者達は後を絶たない。それはある種の暗示であり、覚醒した彼女自身が持つオーラの影響もあった。
「ただ本能的、感覚的欲求の赴くままに行動することこそ神の教え。我々は皆、自由なのです」
堕落へと導く事こそ神の教え。
かつて受けた啓示を思い出し、彼女はそれを主張する。『闇』への目覚めは心地よく、その陶酔こそがよりいっそう彼女の示す力となっていた。
「――お久し振りです、イリスさん」
「ファウストさん」
かけられた声に振り向くと、そこには同胞であるファウストの姿があった。
思わず笑みが零れそうになる。
イリスにとって、彼こそが神の体現者に他ならない。その意思、思考などどれをとっても背徳の道標に相応しいと彼女は考えていた。
「相変わらず布教活動に精を出しているようですね。感心しますよ」
「ええ。貴方ほどの方にそう言われるのは嬉しいですね。何しろ貴方ほど神の教えに忠実に、本能と感性に従いし者はなかなか居ませんから」
互いに見合い、ほくそ笑む二人。
「もうすぐですよ」
「え?」
「もうすぐ我等の神がこの地に君臨なされます。そうなれば、人は理性という名の皮を脱ぎ捨て、自由という翼を手に入れるでしょう」
彼の言葉は予兆。
彼が何を見、何を聞いているのか、それはイリスにも分からない。
だが。
「ほら、また一人――闇が目覚めた」
――病院の一室。
「僕、は‥‥」
朧な意識の中、少年が見上げると妖艶な笑みを浮かべた女が一人。
「気が付いたかしら?」
途端、脳裏に流れ込んでくる情報に少年の目がカッと見開く。
闇。悪神。神託。絶対の忠誠。破壊の衝動。
滝のように押し寄せてきたそれらに少年の意識は塗り替えられ、過去は霧の向こうへと消えていく。その事を感じ取り、女は満足そうに微笑んだ。
「――貴方のやるべきこと、わかるわよね?」
「はい、静音様‥‥」
「そうね、今日から貴方は鬼麿と名乗りなさい」
ふふ、と笑う彼女に、少年はゆっくりと跪く。
「――鬼麿、全ては静音様‥‥そして悪神アンラ・マンユのために」
それは、大伴蝉丸という少年が死に、鬼麿という闇が誕生した瞬間だった。
――スケッチブックを手に千歳はホッとした。
大伴少年が事故に巻き込まれたと知り、酷く心配したからだ。
だが、周りの人達から聞いたところでは、命に別状はないという事らしい。
「――よかった」
ただ、あれ以来彼の姿をカフェで見かけなくなったことを、少しだけ淋しいと感じた。おそらくもう会うことはないだろうと思えた彼女だが――衝撃の再会が待ち構えている事を、今はまだ知らない。
――そして。
ハッと目を覚ました少年――神威暁は、慌ててベッドから起き上がる。そして、周囲を見渡して今いる場所が自分の部屋だと確認した。
「‥‥なんなんだよ、もう〜」
物語は動き始める――――。
●キャスト
神威 暁:如月 一哉(NPC)
神杜 静:榊 菫(fa5461)
千歳:加恋(fa5624)
静音:仙道 愛歌(fa2772)
ファウスト:水鏡・シメイ(fa0509)
鬼麿(大伴蝉丸):相麻静間(fa5719)
真里菜:巴 円(fa5582)
イリス:葉月 珪(fa4909)
ピーチクラウン:☆島☆キララ(fa4137)