IDOL Audition【亜】アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 葉月十一
芸能 2Lv以上
獣人 フリー
難度 普通
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 0人
期間 08/28〜09/01

●本文

●次世代アイドル募集
 ハイパープロジェクト――通称ハイプロ――のオフィシャルホームページ上で、その告知は発表された。
 女性アイドル達を中心とし、かつては勢いに乗っていたそのプロダクションも、最近ではアイドル達のジャンルの細分化に伴い、徐々にだが翳りが見え始めていた。
 その打開策として練られたのが今回のオーディションだ。

『Global Artistic New Generation IDOL』――通称『GANG』。

 すなわち、『Global(世界的)』で『Artistic(芸術的)』な『New Generation(新世代)』のアイドルを発掘しようというプロジェクトだ。そのため募集も日本――アジアだけに留まらず、欧州、中東、南北アメリカにまで広く手を広げた破格の募集だ。
 そして、各会場ごとの予選を突破した1〜2名の者達が、本選を経てGANGのメンバーとして選ばれる形となっている。
 その応募要項は以下の通りだ。

○GANGオーディション募集要項
 中学生以上の歌う事が好きな者で、プロアマ及び男女問わず。
 プロとしての活動があれば簡単な経歴を明記すること。
 各会場ごとに歌詞の一節が提示されます。それを自分なりの解釈で歌詞を加えて歌う事が最終予選の審査になります。その際、イメージや曲調、歌い方等は確実に明記すること。
 今回のオーディションに対するあなたの意気込みをどうぞ。
 なお、本選を突破して見事選ばれた皆様は、職業が『GANGハイプロ』となります事をご了承下さい(予選の段階では職業欄は変更しません)。

○歌詞【アジア会場】
 その手を伸ばして 君に届くまで
 夢から醒めた瞬間 本当の自分を知るから
 心を重ねて 二人でいるから
 偽りじゃないその想いを 言葉で伝えていくよ

 審査・プロデュース――須崎渉(fz0034)

●今回の参加者

 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2726 悠奈(18歳・♀・竜)
 fa3092 阿野次 のもじ(15歳・♀・猫)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)
 fa4020 ロゼッタ・テルプシコレ(17歳・♀・犬)
 fa5810 芳稀(18歳・♀・猫)
 fa5959 SUMIRE(17歳・♀・鴉)
 fa5960 LaLa(17歳・♀・鴉)

●リプレイ本文

●月見里 神楽(fa2122)――太陽の花言葉
「ハイプロに入ることは、デビューしてからの夢です!」
 開口一番、場の雰囲気に飲まれないように自分の意気込みを語ったよ。だって本当に、神楽にとってハイプロ所属になるのはずっとずっと夢だったんだもの。
 アメリカ会場ではダメだったけど、ここまできて諦めたくないもん。
 だから、今度こそと思ってアジア会場を受けたんだよ。
「元々演奏家の自分は歌唱力なんて全然自信なかったです。でも、色々と経験を積ませて頂き、コーラスが出来るまでは成長したと思います」
 じっと見つめる須崎さんの視線がなんだか怖いけど‥‥大丈夫。ここまできたらやるしかない。
「歌のテストに挑む決心がついたのも、皆様との経験のおかげだと思います」
 一礼すると同時に流れてきたのは、ポップス調の四拍子。
 賑やかに始まった伴奏に合わせて――私は声を出した。

『黄色い太陽の花 君は大好きと笑った
 つられて「とても綺麗」 君の隣で並んで
 このまま時間よ止まって ずっと心は願っていたの
 はかない夏の夢の中 叶うはずないと決め付けて――』

 情景が浮かぶように聞き取りやすく丁寧に言葉を綴って。
 でも、伴奏に合わせて軽やかにステップなんて刻みながら。
 サビの部分に入ると、私はより言葉をはっきりと、そして切なさを表現するように歌う。

『――揺れる太陽の花 君の笑顔と重なる
 ヒマワリの花言葉を 君は知っていますか?
 「あなただけを見つめている」
 ずっと秘密にしていたの
 消えていく夏の幻想よ 目覚めの光り満ちて来た』

 同じ旋律で二番を歌い始める。
 少し息切れしそうだけど、ここで頑張らないとね。揺れる乙女心をしっかり表現しなきゃ。

『勇気を纏って 君に会いに行く
 光り射した瞬間 本当の自分を知るから
 瞳閉じて 姿浮かべる
 胸に芽生えたこの想いを 言葉で伝えにいくよ』

 最後が近付くにつれ、伴奏が低くなっていく。
 それに反応するように私は声を響かせた。

『君と出会ったあの場所で
 太陽の花と一緒に』

 この声で、少しは誰かを惹きつけることが出来るかな。

●悠奈(fa2726)――koiuta
「アイドルタレントの悠奈です! 今まで演技のお仕事が多かったのですが、本格的に歌もやってみようと思って応募しました!」
 うん、下手に飾るより率直に志望動機を言う方がきっと好印象だよね。
 そう思って私は、笑顔を浮かべて聞かれるままに今までの活動を説明した。アイドルフェスやライブハウス、TVや舞台での活動‥‥ってあれ、自分で言ってて結構やってるね。
「それで? 君はどういった将来を目指したいんだ?」
「はい。いつも笑顔を忘れず、明るく爽やかなアイドルを目指します!」
 そんな私の今日の服装も、爽やかさをアピールするようにキチンとした普段着だよ。白い膝丈スカートもそんな感じだしね。
 そうして挨拶も終わった私の前には、レコーディングルームのマイク一本。
「それじゃ、いつでも始めてくれ」
「あ、はい!」
 よし、いくよ――。

『今すぐ君に逢いたいよ
 その手を伸ばして――』

 最初のフレーズが終わると同時に、ヘッドフォンからキーボードの音源が入ってきた。
 軽さを出した爽やかなポップスに、私の身体も自然と揺れるね。

『陽だまりの中 微笑んでいる
 見詰め合う瞳 触れない指先
 想いを乗せて祈るよ
 胸の奥の暖かな光
 君に届くまで』

 優しい感じの声に合わせて感情を乗せていく。
 ちょっとだけ片思いしてた頃を思い出しながら、かな。

『君の横顔が眩しくて綺麗
 夢から醒めた瞬間
 涙こぼれて
 本当の自分を知るから――』

 テンポアップした後は、サビへ向けてしっかりと言葉に力を込めていく。
 でも、あんまり重くならないように。だって恋する女の子の気持ちをイメージしてるんだから。

『――その想いを
 I want to be with you
 言葉で伝えていくよ――』

 力強く、前向きに。
 恋の切なさが、少しは伝わればいいな。

●阿野次 のもじ(fa3092)――カラテ・ラテ・ラプソティ
「次の人、どうぞ。‥‥次の人?」
 ふっ、呼んでるみたいね。
 でも、のもじの出番はもうないの。これからは「パピヨン」の登場よ!
 そして私は、仮面を付けてドアをバタンと開けた。
「――匿名希望の美少女アイドル、パピヨン! いざ尋常に勝負!!」
 須崎さん以下スタッフが目を点にしてるね。ふふ、それこそこちらの思惑通りだよ。これぐらいのインパクトがあれば、GANGといえど怖れるに足らず。
 情熱的なこの曲と振り付けで、歌うのはカラテ・ラテ・ラプソティよ!

『――最初の君との出会い 忘れられない衝撃受ける
 回る景色、世界が崩れる
 君に突き立てたはずの拳はユメ幻 己の弱さ、叱咤を受ける
 立ち去る君の大きな背中――』

 ふぉーりんはーと♪
 コーラスと一緒に私は拳を突き立てた。

『ミチの世界へ 盛者必衰の見えないハードル飛び越し踏み込もう
 駆け抜けろ――!』

 ふふん、見てる見てる。
 このインパクトならきっと受かったも同然よね。
 え、もう終わり? あ、ちょっと待ってまだ続きが‥‥うーんやっぱ仮面つけたりしてやり過ぎだったかな。

●EUREKA(fa3661)――Mirror of the Smile
 マイクの前で一人で立つ。それがこんなに緊張するなんて、私自身思わなかったわね。
 でも、これぐらいの高揚は必要かしら。
「――この履歴は、本当か?」
 年齢や離婚暦の事を言ってるのだとすぐわかった。
 だから、私は笑って答えるの。
「余り宜しくない事は百も承知してます。でも、新世代という意味では、誰にも負けない自信はあります」
 それぐらいの覚悟がなければ、二度も応募していませんから。
「バンド等で音楽活動は長く続けていました。ただずっと奏者でしたから‥‥今度は「私」という一番身近な楽器を――声を響かせてみたいのです」
 そして私は、キーボードを弾き語り始めた。
 緩やかな和音に合わせた前奏から、ミドルテンポへと変化させる。

『――いつもと同じ時間 ベッドで微睡む
 起きて出かけなきゃ
 頭は思っても はねた髪が憂鬱で

 私は誰かの役に立ってる?
 鏡の前で自問自答
 夢の中ならヒロインなのに
 見つめる私 とんだしかめっ面』

 思い浮かべるのは、鏡の中の私。
 自分を励ます感じで、徐々に元気よく私は声を出してみた。

『Smile 今朝もおまじない
 Smile 瞳開けばほら
 鏡の向こう 笑顔の私が待ってる――』

 楽しげに身体を揺らして、水色のワンピースが跳ねる。
 やっぱりこういうのは自分も一緒に楽しまないとね。

『――その手を伸ばして 夢に届くまで
 本当の私 いつでも心の中に』

 いつまでだって、誰でも輝きたいものなのよ。私ももう一度輝けたかな?

●ロゼッタ・テルプシコレ(fa4020)――夢から醒めたら
 周りを見渡せば、知名度も実力も上な人ばかり。
 うわー、ホント今更ながら緊張してきたみたいだよ。
 でも、緊張したばかりもいられないよね。ここは一発、持ち味の元気の良さをアピールしなきゃ。
「アイドルとしての活動は殆どこれが初めてだけど、ここからスタート出来たらとても嬉しいと思います!」
 うん、きちんと言えた。
 サッカーと同じだよね。前日、きちんとよく食べよく寝たから、こんなに体調だっていいんだもん。きっと上手くいくって信じてるよ。

『バックもポケットにも無かったこの思い
 夢の中の君を前に やっと見つけられたよ』

 元気なポップに合わせて、あたしはテンポよく身体を動かした。
 せっかく歌のイメージに合わせてボーイッシュな雰囲気な服にしたんだし。しっかりアピールしないとね。

『その手を伸ばして 君に届くまで
 夢から醒めた瞬間 本当の自分を知るから
 心を重ねて 二人でいるから
 偽りじゃないその想いを 言葉で伝えていくよ』

 特に強く気持ちを乗せて。
 次はクライマックスね。

『夢から醒めたら 君に会いに行こう
 この手に掴んだ本心を そのまま君に伝えるよ』

 この歌みたいにあたしも今日、現実の一歩を踏み出したよ。

●芳稀(fa5810)――REAL
 応募の動機は、と聞かれて私はまっすぐ須崎さんを見た。
「自分の可能性を広げたくて応募しました」
 今まではずっとモデルや役者の活動だけでしたから。
 勿論、芝居の中で歌う事はありましたけど、やはり少し違うと思いますし。せっかくこの場まで辿り着いたのです。ここで弱気になんかなりませんよ。
「せっかく頂いたチャンス、絶対に逃したくありません」
 強気が私の最大の武器ですから。
 そう思って、私は心からの笑顔を向ける。

 そのまま聞こえてくるメロディに、まずは囁くような声でしっとりと歌い出した。

『ねぇ耳を澄まして
 御伽噺の向こうから 語りかける声があるでしょ
 ほら瞳を逸らさないで
 揺らめく甘い幻想 何に変わっていく?』

 徐々に上がるテンポに、私は凛と歌う。

『現実から逃げるのは簡単
 Imitationは気付かなければ綺麗
 弱さを知るのは怖いけど
 一人じゃない その気持ちが真実を――輝かせるよ!』

 伸びやかに、声と一緒に私の笑顔も届くように。
 力強くサビを歌い、言葉をハッキリと伝えるように。

『――心を重ねて 一人じゃないから
 想いを伝えて二人 歩き出す』

 一人じゃダメでも仲間と一緒に、そんなイメージで纏めてみました。

●SUMIRE(fa5959)――光
「SUMIREと申します」
 そう言ってうちは深く頭を下げたわ。やっぱり最初が肝心だからね。
 プロと呼べる程の芸暦のないうちが、ここまでこれたのだから、やっぱり最後まで残りたいよね。歌への情熱は誰にも負けるつもりはありませんから。
「‥‥よろしくお願いします」
 そう言って、黒いドレスを翻してうちはマイクの前に立つ。
 流れてきたスローテンポのメロディに、うちの第一声を乗せたわ。

『いつも見つめてた 君の視線の向こう側
 そこには夢と 希望と未来があるのだろう』

 次第に明るくなるメロディ。
 うちも自然と身体が動いていく。こういうのはノリが大事だもんね。

『どんな苦労も乗り越えて 君は進んでいく
 そこに射し込む光 導く光
 君を照らす光は 私のこの手‥‥』

 そのままサビまで一気に歌い上げて、うちはふうっと息を吐いた。
 うまく上がらずに歌えたかしら?

●LaLa(fa5960)――Love You
 緊張にドキドキする胸を押さえながら、あたしは精一杯の意気込みを口にする。
「LaLaといいます。今日はよろしくお願いします! 好きな言葉は太陽! 明るくみんなを照らすような人になりたいです!」
 あたし自身、まだ全然経験はないけど、勿論これから頑張るつもりだよ。
 歌うのはもちろん好き。だって歌はあたしの一部だもの。
 でも。
「これから、色んな経験もしたいと思ってます! だから今はこの歌を聞いて下さい!」
 流れてきたのは、ノリのいいアップテンポのリズム。
 その曲に合わせてあたしはまっすぐ声を響かせた。

『その手を伸ばして ドキドキ 私に触れてよ
 この手を伸ばすよ ハラハラ 君に届くまで』

 イメージは昨日から恋人同士になった初々しさかな。
 明るく弾むように、足もステップなんかつけたりして。

『まだ微妙な距離感 夢から醒めた瞬間
 嘘じゃないね トキメキ 昨日と変わらないから
 偽りじゃないその想いを 言葉で伝えていくよ――』

 流れるように歌った後は、また盛り上げる感じで言葉をしっかり。
 ここで躓いてちゃ全然ダメだしね。
 よーし上手くいったかな。いよいよ次はサビの部分だね。

『――Love You もう一度言うよ
 Love You もう一度聞いてね

 君が イチバン 好きだよ
 Love You 君が好きだよ』

 いっぱい、いーっぱい歌に込めた好きだよって気持ち、きちんと届くといいな。それが今のあたしの精一杯だから。

●最終選考発表
「それでは今回の最終選考の発表だ。今回の会場はかなり激戦だった。おかげで選ぶのも一苦労だ」
 苦笑混じりの渉の言葉に、スタッフの苦笑が被る。
 が、すぐに彼はカメラの向こうにいるだろう参加者達に向けて表情を改めた。
 向ける眼差しは控え室で待つ参加者へ。口元をキュッと引き締めたのは、厳しさを演出するためのアピールだ。
「それでは発表する――」

 じっと見守る八人の参加者達。
 ぎゅっと目を閉じて祈る彼女達の耳にまず最初に入ってきた名前は――。
『一人目。群を抜いた音楽センスのEUREKA、君だ』
「え?!」
 自分の名前を呼ばれ、信じられないといった表情の彼女。
『発声では少し劣るものの、音楽センスに輝くものがあった。なによりその意気込みを俺は買いたい』
「ありがとう‥‥ございます」
 頭を下げるEUREKA。
 そのまま画面の中では、次の名前が発表された。
『二人目は、笑顔と声が一番アイドルらしさを感じた彼女――悠奈』
「や、やったーっ!」
 思わず飛び上がった悠奈。
 束の間はしゃぐ彼女だったが、すぐに自分の方に向けられたカメラに気付き、慌てて背筋を正してお辞儀した。
「あ、ありがとうございまーす!」
 そして。
『最後にもう一人。意気込みが感じられた彼女を最終選考へ通す事にした――月見里 神楽』
「う、っそぉ〜」
 既に半ば諦めていただけに、呼ばれた途端神楽は素っ頓狂な声を上げてしまった。
 が、慌てて口を押さえて直立不動の姿勢。
 何しろ長年の夢まであと一歩のところまで来たのだ。ここはきちんとお礼を言うべきだろう。
「ありがとうございます」
『これらの三名を最終選考者とする。今回通らなかった者も、日々努力して欲しい。なお、本選は今から二週間後の予定だ。それまで各自練習を積んでおくように――以上だ』